「ヨナグニサン」ってどんな虫?モスラのモデルとなった日本最大級の蛾
大きい個体では、なんと人の顔よりも大きいサイズになることも。綺麗な翅を広げて飛ぶ姿は、鳥と見間違えて猟師に狙われたなんて噂も。珍しい種類の蛾なので、初めて聞いた、見たこともないかも、という人も多いはず。この記事では、そんな彼らの生態とその魅力を紹介していきます。
ヨナグニサンは日本最大・世界最大級の蛾!
左右の翅を合わせると30センチもの大きさになることも。人間の顔の縦幅は20センチほどですが、それよりも大きいサイズです。世界中に生息している蛾の中でも第二位の大きさを誇り、動画からもわかるように、成人の手の平よりもはるかに大きなサイズです。
ゴジラに登場するモスラのモデルとなったヨナグニサン
その堂々とした大きさから、ヨナグニサンはかの有名な怪獣作品である「モスラ」をデザインする際のモデルになったと言われています。さすがにモスラほどの大きさはありませんが、普段見かける昆虫のサイズとかけ離れているため、怪獣と呼ばれてもおかしくはない貫禄です。
日本では沖縄県の与那国島あたりにのみ生息している
生息地域は意外と広く、東は日本から西はインドに至るまで見かけることができます。大型の生物は温かい地域に生息していることが多いですが、大きな体を持つヨナグニサンも例に漏れません。そのため、日本では温かい気候の沖縄県うち八重山諸島にのみ生息している貴重な品種です。
ヨナグニサン?ヨナクニサン?名前の由来や海外での呼び名など紹介
なんだか人名のような響きの名前を持つヨナグニサンですが、なぜそのような名前になったのでしょうか?また、日本では生息地に因んだ名前で呼ばれていますが、海外に生息している個体でも同じ名前で呼ばれているのでしょうか。
初めて見つかった与那国島からとった名前「ヨナグニサン」
国内でファーストコンタクトを果たした場所である与那国島に因んで、この名前が付けられました。「ヨナグニさん」ではなく、漢字では与那国蚕と書きます。蚕の字が示す通り、幼虫から成虫になるまでの間は繭の中で眠ります。その糸は織物にも利用されています。
「ヨナクニサン」とはどっちが正しい?
ヨナグニサンは、濁点で訛らない形でヨナクニサンと呼ばれることもあります。特に両者が指すものに違いはなく、名前の由来となった「与那国」の読み方の表記ブレのようなものです。ヨナクニの例では、石垣島や那覇など大きめの都市と与那国島を繋ぐフェリー「フェリーよなくに」があります。
与那国島の方言で「アヤミハビル」と呼ばれている
与那国島独特の方言では、「アヤミハビル」と呼ばれるヨナグニサン。一見するとまるで不思議な呪文のようですが、きちんと意味のある言葉になっていて、「模様のある蝶」という意味になります。
海外では「アトラス・モス」や「皇蛾」と呼ばれることも
外国でも地域に則した呼び名を与えられており、英語圏では「アトラス・モス」、中華圏では「皇蛾」などと呼ばれています。アトラスとは、ギリシャ神話に登場する巨大な体躯を持った神です。圧倒的な存在感を放ち、王者の風格持つヨナグニサンは、神や皇の名を冠するのにぴったりな蛾ですね。
ヨナグニサンの特徴とは?生息地や生態について詳しく紹介!
日本内外に意外と広く分布しているヨナグニサンですが、世界中のヨナグニサンはすべて同じ種類なのでしょうか?そして、堂々としたヨナグニサンですが、意外なことにも実は致命的な欠点も持っているのです。
インドや台湾などアジア圏に生息しているヨナグニサンとその亜種
それぞれ生息している地域によって、細かい種類分けが変わってきます。そのため、厳密にいうとそれぞれ違う種類の生物になります。違っている特徴としては、日本に生息している個体は翅の白抜きになっている三角模様が比較的大きめなようです。
体長は50mmほど!オスよりもたくましく大きい体を持つメス
雄と雌で体の大きさや模様などが全く違う種類の動物は数多くいますが、ヨナグニサンも雌雄によっても大きさに差があります。オスは体長が5センチを切る個体が多いですが、メスはほとんどの個体が5センチオーバーです。また、翅のサイズもメスのほうが1~3センチほど大きい傾向があります。
羽にある複雑な模様?コブラに擬態するヨナグニサン
赤茶色をベースにした、まるで絨毯などのデザインされたような模様の翅を持つヨナグニサンですが、その翅の上側の先端の模様は何かの頭部に似ているように見えます。これは、コブラなどの毒ヘビが鎌首をもたげた横顔に模様を似せて、天敵から身を守ろうと進化したためだと言われています。
ヨナグニサンはうまく着地できないと飛び上がることができない?
ヨナグニサンは、巨大な翅と大ぶりな体を持っているのが特徴です。しかし、その特徴ゆえに体は重たく、一度地面に落ちてしまうと再び空へ飛びあがることはできません。もしも地面に落ちているヨナグニサンを見かけたら、木の幹など高さのある所に戻してあげましょう。
まるで神話に登場する女神?美しいオオミズアオ
ヨナグニサンは、赤茶色をベースにした落ち着いた色合いながら、コブラを模した独特の模様がある大きな翅が特徴ですが、ほかにも珍しい翅を持っている蛾がいます。透き通る宝玉のような翅を持つ「オオミズアオ」と呼ばれる蛾についても紹介したいと思います。
宝石のような羽をもつオオミズアオ
オオミズアオは、10~13センチくらいの中サイズの蛾です。また、よく似た見た目をしたオナガミズアオという種類の蛾もいます。オオミズアオの特徴は、なんといっても透き通るような美しい翅です。薄緑色の透明感もさることながら、その中にワンポイントのようにあしらわれた黄色の模様が非常に芸術的です
。海外の呼び名には、ギリシャ神話に登場する月の女神・アルテミスの名が使われています。黄色の模様が月のように感じられる、とてもロマンチックな名前です。オオミズアオについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
触覚も体もフワフワでかわいい!
また、オオミズアオは美しさだけでなくキュートさも兼ね備えています。触角は櫛葉状と呼ばれるふさふさの形状をしており、体表にはうっすら毛のようなものが生えています。カラーリングも全体的にパステルで見る人に柔らかい印象を与える、マスコット的な可愛さがとっても魅力的です。
ヨナグニサンの幼虫について紹介!幼虫の頃の特徴は?
成虫になってからの姿について紹介してきましたが、一体その子供時代はどんな姿なのでしょうか?実は、皆さんのイメージしている毛虫のイメージよりも、芋虫寄りの愛らしい見た目をしているんです。
ヨナグニサンの幼虫は薄緑色!全体的に白みがかっている
ヨナグニサンの幼虫は、町中で見かける毛虫のように黒色だったり毒々しい色はしておらず、綺麗な薄緑色をしています。卵から生まれてすぐのときは黒と白のマーブルカラーをしていますが、脱皮して大きくなるにつれ、薄緑色へと変化していきます。
ヨナグニサンの幼虫にはトゲのようなものもついている?
生まれたての幼虫は、体中が白い突起でびっしりと覆われています。それは脱皮を繰り返すうちにだんだんと伸びていき、繭にこもる時期が近付くと今度は退化していきます。最終的にはちょっとしたでっぱりのようなサイズになり、成虫になった後の体表からは完全に消滅します。
触っても問題はない?ヨナグニサンの幼虫に毒はない
体中を守る鎧のようですが、実はそのトゲトゲには毒はありません。そのため、間違って触ってしまったりしてもかぶれてしまったり、腫れる心配はないでしょう。しかし、自分より大きい生物に触られることは大変ストレスになりますので、むやみに触るのは止めてあげましょう。