さらに事態をややこしくしているのが、元ネタとなっている作者が存命である場合。オマージュとして作風を組み込んだはずの作品が、元ネタの作者からパクリと「認定」されてしまうこともあるのです。
こうした例を鑑みても、やはりオマージュとパクリとの境界線は曖昧で、しばしば作品を巡る議論やトラブルの種となってしまうことがうかがえるでしょう。
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オマージュの対義語
オマージュに明確な対義語はあまり想定されていないようですが、オマージュのもととなる「オリジナル」が、しばしばオマージュとは対比されているようです。続いて解説しましょう。
オマージュの対義語は「オリジナル」
オマージュが既存の作品を部分的にそのまま取り入れるのに対し、「オリジナル」とはそうした影響を排し、独自の「路線」を追求したもの、とされています。
もちろん作品のすべての要素を作家一流のもので作り上げることは困難ですが、既存の作品との関連性や類似点の少なさによって、オリジナルっぽさ=「オリジナリティ」が生まれるのです。
古典や名作はオリジナルとして扱われやすい
オリジナルとみなされやすい作品の例としては、古くから読み継がれている古典作品や、すでに評価が定まっている、いわゆる「名作」の類が挙げられます。
たとえば紀元前に書かれたギリシア悲劇などは、その完成度の高さなどもあいまって、今日に至るまで、長らく欧米文学の基礎として親しまれています。
オマージュ作品の例
次に、オマージュの技法を用いた、いくつかの著名な作品の数々をご紹介しましょう。これらの例に触れることで、オマージュの実践について、より深く理解できるはずです。
オマージュ作品①トイ・ストーリー
おもちゃたちが活躍する『トイ・ストーリー』。そんなこの作品の中にも、ちょっとしたオマージュが含まれています。元ネタは、スタンリー・キューブリック監督作『シャイニング』。
『シャイニング』に登場する超能力少年ダニーの部屋のカーペットの模様が、『トイ・ストーリー』の舞台となる家の壁紙として用いられているのです。
オマージュ作品②ズートピア
2016年のディズニー映画『ズートピア』。登場人物であるデュークが売りさばこうとする海賊版DVDが、これまでのディズニー映画を模したものとなっています。
またデュークの名前自体が、2013年のディズニー映画『アナと雪の女王』のヴィラン(悪役)である、デューク・ウェーゼルトン公爵からとられたものです。
オマージュ作品③ファインディング・ニモ
ピクサーによる2003年のアニメ映画『ファインディング・ニモ』。こちらには現在も人気の高い「サメ映画」の元祖、『ジョーズ』へのオマージュが隠されています。
作中に登場する3人組のサメ、そのリーダー格であるブルースの名前は、実は『ジョーズ』の撮影に使われていた機械仕掛けのサメに、スタッフたちがつけていた愛称「ブルース」からとられているのです。