絶滅危惧種・日本最大の淡水魚「イトウ」とはどんな魚?魚が熊を食べた?

皆さんはイトウという魚をご存知ですか?成長すると1mの体長になる日本では最大級の淡水魚で「幻の魚」とも呼ばれています。なんと湖に飛び込んできた熊を食べたというイトウの伝説もあります。今回はそのイトウの生態や釣り方、そしてその味についてまとめました。

この記事をかいた人

Array

イトウとはどんな魚?

イトウはサケ科でとても大きな淡水魚です。体形はイワナに似て細長、小さな黒い斑点のある青褐色の背に白いお腹、頭は平たく鋭い歯のある大きな口が特徴です。日本最大級と言われるその体長は1mを超え、重さは最大で45kgにもなり、かつては2m以上にもなるイトウが発見されたこともあります。

イトウの名前の由来

イトウは伊富や伊富魚などと漢字で表記され魚偏に鬼と書いてもイトウと読むそうです。また卵を産んだ後のイトウは痩せて細長になって「糸のように細長い魚」という点から糸魚(イトウオ)からイトウに変化したという説があります。

そして学名である「Hucho perryi(フッコペリー)」は日本の歴史に大きく関わった黒船のペリー、マシュー・ペリーが函館に立ち寄った際にイトウの事を生物学界に報告されたことから名づけられました。イトウを見てその巨大さゆえにペリーも驚いたのかもしれませんね。

イトウの生息地

イトウは主に北海道に生息しています。かつては岩手県、青森県でも生息確認されたことがありますが、すでに絶滅してしまいました。あとで詳しくご紹介しますが、北海道では猿払村猿払川や天塩川、幌加内町朱鞠内湖などに生息しています。もし北海道に行ったらぜひイトウの生息地にも足を運んでみてください。

イトウの大きさと寿命

イトウは最大級の淡水魚と言われていますが、大きくなるまで長い時間がかかります。イトウは約10年もの時間をかけて大きくなり、寿命も約20年ととても長いです。1937年の秋には、北海道の十勝川千代田堰堤にて2.15mのとても大きなイトウが捕獲されたという記録もあります。

イトウにまつわる伝説・食われ熊

熊が鮭をパクっと食べている置物、北海道のお土産で有名ですので誰もが一度は見た事あるものではないのでしょうか。実はその逆の鮭が熊にかみついている置物が北海道のお土産にあって熊や鮭の表情がすごくリアルなのです。

「鮭が熊を食べるなんてありえない」と思う方が断然多いと思いますが、実はイトウにはなんと「熊を食べた」という伝説が北海道のアイヌ族で言い伝えられているそうです。イトウが熊を食べたとは一体どういうことなのでしょうか。

その伝説を簡単にまとめると、とある狩人が熊を追いかけているとその熊が湖に飛び込んでしまい、沈んだまま見えなくなったために狩人が船で湖の真ん中まで行ってみると、なんと体長4、50mもあるイトウがその熊を食べてしまっていたそうなのです。大昔からイトウは巨大な生物であると考えられていた事がうかがえます。

幻の魚・イトウはなぜ絶滅危惧種になったのか

環境省絶滅危惧IB類指定のイトウは、将来には絶滅してしまう危険性が高いのだそうです。イトウはかつて東北地方(青森県・岩手県)でも生息の確認があったのですが現在ではもう生存しておらず、42もの水系で生息が確認されていた北海道も現在ではたった6水系にまで減少してしまったそうです。

イトウはなぜ絶滅危惧種になったのか・原因①構造物

イトウはサケ科の魚ですが、サケとは違い一生に何度も産卵を繰り返す魚です。産卵の度に川を行き来します。小さな規模ではありますがその川の構造物の工事がたくさん行われた結果、イトウが行き来するルートに障害物ができてしまい、イトウは川を上ることができなくなってしまったのです。

イトウはなぜ絶滅危惧種になったのか・原因②直線の川

イトウは、曲線を描きながら流れる大きな川に生息します。曲線を描くことにより川には「瀬渕(せぶち)」と呼ばれる深さのある流水の緩やかな場所ができ、この淵より下流にある浅瀬の部分がイトウが卵を産む適切な場所です。しかし、川の改修工事などで川が直線になることで瀬渕がなくなりイトウは卵を産むことができなくなってしまいます。

イトウの養殖

そんな絶滅の危機にあるイトウですがその養殖に成功した地域もあるそうです。青森県の鰺ヶ沢町では赤石川という世界自然遺産である白神山地を源流とする川でイトウが養殖されています。キレイな川の水だからこそ、イトウが増えたのかもしれません。また北海道北見市にある北の大地の水族館ではイトウを展示しています。

イトウが優雅に泳ぐ姿を見ることができるなんて素敵ですよね。ぜひイトウ釣りに挑戦する前に北の大地の水族館に足を運んでイトウを間近でじっくり見ておきましょう。また釣りが得意ではない方でもイトウに興味のある方はぜひ訪れてみてください。

イトウの産卵

「イトウはなぜ絶滅危惧種になったのか」の項目でもお話しましたが、イトウはサケとは違い繰り返し産卵を行います。産卵期の4月~5月、イトウは川の上流に向かって一斉に遡って2,000粒から10,000粒の卵を産みます。産卵を終えるとイトウはエサがいっぱいある中流へと戻ります。

イトウの食べ物

イトウはまだ小さい時には水生昆虫を食べます。川の水面に落下してきた陸生昆虫はあまり食べないそうです。成長するとヤマメやマス、ドジョウを食べるのですが、ある研究報告では動きの遅いフクドジョウを一番多く食べているのだそうです。

NEXT イトウの食べ物