ストックホルム症候群は人質が犯人を庇う心理状態!原因や実際の事件を紹介

非日常に巻き込まれれば誰でもストックホルム症候群になる訳ではありません。そこには、きちんとした共通点があるのです。

命が脅かされている状況である

まずは、事件などに巻き込まれた後、確実に命が危険なケースであること。

人間の生存本能を発端とするストックホルム症候群は、命の危険がないと判断出来る状況ではあまり出現しません。

時々加害者から優しくされる

Pexels / Pixabay

次に、加害者が時々優しくなる、という状況があることです。生命の危険を感じる場面において、自分の自由を奪っている者が優しい顔を見せることが大きな条件です。

またストックホルム症候群の発症率は、同性同士よりも男女の方が高いと言われています。

第三者が干渉出来ない

Fifaliana-joy / Pixabay

監禁など、第三者が入り込めないケースでもストックホルム症候群になりやすくなります。閉ざされた空間で偏った人間関係を築くことによって、ストックホルム症候群は完成されていくのです。

またストックホルム症候群に陥った後も第三者を拒み続けることで、更に症状は悪化していきます。

置かれている状況からの脱出を望めない

さらに、脱出が不可能なケースではより発症しやすくなります。人は出口が見えないとより危機感を覚え、ストックホルム症候群の入り口である防衛本能が更に強く働くためです。

脱出不可能だと思い知ると、加害者に可愛がってもらい、生き延びようとするのが人の本能なのです。

ストックホルム症候群になる人とならない人がいる

Desertrose7 / Pixabay

条件を揃えた人は全てストックホルム症候群になるのでしょうか?実は、発症の確率は意外と低いのです。

別の銀行強盗では犯人を庇う人質はいなかった

Free-Photos / Pixabay

他の強盗事件では、ノルマルムと同じように被害者が監禁されていたにも関わらず、ストックホルム症候群になりませんでした。

警察が強盗を銃で撃つと、人質の女性2名は倒れた強盗を起こして支え、警察がとどめを刺せるように援護したという記録があります。

このように、監禁等の状況を経てもストックホルム症候群に陥らないケースもあるのです。

ストックホルム症候群にかかる人は27%

被害者全体の内、ストックホルム症候群を発症する割合はどの程度なのでしょうか。

犯罪にあった人の内ストックホルム症候群になる割合は、FBIの調査により「27%」だという統計が出ています。つまり、残り7割強は発症せずに終わっているのです。

数字でご覧いただくと、意外に少なく感じられるのではないでしょうか。

警察はストックホルム症候群を考慮に入れている

Free-Photos / Pixabay

現在、警察はストックホルム症候群の可能性を加味して作戦を立て行動しています。人質救出作戦におけるネゴシエーター(交渉人)は、それを踏まえたアプローチを徹底しているのです。

ストックホルム症候群が見られる他の事件

MariamS / Pixabay

ノルマルム以降、ストックホルム症候群は世界中で確認されています。ここでは、その事例を6つご紹介します。

パトリシア・ハースト事件

アメリカの大資産家の娘であり19歳のパトリシア・ハーストの誘拐に端を発する監禁・洗脳事件は、1974年に起こりました。

パトリシアはある日SLAと言う過激派テロリスト集団に誘拐されましたが、その2ヶ月後に届いた手紙には、銃を構える彼女の姿、そして「SLAと共に戦うことを決めた」というメッセージが入っていたのです。

パトリシアは誘拐後SLAにより目隠しをされ、外部の情報を全て遮断されていました。そして衰弱したところでSLAのメンバーに優しく諭され、洗脳されたのです。

それによりストックホルム症候群になったパトリシアは、組織の中で恋人を作り、その後銀行襲撃のメンバーにも加わってしまいました。

Daniel_Nebreda / Pixabay

組織のアジトが警察に銃激され5名が死亡した際には、ハースト家に2本目のテープが届き「お前らのようなファシストの豚野郎どもとはもう暮らさない」という過激なメッセージが録音されていました。

パトリシアは、誘拐から約1年半後に逮捕。治療を受け、7年の懲役を経て釈放されています。また釈放後は結婚し、子供も設け幸せに暮らしています。

ジェイシー・リー・デュガード誘拐事件

1991年、小学5年生だったジェイシー・デュガードは通学中に突然誘拐されました。ジェイシーをさらったのは、40代のガリドー夫婦。夫の方には性的暴行の前科がありました。

その後ジェイシーは夫婦の家の小屋に監禁され、裸同然で暮らすことになります。夫婦に酷い仕打ちを受けながらも時折優しくされたジェイシーはストックホルム症候群を発症しました。

彼女が13歳の頃の日記には、以下の文章が書かれています。

「彼らは、ほかの誰もしてくれないことをしてくれた。200ドルも払って、わたしに子ネコを買ってくれた」(引用:AFPBB News)

ジェイシーは性的暴行まで受けていましたが、猫を買ってくれたことに感謝しているという異常な状態でした。

Tasos_Lekkas / Pixabay

その後ジェイシーはガリドーの子を2人出産し、ガリドーの会社で働き始めます。

他の社員や顧客、またガリドーの元を警察も定期的に訪問していましたが、ジェイシーが彼らに助けを求めることは一切ありませんでした。

最終的にガリドーのおかしな挙動から通報され、18年に渡る恐ろしい生活は幕を閉じます。が、その際もジェイシーは自らの本名を名乗ることさえ躊躇していました。

NEXT よど号ハイジャック事件