ストックホルム症候群は人質が犯人を庇う心理状態!原因や実際の事件を紹介

ストックホルム症候群とは誘拐事件や監禁事件の被害者が加害者と心の繋がりを築くという生存戦略のひとつです。ストックホルムで起きた事件がきっかけとなって認知されたためこの名前が付いています。この記事では被害者がストックホルム症候群を起こした事件や治療法について解説します。

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オカルトを愛して30年。特に怪談、呪術、未解決事件が好きです。情報の詰まった記事を心がけています。

ストックホルム症候群とは?PTSDの一種

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犯罪に巻き込まれた被害者が、異常なほど加害者に共感、同情、また好意を抱いてしまう状態を「ストックホルム症候群」と呼びます。

スウェーデンの首都・ストックホルムで起きた事件で世間に広まった現象のため、この名前が付きました。

被害者が生き残るため加害者と心の繋がりを持つ

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ストックホルム症候群は、精神疾患等の病気ではありません。犯罪などの非日常に置かれた時、その場を切り抜け生き残ろうとする、いわば生物の本能が働いた結果なのです。

ただ、その後はPTSD、心的外傷後ストレス障害として治療を受ける場合も見られます。

ストックホルム症候群が認知されるきっかけとなった事件

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世にストックホルム症候群が知れ渡ることになったきっかけは、ある事件でした。1970年代に男性2人が起こしたその事件では、本来なら恐怖で動けないはずの被害者達が奇妙な言動を取り始めます。

ストックホルムで起きたノルマルム広場強盗事件

1973年、その事件はストックホルムの銀行で発生。ヤン・エリック・オルソンという男が銀行に侵入し、機関銃を乱射したのです。

銀行があった広場の名前を取り、ノルマルム広場強盗事件と言われています。オルソンは、そのまま行員9名と共に籠城し始めます。

人質4名は金庫室に監禁された

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すぐに5名が逃がされ、残りの4名、男性1名と女性3名がそこから5日間、オルソンと共に過ごすこととなりました。オルソンの要求は金銭と、獄中の仲間、クラーク・オロフソンの解放でした。

オロフソンはすぐに解放され、オルソンに合流。行員らは身体に爆薬を巻きつけられ、金庫室に閉じ込められました。

なぜか人質が強盗を庇い警察の動きを妨害

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しかし行員達はその後、なぜかオルソンらを庇い始めます。

4名全員で外のトイレに行くことを許可された際も、警察は彼らにそのまま逃げるよう指示しましたが、彼らは全員でオルソンらの元へ帰っているのです。

その上、警察がオルソン達を銃撃しようとした際に彼らを庇い、逆に銃を向けたという記録まで残っています。

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銀行内からスウェーデン首相にまで電話をかけた人質の女性は、以下のように話しています。

「クラーク(・オロフソン受刑者)ももう1人の男性もちっとも怖くない。怖いのは警察です。(犯人たちを)私は信頼しています。信じないかもしれませんが、ここでは大変うまくやっています」(引用:AFPBB News)

この模様はスウェーデン全域で生中継され、国民は衝撃に包まれました。

解放後も人質達は犯人を庇い続けた

事件発生から5日後、銀行内に催涙ガスを注入しオルソン、オロフソンが外に出たところを逮捕。行員達は救出された訳ですが、彼らはその際も抵抗していました。

そして解放後も、彼らはオルソンとオロフソンを擁護し続けたのです。中にはオルソンらの弁護士費用のため募金を始める者、真偽は確かではありませんが彼らのどちらかと婚約した者まで現れました。

犯人が釈放された後に自宅を訪ねた人質も

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オルソンは懲役10年の判決を受け、1980年に出所。その後タイに移住しますが、その頃、被害者のうち2名がオルソンの自宅を訪ねてきたというから驚きです。

彼らはオルソンの出所を知り、当時の思いを抱えたままわざわざタイまで会いに来たのです。このエピソードから、ストックホルム症候群が人を数十年に渡り縛り続けることもあると伺えます。

ストックホルム症候群になるとどんな行動をとる?

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ストックホルム症候群になってしまった時、人は一体どんな行動をとるのでしょうか?まずはその特徴を5点、ご紹介します。

加害者の考えや行動に同調する

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ストックホルム症候群になった人は、加害者の思想や行動にシンパシーを感じるようになります。

彼らの価値観や動機など、平常ではおよそ理解出来ない思想に寄り添い、世間が間違っていて彼らが正しいのだという気持ちに支配されてしまうのです。

加害者に好意的な感情を抱く

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ストックホルム症候群になると加害者に親密な感情、時には恋愛感情を抱く場合があります。同性同士の場合は尊敬や崇拝、異性同士の場合は憧れや恋愛感情、庇護欲を抱く場合が散見されます。

加害者を擁護する

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ストックホルム症候群になると、加害者を庇う発言、行動が見られるようになります。

自分を危険に晒している相手でありながら「この人は悪くない」と言い出したり、自分を助けようとする第三者に牙を向ける場合があるのです。

加害者の支配から脱出したがらない

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ストックホルム症候群になった人は、逃げ出すチャンスがあっても脱出したがらなくなります。

ノルマルムでは、チャンスがありながらも行員全員が逃げ出さないという奇妙な展開を見せました。必ず逃げ出せる状況でも、彼らはなぜかその場に留まろうとするのです。

自分(被害者)を救おうとする人を敵視する

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ストックホルム症候群になった人は、その場に安住するだけに留まらず、自分を助けようとする人を敵視します。

加害者から引き離されること、加害者への攻撃や非難、また自身への治療に対し拒否反応を示す例が散見されます。

ストックホルム症候群を引き起こす心理状態の変化

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ストックホルム症候群になってしまう時、その心理はどのように変化していくのでしょうか。実は、この時人の心理は3つの段階を経て完成していきます。その段階、心理状態の変化をご紹介します。

死の恐怖から逃れようとする生存本能

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例えば銃を持った相手が目の前にいれば、大多数はまず「死」を意識し、日常にはない大きな死の恐怖に襲われます。

すると無意識に「この恐怖からどうすれば逃れられるのか」という本能が働き始めます。これが、ストックホルム症候群を引き起こす心理の第一段階です。

行動に許可を得ることで幼児化する

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犯罪に巻き込まれた側は、必然的に行動を制限せざるを得ません。喋る、移動、排せつ、飲食、睡眠まで、加害者の許可なしには出来なくなる場合が多いでしょう。

庇護者がいなければ意思を表せない、動けない、排せつや飲食の処理が出来ない…これはまるで赤ん坊のようだと感じませんか?

実は、成人でも恐怖で行動を制限されることにより退行現象が起こり、心理的に認知能力が幼児化するのです。

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そしてその歪んだ認識の中で加害者が何かを許可をすると、まるで母親と共にいる子供のような心理に陥るのです。

それはまるで幼い頃、母親に「そのお菓子は食べていいよ」等と許可され、安心して生きていた時のような心理です。これがストックホルム症候群の第二段階です。

行動に許可が出ることで愛情を受けていると感じる

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行動を制限された上で改めて許可を得ることで、大人でも精神的に幼児化してしまいます。そしてその上で厄介なのは、許可を得ると同時に愛情までもらえていると錯覚してしまうこと。

命の危険に晒され大きく混乱している時に、飲食や排せつ、移動などを許可されると、まるで特別な愛情を受けているかのような心理になってしまうのです。

元々の状況が異常なのですが、それを一旦忘れ、相手に好意を感じるという現象が起こります。こうして、ストックホルム症候群は完成していきます。

ストックホルム症候群の3つの要素

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この用語を作ったのは、アメリカの精神科医、フランク・オッシュバーグ氏です。彼によると、ストックホルム症候群は以下の3つの要素で構成されていると説明されています。

  • 第1に、被害者が、加害者に愛着、愛情を感じる
  • 第2に、被害者からの好意を受け、加害者側が被害者に愛着、愛情を感じる
  • 第3に、両者の間に、それ以外の「外界」に対する攻撃的、軽蔑的意識が芽生える

非常に偏った心理に見えますが、極限状態では、人の防衛本能としてこの経過を辿ることがあります。人は、無意識に愛情や庇護を欲しています。生命レベルでそれが現れるのが、ストックホルム症候群なのです。

ストックホルム症候群になる環境

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3つの段階を経て完成するストックホルム症候群。では、ストックホルム症候群に陥る環境、条件はどういったものなのでしょうか。

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