ミュンヒハウゼン症候群とは
みなさんのまわりに身体が弱い、病気だと過剰にアピールをしてくる人はいませんか。もしかすると、病気であると嘘を吐き人々の関心を得ようとする、ミュンヒハウゼン症候群という心の病に侵されているのかもしれません。承認欲求を満たすため、殺人まで?芸能人にも?詳しく見ていきましょう!
ミュンヒハウゼン症候群は病気であることを装う精神疾患
子どもの頃、病気になっていろんな人が優しくしてくれた経験はありませんか?病気というのは、できればなりたくないものです。しかしミュンヒハウゼン症候群の疾患があると、自分からすすんで病気になろうとします。
あたかも病気であるかのように見せるために、手段は問いません。尿や血液の検査での捏造などをしても、悪いことをしているとは思わないのです。
そのようなことを繰り返すのは、周囲から心配されたり頑張って闘病していると思われたいからです。日本の病院にいる約1%の患者がミュンヒハウゼン症候群である可能性があるとも言われています。
ミュンヒハウゼン症候群の患者の症状とは
患者は、あの手この手で病気であると訴えます。症状をオーバーに話したり、異常がないにもかかわらず不必要に入退院を繰り返したり、自分を痛めつけて既成事実を作り上げてしまうというとんでもない事例もあります。
症状①病気の症状をおおげさに話す
病気にかかったかどうかに関係なく、捏造したエピソードを話すこともあります。ミュンヒハウゼン症候群は様々な病歴を披露することで関心を集めたがりますが、話す相手によって内容を変えるため曖昧です。
症状②異常はないのに入退院や手術を繰り返す
重症(傷)なのだと誇張して、やたらと通院や入退院を繰り返します。健康であると診断されても、新たな箇所を治療したいと主張する事例もあり、退院を引きのばそうとします。
思うような結果がでない場合は、病院を何度も変えることもあります。そして異常なしとされるのを免れるために、自傷行為や偽装を行います。
症状③数々の自傷行為を行う
同じ場所に何度も自傷行為を行うことで傷が残っています。手術を繰り返したことが原因で手術痕がある場合もあります。想像するとぞっとしますが、リスクを顧みないのです。
敗血症を引き起こすためにわざと傷口に糞尿を入れ感染させる事例もあります。塩酸を皮膚に注射したり自分の痰に、あらかじめ培養していた結核菌を混入するといった驚きの例もあります。
ミュンヒハウゼン症候群になる原因とは
原因は様々あるようですが、身体の不調ではなく、ミュンヒハウゼン症候群は精神疾患であり、幼少期の体験や自己肯定感の低さが関係しています。なぜ自分を傷つけてまで病気でありたいと思ってしまうのでしょうか?
ミュンヒハウゼン症候群の原因①幼少期の入院経験
子どものころに看病してもらった体験や、身近に病気の人が治療をして、かまってもらえなかった経験など、病気=みんなが優しくしてくれると刷り込みから発症しやすくなります。
幼少期に過保護に育てられると、それが当たり前と思ってしまうこともあります。成長するにつれて、周囲が自分以外に関心を持つことが気にくわず、わざと病気のふりをしてしまうのです。
ミュンヒハウゼン症候群の原因②幼少期の家庭環境や虐待
幼少期に身体的な虐待を受けたり、情緒的な関わりが与えられないネグレクトを受けたことが原因で、大人になっても愛情を求めて発症することがあります。幼少期の体験というものは、根強く残るものなのです。
ミュンヒハウゼン症候群の原因③自己肯定感が低い
自己肯定感や自尊心が低いことが原因で、発症する事例もあります。人間関係や仕事がうまくいかないことを病気のせいにし、医師と関わり病気に詳しい自分は、特別な人間であると見せ、自己肯定感を高めようとします。
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ミュンヒハウゼン症候群はネット上でなりやすい
顔や素性が明かされないネット上の方が受け入れてもらえるので、症状が悪化することがあります。難病と闘う健気なネット住民を偽るのです。そこには現代社会が生み出した闇がありました。
ネットでは病気の知識を取得しやすい
病気の情報を簡単に調べることができるので、専門書がなくてもいいのです。闘病ブログなども参考にすれば、よりリアルな様子を演じることができるでしょう。ミュンヒハウゼン症候群が広がる原因のひとつです。
身体的リスクを負わなくても病気を装える
現実では病院に通ったり不必要な手術を受けたりと手間がかります。しかしネットの世界では顔を合わせることがないので、簡単に病気を演じられます。
ミュンヒハウゼン症候群の患者には、チャットルームで重病人であることを演じ、受け入れてもらおうとする人もいます。さまざまな人格に成りすますことができるのです。
ネット上のコミュニティでは病気が受け入れられやすい
病気のディスカッショングループなど偽りの患者が潜んでいることもあります。多くを質問されることなく心配してもらえる上に、関心を持ってもらえるからです。
辻褄が合わなくなればすぐに消えることもできる手軽さも、ミュンヒハウゼン症候群が横行する原因になっています。一方で騙された人が集まるサイトも登場していて、ニュースなどでもしばしば取り上げられています。
代理ミュンヒハウゼン症候群も存在する
我が子や近親者を、病気に仕立てる代理ミュンヒハウゼン症候群という事例もあります。自分を頼る弱者を利用して健気な保護者を演じる病です。芸能人かのごとく脚光を浴びたいがあまり、時に悲劇を生んでしまいます。
代理ミュンヒハウゼン症候群は近親者の病気を装う行為
代理ミュンヒハウゼン症候群は、病気になった家族を懸命に育てる姿を見せ、精神的に満足したいという精神疾患です。同情を集めたい心理が働いています。行為は無論虐待で、亡くなる事例もあります。
病院にいると、他の患者さんが医師や看護師からお世話をされている姿を目の当たりにします。そういった姿が羨ましいと感じて、我が子に役目を託し、自分の精神面を満たそうとする事例もあります。
代理ミュンヒハウゼン症候群の事例をご紹介
世界各地で代理ミュンヒハウゼン症候群が原因の事件が発生しています。子どもを犠牲にし、難病の子どもを育てるすばらしい母であると周りに認識させていました。いくつかの事例から悪魔の顔を隠し持った親たちをご紹介します。
クローディーヌ・ディーディー・ブランチャード殺人事件
代理ミュンヒハウゼン症候群の事例でも有名な、実の娘を難病であると欺き続けた母親が、娘の交際相手に刺殺された事件です。2015年アメリカで起きました。
ブランチャードは代理ミュンヒハウゼン症候群・詐病を患い、芸能人のように世間の注目と多額の募金を集めようとしていました。足に問題のない娘に車いす生活を強要していたのです。
他に白血病、筋ジストロフィー、ぜんそく、脳障害で7歳で知能が止まっていると偽りました。より病気らしく見せるため、ジプシーは髪を刈られていました。食事も固形物は与えず、チューブから摂取させるという徹底ぶりです。
しかし大人になったジプシーは自分が置かれていた状況を理解し、インターネットで知り合ったゴドジョンに殺害を依頼。その刺し傷は17箇所に及びました。自由を手にするため母を殺めることを選択したのです。
娘が母親に毒を飲まされた久留米市の事件
1998年、1歳半の女の子が中毒症状を起こした事例がありました。はじめは下痢や痙攣を起こして1週間ほど入院したのち、また1ヶ月後には救急車で運び込まれました。
母親の申し出により、娘に抗てんかん剤を投与。娘は中毒症状を起こしました。そこで娘は今までも母親が処方されていた抗てんかん剤を、大量に飲まされていたことが判明したのです。
我が子を大切に思う心配性なお母さんのようだったそうですが、他に母親は女の子に低ナトリウム血症を発症させ、病気になるよう仕向けていました。なんと1日2リットルもの水を飲ませていたのです。
母親が子供の点滴に汚水を混入して死なせた事件
2008年、当時1歳の女児が検査を受けたところ、通常検出されない4種類の細菌が血液から、有機化合物が尿から検出されました。不審に思った病院側が病室を録画しました。
怪しげな動きをする母親の様子が映っていたことにより逮捕となりました。亡くなった原因は、五女の点滴に腐敗した飲み物を混入していたからでした。
その後、次女、三女四女にも同じことをして四女を死亡させていたことが判明。懲役10年の判決が下りました。
1歳の娘にインスリンを投与した事件
当時1歳の娘にインスリンを投与し低血糖状態にした母親が、傷害容疑で逮捕された事件もありました。一夜にして2度も投与した疑いもあったのです。
この母親は事件直後にブログを立ち上げ、娘への愛情を書き綴っていました。その中には、ミュンヒハウゼン症候群についても触れられていました。しかし、母親以外が投与することは不可能として、捜査されていました。