バーバリライオンは生きていた!
最大で4mもの大きさを誇っていたバーバリライオン。一度は人間の手によって絶滅したと考えられていましたが、なんと生存していたことが確認されました。現在では積極的な繁殖活動が各国で行われ、再び数を増やしています。奇跡の復活を遂げたバーバリライオンの、数奇な運命をご覧下さい。
復活した最強のライオン!バーバリーライオンの生態や特徴
身勝手な人間の犠牲となり、バーバリライオンは絶滅したと諦められていました。その復活劇の歴史を紐解く前に、バーバリライオンの生態や、勇ましい雄ライオンの特徴をご紹介します。
最大4mにもなる巨体
バーバリライオンはライオンの亜種の中でも最も大きく、最大で4メートルもあったと言われます。一般的なマンションの一室(床から地面まで)が約3mですから、バーバリライオンがいかに大きな個体であるかを想像していただけるでしょう。
たくましい胸板
たくましく厚みのある胸板を持つバーバリライオン。黒みを帯びた黄褐色の体は、他のネコ科のトラやヒョウに比べると、胴が大きくずっしりと筋肉質です。バーバリライオンのオスが優雅に歩く様は、まさに威厳のある「百獣の王」の風格です。
胴まで達するたてがみ
凛々しいオスの象徴であるたてがみ。胴まで達するほど長い、黒々としたたてがみがバーバリライオンの特徴です。他の動物との戦いの際に喉を噛まれないようにするためや、威嚇するときに体を大きく見せるためにあると言われています。
また、たてがみの色が濃いほど男性ホルモン「テストステロン」の濃度が高く魅力的であるため、メスライオンを惹き付けることができます。
森林に生息
基本情報
バーバリライオンは、エジプトからモロッコ周辺に生息していた肉食目ネコ科に属するライオンの一亜種です。背中まで覆うほどの長いたてがみが特徴で、体長は3~4m、体重200kgと、現存する7種の亜種の中では最大級です。現在は世界各国にある動物園での飼育環境のもと、活発な繁殖活動が行われています。
ギリシャの神の名を持つバーバリライオン
バーバリーライオンは「アトラスライオン」とも呼ばれています。アトラスとは、ギリシャ神話に登場する巨人神です。大きくたくましいアトラスライオンの姿は、まさに神級。バーバリライオンの魅力を引き立てるアトラスについてもご説明します。
アトラスの名が由来
ゼウスたち神々との戦いに敗れた巨神アトラスは、世界の西の果てで両腕と頭を使い、天空を支える罰を与えられました。バーバリライオンが生息していたアトラス山脈は、アトラスのの変わり果てた姿といわれています。
天空を支えるのですから、アトラスはかなりの大きさです。「アトラス」と名のつくものは他にもロケットやトラックなどがあり、耳にしたことがある方もいるかもしれません。アトラスは大きさとたくましさの象徴として用いられています。
その雄姿は圧巻!
頭胴長3.25m、尻尾75cmのを持ち合わせた個体が存在したという記録が残されています。
アトラスライオンは、ディズニー映画「ライオンキング」の悪役スカーのモデルともなっています。その迫力は同じライオンですら圧倒する勢いなのです。
バーバリライオンの悲しき歴史
神の名を持ち、他を圧倒する存在感で王者の風格を放つバーバリライオンですが、人間に翻弄され続けた悲しい歴史がありました。なぜ、絶滅したとされてしまったのでしょうか?その歴史は、ローマ時代まで遡ります。
ローマ帝国時代の戦利品
ローマ帝国が栄えていた時代、北アフリカを征服すべく進出してきたローマ軍によって、大量のバーバリライオンが捕獲されました。珍しさもあり、戦利品として皇帝たちにとても気に入られたようです。かの有名なカエサルは400頭、ポンペイウスは600頭を持ち帰ったとされています。
コロッセオでの剣闘士とのデスマッチの役者でもあった
バーバリライオンはコロッセオで剣闘士と戦うこともありました。他にも相手は奴隷や罪人、戦争捕虜の場合もあり、餓えたライオンと人間がデスマッチを繰り広げていたといいます。他にも、当時弾圧されていたキリスト教徒の処刑にバーバリライオンが使われていました。
フランスの画家ジャン=レオン・ジェローム作「キリスト殉教者の最後の祈り」という絵画には、コロッセオの中でもキリスト殉教者をじっと見据えるバーバリライオンが描かれ、残酷な歴史を物語っています。
娯楽としてハンティングの標的になった
ローマ帝国が滅亡したあとも、バーバリライオンが安心して過ごすことのできる時代は訪れませんでした。 最後の砦として逃げ込んだアトラス山脈でさえも、欧州が進出、銃が普及し始めたことで、バーバリライオンは次々と乱獲されてしまいます。
人の身勝手により綴られたバーバリーライオンの絶滅
アフリカの森林地帯に生息していた野生のバーバリライオンは、アトラス山脈に逃げ込んだものの、そこでも住みかを奪われ狩猟により数を減らしていきました。いよいよ、絶滅の危機を迎えることになります。
原因は続くハンティング行為
文明が発展し銃を手にした人間は、趣味として野性動物たちをハンティングし、殺していきました。バーバリライオンも例外ではなく、容赦のない狩猟が続きました。生きた個体も、動物園での観賞用に捕獲していたといいます。
姿を消したバーバリーライオン
1981年、アルジェリア、チュニジアに生息していたバーバリライオンたちは姿を消しました。その後ついに、フランス人によって射殺された個体を最後に、バーバリライオンは滅びてしまったと言われています。1992年のことでした。
地球上には、残念ながら絶滅してしまった動物たちがたくさんいます。詳しくはこちらをご覧下さい。
奇跡の再発見!バーバリライオンはモロッコで生きていた!
ついに絶滅してしまったとされていたバーバリライオンですが、なんと2012年にモロッコにて純血種が発見されたのです。奇跡の再発見と、その後の各国での繁殖の様子ををご紹介します。
純血種の生存が確認された!
それまでわずかに生存していたとされたバーバリライオンは、混血種や、純血種か定かでない個体ばかりでした。しかし2012年、なんとモロッコのムハンマド5世が所有していた私設動物園で、純血種のバーバリライオンが生存していることが判明したのです。
今なお続く絶滅への危惧
モロッコ内の部族はバーバリライオンを献上してムハンマド5世に忠誠心を示していたといいます。その生き残りを、私設動物園で飼育していたのです。奇跡的にその種を残していたバーバリライオン。しかしまだまだ絶滅への危惧は続いています。
繁殖の試みも
見つかった純血種のバーバリライオンたちは、その後モロッコの首都ラバトにあるラバト動物園に移り、繁殖活動が行われています。またフランスの動物園では50頭ほどの混血種も飼育されています。貴重なバーバリライオンを少しでも多く増やしていくことが、今の人間ができる罪滅ぼしなのかもしれません。
モロッコの誇り「アトラスライオン」の今
巨大な神アトラスのように、大きく立派な風貌のバーバリライオン。モロッコで発見されてから現在に至るまで、その種を絶やすまいと大切に飼育されています。気高きアトラスライオンは、モロッコ国民の誇りでもあります。
飼育繁殖が行われる「ラバト動物園」
ラバト動物園では開園直後に3頭のアトラスライオンが誕生し、関係者らは大変喜んだ。「この3頭は王の動物園にいたライオンたちの直系の子孫。まったく純血統だ」とサルヒさんは胸を張る。(引用:「アトラスライオンを絶滅から救え、ラバト動物園の挑戦」)
開園してまもなくアトラスライオンが誕生したことは、モロッコ国民にとっても大変喜ばしい出来事でした。このラバト動物園では、世界の動物園の半分にあたる32頭のアトラスライオンが飼育されています。
アトラスライオンは「モロッコの誇り、大切な存在」
今年、開園したラバト動物園では、アトラスライオンの血統を絶やさないようにと繁殖が試みられている。「国の独立(1956年)以来、この動物園のアトラスライオンはモロッコの誇りを象徴するものとなった」と飼育を担当するアブデルラヒム・サヒルさんは言う。(引用:「アトラスライオンを絶滅から救え、ラバト動物園の挑戦」)
王政国家のモロッコは、国章にも2頭のアトラスライオンが王冠を守るようにして描かれています。国民的スポーツのサッカーやラグビーでも、「アトラスライオンズ」というチームが活躍しています。絶滅の歴史を覆したアトラスライオンは、モロッコを強さを象徴するシンボルでもあるのです。
アトラスライオンの今
幸いなことに、アトラスライオンは、現在でも順調に飼育が続いています。2017年にはドイツ西部の動物園で、雄のシュレーダーと雌のザルの間に、5頭の赤ちゃんライオンが誕生しました。人間の手によって一時は絶滅まで追い込まれたアトラスライオンですが、今では人間と共存しながら新たな命を育んでいます。
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