テナガエビの基礎知識
釣りを挑むにはまず相手をよく知る事が重要です。見た目に特徴のあるテナガエビとは一体どんな生き物なのか?詳しくその生態をみてみましょう!
テナガエビとは
- テナガエビ科テナガエビ属
- 夜行性
熱帯から温帯に生息している大型のエビで種類によって大きさは異なりますが3cm~20cmほどの大きさになります。非常に鋏脚が発達している事が特徴的であり、特にオスは体長よりも長くなる種類があります。
成体は緑褐色または灰褐色の体をしていますが、まだ若い個体では半透明で黒い縞模様があるためスジエビとよく似ています。テナガエビには頭胸甲上に肝上棘(かんじょうきょく)という棘があるので区別することができます。
また模様にも違いがあり、テナガエビは側面から見ると「m」のように曲線の黒い模様があり、スジエビは「逆さまのハ」によく似たまっすぐの縞模様でも判断することができます。主に夜行性ですが、太陽の無い曇天や雨の日には日中にも活動しています。
テナガエビの生息地と分布
- 北海道沖縄以外の全土に分布
- 淡水や汽水域に生息
- 低地の河川や湖・沼地
流れの穏やかな砂泥底の河川などに生息し、テトラポッドなどの物陰や水草の茂みの中などに潜んでいます。幼生は海や汽水域まで降河し、プランクトンなどを食べて成長します。稚エビになると川底を歩いて戻っていき、河川で過ごす事になります。一方で、海とは繋がっていない湖や沼などで生息しているテナガエビは陸封型と呼ばれています。
テナガエビの種類
日本では九州より北では主に3種のテナガエビが生息しています。南西諸島などより熱帯に近くなると種類が増え現在では15種確認されています。
テナガエビ
本州から九州に広く生息し、九州以外では最もよく見かけるテナガエビで、陸封された湖や沼から河川などの汽水域まで広く分布しています。体長は約10cm程で、鋏脚は体長の2倍にもなります。メスの体長はオスの半分程で、鋏脚もあまり長くなりません。場所によって、一生を淡水域で過ごす陸封型となり、湖や沼などで繁殖します。
ミナミテナガエビ
関東近郊より南から沖縄まで分布しており、九州より南方ではテナガエビといえばミナミテナガエビを指す事が多くあります。
体長も10cm程度で一見テナガエビと似ていますが、鋏脚を比較すると太く短い傾向があります。他にも脚の爪部分(指節)がテナガエビと比較すると細く短いという特徴や側面の「m」に似た縞模様がはっきりしているなどの違いがあります。流れの穏やかなところでよく見かける事ができます。
ヒラテテナガエビ
別名ヤマトテナガエビとも呼ばれています。テナガエビやミナミテナガエビは流れの穏やかなところを好みますが、ヒラテナガエビは強い流れの中でも川を遡る力を持ち、上流部でも見かけることができます。和名のとおり平らでテナガエビ・ミナミテナガエビの中で最も太い鋏脚を持っています。本州から琉球列島まで広く分布しています。
ショキタテナガエビ
日本国内では唯一、完全河川残留型の一生を川で過ごすという特徴を持つ沖縄県西表島固有のテナガエビです。準絶滅危惧種として環境省のレッドデータや沖縄県レッドデータブックに指定されています。
コンジンテナガエビ
鋏脚を含めると30cmを優に超える事がある日本で最大のテナガエビです。日本では主に琉球列島など南方に分布しています。沖縄ではこのコンジンテナガエビとミナミテナガエビがよく見られます。
ザラテテナガエビ
成体のオスは左右で鋏脚の大きさが異なるという特徴を持ち、長い鋏脚の先端部分に密生した棘が生えているためにザラザラとしています。日本では琉球列島近郊に生息しています。
ツブテテナガエビ
琉球列島に生息しており、緑や赤の色鮮やかで美しい体をしている事が特徴的です。準絶滅危惧種として環境省のレッドデータや沖縄県レッドデータブックに指定されています。
オニテナガエビ
成体では30cmにのぼる大型のテナガエビで、青みがかった体が特徴的です。食用として養殖されているところもあり、日本では青森県広前市相馬の特産品として有名になり、非常に美味しいです。
テナガエビの生態
特徴的なフォルムを持ち、日本の各地で見る事の出来るテナガエビはどのような生き物なのでしょうか?生態を理解する事で、狙う釣り場ポイントなどが良く分かります!
テナガエビの生息環境
淡水や汽水域まで様々な所で生息する事が可能でヒラテテナガエビ以外は流れが穏やかなところを好みます。初夏から秋口になると繁殖期に入り、岸沿いなど浅瀬に集まってきます。
テナガエビの習性
日中は身を隠すことができる障害物の影に潜み夜間に活発に活動をする夜行性です。直射日光を嫌うので、釣りなどで日中に狙いたい場合では日陰になっているところ・曇りや小雨の日を選ぶと日中でも活動しており狙いやすくなります。
テナガエビの食性
テナガエビは肉食性で、魚の死骸や水辺の生物、イトミミズなどを食べます。飼育環境下では餌が足りない場合に共食いすることもしばしばあるので、複数飼育する場合には餌やりは十分に注意する必要があります。
テナガエビの特徴
釣りや観賞用としても人気の高いテナガエビですが、とても特徴的な身体をしています。テナガエビの特徴をよく知り、飼育や釣りのコツを押さえましょう!
体より大きくなるハサミの秘密
テナガエビの大きな特徴は長いハサミを持っている事ですが、この長い腕を持つのは成体のオス個体のみです。メスは長いハサミを持っておらず、産卵期にこのメスを守るためにオスのハサミが大きくなったと言われています。
同じようなハサミを持つエビにザリガニがいますが、テナガエビとザリガニの決定的な違いはザリガニのハサミは第一胸脚が大きくなったものに対し、テナガエビのハサミは第二胸脚が大きくなっている点です。このハサミはたとえ欠損したとしても、脱皮することにより再生します。
縄張り意識が強い
テナガエビは非常に強い縄張り意識を持つことが知られており、自分の縄張り内で別のテナガエビと遭遇した場合はハサミを使った戦闘になります。なので、テナガエビを飼育する場合はオス同士を同じ水槽に入れない事が望ましいです。
淡水・海水を行き来する両側回遊型とは
テナガエビは5~9月ごろに繁殖期に入り、メスは一度に1000~2000個産卵します。孵化した幼生はゾエアと言いますが、テナガエビのゾエアは海まで流れに乗って下ります。そこでプランクトンなどを食べ稚エビへと成長するとまた川へと戻ります。子の習性を両側回遊型といいますが、反対に海へ繋がっていない湖などで生息するものは陸封型と呼ばれます。
テナガエビは冬眠する?
テナガエビは寒い冬場になると姿がぱったりと見えなくなりますが、寒い冬の時期はどうしているのでしょうか?ザリガニは冬眠して冬を越しますが、テナガエビはどうなのでしょうか。
冬場はじっと耐えている
冬になるとテナガエビは比較的水温が高い深場の物陰に入り、じっとしている事が多くなります。しかし、積極的に捕食のために動かないだけであり冬眠しているわけではありません。手近なコケなどをほんの少し食べながら、寒い冬が終わるのをじっと待っています。
テナガエビを釣ってみよう
エビなんて釣って楽しいのかな?と思われるかもしれませんが、意外にもテナガエビは小さい身体から想像できない引きの強さが心地よくコアなファンもいる程に人気のある釣りです!
初心者でも楽しめるのがテナガエビ釣り
短い時間でサクッと楽しく釣れてしまうというのがテナガエビ釣りの醍醐味で、ターゲットのエビを目視で確認する事も出来るため、餌に釣られて巣穴からノコノコと這い出して来く様子を見たり、餌に食いつく瞬間をドキドキしながら見る事ができる面白さが魅力です!比較的に近い川などにもテナガエビが生息していたりとファミリーや釣り初心者でも釣りを楽しむ事ができます!
テナガエビが釣れる時期や時間
- 初夏~秋ごろまで
- ハイシーズンは梅雨
- 夜行性
- 朝夕マヅメ
5月の連休明け頃になると、テナガエビの釣り果報告が良く上がってくるようになり、梅雨時にトップシーズンを迎え夏の終わりごろまで楽しむ事ができます。
夜行性であるために夕方~朝にかけて活動しますが、テナガエビが最も活性が高く、釣り果が上がりやすいのがマズメ時と言われる時間帯で、朝マヅメとは夜明け~日の出の前後1時間頃を指し、夕マヅメは日没前後の1時間です。
おススメの釣りファッションもこちらで紹介しています。こちらを参考にお出かけして見て下さい!
どこで釣れる?ポイントを紹介
- テトラポッドなど消波ブロック
- 石積みの隙間
- 水中にある杭や流木など障害物
- 水草の多いところ
- 日陰になっているところ
- 流れが穏やか
隙間や障害物の影などに潜んでいるので、その近辺を丁寧に探っていきます。初心者でも簡単に狙いやすいおすすめポイントは消波ブロックの穴に仕掛けを落としていく穴釣りです。
その他にも海中のゴミの影に隠れていたりと、比較的狙うポイントが決めやすいのがテナガエビ釣りです。日中に行く場合は陽の当たらない、影になっているところを重点に探してみましょう。テナガエビは流れの強いところは苦手なので、流れの穏やかなポイントを狙いましょう。
テナガエビ釣りのタックル・仕掛けを紹介
テナガエビ釣りはシンプルな道具で釣ることができます!事前に準備などをする必要もなく、仕掛けもとても簡単です。お子さんなどと一緒に自作した仕掛けで釣る事ができますので、達成感も感じられとても楽しむ事ができます。
テナガエビ釣りのタックル
- 延べ竿 1.5m~2m
- 道糸 ナイロン 0.8~1号
- ウキ 玉ウキ 3~4号
- オモリ ガン玉
- ハリス 0.3~0.4号
- ハリ エビバリ 2~3号
一般的にはリールなどがついていない延べ竿と呼ばれる竿を使います。お子さんや初心者の方は1.5mから2m程度の短めのものが扱いやすいです。道糸は細すぎると切れてしまう事が多いので、0.8号くらいが使いやすく安価なナイロンで大丈夫です。