魚に痛覚はあるのか!?研究・議論され続ける謎に迫る!日本での魚の扱いも変わるかも?

日本特有の魚の食し方の一つといえば「踊り食い」が思いつくのではないでしょうか。当然のことながら、食する魚の生きの良さを実感できることを最大の魅力としているこうした食し方においては、魚の福祉というものは度外視されています。

魚を適正に〆ることはおろか、そのまま胃の中に滑り込ませるわけですので、調理される場合よりもむしろ苦痛を伴いうる食し方ともいえるでしょう。この食し方については以前から「残酷だ」という意見が数多く寄せられていますが、事実、日本人から見てもそのような感想を抱く人も多いはずですよね。

一方で、日本の文化として根付いているものを安易に否定されることについて快く思っていない人も多いでしょうから、こちらもまた解決に導くのは時間がかかりそうな問題ですね。

エビやタコなど甲殻類や軟体動物にも痛覚があるのか?

いかがでしたでしょうか。これまで魚の痛覚の有無、それによりもたらされる「痛み」の性質についてと、この問題がはらんでいる文化的問題の側面について触れてきました。ここまで読むと、「甲殻類や軟体動物についても同様のことが言えるのではないか?」と考える方も多いのではないでしょうか。この章ではそうした甲殻類・軟体動物についての現段階での見解について述べていきます。

甲殻類・軟体動物の痛覚についても議論されていた!

甲殻類や軟体動物も魚と同様に表情のない生き物ですので、痛みを感じているのかということに関しては普通の人間の認知の範疇にはありません。また、こうした生き物の中には、外的危険要素の存在に際して、自分の体の一部を切断することによって注意をそらそうとする「自切」と呼ばれる行動をとる場合があることからも、「痛覚」という感覚について非常に無頓着なのではないかと思われがちです。

しかし、甲殻類・軟体動物の痛覚の有無についてもすでに研究がなされており、以下のように有意な結果が報告されているものもあります。

甲殻類はヤドカリを使った実験で痛覚が判明した!?

クイーンズ大学ベルファストにおいて実験対象とされたのはヤドカリです。この研究チームは、殻を持っているヤドカリに対してごく微弱な電気ショックを与えるという実験を行いました。少量の電気ショックではヤドカリの反応も小さかったのですが、電気ショックを強くすると、自分の殻を捨ててまでにげていったという結果が報告されています。

軟体動物については今でも不明

イカやタコのような軟体動物については現在でも有意な研究結果は報告されていないようです。ただし、これらは外的脅威に対して「墨を吐く」などの防衛反応を持っていますし、体色を変化させることによってコミュニケーションや意思表示を行っているとされているため、今後の研究によって、痛覚の有無が発見される日も近いかもしれません。

世界各国での魚愛護の動向

最後に、国際的な魚愛護の動向をサラッとご紹介します。日本ではまだまだ主流にはなっていない魚愛護の考え方ですが、諸外国ではすでにその考え方を取り入れているところもあるようです。

OIE

日本も加盟している動物衛生・福祉の向上を目的として設立された国際機関です。アニマルウェルフェアという考え方は哺乳類などの動物にのみ適用されているものと思われがちですが、OIEでは魚の福祉基準の作成を開始しているとされており、哺乳類だけではなく魚もまた福祉・権利が配慮されるべきであるという考えが生まれつつあるようです。

オーストラリア

2017年にロブスターを生きたまま切断して処理していた会社が、「ニューサウスウェールズ州動物虐待防止法」に違反していたとして有罪判決を受けているオーストラリア。実は、食用の動物を苦しませずに殺すことが法律で定められているというのです。ロブスターには痛覚があるという報告をした研究結果に基づいてロブスターの〆め方について法律が制定されたということは世界的に話題となりました。

スイス

2018年1月に、オーストラリアと同様にロブスターを熱湯に投入するというこれまでの調理方法を禁じることが義務付けられました。また、法律において動物を正当な理由なしに傷つけることを禁じているため、スポーツフィッシングのように魚などをキャッチ&リリースするということは禁止されています。

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今はまだ考え方次第!魚の痛覚を考えた対応も大切

現段階では魚をはじめ、甲殻類や軟体動物を含んだ海産物の「痛み」を人間の認知できる形で定義するというのはまだ難しいようです。しかしながら、「痛点」の有無については、魚だけではなく様々な動物についてその存在を肯定する意見が主流となってきています。

これらの問題から派生するであろう倫理的な諸問題に関する講義はこれからもますます増えていくことになりそうです。しかしながら、日本人がこれまでの魚への接し方を考えなければならない日が来るのもそう遠くないかもしれませんね。

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