魚に痛覚はあるのか!?研究・議論され続ける謎に迫る!日本での魚の扱いも変わるかも?

魚の痛覚についてって、意外とシビアな問題なんです。例えばエビやシラウオなど、生きたまま食べたりしますよね?あれって実は海外では考えられない日本の常識だったりします。だって、もしも魚に痛覚があるなら残酷な話ですよね。今回はそんな魚の痛覚に纏わるお話をしていきます。

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旅行が好きなアウトドアライターです! アウトドア記事を書いているとキャンプがしたくなってきますね。 大学休学中にスペインを一か月かけて歩いて横断したのが忘れられない思い出です。 好きな料理は牛肉の赤ワイン煮込み。作るのも食べるのも
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現在でも議論が絶えない魚の痛覚について

10年ほど前に話題になった魚の福祉について考えさせられる、「呼叫魚」という題名の動画の存在をご存知でしょうか。2009年11月11日にアップロードされたこの動画は、投稿からわずか10日間の間に100万回以上再生されており、「野蛮だ」「残酷だ」という批判的なコメントと共に物議をかもしました。

この動画以外にも、「魚に痛覚があるのか」というテーマについては皆さんもたびたび目にすることと思います。また、それに関する研究も今でもなお盛んにおこなわれています。

魚の痛覚の有無は今でも研究され続けている

2000年に入るよりも前から、魚が痛みを感じているのかということに関し手様々な意見があがっています。。2018年5月に行われたヨーロッパ市民を対象として行われた、魚の痛みについてどう考えているかというアンケートで得られた結果によると、73%の人が「魚が痛みを感じる」と回答しています。

また、最近の研究では、どうやら魚には人間などの陸生哺乳類と同等に発達している痛覚があるらしいという意見が濃厚となっているため、ますます魚愛護などに関する議論が活発になっています。

魚が痛みを感じないといわれていた理由

ついここ最近までは、日本に限らず様々な国で「魚には痛覚が存在しない」とする意見がどちらかというと主流でした。というのも、魚には表情筋がないため、仮に痛みを感じていたとしてもその様子を認識できないというのが一つの理由として挙げられるでしょう。

また、生きた状態での致死的な刺激に対しても、失神などせずに動いていること、釣り上げると傷口が開くことも構わず逃げ出そうとするなど、痛覚を持っているならばできないような行動をとることもあります。

これに加えて、魚は大脳皮質がほかの高等生物とは違い痛みに鈍感であるというような、生物学的分析に基づく説もあります。このような背景もあり、魚は人間と比べて下等であるという意識が少なからずあるということも、魚に痛覚がないという世論が生まれた理由なのでしょう。

魚の「痛覚」と「痛み」について

ここ最近にわかに「魚には痛覚がある」という世論が高まってきているようです。そうした人たちの言い分は、「魚が人と同じ痛みを感じているならそうした苦痛を与えるべきではない」ということだと思われます。しかし、魚と人間が感じている痛みが果たして同質のものなのかということについては、よく考える必要があるでしょう。

痛覚の仕組みについておさらい

中学校の生物の授業では、人をはじめとした動物の中枢神経や痛みの伝達について学びますよね。ただ、一度学んだことはあってもなかなか詳しいところは覚えていないという方も多いのではないでしょうか。そんな方のために、人が痛みを感じるまでの流れを順を追って説明していきます。

例として、ハンマーでテントのペグを打っている際に誤って自分の指をたたいてしまったときを考えてみましょう。「注意はしてたけどやってしまった!痛い、、、」と指を引っ込めて、指の状態を確認します。ここまでの間にどのような流れがあったのでしょうか。

1指をハンマーでたたいてしまい、細胞が傷つけられる

2アセチルコリン、セロトニンなどの発痛物質が生成される

3痛覚の神経がこの物質を受け取る

4電気信号に変換された「痛み」についての情報が脳に伝達される

5大脳皮質において電気信号を解析し、痛みの情報を得ることで痛みを認識する

6手を引くなどの行動をとる

これが、痛みを感じる一連の流れになります。

「痛覚」による刺激の知覚と「痛み」は違う

結論から言うと、「痛覚」によって刺激を知覚することと「痛み」を感じることは性質として異なるものです。痛覚により得られる感覚が生理的な反応とされる一方で、痛みとは精神・感情的変化をも内包するものといえます。この章では「痛覚」と「痛み」についてそれぞれ検討していきます。

「痛覚」とは?

痛みとはそもそもどんな性質を持つものか。痛覚は、生物の防衛機能としての性質を持っています。生命を脅かすような外的刺激に対していち早く気づき、それに対処するために備わっている生存のための感覚です。

感覚器官としての痛覚がなければ、痛みを感じることはありませんが、小さな細胞の損傷が次第に大きくなって、生命活動に関わるような事態になってすら気づかないということもあり得ます。痛覚とは生命維持のために必要な感覚なのです。

「痛み」とは?

「痛み」という言葉は、決して物理的な刺激に対する反応にのみ使われる言葉ではありません。人間は感情をよりどころとする「精神的なストレス」をも「痛み」と表現します。つまりはどういうことでしょうか。これは、痛みというものが、細胞の欠損などの物理的刺激によって痛覚から伝わるもの以外にも適用されることを意味します。

たとえば、「傷口を見たら痛みが増した」という場合。人間の心理的変化によってもたらされた、二次的な反応とみることができます。実際に、被験者にやけどをしたと誤った認識をさせることによって、実際にやけどと同様の症状が皮膚に表れたという実験結果もあるほどです。

また反対に、「注射されているのを見なければ痛みを感じない」というのもよく聞く話ですよね。これなどは、視覚によって物理的痛みが助長されているということのわかりやすい例だと思います。

人間の「痛み」と魚の「痛み」は同質なのか?

このように、「痛み」というものは一筋縄で説明のつくものではありません。上記のプロセスから見られるように、最終的には痛みは脳が作り出しているため、感情や精神といった分野にまで踏み込まなければ解明することはできないでしょう。

そのため、人間が感じる「痛み=物理的刺激に対する反応および精神・感情的変化」が魚にも同様に適応されうるものであるかというのはいまだ解明されていません。もしも魚が感じている「痛み」が単純な「外部からもたらされた物理的刺激に対する防衛反応からもたらされるもの」であるとするなら、その痛みは人間が感じるそれとは大きく性質の異なるものだといえます。

ここからの文章は、それらの「痛み」というものについてのバックグラウンドを理解したうえでお読みください。

魚の痛覚の有無を報告する研究の成果

これまでも魚の痛覚の有無に関する研究は数多くなされていますが、2003年にBBCNEWSで発表されたエディンバラ大学のそれは、魚の痛覚の存在を肯定する結果として有名なものです。

魚の痛覚の存在を裏付ける研究の成果

エディンバラ大学でのニジマスを被検体として行われた研究の結果は、そうした研究の中でも特に有名です。。研究の方法としては、脳からの電気信号を受け取るマーカーを装着したニジマスに、外部から刺激を与えてニジマスの反応を観察するというものです。

2003年4月30日に発表されたBBC NEWSには以下のような内容が掲載されています。

”~say the `profound behavioural and physiological changes` shown by the trout after exposure to noxious substances are comparable to those seen in higher mammals.”

引用:BBC NEWS

「~有害な物質にさらされた後のニジマスに見られた”行動学的・生理学的に重大な(有意な)変化”は高等哺乳類にみられるそれと同等のものであった」という意味です。この結果が示唆している通り、魚が持つ「痛覚」は、私たち人間がもっているものと遜色ないものであるというのが今日では主流のようです。

実は魚も哺乳類と同じ痛覚がある?

BBCNEWSで発表されたニジマスの研究結果は、魚が人間とおなじように痛覚刺激を受けているという説を裏付けるものとして有名です。では、人間と同様に痛みを感じているという結論に至った理由についても解説していきましょう。

侵害受容器の存在が証明された

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