現存するデスマスクと誰も知らないデスマスクにまつわる謎めく逸話

古代エジプト時代から作られてきたデスマスクには数々の逸話があります。デスマスクを残した世界各国の著名人と日本人のデスマスクを紹介しながらデスマスクにまつわる面白いトリビアや謎の深い逸話に迫り今まで知らなかったデスマスクの世界を解説します。

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辛口の赤ワインが好物。アウトドアが好きな北に住むピアノ弾きです。
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デスマスクはなぜ作られたのか?

死者を偲ぶために石膏やワックスを使って死者の顔を型取って作られたものです。告別式に飾ったり、肖像画を描くための資料として使われたりしました。歴史上偉人である人物の顔を永遠に残すことができることから製作されたといわれています。

デスマスクは死人の顔をかたどったもの

写真がまだなかった時代は、亡き人の姿を残すために肖像画が描かれたり彫刻が用いられていました。しかし、製作するには時間がかかるので、死後間もない亡き人の顔を石膏やワックスなどでかたどったデスマスクが西洋で作られるようになりました。

告別式に飾られるデスマスク

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写真がまだない17世紀ごろの時代には告別式の時にデスマスクが飾られました。デスマスクは生前に作ることができないので、死後間もない遺体から製作されました。死者を偲ぶために保存されました。現代では「ライフマスク」を製作できるまで進化しています。

肖像作成のためのデスマスク

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息をひきとると、多くは主治医が石膏で亡き人の顔をかたどりデスマスクの製作にあたりました。写真がまだない17世紀ごろの時代では、デスマスクを肖像画を描くための資料として用いられたのです。

デスマスクを残した最古の人物

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紀元前1324年頃に死亡した古代エジプトのファラオ(王)であるツタンカーメンの有名な黄金マスク。このデスマスクが最古のものであるといわれています。フランスのパリにあるルーブル美術館の正面に黄金のマスクが展示されています。

ツタンカーメン

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古代エジプトの幼いファラオ(王)。ツタンカーメンは9歳でエジプトの新王国に即位しました。そして、18歳という若さで亡くなっています。紀元前1300年頃のことです。体調不良の大腿骨の骨折とマラリアの合併症が死因という病死が有力ですが、他殺説もあります。

古代エジプトでは魂が宿ると信じられていた

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古代エジプトでは、亡くなった人の彫刻には魂が宿る場所となっていました。ミイラの頭の部分には命が宿ると考えられ、できるだけ本人とそっくりな彫刻に作られたといわれています。ツタンカーメン以外の彫刻も驚く程そっくりな姿をしています。

ツタンカーメンのデスマスクに起こった悲劇

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青い顎鬚が特徴のツタンカーメンの黄金のデスマスクですが、博物館を定期的にクリーニングしている業者が、うっかりこの顎鬚を折ってしまうというアクシデントがありました。1941年まではデスマスクと顎鬚は別々に展示されていましたが、その後は接着されて展示されるようになったといいます。

 

デスマスクが残っている著名人5選!

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歴史上の人物ともなれば、やはり永遠にその姿を残すためにデスマスクが作られました。死の直後に作られた表情なので生々しい雰囲気がありますが、現在では貴重な資料となって各地の博物館などで展示されています。

ナポレオン・ボナパルト

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ナポレオン(1769年~1821年)はコルシカ島生まれ。フランス革命期の軍人、政治家。国民から熱烈な支持を受け、ナポレオン1世にとして皇帝の座に即位した。世界的な著名人として人気があり、コニャックの等級の名前にも用いられました。ちなみに「ナポレオン」はV.S.O.P.よりも高級な等級になります。

ナポレオンのデスマスクは亡くなった2日後に取られ、1833年にオリジナルから複製で作られ現在はルーブル美術館に展示されています。肖像画やコニャックのボトルにも描かれていますが、ナポレオンの手がいつも服の中にあったのは胃が悪かったためということです。

ナポレオンに期待したベートーヴェン

当時、ナポレオンに共感した34歳のベートーヴェンが作曲した交響曲第3番の「英雄」というタイトルはナポレオンのことです。しかし、完成後に皇帝の座に就いたことを知り、怒りのあまり楽譜を床に叩きつけたというエピソードはあまりにも有名です。

ルーブル博物館

所在地:99 rue de Rivoli 75001 Paris / Tel:+33(0)1-4020-5050 / Fax:+33(0)1-4020-5705 / URL:http://www.louvre.fr/jp(日本語)

トルストイ

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ロシア文学を代表する文豪トルストイ(1828年~1910年)はヤースナヤ・ポリャーナに生まれました。代表作に「戦争と平和」、「アンナ・カレーニナ」などがあり暴力を否定し、平和を願った作家、思想家です。

クロイツェル・ソナタ

1889年に出版された『クロイツェル・ソナタ』は、トルストイの短編小説です。1803年に作曲されたベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第9番がもとになっています。1987年に映画化され、妻が弾くピアノで主人公がヴァイオリンを奏でます。曲目はベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」。映像の中でこの音楽効果は素晴らしい!

ベートーヴェン

「楽聖」といわれたドイツの作曲家ベートーヴェン(1770年~1827年)。ライフマスクは、1811年41歳の時に作られています。フランツ・クラインによるラフマスクの複製品はインターネットでも購入できるようです。

デスマスクはベートーヴェンの死後12時間後にヨーゼフ・ダンハウザーによって型取られました。耳が聴こえないという音楽家にとって絶望的な苦難を乗り越えて、数々の名曲を書いた強い精神の持ち主として、現在でも子供から大人まで人気がある著名人です。

ベートーヴェンハウス博物館

ドイツの町ボンにベートーヴェンの生家があり、1888年ボンの有志たちによって修復されベートーヴェンハウス博物館が設立されました。館内にはベートーヴェンの生涯や作品など150点以上展示されています。

●所在地:Bonngasse 20 · D-53111 Bonn ●電話:Tel +49 (0)228/9817525 · Fax +49(0)228/9817526museum@beethoven-haus-bonn.de www.beethoven-haus-bonn.d

フランツ・リスト

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ハンガリー出身で19世紀にショパンと共にパリ社交界で活躍した「ピアノの魔術師」といわれたフランツ・リスト。ショパンより1歳年下ですが、当時の音楽家としては74歳まで生きましたので長寿でした。

ベートーヴェンのデスマスクはリストが所有していた!

ベートーヴェンのデスマスクはツェルニーの弟子だったリストが所有していました。ツェルニーはベートーヴェンの弟子でリストが11歳の頃に晩年のベートーヴェンに会わせて、賞賛されたといいます。

リスト自身が超人的なテクニックを持っていたので、現代でも演奏するのが困難な作品が多いです。リストのコンサート会場では、リストの演奏とその容姿に気絶するご婦人も多かったようです。リストは当時のスーパーアイドル的な存在でした。

フランツ・リスト記念博物館

住所:Wahnfriedstrasse 9, 95444, Bayreuth  アクセス:ハンガリーのバイロイト市、アクセス:鉄道バイロイト中央駅から1km。TEL / FAX:(0921)5166488 / (0921)7572822

エイブラハム・リンカーン

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リンカーン(1809年~1865年)はアメリカ合衆国ケンタッキー州生まれ。1861年に第16代アメリカ合衆国大統領に就きました。「人民の、人民による、人民のための政治」という有名な演説からの一節。1776年7月4日はアメリカ合衆国独立記念日となりました。

歴代最高の大統領にしてヒーロー。リンカーンのライフマスクは1860年に作られていました。1865年に暗殺されたリンカーンのデスマスクはライフマスクから複製したものといわれています。

フォード劇場

リンカーンが暗殺された劇場が現在は博物館として公開されています。この劇場で観戦中に暗殺されたといわれています。大統領の命を奪った拳銃や、血痕の付いた枕など生々しい展示物と一緒にデスマスクも展示されています。

住所:511 10th St. NW, Washington, DC 20004  Tel :(202)3474833  アクセス地下鉄(ブルー/オレンジ/レッド/シルバーライン)メトロ センター(Metro Center)駅から徒歩4分。公式サイト:https://www.fords.org/

デスマスクにまつわるトリビア

生前に顔の型をとるライフマスクを残している著名人にナポレオン、ゲーテ、リンカーン、ベートーヴェン、リストなどが残っていますが、石膏が固まるの待つので呼吸困難となり、デスマスクを作るより大変だったといいます。

ナポレオンのデスマスクは人気のお土産だった!?

ナポレオンは孤島セントヘレナに追放され、1821年にここで病死しました。死後2日後に主治医のイタリア人の医師がナポレオンのデスマスクを作って持ち去ったといわれています。そして、レプリカを多数作り売ったところ、フランス国王ルイ18世が30個も購入して、贈り物として利用したといいます。

複数存在したナポレオンのデスマスク。ロンドンの競売で約17万ポンド、日本円にして2,500万円の値がついたそうです。ナポレオンの丹精な顔立ちが分かる貴重なデスマスクですが、お金を儲けるためにたくさんレプリカが作られたとは、何だか複雑な気持ちになります。

ショパンのデスマスクは苦痛に歪んでいる

ピアノの詩人といわれたショパン(1810年~1849年)。クレサンジュはショパンが亡くなって左手や顔の型をとりました。死の直前は呼吸困難で苦痛でもがき苦しんだそうです。数点作られたデスマスクには断末魔の苦しみの表情もあったそうですが、表情が和らいだものが現在展示されています。

クレザンジュはショパンの恋人ジョルジュ・サンドの娘ソランジュの夫で彫刻家でした。現在はワルシャワのショパン記念館に保管されています。デスバンドの複製品はポーランドのお土産として人気があるようです。

ショパン記念博物館

住所:10kolnik Street,00-368 Warsaw  / 公式HP:https://chopin.museum/en /休館日:月曜日/ポーランド語名称:Muzeum Chopina(ムゼウム ショピナ)

ゲーテはいくつもデスマスク(ライフマスク)を残している!

ゲーテ(1749年~1832年)はドイツを代表する詩人、文豪。代表作に「若きウェルテルの悩み」、詩劇「ファウスト」など広い分野で貴重な作品を残しました。ゲーテは、生存中に何度もライフマスクを作成したといわれています。

ゲーテに影響を受けた音楽家は多数。歌曲王といわれたシューベルトは「魔王」「野ばら」など非常に多くのゲーテの作品を歌曲にしました。ディズニーの「ファンタジア」で人気のデュカス「魔法使いの弟子」もゲーテのバラードから着想を得たといわれています。

ゲーテ国立博物館

住所:Schloss Jaegerhof, Jacobistrasse 2, 40211 Duesseldorf / TEL:(0211)8996262 / アクセス:トラム イエーガーホーフ城(SCHLOSS JAEGERHOF)停留所下車 / 営業時間:11~17時(土曜は13時~)/ 定休日:月曜

音楽室にある作曲家たちの顔

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