タマカイの身は熱で締まることなくフワッとしているので、鍋物でも美味しく頂けます。皮もゼラチン質で、食感も楽しめます。タマカイは身からはもちろん骨からも美味しい出汁がとれるので、雑炊にしても最後の最後まで楽しめます。鍋も、味噌仕立ての鍋、トマト鍋など、どのような楽しみ方もできます。ちなみに先述の、高知で水揚げされた208キロのタマカイは、鍋にすると600人前になるそうです。
◆塩焼き
シンプルに塩で焼く塩焼きにしてもタマカイは美味しいです。ただ、塩が浸透しにくいので、塩をふって半日ほど置くと塩が馴染んでより美味しく頂けます。調理法がシンプルな分、身のおいしさが際立ちます。
◆沖縄風マース煮(塩煮)
沖縄では、泡盛と塩で炊いたマース煮という伝統料理もあります。用意するものは泡盛と塩、島豆腐、そしてタマカイです。お好みでシークヮーサーやショウガなども使用します。沖縄の方言で塩のことをマースと言います。身はふっくらとして、プルプルの皮の食感も楽しめる逸品となります。
◆唐揚げ
熱を通しても身が固くならないので、唐揚げにも向いています。皮に甘みがあるので、香ばしく揚がった皮と、フワフワの身との相性も抜群です。
タマカイは絶滅危惧種!
この希少なタマカイ、実は環境省レッドリストでは絶滅危惧IA類(CR)に指定されています。そもそも珍しい魚ではありますが、幼魚は観賞用に利用されるほか、食用や展示目的での乱獲が進んだためでもあります。オーストラリアのいくつかの州では釣り規制対象魚となっています。
これが赤ちゃん?タマカイの幼魚
タマカイは、幼魚と成魚で見た目が大きく異なる魚としても有名です。こちらがタマカイの幼魚です。
幼魚は黄色と黒の縞・斑点模様が特徴で、観賞用としても人気の種です。タマカイは1歳で約1キロ、2歳で約2キロ、3歳で約7キロになるそうです。体長70~80cm、8~10キロでもまだ幼魚というレベルだというから驚きです。タマカイは肉食なので餌代もそこそこかかります。個人で飼育しようと思うと相当充実した設備が必要となりますね。
タマカイは養殖されている!?
養殖のタマカイについて
幻のタマカイ、実は台湾などで養殖されています。養殖タマカイは市場に出されたり輸出が行われています。日本にも輸出がなされており、稀に築地に台湾から輸入されたタマカイが出回ります。養殖されているのは海外か、と残念に思う必要はありません。沖縄でも養殖されています。『近大マグロ』という、クロマグロの完全養殖に成功したことで有名な近畿大学水産研究所も、完全養殖技術確立に向けて本格的な親魚養成試験を開始しています。
クエタマってなに?
タマカイは雌性先熟魚といって、最初はメスとして成長していき、ある程度になったらオスとなって生殖活動を行います。タマカイの養殖としてはこれまで、精子を持つオスの成熟魚の生育は成功するものの、メスの成熟魚は台湾の一部の養殖所を除いては成功例がありませんでした。そこで近畿大学水産研究所は、成長は遅いけれどもメスの成熟魚が用意できるクエと、成長の早いタマカイのオスを交配し、『クエタマ』という新種を開発しました。既に銀座や大阪・梅田の近大が運営する養殖魚専門料理店『近畿大学水産研究所』で試食を行っており、味は好評を得ているようです。遺伝子組み換えとは違い交雑による新種なので、安心して口にすることができますね。私たちの食卓にのぼる日も近いかもしれません。
タマカイの値段は?
さて、幻だの貴重だのと述べてきましたが、相場はおいくら位なのでしょうか。水揚げ量が少なく希少なので、高値で取引されています。幼魚で1尾5,000円~10,000円程です。親魚となると台湾産で1キロ2,000円前後、国内産で1キロ4,000円前後が相場です。やはり高級魚ですね。運よく出会えたら、ぜひ食べてみたいものです。
最後に
タマカイについてまとめてみました。アングラーの心をつかむ魅力満載の巨大魚・タマカイ。漢字で書くと『魂交』―魂が交わる、という意味だそうです。由来は、その風貌からと言われています。沖縄以南、南シナ海あたりがポイントで、旬としては春~夏です。アングラーの皆さん、ぜひチャレンジしてみて下さい。