ミオスタチンって何?
ミオスタチンを知っていますか?これは筋肉から作り出されるたんぱく質の一種で、現在ダイエットや筋肉トレーニングに興味がある人、体作りに励んでいる人にはぜひ知っておいてもらいたい物質のひとつです。
ミオスタチンとは
これはマイオスタチンともいい、筋肉で作られるたんぱく質で、骨格筋細胞の増殖をコントロールし、発達・成長しすぎるのを防ぐ働きがあります。1997年にアメリカにあるジョンズホプキンス大学のセイジン・リー博士がマウスの研究から発見しました。
ミオスタチンはなぜ分泌されるのか?
ミオスタチンは筋肉が増えすぎないようにする事で、体内で必要なカロリーを抑え、エネルギーを浪費するのを防いでいます。これは人類の長い歴史の中で食料が十分にない時代が大半であったため、必要なエネルギーを減らす生きる知恵だったのです。また、細胞の増殖の活性化をコントロールし、がん細胞などの増殖も抑える役割も果たしています。
ミオスタチンって調整できる?
現在のところ薬などは開発されていないため、調整を確実に行う事はできません。基本的に生成量は遺伝的に決まっていると言われており、筋肉のつきやすい人とつきにくい人がいるのはそれも要因のひとつとみられます。しかし、研究によってある程度効果のある方法がいくつか発見されています。
ミオスタチンを調整できれば病気も治癒できる?
まだ研究段階ではありますが、筋ジストロフィーやALS(筋萎縮性側索硬化症)、骨粗しょう症などのような体の組織が減少してしまう病気の治癒や防止に効果的だといわれています。また、がんやエイズなどの細胞の異常によって引き起こされる病気の治療にも役立つとも考えられています。
ミオスタチン関連筋肉肥大とは?
世の中には、遺伝子などの変異によって幼いころから筋肉がとても発達し、異常なほどのムキムキボディになってしまう人がいます。このような変異を「ミオスタチン関連筋肉肥大」といい、ヒト以外でも犬や牛、マウスにもこの変異を持つ個体がいます。
ミオスタチン関連筋肉肥大について
ムキムキの体になるなんてうらやましいと思うかもしれませんが、これは病気の一種です。筋肉は消費カロリーが非常に多く、さらに脂肪が極端につきにくいため、尋常でない量の食べ物を必要とします。肥満の原因として悪者扱いされがちな脂肪ですが、なさ過ぎても問題が起こるのです。
ミオスタチンを抑制するには?
現在ダイエットやトレーニングに励み、引き締まった体を目指す人にとって、ミオスタチンは筋肉の発達を抑える忌まわしい物質に感じると思います。確かに、手っ取り早く筋肉を鍛えるにはコントロールが重要になります。
ミオスタチンを減らす方法は?
では、普通の人も生成を抑えて効率よくムキムキの体を目指す事はできるのでしょうか。じつは最近の研究によって、食事と運動の仕方によってミオスタチンがコントロールできる事がわかってきています。
ミオスタチン異常の人は筋肉ムキムキ?
ミオスタチンの生成や需要に異常がある場合、筋肉がとても発達します。筋肉はエネルギーを多く必要とするためたくさんのカロリー摂取が必要になります。これはまずマウスや犬、牛などで発見され、その変異がある人もいる事がわかったのは2000年と比較的最近です。
ミオスタチン異常の人
現在世界に100人ほどいることがわかっています。しかし程度によっては「栄養失調」「大食い」「ガタイがいい」などとされ気づいていない・診断が出ていない人もいるとみられます。そのほとんどが生成されたミオスタチンが受容できないタイプで、1例だけですがミオスタチン自体が生成できない人もいます。
10年ほど前に有名になったアメリカ人のリアム・フックストラ君はミオスタチン異常で生まれました。生後2日で支えられて立つ事ができ、1歳7か月で逆さに吊られた状態で腹筋ができたそうです。また噂レベルではありますが、ハンマー投げの室伏広治さんも生後7か月で懸垂をしたという逸話があり、ミオスタチン異常だという噂があります。
ミオスタチン異常の犬
カナダのビクトリアという都市のウェンディという犬が有名です。ウェンディはウィペットという犬種で、元々比較的筋肉質の犬ですが、平均体重10kg程度のところウェンディは27kgもあったそうです。
ミオスタチン異常の牛
ベルギーではベルジャンブルーと呼ばれる品種の肉牛がいます。これは突然変異で生まれたミオスタチン異常の牛を数十年かけて交配して誕生した品種で、非常に発達した筋肉を持ち、普通の牛より大きいので肉が多くとれ、脂肪分が少ないのに柔らかい肉質が特徴です。筋肉が発達しすぎて普通分娩では出産できず、帝王切開しなければなりません。
ミオスタチン異常の人は生まれながらの超人?
ミオスタチン異常の人はその発達した筋肉により赤ちゃんの頃から並外れた運動能力を持っているため、超人として見られる事が多くあります。しかし重症度が高いと問題もあります。筋肉が多くのエネルギーを消費してしまうため脂肪がほとんどつかず、たくさんの食事をとる事が必要になります。
特に乳幼児期には体脂肪が体の成長や神経の発達に重要であるため、体が大きくならないなどの問題が起こる可能性があります。実際ミオスタチン異常のリアム君も1日6回山盛りの食事をとっていたそうです。経済的・医療的な条件が揃わない場合、栄養失調や餓死などの可能性もあるのです。
ミオスタチン抑制の具体的な方法!「食事編」
引き締まった理想的な体を手に入れるためにはミオスタチンとうまく付き合いつつ合理的に体を鍛えたいところです。そんな人に、食事を見直す事でミオスタチンがコントロールできるという研究結果が出てきています。
ミオスタチンを抑制する食品は?
ミオスタチンは動物実験により体が酸性になると作用が強くなることがわかっていて、そのため人間もアルカリ性の食べ物をとる事で働きをコントロールできるという説があります。確かに、体を動かして疲労すると乳酸という物質がたまり、やや体内が酸性に傾きます。その際に酸性の食べ物をやや控えると疲労が抜けやすいという事はあるようです。
酸性の食べ物で代表的なのは白砂糖、肉、魚、コーヒー、ココア、お茶、ワインなどで、アルカリ性ではレタスやほうれん草、メロン、すいか、トマトなどの野菜、ナッツ類などがあげられます。ただし食べ物によって筋肉のpH値は変わらないという説もあるので注意が必要です。
卵の種類を選んでミオスタチンを抑制!
鶏卵は非常に身近な食べ物で、毎日食べているという人も多いと思います。2006年に発表された研究で、鶏卵の中でも有精卵にミオスタチンの働きを阻害する物質が多く含まれる事がわかっています。
有精卵とは文字通り精子の入った卵で、有精卵にのみできる胚盤という部位に阻害物質が多く含まれています。普段スーパーなどで手に入る鶏卵は無精卵ですが、直売所などでは有精卵を販売している場合があり、近くにない場合はインターネットでも購入できます。
ダークチョコレートでミオスタチンが減少する?
2014年の研究で、ダークチョコレートやリンゴ・ブドウの皮、緑茶、ワインなどに含まれるエピカテキンという成分にミオスタチンの生成をコントロールする効果がある事がわかりました。ダークチョコレートとはカカオが85%以上含まれているチョコレートの事です。
エピカテキンには他にも抗酸化作用、動脈硬化・高血圧・認知症の予防などの健康に良い作用もあるため、トレーニング中でもおやつを食べたいときはダークチョコレートを選ぶようにしましょう。ミルクチョコレートなどはカカオが少ないため含有量が少なく、カロリーも高いので注意してください。
ミオスタチン抑制食品は何を含んでいるのか?
有精卵に含まれる物質はフォリスタチンといいます。これはミオスタチンなどを不活性化するタンパク質で、人間の体内でも生成されていて体内をコントロールしています。ポリフェノールの一種であるエピカテキンはミオスタチンを阻害するだけでなくフォリスタチンを活性化する作用もあるといわれています。
食事はバランス良く取るのが大原則!
ただしミオスタチン阻害にこだわって食事が偏らないようにしましょう。肉や魚は筋肉を作るのに大切なたんぱく質を多く含みますし、野菜や果物のビタミンやミネラルは筋肉の質をよくします。炭水化物も体のエネルギー源として重要です。バランスの良い食事を心がけつつ、置き換えられるものをミオスタチン阻害食品にするとよいでしょう。