人間との混血種オリバー君とは?
オリバー君は、当時の飼い主であるマイケル・ミラーによって見いだされ、「未知の生物」「ヒューマンジー」としてアメリカで話題となりました。
当時推定16歳で来日時の身長140cm・体重56kg。外見的特徴や行動・生態などが、それまでのチンパンジーと異なる点から、当時としては大変センセーショナルな存在であったと言えます。
オリバー君コンゴで発見
アフリカ中央部のコンゴ地域は元々野生のチンパンジーの生息地であり、1960年にコンゴ湾上流で捕獲されたオリバー君は、故郷を遠く離れたアメリカのサーカス小屋でトレーナー夫婦に飼育されていました。
歴史的発見!オリバー君は「ヒューマンジー」
まず「ヒューマンジー」とは何なのか?について簡単に説明すると。「ヒューマンジー」とは、人間とチンパンジーの異種交配による混血、または進化の過程で生じた中間期の種ではないかと言われ、前者にしろ後者にしろ生物学・歴史的にとても興味深い存在です。
前者の「人間とチンパンジーの異種交配」については、野生のチンパンジーが生息する地域には人間の集落も点在しています。オリバー君が最初に発見されたコンゴ湾地域の集落は、チンパンジーと共生のような距離感で生活しており、自然な流れでの異種交配があったのでは、という説によるものです。
オリバー君はミッシングリンクなのか!?
ヒトでもなくチンパンジーでもないオリバー君。進化の過程で種が途絶え化石も残らず、その存在有無の証明が非常に困難とされる、ミッシングリンク”失われた環”。まさにオリバー君はミッシングリンクであり世紀の大発見なのではないかという説が浮上しました。
しかし、進化論の謎を解明する歴史的財産とされたオリバー君とは真反対に、進化の発展途上もしくは人類の進化から取り残された劣勢人種であるとして、進化論の上で全く違う扱いとなった人々もいました。こちらも記事もご覧ください。
人間と似ているオリバー君の特徴
これまでオリバー君は「ヒトとチンパンジーの中間・混血」と紹介してきました。では、実際にオリバー君が何故「ヒューマンジー」に違いない!と言われたのか、彼が見せた数々の”ヒト”と酷似した特徴について、解説していきたいと思います。
膝を曲げずに二足歩行
「芸達者なお猿さんだって二本足で立って歩けるじゃないか」と思われるでしょう。本来四足歩行の動物は膝と背中を曲げて立ち上がるのですが、オリバー君の歩く姿は背筋と膝が伸びており、より人間に近いと言えます。
猿よりも色白で薄い体毛
一般的なチンパンジーは黒色で濃い肌の色と、全身を覆う長めの体毛が特徴的です。一方オリバー君はというと、人間のような肌色に近い色白であり、その白い顔にはほとんど体毛が生えていなかったのです。
人間に似た味覚や嗜好
外見的だけでも十分に人間くさいオリバー君ですが、その味覚や嗜好も当時の人々を驚かせました。「風呂上がりの一杯」ではないですがビールやアルコールを嗜み、煙草も口に銜えるだけでなく、煙をふかし喫煙していたのです。
驚愕!47本の染色体をもつオリバー君
その姿の異様さから始まり、行動・嗜好においても、ただのチンパンジーとするには謎の多いオリバー君に、遂に科学的な調査が実施されます。染色体を解析する事で、彼がヒト・サル・はたまた中間種であるのか検証されることになったのです。
人間の染色体の数
染色体とは、大まかに常染色体と男女を決定するXとYの性染色体からなり、長いものから順に1番2番と名前が付けられています。通常人間の場合、この常染色体と性染色体が23組からなる計46本で構成されています。
チンパンジーの染色体の数
一方チンパンジーの染色体は、人間の2番染色体が12番と13番とに分断されており、常染色体23組と性染色体1組の計48本の染色体構造になっているのです。構成の違いからしても、人間とチンパンジーの染色体の数は異なるというわけです。
オリバー君の染色体の数
人間が23組の46本チンパンジーが24組の48本という、科学的に決定的な違いがある染色体の数。では彼の染色体の数はどうだったのか、なんと両者どちらでもない47本という検査結果が出たのです。人間とチンパンジー両方の外的特徴と、どちらでもない染色体構造をもつ彼はやはりヒューマンジーだったのです。
ヒューマンジーのオリバー君が一躍有名になった経緯
これまでに示した、オリバー君の有する様々な中間種・混血とされる特徴。ただの芸達者では済まされないオリバー君が、いかにして一躍時の人となったのか、その経緯について本項から順を追って解説していきます。
オリバー君コンゴからサーカスへ
コンゴ湾の上流地域され、アメリカへと連れて来られた彼は、ニュージャージー州のサーカスで、そこのトレーナー夫婦に飼われることになりました。そして、アフリカの森からアメリカのサーカスという全く違う環境で、オリバー君が普通とは違う様子を見せ始めることとなります。
チンパンジーにのけ者にされトレーナーに懐くオリバー君
サーカス内で暮らし始めたオリバー君でしたが、他のチンパンジーたちと生活の折り合いが悪く、のけ者にされるようになります。その反面トレーナーによく懐き、他の動物の餌やりを手伝うなど、人と共に生活する事を好む傾向にありました。
チンパンジーらしくない行動に脚光が集まる
この頃からサーカス内では、他のチンパンジーと異なる仕草や外見で注目されるようになります。そんな「変わったチンパンジー」のオリバー君に、興行的関心を示した弁護士のマイケル・ミラーが、8000ドル(現在の日本円で約88万円)で彼を購入します。
興行主がオリバー君を連れて各地で興行を行う
オリバー君の新たなる飼い主となったマイケル・ミラーは、彼を「未知の生物オリバー」と名売って合衆国各地を興行します。そんなオリバー君の名は日本のTV関係者にも知られ、アメリカから遥か遠くの日本で一躍ブームを巻き起こすことになりました。
ここから興行のメインが日本へと移るのですが、アメリカ本土ではまだ「珍しいチンパンジー」「人のようなチンパンジー」という、あくまで動物として興行されていました。日本のメディアが絡むことで、オリバー君の環境は急速に変化していきます。
日本テレビ「謎の怪奇人間オリバー!」
今から43年前の、1976年7月22日に放送されたこの番組で、オリバー君は日本でその名が知れ渡ることになる。「怪奇人間」と名打たれた事で、オリバー君は猿ではなく限りなく人間に近い何者かであると、当時の日本のお茶の間を騒がせることになりました。
この時期日本は空前のオカルトブームの真っただ中で、ネッシー・ビッグフット・ツチノコ等々。現在でも世界各地で目撃情報が寄せられており、オリバー君のような未知の類人猿も各国に存在しています。
テレビ出演でオリバー君一躍時の人に!
ヒトとチンパンジーの中間「ヒューマンジー」「人パンジー」という触れ込みで番組は放送され、当時の視聴率は24.1%を記録しました。突如として日本のお茶の間に現れた「ヒューマンジー」オリバー君、彼の注目度は相当なものだったと言えます。
宿泊はホテルのスイートルーム
誰しも一度は泊まってみたいと憧れる都内の高級ホテルですが、なんと「ヒューマンジー」として格別のVIP待遇で来日したオリバー君の宿泊先は、ダイヤモンドホテルのスイートルーム。初来日で高級スイートという、文字通りの「ヒューマンジー」人間としての扱いとなりました。
世話係はなんと「テリー伊藤」
スイートルームに宿泊したオリバー君の世話係に抜擢されたのが、当時まだ大学を卒業したばかりの駆け出しADだったテリー伊藤さんでした。現在は自身もタレントとして活躍し、数多くの人気番組を手掛けたことでも有名な方がオリバー君の世話係だったという、業界ならではの驚きの事実です。
日本テレビが仕掛ける前代未聞のオリバー君嫁取り企画
テレビ番組で取り上げられたオリバー君の変わった特徴で、特に注目を集めたのが「人間の女性に発情する」というものでした。そこから更に「人間の女性に発情するのなら、婚姻して性生活も可能なのでは?」と、立ち上がったのが”オリバー君のお見合い企画”でした。
オリバー君との交配で報奨金1000万円!
番組は高視聴率で盛り上がるオリバー君ブーム、お見合いに留まらず「ヒューマンジー」オリバー君との交配に成功すれば報奨金が出るという所にまで飛躍します。その報奨金の額はなんと1000万円、テレビの企画としては考えられない金額でした。
複数の女性がオリバー君とのお見合いに応募
オリバー君とのお見合い・交配企画には何十人もの女性が名乗りを上げました。バブル期のテレビ番組だから可能ともいえる高額の報奨金、応募してきた女性たちの中から一人の女性が選ばれることになりますが、その面談は番組の興行師・康芳夫さんご本人で行われました。