康芳夫さんとの面談で、当時19歳の無名女優が選ばれ記者会見まで開かれました。しかし、この前代未聞のTV企画に対し、各方面からの抗議は勿論、警察機関からも国家問題に発展する危険なものであると警告を受け、やむなく中止される運びとなります。
Contents
オリバー君の染色体「本当の数」
それまで「科学的に証明された」と揺るぎないものと思われたオリバー君の検査結果でしたが、実際はどうだったのでしょうか。その内幕と、染色体以外に実施された科学的な検査の結果についても解説していきます。
放射線医学総合研究所による染色体検査
TV番組が放映された翌23日、朝日新聞社から番組の内容を真っ向から否定する暴露記事が刊行されます。これによって、放映された検査結果が偽りであること。来日に際する盛大なもてなしも、テレビ局の過剰演出によるもので、実際は普通のチンパンジー程度の扱いであった事などが、世間に知れ渡ることになりました。
オリバー君の染色体はチンパンジーと同じ48本!
当時の朝日新聞によると、放射線医学総合研究所の細胞遺伝学の研究員が、オリバー君の細胞サンプルから白血球の培養検査を実施し、その染色体はチンパンジーと同じ48本だったという内容でした。
2つのサンプルでは染色体が47本!
検査に用いられた30サンプルの内、28サンプルは染色体が48本だったのに対して、2サンプルは47本という結果が出ています。これについては、実際に検査を行った研究員によると「おそらくサンプル作成の段階で一部が失われた手順ミスであり、染色体異常とは言えない」ということでした。
アメリカで実施された検査についても、「10番染色体が欠けていた」という情報を踏まえて「もし混血であるならば、12番・13番・14番の染色体のいずれか一つが欠ける可能性が高く、サンプル作成でミスがあったのでは」と指摘されています。
腰椎のレントゲン検査結果
76年7月19日の段階で(放映は22日)、検査結果が出ていたものの中に腰椎のレントゲン検査があり、そこでは人間は5本とされる腰椎の数が、オリバー君はチンパンジーと同じ4本という検査の結果でした。
人工的にヒューマンジーを作ろうと試みた実験があった
これまでオリバー君がミッシングリンクの中間種、もしくは人間とチンパンジーの混血である。混血の場合オリバー君が発見された地域の性質上、自然な流れで起こった異種交配の混血として紹介してきました。
ここではオリバー君の事例から少し視点を変えた、現代の「食糧事情」「種の存続」という、比較的ポジティブで建設的な理由で行われるハイブリッドとは違う、科学の暗い部分について紹介していきます。
ギャラップ博士の話
まさかの話の出所が、ミラーテストと呼ばれる自己認知能力の研究と実験、実証を行った事で有名な、ゴードン・G・ギャラップ博士でした。彼がかつて研究室の教授から聞いたという話は、以下のようなものでした。
1920年代、アメリカフロリダ州の霊長類研究センターで、「メスのチンパンジーを人間の男性の精子で妊娠・出産させた。しかし数日の内に実験に関わった研究者たちは、道徳や倫理といった良心の呵責に苛まれ、生まれたヒューマンジーの個体を安楽死させた」という、にわかには信じ難い内容です。
ロシアや中国で行われたハイブリッド実験
1920年代にはロシアで、1960年代には中国で同様のハイブリッド実験が実施されたのだそうです。ロシアの実験では、アメリカ同様の実験を行うも失敗し、後年にオランウータンの精子で人間の女性を妊娠させよう試みたものの、オランウータンが死亡し実験は中断。中国が行ったとされる実験も失敗に終わったと言われています。
こういった研究は、一部の噂話として各国でも行われいたともされています。あくまでも”そうらしい”というレベルに留まっているため、真偽のほどは未だもってわかりませんし、”なかった”という証明も困難なのです。
その後のオリバー君
日本で一大旋風を巻き起こしたオリバー君でしたが、流行りあれば廃れあり。朝日新聞によって番組の内容が偽りであり、オリバー君は”ただの”チンパンジーだったことが明るみになると、次第にその人気も衰えメディアからもその姿を消してしまいます。
米国でたらい回し
日本での興行が終わったオリバー君を待っていたのは、アメリカの地で次から次へと所有者による転売を重ね、見世物小屋をたらい回しになる日々でした。見世物小屋での観衆の興味も冷め、もうオリバー君の居場所はなくなっていたのです。
化粧品の動物実験を行う会社に売却
見世物小屋を転々とした1980年代後半、オリバー君は化粧品会社の実験動物として売却されてしまいます。実際の実験に使用されることはなかったようですが、7年間という長い間、立ち上がり手足を伸ばすことも叶わない、たった1.5メートル四方の狭い檻に閉じ込められ、心身共に衰弱しきって発狂寸前にまで追い詰められていたのです。
動物保護施設で晩年を過ごす
そして1996年、寄付金によって運営される非営利動物保護団体「プライマリリ・プライメイツ」によって保護されることになりました。テキサス州のサンアントニオ保護区で、オリバー君はやっと安住の地を得られたのです。そこでは他のチンパンジーとも打ち解け、レーズンというメスのチンパンジーのガールフレンドもできました。
2000年に放送された日本テレビの「あの人は今!?」という番組では、保護区で暮らすオリバー君が紹介されました。その姿は体毛も生え揃い、レーズンにチンパンジー特有の発声や求愛行動をとる、「チンパンジーのオリバー君」でした。「人間のように振る舞うこと」を強要され、作られたかつての姿はそこにはありません。
世界各国で発見された謎の生き物
日本で「ヒューマンジー」「謎の類人猿」と謳われた事で有名なオリバー君ですが、世界各地にも彼のような不思議な生き物や、それが原因で不幸な結末を迎えてしまった例などを紹介していきたいと思います。
悪臭と共に現れるスカンクエイプ
赤褐色の巨体は170cm~180cm、直立二足歩行が可能な類人猿と思われる生き物で、ビッグフットの一種とされています。主に目撃例はアメリカのフロリダ州に限定されており、その姿と共に吐き気を催す強烈な悪臭を放つのが特徴的。地元ではスワンプ・モンスター(沼地の怪物)と呼ばれています。
謎の生き物の咆哮?!
ハッシュタグにスカクエイプと付いたこの動画は、カナダのコロンビア州で撮影されたものです。その姿は記録されていないものの、雪深い林の向こうから轟く謎の咆哮が録音されています。地域固有種のヘラジカではないかと言われているようですが、詳細は不明です。
最新目撃情報2005年!サスカッチ
アメリカ・カナダ地域で目撃される種は総称してビッグフットと呼ばれますが、この時カナダのユーコン州で目撃された個体については、サスカッチだとされています。全身が毛に覆われた体長3mのサスカッチは、家屋内にいた9人に目撃されており、現場に残された巨大な足跡と体毛は、DNA鑑定のため専門機関に送られたとのこと。
中国の猿人マオゴン
1980年代、中国の新寧で発見された猿人類のマオゴン。科学者たちが議論を重ねた結果、マオゴンは人間には属さない猿の一種であると断定されました。しかし1987年11月、極度の神経衰弱状態に陥り、首を吊って死んでいるマオゴンが発見されました。当然学者たちは混乱します、人間以外で自ら命を絶つ動物などいるはずがない、と。
今も人々を魅了してやまない未知という存在
時代が進み科学と技術が進歩し、それまで不明とされてきたものの真偽に白黒が付くようになってきました。しかしそれでもまだ「絶対にない」と言い切れるものは極わずかで、自作自演発言により鎮火したものが、全く違う経路から発見報告が上がり再燃焼することも多々あります。
オリバー君の一件に関しても、「染色体の30サンプル中の2サンプルが47本だった」という結果そのものは事実であり、研究者が「あれはサンプル作成時のミスである」と見解を出しても、逆に「ミスではない」可能性の立証は不可能ともいえるのです。
文字通りの悪魔の証明
「ないことの証明」として使われることが多い表現ですが、まさにその悪魔も未知の存在です。存在の有無については未確認生物より以前から宗教規模での論争を巻き起こし、その存在を否定する一方で「悪魔憑きだ!」と暴力事件に発展するなど、騒動が後を絶ちません。
判らないからこそ浪漫である
1970年代から80年代初頭にかけて日本中がオカルトブームに湧いていました。ウソもホントもひっくるめて、その「謎」が人々を魅了したのです。いる”かも知れない”という好奇心に掻き立てられたUMAへの憧れ、オリバー君に対して人間が行った所業は許されるものではありませんが、未知への好奇心は失わずにいたいものです。
人間に翻弄されたオリバー君の運命
コンゴからアメリカへ連れて来られ、見世物小屋で同種の仲間と打ち解けることも出来ず、心を許した相手が「たまたま人間」で、懐いた相手の動きを真似て始めた行動だったのでしょう。その行動の奇妙さから、遂には遥か海の向こうの日本で「ヒューマンジー」と持てはやされ、人間が人間の為に面白可笑しく設えただけでした。
現在では道徳や倫理の問題上、見世物小屋は日本は勿論海外でも御法度とされています。面白ければそれでいい、そういった行き過ぎた興行で、二度と彼のような不幸な動物を生むことがない事を切に願うばかりです。
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