パンをふんだ娘とは?
ハンス・クリスチャン・アンデルセン作の童話は有名ですね。その一つ、「パンをふんだ娘」は美しくわがままで意地悪な娘インゲルが靴を汚したくないのでパンを踏み台にし、その罪で泥沼へしずみます。
NHK教育テレビの影絵劇
子供向けにNHK教育テレビの番組で「こどもにんぎょう劇場」の番組内で放送されました。人形劇の制作は全て劇団かかし座が担当し「影絵劇」と呼ばれます。「パンをふんだ娘」の初放送は・前編1975年11月12日・後編19日でした。他にも沢山の名作を作り放送しました。
恐怖をあおる演出が子供のトラウマに
パンをふんだままの主人公エンゲルが底なし沼に落ちてゆきます。単純なわかりやすい歌詞でループされおどろおどろしいです。この前編ラストテーマ曲の演出でトラウマになる子供が続出します。小学校で道徳の授業で見たという人もいます。
パンをふんだ娘の恐怖ポイント
インゲルの遊びがまるでサイコパスレベル、虫をいじめる描写は眉をしかめます。前編のインゲルは性格の悪さをこれでもかと強調していますが、自分勝手な行動の末あっという間に急展開し、救いのない沼の底へ落ちます。前編のインパクトが強すぎて後編の記憶がないという人もいます。
オープニングの歌
「パンをふんだ娘 パンをふんだ娘 パンをふんだ罪で 地獄に落ちる」「神様に背いたインゲル 神様に背いたインゲル どこまで落ちる」と繰り返すテーマ曲はオープニングと沼に落ちるシーンで効果的に流します。
雰囲気のある影絵
美しいインゲルの髪、睫毛、頰の丸みは可愛らしく、人物は黒一色で表現して裕福さと貧乏なつぎ当て服も表現されています。雪の積もる木の枝など背景は同色系でまとめて影絵を際立ています。精巧な映像が物語の価値を格上げします。
パンをふんだ娘のあらすじ【前編】
ヨーロッパの北の国の冬、寒さで動物達も生存が大変な時に一羽の鳥が他の鳥達に餌を与えていました。しかし自分は少ししか食べようとせずさえずる事もできない鳥を近所の人が見ています。それが主人公エンゲルです。鳥の姿から登場したエンゲルがなぜ鳥になったのか知りたくて視聴者の視線は画面に釘付けです。
貧しい家に生まれた美しい娘
インゲルの家はお父さんが早く亡くなり、お母さんが働いて生活を維持しています。お母さんの願いはインゲルが素直で良い子に育つことです。家で待つインゲルは手伝いなどせず、ハエの羽をむしったり、コガネムシの背中にピンを刺して喜ぶ、意地悪で我儘な性格でした。
お金持ちの家の養子になる
大きくなるごとにますます我儘で意地悪になりましたが顔や姿は美しく金色の髪は輝くほどでした。その頃街に子供のいないお金持ちの夫婦がいました。一目でインゲルを気に入り、養子に迎えたいとお母さんへ頼みますが断ります。我儘なインゲルは、貧乏な家よりお金持ちの家の方がずっといいと、自分から馬車に乗りインゲルは新しい家へ行きます。
傲慢な性格に
それからは毎日ドレスを新調し、靴をあつらえ、お化粧をしたり、新しいお父さんとお母さんはインゲルを可愛がり贅沢のさせ放題でした。インゲルは夢のように楽しい毎日を過ごして行きました。インゲルは自分のさらに美しくなった姿を見せびらかすためなら、行きたくもない村へ出かけるのも楽しいと思うような傲慢さまで身につけました。
パンをふんだ娘のあらすじ【後編】
お母さんへ会いに村へ行く途中、村の人が磨きのかかったインゲルを見て「おや!まぁ!へー!」とただ驚いています。インゲルは得意になりました。質素な村の生活から贅沢な街の生活への変化で他人を下に見ることまで覚えます。インゲルはどのような環境でもよくないことばかりが身についてゆきます。
里帰りを命じられる
ある日、お金持ちの夫婦がインゲルに村へ帰り、お母さんに美しい姿を見せに行くよう言いました。貧乏で粗末な食べ物でボロボロの服を着たお母さんには会いたくないと思いましたが、お母さんや村の人達に美しい自分を見せびらかすのは楽しいかもしれないと思い、お土産の白いパンを持ってインゲルは出かけました。
ぬかるみを渡るためにパンをふんだ
途中、道が泥水で溢れて靴を汚さずに注意して進むと、向こうからお母さんが薪を背負って歩いて来ます。「あんな見すぼらしいお母さんじゃ私の値打ちが下がっちゃう。帰ろっと」と引返します。お母さんはインゲルを呼びます。インゲルは泥水に片足を突っ込んでしまい、「そうだわ靴を汚さないようにこのパンを えい!」と泥水に投げ入れました。
ぬかるみに吸い込まれる
インゲルはパンの上を踏んで向こうへ渡ろうとしたのですが、片足でパンを踏みつけもう片方の足を上げたその途端「アッーー!キャーーー!」インゲルは泥沼の中へあっという間に見えなくなりました。目撃したお母さんは「ああ神様!なんて恐ろしいこと!インゲル!インゲル!」と膝をついて泣き崩れ、泥沼からブクブクと泡が見えるだけでした。
パンをふんだ娘のラスト【影絵版】
意地悪で我儘で傲慢な娘インゲルは泥沼へ沈んでどこまでもどこまでも沼の底のまた底の真っ暗な場所へと吸い込まれて行ったのです。沼女が朝から晩まで毒を煮ている場所に落ちてしまいます。そこでは蛇や蛙がまとわりつきますが、インゲルの足についたパンが取れず動けません。悪いことばかりしてきたインゲルに終わることのない罰が下ります。
地獄の魔女に売られる
「やってきたな、パンをふんだ罰当たりな娘」「汚らしいヒキガエルを退けて!このブヨブヨ蛇をとって!」インゲルは踏みつけたパンが足について身動きが取れず、蛇や蛙は首や髪にまでまとわりつき恐怖のあまり震えます。悪い魔法使いが来て「これは器量好しの娘がいるね、ついでに貰っていこうかしら。廊下におく飾りにもってこいだわ。」
石のように固まりコレクションに
インゲルは魔女に地獄へと通じる廊下に並ぶコレクションの1部にされてしまいます。「蜘蛛よ!この娘に糸を吐きかけろ!」蜘蛛の糸は四方八方からインゲルに絡みついて、ついには石のように固まり動けません。そして他の多くの罪人と一緒にコレクションにされてしまいます。
パンをふんだ娘のラスト【原作版】
原作と影絵劇では違う設定があり・お父さんは健在・傲慢な性格の矯正を兼ねて奉公に出流・沼に沈む姿を牛飼いが見て「慢心で沼に沈められた少女インゲル」が噂に、お父さんとお母さんの「あの子は慢心なのがいけなかった」と嘆いた声が長期間インゲルに届く・少女がインゲルの事を祈るのは老年になってから、インゲルの周りの環境が違いました。
少女の祈りで小鳥に変えられる
女の子が年をとりおばあさんとなって神様に召される時が来ました。人生を回想した中でインゲルを思い出して自分も高慢な時はなかったか振り返りました。神によって天国へ召される事を感謝しながら天へと昇る時に下へと沈んでいくインゲルが不憫で涙を流し祈りを捧げ清らかな愛を降り注ぎます。インゲルは愛で石の心が砕かれ涙を流しました。