メアリー・ベル事件|サイコパスと呼ばれた殺人鬼の生い立ちと現在

一人目の犠牲者となったのはマーティン・ブラウン君。たった4歳の男の子でした。事件当日、マーティンは午後3時15分頃に駄菓子屋でキャンディを買い、その後は伯母・リタの家でパンを食べています。3時20分頃に外へ出かけ、わずか10分後の3時30分に遺体となって発見されました。

Free-Photos / Pixabay

遺体を最初に発見したのは、鳩小屋を作るための木材を探していた少年3人でした。床に仰向けに転がり、口から血の混じった唾液を垂らしていたというマーティン。彼を見つけた少年たちは人工呼吸を試みるものの、幼い男児の命を取り戻すことはできませんでした。

遺体の周辺には薬剤が散らばっており、警察は当初「薬剤の誤飲が死因ではないのか?」と考えました。しかし捜査を進めるにあたってその線は否定されます。検死の結果、脳の出血が少し確認できる意外問題はなく、そうなると考えられる死因は窒息死でした。

qimono / Pixabay

そうとなれば首に絞められた痕である「圧痕」があるはずです。しかしそれが全く確認できなかった為に絞殺の線も否定されてしまい、捜査は困難を極めました。最終的に医師が「ひきつけによる突然死」と判断し、幼いマーティンの命は「自然死」という形でいったん終わりを迎えてしまうのです。

xusenru / Pixabay

マーティン死亡直後、メアリーは部外者を装ってマーティンの伯母であるリタに事件を知らせに行きます。あたかも人づてに聞いたかのように「おばさんとこの子が事故にあったの!場所を教えてあげるわ!」とリタを犯行現場へ案内しようとします。

そして犯行翌日、メアリーは悲しみに暮れる被害者の家を訪れます。「マーティンが死んじゃって寂しいの?」「マーティンの事を思って泣く?」「マーティンを恋しく思う?」などと無邪気に質問をしてきながら、うっすらと微笑みを浮かべていたように見えたといいます。

krzys16 / Pixabay

マーティンの葬儀の際にもメアリーは彼の家を訪れています。「マーティンに会わせて」と言ったメアリーに、「ありがとう。でも、もうマーティンはいないのよ」と母親は言います。するとメアリーは、「知ってる。棺に入ったマーティンの顔が見たいのよ」と笑顔で言い放ちました。

また、マーティン殺害の半月前にも、メアリーとノーマは3歳児を突き飛ばして頭から血を出す大けがをさせているうえ、他には6歳の女児二人の首を絞めるなどしています。こうした暴力を重ねるうち、メアリーの中で人殺しへの欲求がじわじわと膨らんでいったのでしょう。

メアリー・ベルに撹乱させられた捜査

xusenru / Pixabay

暗礁に乗り上げた捜査から、一体どのようにしてメアリーが特定されたのでしょうか?当時、周辺に暮らす子供たちの中にメアリー・ベルはいました。それともう一人、ノーマ・ベルという同姓ではるものの親族ではない少女。この二人が、更に警察を混乱させることになるのです。

虚言癖に翻弄された警察

shpoks / Pixabay

非常に頭の回転が速く、息を吐くように嘘を言うことが出来たメアリー。その嘘つきは有名で、警察がマーティンを自然死と発表するや「私が殺したの!」と堂々と吹聴して回るも、誰一人として信じなかった程です。そしてその鬱憤が、メアリーを更なる異常行動に走らせることになります。

メアリー・ベルが保育所に置いた犯行文とは

Alexas_Fotos / Pixabay

嘘つきのせいで誰もマーティン殺しを信じてくれなかったメアリーは、事件2日後の夜、近所の保育園に侵入します。器物を破壊し、4枚のメモを残して立ち去るのですが、このメモからメアリー・ベルの痕跡が辿られ、ようやく事件の真相に警察は近づくのです。

犯行文の内容

Andrys / Pixabay

「わたし コロす だから また くる」「クソったれ わたしたち コロす きをつけろ みっともない ウジムシ」「わたしたちが マーティン・ブラウンを コロしたんだよ ゲスめが」「きをつけな ひとゴロしがあるぞ おマンコと おいぼれたオカマより ポリこうへ」

とても10歳の子供が書いたものとは思えない苛烈な言葉で綴られたメモです。この後もメアリーは遺族を嘲るような態度を取ったり、犯行現場を絵に描いてみせるなど大胆な行動を取りますが、やはり虚言癖のため深刻に捉えられることはありませんでした。小さな殺人鬼は、長い間野放しにされていたのです。

爆発するメアリーの癇癪

Graehawk / Pixabay

メアリーは、自分の思い通りにならない事や意にそぐわない事があると凄まじい癇癪を起こしました。いつ起こるか分からないヒステリーと虚言癖で、周囲から孤立していたであろうことは容易に想像できます。普通であれば、嘘つき・怒りんぼうは嫌われると親に教えられるものです。メアリーには、それがありませんでした。

奇妙な行動と発作的な暴力

TerriC / Pixabay

5月31日、保育園の警報機が作動します。警官が向かうと、そこには侵入者であるメアリーとノーマの姿がありました。事情聴取をするも前回の保育園侵入については口をそろえて否定。それから約一週間後、ある少年がメアリーとノーマの騒動を目撃しました。

「私は人殺しよ」と叫び、ノーマに飛び掛かり髪の毛を掴んだあげく顔を殴ったメアリー。遺体が発見された空き家を指差して「あの家で殺したの」と喚いていたというのです。ここまで大騒ぎをしておきながら誰も信じなかったという事は、相当な虚言癖の持ち主だったのでしょう。

congerdesign / Pixabay

マーティンが死亡した翌日は、偶然なのか計算なのかメアリー11歳のバースデーでした。その際、ノーマの妹であるスーザンがバースデーカードをくれなかったと怒り、彼女の首を絞めています。幸い悲鳴を聞いて駆け付けたスーザンの父親が二人を引き離したものの、怯えたスーザンはこの日以来メアリーと遊ばなくなってしまったという事です。

NEXT メアリー・ベル第二の事件【1968年7月31日】