メアリー・ベル事件|サイコパスと呼ばれた殺人鬼の生い立ちと現在

取り調べに付き添った看護婦いわく「あの子には何の感情もないように感じた」。メアリーを診た精神科医は「かなり利口で、とても戦略的、かつ危険」と判断しています。どれもこれも、お手本のようにサイコパス人格の定義に当て嵌まります。

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裁判が始まるまで、メアリーは婦人警官の監視下のもと生活を送りました。ここでも彼女は「裁判官が懲役30年って私に言うかしら?」「私が裁判官なら、一年半ね」「殺人はそんなに悪い事でじゃないでしょ。だって、みんないつかは死ぬんだもの」などと発言しています。

ある時、拘置所の中に猫が現れると、メアリーは絞め殺さんばかりに抱き締めます。婦人警官がそれを注意すると、「あら、猫はそんなこと感じてないわ」「私はね、抵抗できない小さなものを痛めつけるのが大好きなの」と返します。この嗜虐性、罪悪感の欠落がまさに、サイコパスと呼ばれるゆえんなのです。

異常な人間性の背景にあるもの

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しかしながら一方で「おねしょしたらいけないわ」と怯え、夜通しトイレへ行き、全く寝付かなかったといいます。過去に夜尿を必要以上に責められ、まさしくトラウマになっていたのでしょう。他にも虐待によるものとみられる抑鬱・悪夢・家出癖・解離性離脱障害などが大人になってもメアリーを苦しめます。

また拘留初日の夜には、自らの生い立ちを暗示するような歌を歌ったといいます。「お前は汚れたゴミの蓋、お前のしたことパパ知れば、ベルトでお前を引っ叩く」と言った意味合いの、それはそれはとても澄み渡った悲しい歌声であったといいます。

メアリー・ベルの裁判の結果

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逮捕後のメアリーは11歳とは思えない苛烈さで警察官を挑発します。「あなたたち、私を洗脳しようとしているんでしょ。弁護士の先生を呼んで、ここから出して貰いますから」などと言い、子供が使うとは思えない難しい言葉を駆使し頭の良さを見せつけました。

裁判でも見せた少女の異様さ

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1968年・12月5日に始まった裁判は12月17日まで続きます。当時のメアリーが住んでいた地域では、イギリスの首都ロンドンに本拠地を置く裁判所からの出張裁判という形がとられていました。10歳を過ぎてからの殺人には陪審員裁判が行われており、メアリーとノーマにもこれが適用されています。

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裁判官が入廷すると、すっかり罪悪感と恐ろしさでいっぱいになったノーマは不安げに両親へ視線を向けます。メアリーの母親はといえば、ブロンドのカツラに厚化粧という商売女丸出しの格好で傍聴席に座り、度重なるヒステリーを引き起こしては裁判の進行を妨げました。

母親の醜態にもメアリーは冷ややかでした。裁判のさなか、ノーマが涙を流している時もメアリーは人形めいた無表情を崩すことなく巧みな話術で事件の供述をし、傍聴人の度胆をぬきます。そして無邪気に笑いながら、嘘なのか本当なのか判断しかねる証言をするだけでした。

メアリー・ベルは有罪

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拘置所の中でも夜尿、不眠、夜驚症に苦しめられていたメアリー。その姿が物語る通り地獄のような境遇で生きてこざるを得なかった彼女に、同情は少なからず芽生えます。しかし、まだ何も知らない小さな少年を二人も殺めてしまった罪は消えません。

犯行を認め詳しい供述をしたのち「これはすべてノーマがやったこと」と発言を覆し、法廷を困惑させます。さらに一番最初の殺人であるマーティンの事件については無罪を主張。しかし、最終的な判定は二人の少年を殺害したとして有罪判決が下されました。

ノーマ・ベルは無罪

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共犯扱いだったノーマ・ベルには無罪という判決が下りました。メアリーと交流するうちに快楽殺人への共感が生まれ、犯行の説明を聞かされたり実演を見せられたりはしたものの直接犯行には参加していないとされ、精神矯正という条件付きでその日のうちに釈放されています。

世界中に存在するサイコキラー

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この世界には、普通の神経では到底理解の出来ない残忍な殺人を犯す人物が多数存在します。メアリーのように理知的で表面上は優秀な人物に見える犯人や、彼女と同じような不遇の生い立ちが背景にあるケースも確認されています。代表例に加え、日本にもこれに該当する人物がいる事をご紹介します。

エド・ゲイン

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父は重度のアルコール依存症、母は狂気的なルター派信者。異常な両親に育てられたエド・ゲインは、アメリカの犯罪史上でも類を見ない残虐性と異常性で歴史に名を残しています。それは母親であるオーガスタの倒錯的な「教育」が招いた最悪の結果であると指摘されています。

ジョン・ゲイシー

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ホラー映画「IT」に影響を与えたとされる殺人鬼〝キラー・クラウン〟として有名なジョン・ゲイシー。手術不可能な部位に脳腫瘍を持つ父親の発作的な癇癪により、殆ど虐待と言うべき厳しすぎる躾けをされ、事あるごとに人格否定をされて育った不幸な生い立ちの人物でもあります。

ところで、「IT」はもうご覧になりましたか?この映画を見たことにより、ピエロに対し恐怖のイメージが脳裏に焼き付いて離れなくなった…または、元々苦手だったピエロが増々怖くなったという方も多いでしょう。ピエロに対する得体の知れない恐怖感についてまとめられた記事があるので、ちょっと覗いてみるのも良いかも知れませんよ。

少年A

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いまだ日本中の人々の脳裏に焼き付いて離れないであろう少年Aこと酒鬼薔薇聖斗。事件前より問題行動が多く、犯行の引き金となったのも家族間における親密性の欠如が原因とされています。より詳しくまとめられた記事もございますので、ここにご紹介します。

メアリー・ベルのその後

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かくして有罪となったメアリー。それと同時にすっかり歪んでしまった精神面のケアも必要と判断されました。しかし、あまりにも残忍な犯行を起こしたメアリーの治療を引き受けてくれる精神病院はとうとう見つからず、やむを得ず通常の矯正施設へと送られたのでした。

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