「ライブドア事件」は一体どんな事件?
ライブドア事件とは、投資ファンドを通して自己株売却によりお金を自分達の利益として損益計算書に載せたという有価証券報告書虚偽記載の疑いがあるとして起訴されたことと、風説の流布及び偽計の2つの罪があったとして逮捕、起訴を堀江貴文並びにライブドア幹部がなされた一連の事件です。
この2つが非常にわかりづらく、メディアでその当時、多くの報道があったのにも関わらず何が悪くて起訴・逮捕されたのかが解らない人も多く、現在でもその核になる人物が自殺したりしたことで、真相をつかめず裁判の判決は下されています。
偽計・風説の流布で4人が逮捕
偽計・風説の流布(証券取締法違反)の疑いで、当時のライブドア社員が4名逮捕されました。この違反容疑も表からすぐに見つけられるものではありません。
その内容というのも、株交換を行う上で買われる側の企業株と買われる側の企業株を交換することで行われるのですが、それを決めるのは客観的な第三者です。
しかし、客観的第三者ではなくライブドア関係者が行なっていたのが問題となりました。自分達の都合のいいような価格設定ができますからね。
有価証券報告書虚偽記載で5人が逮捕
ライブドアの所有する投資ファンドを通じて自己株式の売却で得たお金なのに損益計算書に載せましたが、この投資ファンドがダミー会社であり、自己株式の売却は、自己株を新規発行しただけであり売り上げとみなされるものではなかったのです。
ですので、損益計算書に記載させるものでなく、賃借対照表だけに記載しておかなければなりません。損益計算書に載せて利益が出たと見せるのは虚偽になるとしています。数字的な話で言えば、他の粉飾事件の方が巨額の粉飾決算がありました。しかし、赤字なのに黒字だったと400%以上の差があるにもかかわらず報告したのです。
ライブドア事件「偽計・風説の流布」ってなに?
偽計・風説について解説していきます。今回の件では、「価値を操作」したことが罪として問われていました。実際の価値は低いのに関わらずです。そのため、過大な評価を受けて株式交換比率が1:1で成立しました。つまり、20円の価値しかないのに40円で売り利益を得ていることが、上記違反項目に該当していると起訴されたのです。そのやり口はわかりづらく、実に巧妙な偽造工作をしていました。
根拠のない噂などで相場を変動させること
偽計・風説とは株式売買取引を行うのに関して、明確な理由がないのに噂を広めることで、株式相場を動かしたり、売買での利益を得ること目的で、他の人を誤解させてしまうことや、合理的な理由がなく噂を広めることは禁止されています(証券取引法158条)。
もし、これに違反すると5年以下の懲役や500万円以下の罰金に課せられます(懲役並びに罰金の併化も可能とされています)。前述した「他の人を誤解させてしまうこと」は偽計と呼び、「合理的理由がない噂を流してしまうこと」を風説の流布と呼びます。
ライブドアは赤字にも関わらず「黒字を達成した」と公表
ライブドアは前述したように、株式交換比率の評価を自社の関係者が行ったいたので高いものとなり、前年度の同じ時期と比べて赤字であったのに黒字だったと嘘の事実を公に表明することになります。
実際のところ、ライブドアマーケティングが決算発表をした時、当期純損失であったのに関わらずです。一見して、すぐに違法であるとわかりずらく巧妙に行われています。
東京地検特捜部からも目を離せない相手だったのでしょう。これが偽計・風説の流布の証券取引法にライブドア社が違反したとされた部分です。
ライブドア事件「有価証券報告書虚偽記載」ってなに?
有価証券報告虚偽記載について掘り下げていきます。その仕組みも問題点も分かりづらく、捉え方次第ではないかと思う部分もあります。
堀江貴文が実際にどこまでのことを知って部下を動かしていたのか見えませんが、しかし管理する立場であったのは間違いありません。最高責任者=社長でありますから、部下がやっていることも把握しておかなければなりません。
有価証券報告書に嘘を記載すること
ライブドアの有価証券報告書虚偽記載の流れは上に先に書きました。ところで有価証券報告書というものがまず何なのかというところがわからない方が多数だと思います。
シンプルに伝えると有価証券報告書は何を使っていくら儲けたかを記載する書類です。この書類に嘘の内容を記載してしまうと有価証券報告書虚偽記載容疑にかけられます。
それは投資家を守るためであり、嘘の記述により大きく損をする投資家が続出するからです。急成長している企業であれば、今後、期待できるから投資してみようという心理になるからです。
ライブドアは架空の売上を計上して黒字に見せた
本当は存在しないお金を利益として報告したことで周囲に嘘をついたことが大きな問題として問われています。それによって有価証券報告書虚偽記載を疑われたのです。
発端はクラサワコミュニケーションズを企業買収したくて行動に移している時に起きました。商談自体は難航していました。どうしてかというと、ライブドア側の思惑とで相違が発生していたのです。
現金売却を検討していたクラサワコミュニケーションの思惑とで、ライブドア株での交換を求めるライブドア陣営と異なる姿勢を示していました。この状況を打破するべく「M&Aチャレンジャーファンド」という会社が設立されたことで、この問題を解消するのです。
投資ファンドは多数の人からお金を集めて、そのお金を活用して株などへ投資を行い儲けを顧客に還元することで利益を得る会社です。ライブドア株と同時に自社を売り出し、クラサワの株を得ます。新しく誕生した投資ファンド(M&Aチャレンジャーファンド)が、株式8億円分を現金8億円で買い取りました。
問題となってくるのは現金がどこから出たのかということです。投資ファンドであるM&Aチャレンジャーファンドは、2社(ライブドア並びにクラサワコミュニケーション)からライブドア株(8億円)と、現金(8億円)を受け取り、その資金で18億円の利益を出すことに成功しました。
そして、18億円を丸々ライブドアに還元したのです。今回の件で何が問題となったのかというと「会社の利益が増えたこと」なのか「株式発行で資本金が増えた」のかが重要です。それはなぜかというと投資家が見る目が違ってくるからです。このように嘘を公表したことになったので起訴されたのです。
ライブドアとは?
堀江貴文を代表とする会社です。主に1GB容量でWEBフリーメールサービスのギガメーラや、ライブドアブログなどの提供を行っている会社です。
その当時では珍しい手法を行えたのもブラウザーを専用として画面上にバナー広告を設置することで広告収入から収益を得られる仕組みとしたからです。
いま現在は多数のインターネットサービスがありますが、先駆的な企業として知名度は高かったです。そこに堀江貴文が旧ライブドアに興味を示したポイントでありました。
もともとはISP事業の会社だった
オン・ザ・エッジと買収・合併する前のライブドアはインターネットプロバイダサービスを行っていた企業です。1999年の発足当時は接続料は有料で提供する企業が多い中で無料を武器に参画してきました。
広告料で接続料金を賄うようにしており、神田うのや泉谷しげる、ヒロミなどをCM起用したりと大々的に広報も行なってきました。しかしながら、広告の契約数を集めることが難しく赤字が続いて、そこにADSL・光ファイバーが普及されてきたことで従量課金や電話線接続の減少が予想が立ったため、民事再生法を利用して破産することになります。
2002年株式会社オン・ザ・エッヂにサービスを譲渡
有限会社オン・ザ・エッジが設立したのは1996年4月です。翌年には株式会社への改組を行い、ホームページ制作の管理運営会社として大きな成長を遂げます。
企業してから4年足らずで東京証券取引所マザーズへの株式上場を行いました。世間的にも急成長するネットビジネスを牽引する風雲児として注目を堀江貴文が集めていた頃です。
多種類のインターネットビジネスをはじめ、ネットショップ事業やデータセンター事業を行い事業拡大を実現します。経営破綻した旧ライブドアの営業する権利を堀江貴文率いるオン・ザ・エッジが得ました。ライブドア運営は、この買収で株式会社オン・ザ・エッジが行うようになったのです。
2002年以降はポータルサイトや企業買収も手がける
2002年以降も、様々な事業を手掛けています。2003年8月にLinuxベースオペレーティングシステム「Lindows OS 日本語版」の販売を手掛けます。
翌年にはエッジ株式会社から買収した無料プロバイダーの「株式会社ライブドア」へ社名変更を果たしています。その他にも、2004年に経営難でオリックス ブルーウェーブ(現在のオリックス バファローズ)と合併が決まっていた大阪近鉄バファローズ買収に名乗りを上げたことでも世論を騒がせました。
また2005年にはニッポン放送株の大量取得に着手します。これによりメディアにも積極的な参入を表明したのです。フジサンケイグループはこれに対し猛反発をしました。和解成立をフジテレビジョンとできたのは株式を譲渡したからです。
そして、第三者割当増資を同会社へ行い、逆に取締役をフジサンケイグループに混在させて、ライブドアとフジサンケイグループが強力してやっていくことを模索していく方向の話となりました。
このような形で突き進むライブドアは、M&A戦略を積極的に行う事業としてマスメディアで頻繁に取り上げられるようになっていました。堀江貴文自身も個性的なキャラクターで注目を集めており、その当時では多くの人に名が知れる存在でした。
当時大人気だった堀江貴文もライブドア事件により逮捕される
絶頂期を迎えていた堀江貴文の人気はホリエモンの愛称で親しまれ、独自のトークで様々な人から一目置かれていましたが、そんな中で、今回のテーマであるあの事件が発生して世論を騒がせました。
これが「ライブドア事件」と呼ばれるものです。その逮捕劇は、先ずは2006年1月に、堀江貴文とライブドア社員や関連会社を含む容疑者達が偽計及び風説の証券取引法違反しているとして逮捕されました。
また粉飾決算が容疑として挙がりそこの点でも逮捕され、その翌月には有価証券報告書虚偽記載の証券取引法違反で再逮捕となっています。
堀江貴文は当時テレビ出演や選挙への出馬で大人気だった
その当時、堀江貴文はテレビ番組には引っ張りだこのように出演をしていました。2005年8月には郵政民営化関連法案が否決されたことで、衆議院の解散に伴う総選挙に自民党、広島第6区から出馬するというこれまでにないIT社長のスタイルで一世を風靡しました。
結果としては亀井静香の11万票に次いで8万4千票を集め、2位で落選となりました。落選こそしたものの、「堀江貴文」という、一IT社長ではないと思わせる存在感を見せつける機会となりました。
堀江貴文に懲役2年6ヶ月の判決が下る
ライブドア事件において一連の容疑により、東京地検特捜部の起訴により2006年9月に初公判が東京地方裁判所で行われました。本事件において2007年1月26日の最終弁論が開かれるまで、延べ26回の公判が実施されております。
2007年3月16日、判決公判において、懲役2年6ヶ月の実刑判決が下されました。事件を担当した裁判長も「責任がなさすぎており、社会のルールを逸脱したという自覚が全く感じられず厳粛な対応を行うべきである」と述べています。
堀江貴文が、連日のようにマスメディアに取り上げられることは想像が容易だと思います。堀江貴文の他の容疑者にも次々と判決が下されました。
人材派遣会社トライン買収の件で、岡本文人には懲役1年執行猶予3年が下されました。ライブドアとライブドアマーケティングとに合計で3億2000万円の罰金が確定となりました。
最期まで無実を主張し続けた
堀江貴文は判決の下った2007年3月16日を終えた後も無実を主張し続けました。判決の下ったその日のうちに堀江貴文サイドの主任弁護士は、その日のうちに東京高等裁判所へ控訴を行っています。
2008年7月25日に東京高等裁判所で控訴審の結果、控訴は棄却となり、更に最高裁判所への即日控訴を行います。最終的に2011年4月26日、最高裁判所においても上告を棄却となり刑は確定となります。この長い年数を掛けた審判でしたが、堀江貴文の主張は一貫して無実を訴え続けています。
ライブドア事件の影響
ライブドア事件は、日本経済とも大きく関わっています。たくさんの人から株を購入してもらい、そのお金で事業を展開して株主に還元していくのです。今回の騒ぎにおいて、日本の株式市場全体への悪影響を及ぼしました。捜査を東京地検特捜部が本社に実施した次の日からです。
株式市場の暴落「ライブドア・ショック」
このライブドア事件が取り上げられるようになった後の株式市場の暴落をライブドア・ショックと呼ばれています。ライブドアに関連した銘柄だけでなく株式市場全体の株価急落を指す用語と言われています。
事件前は1980年代を彷彿させるバブル景気時代と言えるほどの推移を辿っていました。日経平均株価も1万2000円台から1万6000円台に回復しておりバブルの再来と騒がれていた背景の中で、ライブドアが証券取引法に違反していると毎日のように放送されていました。
ライブドア関連7銘柄は売りに出され歯止めがかからない状況となります。特に深刻だったのはライブドア株を全体の1割扱っていた東証マザーズ市場です。10%以上の下落が生じました。更に、個人投資家などの大量注文が継続していることで異例の全銘柄取引停止措置が行われる金融パニックが引き起こされたのです。
子会社のライブドアグループからの離脱
ライブドアの子会社は多数ありますが、一連の騒動のため離脱を余儀なくされていきます。上場自体の廃止に追いやられたのはライブドアマーケティング並びにライブドアです。
そのほかにもメディアエクスチェンジ、セシールやライブドアオートといった子会社に関してライブドアを離脱します。ダイナシティは2008年10月31日に東京地方裁判所に民事再生法手続きを申請するような状態になりました。セシールはディノスを展開する会社でインターネット販売でも知られていますね。
エイチ・エス証券の野口英昭が自殺
この事件のキーマンであった野口英昭の死はライブドア事件を暗礁に乗り上げさせました。起こったのは2006年1月18日で沖縄県のカプセルホテルで非常ベルが鳴らされたことでホテル従業員が血だらけの野口氏を発見します。
病院に運ばれましたが亡くなられました。沖縄警察は自殺と断定し事件性はないとしました。しかし、自殺したには不審な点が何点もみられています。非常ベルが鳴っているのに気づいてホテル従業員が野口英昭氏を発見するのですが、腹部や手首など複数の部位に包丁による刺創がみられ、腹部に関しては致命傷になっていたほどです。
その状態で非常ベルを押しにいけるのでしょうか?また、自殺で躊躇いもなく自傷行為を行えるのでしょうか?それ以外にも睡眠導入剤が服用された形跡もあり、警察の対応においても死亡解剖や包丁の指紋も確認せずに捜査を終了してしまっているのです。「他殺」の否定が完全にできず他殺説の可能性も残す形となっています。
株主が受けたライブドアショックへの影響
過熱した株式相場でありバブルを彷彿させるような状況において大きい混乱を招きました。東証マザーズ市場において、大きな株価急落となり、それに伴い他の新興市場の株価にも大きな影響を与えました。
株主達は、「株価急落はライブドア事件の発端にある」として損害賠償を要求するために被害者の会を結成しました。そして、合計52億円の損失が発生したと訴えます。
また、こういった状況に陥る可能性は十分、考えられたにも関わらず捜査を強行した東京地検特捜部にも責任があると当時、ライブドアの公認会計士であった細野祐二が主張しました。そういった背景も加味して1株あたりを550円とする判決を下しました。これは、当初の下落額と比べて大幅な増額となったのです。
その他にもライブドアには多くの容疑がかかっていた
証券取引法違反容疑がライブドア事件においては主に取りざたされていて、今回の逮捕劇になっていますが、その他にも疑われていて立件があり結果として容疑のみで起訴に至らなかったことがあります。それはマネーロンダリング疑惑、株式の交換に関わっての不正などが挙げられます。今回は、その中で下記の3つについて説明します。