鈴蘭には毒がある!?鈴蘭ってどんな花?
鈴蘭というと、俯きがちな真っ白で小さな花をいくつもつけている姿や、華奢で可憐な花というイメージを思い浮かべる方が多いと思います。そんな可愛らしい花に恐ろしい毒があるという話は本当なのか、まずは鈴蘭という花について紹介したいと思います。
有毒植物は様々な種類があります。興味のある方はこちらの記事もどうぞ。
鈴蘭とは?
鈴蘭はキジカクシ科スズラン属に属する宿根草です。日本では本州の中部より北、東北や北海道などで自生しているものもありますが、観賞用として庭や園芸店で見かける鈴蘭は欧州原産のもので別の種類のものです。4月から6月の比較的涼しい時期に花を咲かせます。
鈴蘭の特徴
鈴蘭は小さくぷっくりとしたベルのような花をすずなりに付けます。その花の香りは品のある爽やかさで、しかしとても強く香ります。また、葉はスッと縦に葉脈の走る単子葉類らしいもので幅があり、花と同じ程度の高さまで伸びます。
鈴蘭の花言葉
そんな鈴蘭の花言葉は「純粋」や「再び訪れる幸福」などがあります。純粋というのはその白く可憐な姿に、再び訪れる幸福というのは宿根草の性質である枯れてしまっても再び翌年には花を咲かせるというものにとてもよく似合う花言葉です。
鈴蘭には毒がある!
花言葉までこんなにも可愛らしい鈴蘭という花ですが、実は恐ろしい毒を持つという一面もあります。一体どんな作用をする毒を持っているのか、どの部分に毒を持つのかを見ていきたいと思います。
鈴蘭の毒性
鈴蘭は3種類の毒となる成分を持ち合わせています。間違って摂取してしまうと数時間で嘔吐や下痢、目眩などといった中毒症状が始まり、その摂取量や体調などによっては心不全や心臓麻痺を起こし死に至ることもあります。
この危険な成分は強心配糖体といい、他の植物に含まれる強心配糖体の中にはその薬理作用から心房細動や不整脈など心臓を中心とした循環器系疾患の治療に使うために精製され薬にされるものもあります。
鈴蘭の毒が含まれる箇所
毒となるこの成分は鈴蘭の全体が保有しており、花粉や果実にも存在してると言われています。これは加熱分解されることもなく水にも油にも溶け出すため、別の食品と間違えて食べてしまうととても危険です。
鈴蘭毒の致死量
鈴蘭が持つ毒を口にしてしまった場合にどんな作用をするかを紹介させていただき、その恐ろしさについてお伝えしました。次はその成分の強さの詳細や致死量などについても知って頂きたいと思います。
鈴蘭毒は青酸カリよりも恐ろしい!
毒や劇薬などといった言葉を聞いて連想できるものにシアン化カリウム、通称青酸カリがあると思います。度々事件や自殺に使われて有名になったこの青酸カリですが、最小致死量の観点から見るとなんと鈴蘭はこの青酸カリの約15倍もの毒性を示します。
鈴蘭毒の致死量
強力すぎるこの鈴蘭の毒には致死量も存在します。最小致死量から計算すると、平均的な体格の成人に対しわずか十数mg程度と非常に少量です。その重さを視覚化するとすれば直径3mmのビーズ1粒程度のものです。
鈴蘭毒の恐ろしさとは?
鈴蘭の毒の恐ろしさは強さだけに留まらずその毒の持つ特徴までもが恐ろしいものとなっています。強さ以上に怖いものがあるというのかという疑問を持つ方もいると思いますが、これからそのことについても詳しく説明したいと思います。
鈴蘭毒は無味無臭
とても芳しい香りを放つ鈴蘭ですがそれは花に限ったことでこの毒には全く匂いがなく、匂いどころか味もしない完璧な無味無臭です。席を立った際や飲み物を出された際に自分のグラスにこの毒が入れられていたとしても、私たちにはそれを知る術などないのです。
鈴蘭毒は水に溶ける
そして更に恐ろしいことに、この毒は特別難しい方法を使わずとも抽出することができてしまいます。水溶性でありよく水に馴染むため、花瓶に鈴蘭を挿しておけば中の水にたっぷりと溶け出します。
食卓のテーブルや台所に鈴蘭を生けた花瓶などを飾ってあれば、先に述べたようなタイミングでこっそりと毒を盛ることができてしまい、あまつさえは花瓶を倒して気づかぬうちに混入してしまったように装うことすら難しくありません。
鈴蘭毒は病死を装える
鈴蘭の毒の症状に関しては既にお話していますが、この毒は心不全や心臓麻痺を引き起こすことがあります。臓器不全などを起こす可能性もあり、例えばこの毒が肝臓に蓄積した場合や肝臓の弱い人が摂取した場合、多量に摂取してしまった場合には肝不全を引き起こすこともあり得ます。
毒を盛られた側が元々持病のある人間だと死因がそれに関連付けられてしまう恐れがあります。そうなってしまうとあまりにも不自然な点があるなどして検死が行われない限り、原因が鈴蘭の毒であると発覚することもないと考えられます。
実際に合った鈴蘭毒事故
鈴蘭は小さく華奢な植物であるためこの凄まじさに少し話を誇張しているのではと思うところもあるかもしれませんが、実際に誤ってこの毒を口にしてしまい死亡したという事故が過去に起きています。
ドイツの少女が鈴蘭毒で死亡!
その事故はドイツで起こりました。まだ幼い少女がコップの水を飲んだあと、中毒を起こして亡くなってしまうというものです。当時3歳の彼女が口をつけたコップには鈴蘭が幾本も挿してありました。
原因は鈴蘭を生けた花瓶の水!
少女が亡くなった原因は、コップの中の水に溶け出した鈴蘭の毒です。彼女の家ではその時コップを花瓶代わりにして鈴蘭を飾っておりまだ幼い彼女にはその中に入っている水と飲み水との区別が難しく、それを飲んでしまった為にこのようなことが起こってしまったのです。
日本で起こった鈴蘭毒事故
日本でも鈴蘭の毒による死亡事故が発生しています。こちらは毒の溶け出した水の誤飲ではなく、鈴蘭そのものを食べてしまうといった事故例です。鈴蘭を食べてしまった経緯を気をつけていただきたい点と共に紹介します。
山菜取りで起こった鈴蘭毒事故
春、鈴蘭が咲くこの季節は山菜の旬でもあります。数年前、山菜採りに行った方が目当てのものと間違えて鈴蘭を持ち帰り調理、食べてしまった結果亡くなってしまうという事故が起きました。このようなケースは珍しいものではなくニュースでも度々報じられています。
似ている行者ニンニク
事故に遭ってしまった人々が採りに行っていたのは行者ニンニクという山菜で、地域によってはアイヌネギなどとも呼ばれるものです。鈴蘭の葉と様子がとても似ており、その為間違えて採ってしまうという方が多いのです。行者ニンニクは北海道や東北などに多く自生しています。
時々道の駅などで苗を売っていることもあり、また季節になると栽培されたものがスーパーに並び行者ニンニクを食べる文化のある地域ではとてもメジャーな植物です。ニンニクのような香りで風味が良く、山菜らしく酢味噌なども合いますが炒め物など様々な料理に適しておりとても人気の山菜です。
行者ニンニクと鈴蘭の見分け方
この2つの植物を見分けるのは少々難しいと思いますが、鈴蘭と行者ニンニクとではどちらも単子葉類であるものの葉に走る葉脈が違っています。鈴蘭の葉脈は葉の根元から先端に向かい平行に走っており、一方行者ニンニクの葉脈は真ん中を走る葉脈から脇へ伸びるように他の葉脈が出て先端に向かい平行に走っています。
他に死亡事故を起こしてしまう似た植物にイヌサフランというものがありますが、こちらにも見分ける方法はあります。イヌサフランは行者ニンニクと比較すると葉の枚数も多く大ぶりで重なるように生えています。また、行者ニンニクは名前通りの香りがし、これは鈴蘭やイヌサフランからはしないものです。
鈴蘭毒のほかにもある!日本に自生する有毒野草
人体に危険を及ぼす植物は鈴蘭のみならず、まだまだたくさんあります。私たちの身のまわりに植えられていたり自生している植物には他にどんな気をつけた方がいいものがあるのかを皆さんにも見ていただきたいと思います。
トリカブト
トリカブトはキンポウゲ科の植物であり、その毒はドラマや小説、そして実際の事件でも使用されるほど毒を持つことが有名です。野山に自生しており、若芽がニリンソウなどの食べられる野草と似ている為こちらも誤食してしまうことがあります。
種類により生成される毒の成分は異なりますが、中にはあまりの即効性から食べて数十秒で死亡してしまうものも存在します。他の野草と間違えた際の誤食を防ぐ方法として少し噛んで味を確かめるという手段があり、その場合すぐに吐き出せば問題ないそうです。トリカブトの毒は精製し漢方に用いられることもあります。