原因さえわかるなら、予め予防線をはっておきたいところ。バニシングツインを防ぐための手段はあるのでしょうか?また、何が原因とされているのか、今判明している限りの情報でも知りたい方のために、正直にお話します。
バニシングツインの原因は不明
バニシングツインが起きる原因は、未だに解明されていません。ただ、一部では、お酒を飲んだりタバコを吸ったり、はたまた食習慣や生活習慣の影響だという声もあります。この「飲酒・喫煙」などは、すべての妊婦さんに共通していえる禁止行為ですので、バニシングツインに直結しているとは言えません。
バニシングツインの予防方法は不明
原因がわからないのですから、予防もしようがありません。この「バニシングツイン」という現象を知ってしまったからといって、変に身構えたり、プレッシャーを感じる必要はありません。染色体異常だった場合に育たない、という現象なのですから、これはもはや、受精時の「運」なのです。
バニシングツインで胎児への影響は?一卵性双生児の方が危険なの?
母体の気付かない間に起き、胎児の「消失」を明確に示すサインすらない「バニシングツイン」ですが、残された側の胎児には、何か影響はあるのでしょうか?「二卵性」の場合と「一卵性」の場合、分けて解説します。
「二卵性双生児」の場合には影響はない!
「二卵性」の場合は、先に解説したように、胎児一人につき胎盤も一つ、羊膜も分かれて存在しているので、仮に「バニシングツイン」が起きてしまっても、影響は少ないと云われています。「一卵性」にも共通して言えるのは、成長に差があり、小さい方が消えてしまうリスクは高いそうです。
「一卵性双生児」の場合には注意が必要!
問題なのは、「一卵性」だったときです。同じ胎盤でつながっているので、突然片方が居なくなるとバランスが保てなくなり、残された胎児に栄養がきちんと行き届かない場合が出てきます。その結果、正常に発育できないことを「子宮内胎児発育遅延」といいます。
「双胎間輸血症候群」も引き起こされる場合があります。いままで分け合っていた血液が、一気に一人の胎児に送られる、またはその逆に、まったく血液が行き渡らなくなるという事態です。その場合、心不全を起こしたり、生まれたときに脳へ障害が残る可能性も否めません。慎重な経過観察が必要です。
母体への影響は?
胎児への影響は「二卵性」と「一卵性」とで異なることをお話しました。では、肝心な「母体」への影響はないのでしょうか?ここでは母体にかかる負担と、妊娠中気を付けるべき「感染症」について紹介します。
母体にかかる負担は?
基本的にバニシングツインが起きてしまうと、「ハイリスク妊娠」と認識されます。双胎妊娠では安定期がなく、生むまでは気が抜けないとよく聞きますが、バニシングツインが起きてしまった場合、早期分娩の確率が高まるそうです。また、感染症にかかるリスクも高まるといわれます。
感染症に注意!
感染症のリスクも高まる、というお話をしましたので、ここで気を付けるべき感染症についてお話します。妊娠中の方が多いかと思うので、妊娠前の予防接種についてここでは割愛します。どんな病気にもかからないに越したことはありませんが、感染すると胎児に重篤な症状の出る感染症をいくつか挙げます。
サイトメガロウイルス
聞きなれない言葉ですが、実は成人の60%以上が、知らぬ間に感染し、抗体をもっています。ヘルペスウイルスの一つで、ほとんど症状が出ません。出た場合は、発熱に始まり肝機能に異常を来したり、肺脾腫を引き起こします。
妊娠中に発症してしまうと、流産や死産のリスクが高くなります。また、20%から40%といった確率で、胎盤を経て胎児に感染します。感染してしまうと、聴覚異常や知能障害を抱えて生まれるおそれがあります。
トキソプラズマ
こちらは耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。原虫感染症の一つで、加熱不十分のお肉から感染することが多いです。空気感染はしません。そして一度かかっていたら、二度と感染することがない病気です。
胎児への伝染リスクは低いのですが、「先天性トキソプラズマ症」に感染してしまうと水頭症や、大頭症、脳内石灰化というように、脳へと影響が出るほか、視力障害が起きるおそれがあります。妊娠中のナマモノの摂取は控え、食材はよく加熱して食しましょう。
リステリア菌
食中毒菌の一種で、冷蔵庫の中でも繁殖できるのが特徴です。しかし国内での、リステリア菌による食中毒の事例はなく、少量の菌では摂取しても発症しません。ですが妊婦の場合は、普通は感染しないような少量の菌でも、感染するおそれがあるので、注意が必要です。感染した場合、敗血症を引き起こし、流産へとつながるおそれがあります。
食肉加工食品や、ナチュラルチーズ、サラダなども、冷蔵庫内で長く保管していると、リステリア菌がどんどん繁殖していってしまいます。食べる際には「そのまま」ではなく、必ず加熱しましょう。
伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)
通称「りんご病」です。「ヒト・パルボウイルスB19」というウイルスが、赤血球の基となる細胞、「赤芽球」に感染し、破壊します。すると赤血球が作られなくなってしまいます。妊婦が感染すると、20%の確率で胎児に感染します。
経胎盤感染をすると、胎児にも同様のことが起き、胎児性貧血を起こしてしまいます。重篤化すると、胎児の身体がむくむ「胎児水腫」という症状が出ます。感染した胎児のおよそ70%が、死産という結果です。自然に治る場合もありますが、呼吸器および循環器に障害が残ることが多くあります。
「安静に」を心掛けて!
このような感染症から身を守るためには、やはり外出しても人混みを避けるに限ります。妊娠中は、とにかく安静にすることが大切です。とくに双胎妊娠の場合は、「絶対安静」が求められます。家でストレスをためず、ゆったりと過ごすことが大切です。同居人に喫煙者が居る場合は、なるべく煙から遠ざけてもらうように伝えましょう。
双子だからといって二人分の食事を摂る必要はなく、いつもどおり、普通の栄養バランスの取れた食事を心がけて下さい。つわりでご飯が食べられないなど、やむを得ない場合は、お医者さんと相談の上、サプリメントも活用していきましょう。妊婦さんの食事について、こちらの記事もご覧ください。
バニシングツインを恐れないで!
双子について調べていたら、たまたまこの言葉を見つけてしまい、つい調べるうちに不安感に襲われてしまったかもしれませんが、ここまで見てきたように、どうして起こるのかも分からなければ、対策しようのないことです、ドンと構えましょう。
冒頭でもお伝えした通り、お母さんの不安というものは、不思議なもので、お腹の子にも伝わるといいます。不安だけに限らず、あらゆる感情は伝わっています。気負うことなく、日々のお腹の赤ちゃんの成長を温かく見守っていきましょう。