「バニシングツイン」とは?
この言葉を初めて耳にする方も多いでしょう。意味を知ってしまって不安になる妊婦さんもいらっしゃると聞きますが、そこまで気負わなくても大丈夫です。「バニシングツイン(Vanishing Twin)」は、言葉の通り、「消える双子」という意味です。日本の医学分野では「双胎一児死亡」と称されています。
お腹の中で双子のうちの一人が消えてしまうこと
簡潔に言うと、初めは双子だと言われていたのに、いつのまにか片方消えてしまっている…といった状況です。これは胎嚢時点での染色体異常が原因で、ほとんどは鼓動が確認される前に、子宮に吸収されます。ごく稀に、片方の胎児に摂り込まれるケースもあります。
バニシングツインの確率は?
双子を授かったのに、そんな事態が起こり得るなんて…と不安になったかもしれませんが、考え方を変えてみてください。あまり知られていない症例ということは、そんなに頻繁に起こる現象ではない、ということの裏付けでもあります。一卵性双生児と二卵性双生児の違いを解説し、この現象との因果関係を紐解きます。
「一卵性」と「二卵性」の違いとは?
一卵性双生児とは、性別が同じで血液型も同じ、外見が瓜二つの双子を指します。一つの胎盤で、二人が育ちます。その一方で、二卵性双生児は、性別や血液型が異なることが多く、胎盤が二つあることが特徴です。
「ミラーツイン」(ミラー現象)
一卵性の場合、まるで鏡合わせのように左右対称に、双子の左右…たとえば利き手やつむじの巻く向きが、左右に分かれるケースもあるようです。25%の確率で存在します。臓器も左右が反対になっている事例も存在するようです。
バニシングツインになる確率は15%ほど
バニシングツインの発生率は、全体の10%から15%程度です。多胎妊娠では、20%から30%です。双子のタイプによっても確率は変わってきます。後に詳述しますが、一卵性の場合、二人で一つの胎盤を使うので、様々なリスクが生じ、二卵性に比べると発生率は高いようです。
双子は遺伝?「膜性診断」って何?
ここでは、「双子」の遺伝子は引き継がれる、という説に、信憑性はあるのでしょうか?そして、双子を懐妊し、初期に行う、「膜性診断」についても触れ、それに伴い判るリスクについてお話します。
「双子は遺伝する」は本当?
親族に双子が居たら、自身も遺伝によって双子を授かる確率が高い…というお話ですが、実はまんざら嘘でもありません。なかでも二卵性双生児は、女性側の「多排卵」が遺伝するため、因果が認められます。
一卵性双生児の遺伝は、男性側の遺伝が作用すると云われますが、これは少々迷信的です。確率的に男性側の遺伝が多かったというだけで、きちんとした証拠があるわけではないようです。遺伝が関係するのは、二卵性の場合だけのようです。
「膜性診断」で双子のタイプが判る
双子を授かったら、「膜性診断」をするのが一般的です。「胎盤」そして「羊膜」が「いくつあるか」によって、胎児らの成長に差が出てきてしまうからです。今後の経過を予測するうえでも、膜性診断を行うのは重要なことなのです。
「DDツイン」(二絨毛膜二羊膜)
二卵性の基本的な形になります。胎盤と羊膜が、胎児に一つずつ確保され、栄養も平等に行き渡るので、成長に偏りはみられません。まれに「癒着胎盤」という、二つの胎盤が一つにくっつく現象が起きるようですが、経過に大きな影響を及ぼしません。
「MDツイン」(一絨毛膜二羊膜)
一卵性のうち、このタイプが6から7割を占めます。受精後、4日から8日の間に着床すると、MDツインになります。羊膜は別なので、へその緒が絡むリスクはありませんが、外の絨毛羊膜と胎盤は一つしかないため、栄養に偏りが生じ、胎児の成長に差が出ることもあります。
「MMツイン」(一絨毛膜一羊膜)
双子の懐妊を「双胎妊娠」といいますが、こちらは双胎妊娠のうち、1%にも満たない、稀なケースになります。受精後13日以降、受精卵が分離するとこのタイプになります。二人が同じ胎盤から栄養を摂取し、羊膜も一つであるため、とても母体管理が難しいのです。
「生殖医療補助」は双子が多い?
近年では、「生殖医療補助」、親しみのある言葉でいえば、「不妊治療」を受ける方も増えてきました。不妊治療はDDツインにみられる「多胎妊娠」となる確率が高いため、双子を授かることが多いのです。
その知識を得てか、最近では双子のお母さんに対し「不妊治療したの?」という質問をする方が多いと言います。いくら疑問に思ったからといっても、そのようなデリカシーのない質問はすべきではありません。お気を付けください。
もしかして、あなたもバニシングツインだったのかも…?
ここからはオカルト的なお話なので、話半分に聞いていただいて構いません。仮に自身がバニシングツインで、「生まれてきた側」の存在であったとしたら、一体なにが起きるというのでしょうか。少しだけ紹介します。
あらわれる兆候
もし消えた側の存在が自分の中で生きているとしたら、潜在意識に影響をおよぼす場合があると言われています。日頃から「双子だったらなあ」と考えることが多かったり、双子の存在を異常なまでに魅力的に感じることも、その影響かもしれません。
また、つねに罪悪感を抱いてしまうのは、生まれてきたことへの罪悪感を潜在的に持っているからだ、とも云われます。反対に、自分はすでに死んだ存在だと思い込む、コタール症候群を発症する場合もあります。詳しくは以下を参照ください。
バニシングツイン発症の時期は?
「バニシングツイン」を対策できるなら一番良いのですし、可能なら避けたいですよね。発症しやすい時期なんてあるのでしょうか?どういったタイミングで起きるものなのか、時期の見極めは可能なのか、解説します。
バニシングツインの発生は「4週~14週」
だいたいの場合は、心拍がまだ確認できていない4~8週目、妊娠初期に起こります。初期流産と同じような状態です。妊娠中期以降にも起きることはありますが、その場合は「子宮内胎児死亡」の扱いとなり、別途で何らかの処置が施されます。
バニシングツインのほとんどは、母体が気付かないうちに起こってしまいます。母体が出すサインとして、軽い痙攣や、不正出血、または骨盤の痛みといった症状が挙げられます。また、血液検査においてホルモン値の減少が確認された場合においても、バニシングツインの可能性を疑います。