垂れ下がっていたもの
B君は外出先でお腹を壊してしまい、公園のトイレに入りました。公園のトイレと言えば汚いイメージですが、意外にもそのトイレは改修されたばかりで綺麗でした。個室に入り用を足しながら、B君は真新しい床のタイルを眺めていました。すると、そこに一本の黒い糸が垂れ下がっているのを見つけたのです。糸は上の方から垂れ下がっていました。
なんとなくその糸の出どころを辿っていくと、糸の数が段々増え始めました。そして天井にまで到達した時、B君は気が付きました。垂れていたのは糸ではなく、天井へ逆さまに張り付いた女の髪だったのです。女は目を剥き口を横に大きく広げてB君をじっと睨みつけていました。
B君はズボンも履かず逃げ出したので、あの女性が生きていたのか、それとも幽霊だったのかはわからないままです。それでもあの時、笑っているかのように唇を広げながら睨みつけてきた恐ろしい形相だけは今でも忘れられないとB君は語りました。
幽霊が怖いのはもちろんですが、もしもその女性が生きた人間だとしたら目的が不明で更に恐いです。女性なのに男子トイレにいた事から、誰か恨みを持った相手をずっと探しているのかもしれません。トイレで黒い糸を見つけたら、決して上を見ないようにしてください。
短い怖い話おすすめ13選⑪
楽しいはずの旅行。でも、たくさんの人が寝泊まりをする場所だからこそ残酷な事件が起きてしまうこともあります。その怨念がずっとその場に留まり続けていた場合、これからご紹介するような事が起きるのかもしれません。
宿代が安い理由
Cさんは、実家で法事に出席したついでに彼女と近くの温泉宿に泊まりました。予約せず飛び込みだったので、朝晩食事付きで2万6千円だったそうです。飛び込みなので少々高いのは仕方ないと思いましたが、宿に着いてみて驚きました。部屋はリビングが12畳に寝室8畳の立派な造り、風呂も大きく、食事も豪華。
「この宿は穴場だ」と2人は喜んで食事や風呂を楽しみました。そして一通り遊んだ後、寝室の明かりを落とし布団でテレビを見ているといつの間にか眠ってしまいました。しばらくしてCさんがふと目を覚ますと、点けっぱなしだったはずのテレビが消えていました。不思議に思いつつも時間を見ようと携帯に手を伸ばした時、変な音が聞こえました。
「フーッ、フーッ」という荒い息。彼女がいびきをかいているのだと思い、Cさんは携帯の明かりを彼女に向けました。すると寝ていると思っていた彼女は目を見開き、歯を剥きだして笑っていたのです。息は歯の隙間から漏れ出る音でした。Cさんが驚いていると彼女は居間を指さしました。見ると鴨居に何かぶら下がっています。
それは浴衣の紐で作られた首吊りの輪でした。そして、彼女はギラギラした笑顔のままこう言いました。「使え、使え、使え、使え」。その後Cさんは恐らく気を失ったのでしょう、気付いた時には朝だったそうです。鴨居の紐はなくなっており、テレビも付いていました。彼女を見ると何かにうなされているようで苦悶の表情を浮かべていました。
急いで彼女を起こし、事情を聞くと「怖い夢を見た」と怯えた様子で話しました。曰く、夜中に目が覚めるとCさんが布団におらず、枕元の明かりを付けて探してみると鴨居に浴衣の紐をかけ、首吊りの準備をしていたとのこと。彼女が「何してるの」と聞くと、Cさんは振り向いて笑い「さあ、準備できたよ。これ使いな」と言ったのだそうです。
それを聞いてCさんも驚きましたが、彼女には自分の話はしませんでした。何となく話してはいけないような気がしたのです。とりあえずCさんは彼女を宥め、食欲のないまま朝食を取りに食堂へ向かいました。その帰りにあったレセプションカウンターでCさんは中居さんに「僕達の部屋で首吊りがあったんですか?」と思い切って尋ねてみました。
その時はCさんも予想していた通り言葉を濁されましたが、チェックアウトの時に料金を見ると数千円ほど差し引かれていたそうです。明確な宿名等は不明ですが、静岡県の某温泉地で起こった出来事です。
中居さんは名言を避けたようですが、宿代が割引されている事から答えは明白です。もしもあの時Cさんが彼女に夢の話をしていたらどうなっていたのでしょうか。また、首吊りの紐を前にして気絶せずに意識があったら。もしかしたら、2人揃って鴨居にぶら下がっていたのかもしれません。
短い怖い話おすすめ13選⑫
少なくなったとは言え、今でも毎日交通事故が起きています。もちろん、ほとんどはすぐに加害者が見つかるものですが、残念ながらそうでない場合もあります。そんな時、無念を残して亡くなった人々はどのような行動にでるのでしょうか。
おまえじゃない
ある晩、Dさんは残業で終電を逃してしまいタクシーに乗りました。運転手は気さくな人で会話も弾み、楽しく帰路に着きました。しかしタクシーが山の中を通りかがった時、運転手がさっきとはうってかわって暗い顔つきでこんな事を言い出しました。「お客さん、ここから先は私がいいというまで外を見ないでください」。
Dさんは運転手の真剣な口ぶりに驚き「はい」と返事をするしかありませんでした。途中、気になって「見たらどうなるんですか?」と尋ねてみましたが、運転手は答えません。事情もわからず段々怖くなってきたその時、窓の外から「うう〜」と声がしたのです。Dさんは思わず声のした方を見てしまいました。
すると窓には物凄い怒りの形相をした男が張り付いて、Dさんを見るなりこう叫んだのです。「おまえじゃない!」と。Dさんはそのまま気を失いました。後で聞いた所によると、昔そこで轢き逃げがあり、男性が亡くなっているそうです。犯人は捕まっておらず、男性は今も轢き逃げ犯を探して車の中を確認しに来るそうです。
この怪談に出てくる幽霊は、その道を通る限り誰のところにも現れます。犯人を見つけるまでこの幽霊は現れ、人を脅かし続けるのです。山道を通るときはこの怪談の事を思い出してみて下さい。通っているその道は、彼が非業の死を遂げた山道かもしれません。
短い怖い話おすすめ13選⑬
面白半分に心霊スポットへ行ってしまったおかげで痛い目を見る話は多々あります。これからご紹介する話も同様に、とある廃屋から「あるもの」を持ち帰ってしまったばかりに恐ろしい目に遭ってしまいます。