「そうか、あかんか、福島一緒やで」その言葉はたして切ない時に使われるセリフと言えるでしょうか。
ネタとして使うのに不快感を持つ人もいる
時と場所を選ばないそのセリフに「ネタ」として使われることは、不適切と言う意見ももちろんあります。事件で使われた言葉はねじ曲がったようになり、不快感を得る十分な要素になったのです。
忘れてはならない事件ではありますが、言葉を変えて伝えると、当事者には悲しくなることは明らかと言えます。方法によっては伝わり方が異なって、事件を振り返ることもあるのです。
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介護殺人は後を絶たない
2006年の事件をきっかけに、厚生労働省による調査が本格的になったのです。「介護にまつわる親族間の事件、特に65歳以上が対象の虐待」を含めた事例があります。介護の抱える問題に、厚生労働省が動いたと言っても言い過ぎではありません。
調査開始から9年で約250件
調査の開始2006年からの例と、介護に関連する2007年からの事件を紹介します。2006年〜2015年までの9年間に、247件の事件があったことが明らかにされたのです。被害者の数は250人と数多く、2019年までには増加の一方を辿っています。
2007年〜2014年までの「介護・介護疲れ」による殺人事件や、自殺に関与した人数も増加しているのです。今尚介護にまつわる事件、特に60歳以上の割合は5割を超えているとされています。
高齢者の増加が大きな要因
現在に至って問題とされている介護の問題ですが、高齢化社会が一番の要因とされています。介護される側の人数は圧倒的に多い中、75歳以上で要介護状態になっている人数は4人に1人ともされているのです。中でも夫が妻を殺めるケースが34%弱、息子が親を手にかける事件も33%ほどと家族内の事件は後を絶ちません。
背景に厳しい介護問題がある
介護をする側の人数が、断然減少していることが問題とされているのです。周りに頼らないのではなく、頼っても断られることも多いので介護される側もする側も金銭苦になることは多いと言えるでしょう。
増え続ける要介護状態の抱える問題の問題は、老々介護が問題とされています。伴侶に認知症などの症状が現れた時、介護する側もまた高齢化しているケースが多くなっているのが現状です。
介護する側にも負担が大きい
2007年〜2012年までの、介護によって転職が難しいとされる人数も、45万人弱と介護と仕事の両立が難しいのも事実です。そこには認認介護という問題も浮き彫りにされいます。
家族内で介護をする認認介護は、金銭的だけでなく精神的にも追い詰められていくのです。介護の問題は負担も大きく社会的問題と言えるでしょう。
その他の介護殺人
2京都認知症母殺害心中未遂事件の他にも介護殺人はあります。介護問題が社会的に問題される中、改善されていないことが多いことが浮き彫りにされているのです。高齢化になるにつれ、難しい問題にどう向き合っていくべきか問われる事件を紹介します。
兵庫県加東市の事件
2016年5月、夫によって認知症の妻が、電気コードにより殺害されたのです。82歳の夫に79歳の妻が殺されたのですが、長男と3人暮らしに起こった事件はこちらになります。長男は病気を患い当日は留守にしていた中で、早朝110番通報が夫からあったのです。
ヘルパーも頼んでいたのですが、大半は夫が1人で妻の介護をする日々。逮捕された夫は「介護が大変で、精も根も尽きた」経緯と同じくメモが見つかっています。この事件の背景にも介護の問題が大きく関わってきているのです。
埼玉県小川町の事件
2016年3月、こちらも夫によって認知症の妻が、包丁で殺害されたのです。83歳の夫によって77歳の妻が殺された事件ですが、こちらは2人暮らしでした。夫によって110番通報されましたが、後の勾留中2週間の間、夫一切食事をしません。
供述もないまま介護に疲れた夫は、自身も食事を摂らないことによって無理心中を考えたのです。2週間後搬送された夫は、衰弱死しています。この2つの事件から明らかにされるのは、どちらも高齢者同士による介護の実態です。
深刻化する介護問題
介護問題がクローズアップされる中、1番の問題は人口の減少にも関わらず、高齢化は進む一方ということです。介護には要支援・要介護とありますが、要介護にも関わらず支援を受けられない背景には、様々な要因があると言えます。
介護難民の増加
要支援とは1〜2ありますが、支援が必要な段階を指します。要介護は1〜5段階あり、要支援から徐々に重くなっていくのです。その要介護認定を受けたにも関わらず、何らかの支援が受けられないで待機している状態の人を介護難民と言います。
介護職に就いている人数や、支援センターなどが少ないためとされていますが、現在では高齢化とともに介護難民は増加しているのが現状です。
老老介護・認認介護の増加
老老介護・認認介護の増加には、2000年代の子供達と呼ばれる「ゆとり世代」も関係しています。結婚に捉われない、若さから仕事に捉われないことなどが関係していますが、世代だけではありません。平均寿命は長くなり、支援センターの数も間に合わないほどになるのです。
家庭で面倒を見ることが増加するため、夫が妻を、妻が夫を介護することが多くなり、仕事もままならなくなり介護は家庭内のみになってしまいます。
高齢者の虐待問題
支援センターの増加のためとは言え、虐待問題も同時に起きています。支援センターや老人ホームの中での虐待もニュースにある中、1番多いのが家庭内の虐待とされているのです。
介護の実態の中で家庭内での虐待の割合は9割近くにもなっています。夫からの虐待が2割ほどですが、子供からの場合は男女合わせて5割強となっているのです。高齢者の増加とともに、虐待もまた問題視されています。
高齢者の一人暮らしの増加
夫婦や家庭内の問題もさることながら、高齢者の一人暮らしの増加もあります。老老介護・認認介護を要することが増えている中、孤独死するケースも増えているのです。家族に迷惑をかけたくない、面倒を見てくれる人がいないなど、一人暮らしの増加もまた背景にあります。
一人暮らしで支援サービスを受けても、時間が決まっているからです。無限に側にいてくれる人は難しのが実態でしょう。
成年後見人によるトラブル
認知症が進むにつれ問題とされるのが、お金や財産の管理です。家庭裁判所で決める「成年後見人」の存在もまた、問題になっています。認知症で管理できないことを理由に成年後見人は、財産を自由に左右することができるからです。
家族がなるケースもありますが、トラブルはつきものと言えるでしょう。近年増えている問題ですが、財力に目が眩むことが問題とされています。
介護する側にも様々な負担がある
介護をされる側には落ち度は全くありません。同時に介護する側にもそれ相当の覚悟がいること、負担が大きいことが挙げられます。仕事と両立することが困難、または介護する側も病気を患っているなど様々です。
介護離職
介護をする側にかかるのは身体の負担と、精神的苦痛です。他人に迷惑がかからないように、または介護との時間の調整が難しいなどでいわゆる「介護離職」をする場合が多いのです。
会社の理解を得られなかいというのも、理由に挙げられるかもしれません。離職とともに失われる収入なので、マイナス要素は大きいですがやむなくの場合もあるのです。
介護うつ
認知症の症状は様々で、時に普通に見えることもあります。安心していると姿が見えなくなり、誤飲や徘徊などをするなどメンタル面が辛いのです。「介護うつ」に陥り自身も精神的ダメージのため、介護ができなくなってしまいます。
介護によって「うつ」になると自殺するケースもあるのです。無理心中の場合では「介護うつ」による、メンタル面の辛さが割合的に多いと言えます。
ワンオペ介護
一人暮らしとは違い「ワンオプ介護」という1人で介護しなければならない、といったことも増えているのです。母や父のどちらかかが1人で子1人の場合、仕事を休職しなければなりません。
ただし、長い間の休職は辞職につながるので介護の時間が長いと休めなくなります。辞職と同時に来るのは金銭苦なので、ことらも問題とされている事柄でしょう。
介護に関係する法改正
2000年に介護保険法が施行されてから、3年に1度、または5年に1度が見直しがされているのが介護に関する法改正です。ただし、介護保険法とは1割〜2割福祉、介護にまつわるサービスが軽減されるのみとなっています。多くの利用者の負担を減らすためですが、介護サービスの実態に迫ってみましょう。
介護保険法
介護保険法とは、世帯の収入によって割り引かれるサービスが異なっています。今までは世帯で年収280万円以下が1割、それ以上の年収では2割となっていましたが、今後の介護保険の改定によって更に負担する介護保険が見直されることになるとされているのです。
とは言え、今後は5年後を目安に更なる負担軽減が期待されています。ただし、サービスの割合はあるものの、支える介護士不足も問題とされているのです。
高齢者虐待防止法
2006年には改正介護法と共に、65歳以上を対象とする高齢者虐待防止法も成立されたのです。第30条まである法律は、身体だけに捉われず、精神的な面でのダメージも加わっています。
高齢者同士にとどまったことではなく、家族や成年後見人も含まれているのです。他人はもちろんのこと、高齢者への虐待を防ぐための法律も成立されています。
後期高齢者医療制度
2008年成立した後期高齢者医療制度とは、65歳以上の寝たきりや障害などを持っている場合、または75歳以上の高齢者が加入する医療制度です。外来や入院などの負担が軽くなるのですが、国民健康保険や健康保険組合などから脱退し、後期高齢者医療保険に加入する必要があります。
収入にバランスが世帯で夫婦2人で年収520万円以上では3割、1人世帯で383万円以上、またはそれ以下に当たる場合には1割の負担となっているのです。
介護に悩んだらSOSをしっかり出そう
1番辛いのは介護される側より、介護する側と言えるかもしれません。好きで介護を受けるようになった訳でもない本人の元、共に支えなければならない介護する側の負担も大きいからです。介護に悩んだらどうするか、まずはSOSをしっかり出すことも必要でしょう。
親族や知人に相談
他人に頼りたくない、と感じても身近にいるのは親族や知人です。決して他人事と思うことなく、親身になってくれることも多いはず。知人もまた親しい中であれば本人が何ともできなくても、窓口を紹介してくれることもあります。
まずは相談してみるのは一番近い存在の親族や知人ではないでしょうか。介護の厳しさを伝えることで、糸口が見えてくるかもしれません。
行政に相談してみる
2006年の事件が発端になったとも言える行政のあり方です。周りには区役所の福祉事務所だけでなく、民生委員や保健センターなど相談する範囲は多いことが言えます。民生委員や保健センターは各市や町と連携を取っているので、行政に頼ってみることも大切です。
また民生委員は地域と連携しているので、状況によっては近隣のサポートも受けられます。福祉事務所だけでなく、ありとあらゆる連絡網を使って相談することが大切でしょう。
一人で悩まないことが大切
「介護うつ」にまで至らなくても、介護で悩むケースは断然多いことが伺えます。まずは一人で悩まないことが大切です。誰にも頼りたくない、頼っても無視される、と思い込まず連携を取る術を探すことが大切です。家族に殺意を抱くことの方が最も悲しいことなので、まずは一人で悩まず相談しましょう。
介護支援サービスを受けることが難しくても、相談窓口は必ずあるので相談が大切になります。自分で何とかしなくては、と思ったら抱え込む前に介護される側の顔を見てみると、思いとどまることが多いかもしれません。
介護の負担を軽減するには?
介護の実態で大切なのは24時間は頼れないことが一因です。ただ各サービスを受けることで、介護の負担を軽減することは可能になるでしょう。そのために必要なのはどんな種類があるのか紐解いてみます。
各種サービスを活用する
介護サービスは24時間ずっと受けられるものではありません。とは言え日中の負担を軽減することは可能になります。仕事との両立が可能になるだけではなく、誰もが「休息の時間」が必要だからです。仕事をしながら休むまもない実態ですが、各種のサービスを受けることが大切になると言えます。
また1人で閉鎖的になる環境から、脱出することも大切な要因です。閉鎖的な環境は「介護放棄」という悲しい現実もあり得ると言えます。
介護保険サービスを活用する
介護保険を活用しても休まることがない介護の現状。そこで介護支援専門員(ケアマネージャー)に相談することも大切です。一時的にショートステイをして、介護の現場から離れることや、一時的に介護の立場から解放される方法を取ることも大切でしょう。
一時的解放をするのは介護している本人であり、レスパイトケアと呼ばれています。それには要介護状態で在宅介護をしていることが原則となっているのです。
介護保外サービスを活用する
介護保険外サービスの活用も方法の一つです。介護にに直面する排泄や入浴のサービスだけでなく、介護する側の食事や掃除などもしてくれます。
ただし、介護保険外なので実質全額負担になるのですが、ケアマネージャーと相談することで地域によっては保険が適用される場合もあるのです。介護保険ではなく、国民健康保険でできるサービスなので相談し確認することも大切でしょう。
行政サービスを活用する
行政サービスという考えもあります。買う市町村で違いはありますが、地域の相談員や福祉事務所に確認してみると明らかになるでしょう。中では支給されるものの違いなどがあるので、しっかりと確認し行政に頼ることも一つです。
紙おむつの支給、または地域によってお米や野菜など家族を助けることもあるので、行政に頼るなどありとあらゆる手段を活用することが大切になります。介護する側の負担の軽減や、サービスによってできる範囲は様々なので、まずは相談が大事です。
プロに相談する
病院では対処してくれないと考えがちですが、認知症には専門の医師が存在します。当然介護する側の身体や精神的苦痛も理解しているので、介護される側はもちろんのこと、介護する側のメンタル面もサポートしてくれるのです。
病院の医師はまさにプロなので、まずは探してみることが大切になります。ケアマネージャーと同じく、専門の医師は秘密をきちんと守る立場なので、安心して相談できるのがポイントです。
介護スキルを身につける
排泄面や入浴時など困ったことが多いのが介護です。そのためには、自身が介護スキルをつけておくことが必要になる場合もあります。特殊な方法は専門の知識が必要なのですが、介護についての「会」に出席することも手です。介護スキルだけでなく、同じ悩みを持つ人との交流が持てるなど、精神的な面でもサポートとなるでしょう。
老人ホームとは
以前は「養老院」とも呼ばれたのですが、今では「老人ホーム」とも呼ばれています。生活環境や経済的に困った状態ではあるものの、自らのことはできます。健康管理だけではなく食事の提供をしてくれる介護施設です。
「有料老人ホーム」と呼ばれる実態
入院施設ではないものの、医師も在中していることや、食事の提供があることから「有料老人ホーム」とされ、月に0円〜14万円と幅があります。市町村の職員が家庭を訪問し、状況に応じて入居が可能か不可かか分かるようになっているのです。養護が目的ともされていますが、地質的には要支援に近い高齢者が対応しているケースが多いでしょう。
0円になる理由には、生活保護などを受けていたり、災害時や一人暮らしが困難とされることが多いです。居住スペースがあり入居者が数多く、個室や多床室あるので養護が必要な時には便利の良いスペースでしょう。そのまま特別養護老人ホームに移るケースも少なくありません。
特別養護老人ホーム「特養」とは
特別養護老人ホーム「特養」と呼ばれる理由には、完全に介護が必要とされる「特別さ」があります。健康管理や食事の提供だけではなく、身体のケアをしてくれる施設です。
特養には待機難民が多い理由
医師が在住している他、病院との連携も取れている施設です。完全に「介護」を目的として設立されたのが特別養護老人ホーム「特養」になります。居住スペース、浴室、トイレ、食堂などは「老人ホーム」と同じですが、自力で食事が困難な場合には介助してくれることも可能と言えるでしょう。要介護3以上の認定が原則で、なおかつ待機難民が多い施設です。月に8万円〜13万円の費用がかかりますが、こちらも経済状況によっては減額が可能になります。
介護全般を補ってくれる場所といって良いでしょう。保護者は家族や親族など様々になりますが、それは老人ホームも特養も同じ扱いになっています。家での介護が厳しい場合に入居するので、家庭内の状況によって特養の入居者と施設の数が圧倒的にあっていません。そのために介護難民が増えていると言えます。
介護をテーマにした作品
「介護」と一言で言っても様々な種類があります。中でも本になっているものが多く、そのほとんどが介護の実態を書いたものです。いくつかの作品の中から、参考までにこちらをご覧ください。
『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』
こちらの作品は筋ジストロフィーになり病魔と格闘する姿と、それを支える周りのボランティアや学生などの日常を書いた作品です。こちら作品は介護問題を捉えた、ノンフィクションとなっています。
『最強のふたり』
こちらはDVDで発売されていますが、スラム街で育った青年と、大富豪の元で育った真逆の青年。大富豪の青年は事故で下半身麻痺になってしまます。正反対のように思われた2人が待ち受けている、様々な苦難とともに笑顔も溢れ向き合うドキュメンタリーになっています。
『任侠ヘルパー』
暴力団員が老人介護施設で働くようになったのです。そこで待ち受けているものは何でしょうか。老人介護施設と暴力団員という違いから、介護の実態とどのような展開になるでしょう。ヒューマンドラマとして全11話収録されている作品になります。
介護問題は社会全体の問題
介護問題は若い世代に頼ったら良いということではありません。子が親の面倒を見る、夫婦で助け合うだけで済む話でもない深刻な社会問題です。老老介護・認認介護もまた、老人福祉施設だけに頼ることができないのが現状ではないでしょうか。
周りに相談をしつつ、その中に眠る間も惜しんでいる姿を思い浮かべて見ると、プラスして介護があるのでその大変さは想像を超えるものがあるのが実情です。
いつ誰の身に起こるか分からない大きな問題と言えるので、行政はもちろん地域や親族が一丸になって取り組んでいかなければ、痛ましい事件は防ぐことができない大きな問題でしょう。今隣で苦しんでいる人がいるかもしれません。
社会問題として介護問題は取り糺されていますが、一人一人の認識もまた必要であり、社会全体で取り組んでいかなければいけない重大な問題ではないでしょうか。