見た目が衝撃すぎた!ウオノエってどんな生物?
近年、生き物好きの間で少しずつ話題になりつつある珍妙生物・ウオノエ。
小さくコロコロとした姿は見ようによってはかわいい?きもカワ?などと評されることもしばしば。ダイオウグソムシ(スナホリムシ科)と近い分類であるため、見た目もどことなく似ています。
ウオノエの住まいは魚の口の中
彼らの住居は自分たちより大きな魚のお口の中にあります。海の世界においては他の魚と共生関係を築く種族は珍しくありません。
たとえば掃除魚と呼ばれるハゼやベラの仲間は、他の魚の老廃物や寄生虫を除去してくれる海のエステティシャンです。…つまり、ウオノエも掃除魚だということ?
ウオノエは寄生虫の一種
いいえ、違います。ウオノメは魚類ではないし、他の魚と手を取り合った相利共生の関係でもありません。
実はウオノエは虫の一種。魚たちを巧みに利用して生きている、とぼけた見た目に反してあなどれない奴らだったのです。
ウオノエが好きなのはタイやアジ
彼らにも好みのタイプの家があって、お気に入りは鯛・鯵・鱵などの口、または体の表面です。
海釣りがお好きな方であれば、釣り上げた獲物から針を取ろうとする時、お口の中のウオノエと「コンニチワ!」して目が合ったことがあるかもしれませんね。
皮肉すぎるウオノエの漢字
見た目からもっと愛嬌のある生き物かと思いきや、寄生虫とは…。だんだん不穏になってきました。しかし一口に寄生虫と言っても、その生態は実に多様です。
次からはウオノエの実態をひとつずつ紐解いていきます。まずは彼らがなぜウオノエと呼ばれるかについてお話ししましょう。
ウオノエの漢字は「魚の餌」
ウオノエは漢字で書くと「魚ノ餌」。読んで字のごとく、魚たちに食べられるもの、という意味です。彼らが魚の口内を住処としていることから、まるで食べられているかのように見えることが理由です。
しかし真実は違います。ウオノメは決して魚たちの食料になることはないのです。
ウオノエの正体からいうと「魚が餌」!
寄生虫ということは、つまり宿主から栄養を取って生きる生物です。むしろ餌になっているのは住まいとなっている魚たちの側なのです。
これでは「ウオノエ」でなく「ウオガエ」ですね。意図して名付けたどうかは分かりませんが実に皮肉なネーミングです。
宿主を殺す汚いチートマスター「ウオノエ」
次は彼らの寄生ライフに着目していきます。どのような形で宿主に取りつき、何を食べるのか?寄生された魚はどうなってしまうのか?
だんだん魚たちが気の毒に感じるかもしれませんが、これも熾烈な生存競争の一環、厳しい自然を生き残るためなのです。
餌のフリして魚の口内にちゃっかり寄生!
最初にウオノエは「私はお魚さんたちのおいしいごはんです」と、無害を装って餌となります。
そして飲み込まれないよう上手に口の中にへばりつき、魚たちがその存在に気が付かないうちに、どっしりと住まいをかまえてしまうのです。
ウオノエの口内リフォーム術がえぐい!
自分の体長より大きい魚とはいえ、お家は少々窮屈です。そこでウオノエの大改造・劇的リフォーム開始です!
まず魚の舌から血液を徹底的に吸いつくします。やがて壊死した舌が腐り落ち、口内に広いスペースが確保されます。なんということでしょう、匠の技によって快適な住まいを手に入れることができました!
居候している魚の体液を吸い付くし殺す
しかし舌だけでは飽き足らない貪欲なウオノエ、血液や体液をどんどん吸い続けます。そのうち宿主である魚は栄養失調で死んでしまいますが、そうなると最後は「お引越し」、新たな宿主を求めて移動します。
食い荒らすだけ食い荒らしてあっさりオサラバ、なかなかにおそろしい連中です。
迷惑千万!狭い魚の口の中に複数同居もアリ
口の中に居座られるだけでも魚としては大迷惑なのですが、その上寄生するウオノエは1体だけとは限らないのです。
狭いながらも楽しい我が家…というと微笑ましい風景ですが、住みつかれた方はお口の中が大渋滞。とてもたまったものではありません。
魚の口の中にウオノエ2匹発見!
このように、1匹の魚から2体のウオノエが見つかることも多々あります。これはつがい、つまり夫婦で寄生している個体であり、小さい方がオスです。
ウオノエはメスのほうがオスよりずっと大きな体格をしています。なおこの小さなオス、捌いた時にはまだ生きていたとか。
ウオノエは魚の口内で繁殖する
彼らは自分の居住エリア、つまり魚の口内で繁殖することが基本です。海は外敵が多く、たくさんの危険に溢れています。ウオノエたちには直接的な攻撃手段がありませんので、安全に子育てするなら家から出ないことが一番なのです。
なお彼らの婚活は「結婚相手が口の中に入ってくるのをひたすら待つ」という、究極の据え腰スタイルです。
ウオノエに雄雌はない
またウオノエには元々決まった性別がなく、先に口内に住み着いた方がメス、後から寄生した方がオスに変化します。めったに出会いのない環境なので、異性を待つより性転換したほうが手っ取り早いのです。
メスは抱卵し、やがて孵化した容態はプランクトンとなって大海原に独り立ちします。
ウオノエは人間に寄生するのか?
寄生先に選ばれる魚たち、鯛や鯵などは家庭の食卓にもよくのぼる食材です。店頭で販売されている商品からも見つかることがあり、「寄生された魚を人間が食べてしまったら?体に悪い影響があるんじゃ…もしかして人にも寄生するの…?」と不安になった方も多いでしょう。
ですが結論を言ってしまうと、答えは「大丈夫!」です。
ウオノエは人間には寄生しない
ウオノエが人間に寄生することはありません。魚以外には寄生できないのです。我々人間がお気に召さないようで心底安心ですね。
魚にとりつく虫のほとんどは人間に害を成しませんが、アニサキスのように一部例外はあります。詳しくは次の記事からどうぞ。
ウオノエは無害!うっかり食べても問題なし
もちろん宿主の魚を食べても何の害もありません。単に体液を吸い取っているだけで、毒や菌を注入しているわけではないからです。
強いて言うなら、栄養を取られてしまった魚は身が痩せて味が落ちているかもしれません。