コチニールカイガラムシとは?赤い食品に使われる着色料は虫?
市販の食品の多くに着色料が使われていることは、今や誰もが知っている常識です。「赤」の着色料であるコチニール色素は、食紅としていちごオレや口紅の色づけに使用され、安全性が認められているものの時にアレルギーを引き起こすこともあります。
驚きなのは、これがコチニールカイガラムシという虫を原材料としていることです。
コチニールカイガラムシからとれる色素とは?
コチニールカイガラムシからはカーマインレッドと呼ばれるような、濃く鮮やかな赤色の色素が抽出されます。
染料として、また特に食品の着色に多く使われてきたため、誰でも一度は触れたことがあると言っても過言ではありません。昆虫食文化が一般的とは言えない日本ではかなり驚かれる知識です。
コチニール色素と呼ばれている
色素は虫の名前から「コチニール色素」と呼ばれています。雌のコチニールカイガラムシから抽出され、日本には近代に入ってから輸入されるようになりました。化学染料が開発される前は貴重な顔料として、陣羽織などの特別な衣装を染め上げることに利用されていました。
コチニール色素は古代~中世から使われている
世界でのコチニール色素の歴史は古く、古代や中世時代にも養殖の記録が確認されています。最も古い記録上では古代インカ帝国で使われていたぐらい、由緒正しき顔料なのです。
自然界にあるものの中から、退色しづらい鮮やかな発色を得る難しさを考えると、コチニールカイガラムシがどれだけ貴重なものであったかが分かります。
コチニールカイガラムシはインドや東南アジア諸国で養殖されていた
インド、また東南アジアの一部でコチニールカイガラムシは養殖されてきました。雌だけが対象とされたのは、羽があって飛んで逃げてしまう雄と違い、雌は生まれてすぐに一生同じサボテンに定住し続けるからです。
その時、身を守るためワックスのようなコーティング物質を分泌し、これが巡り巡って赤い色素の元になります。
コチニールカイガラムシは日本には生息していない
コチニールカイガラムシはサボテンが生えるような、高温で乾燥した地域の生物であるため、日本では養殖されていません。
かつては鉱物や植物から赤の着色料を入手していました。現在でも有名なのはベニバナで、現在も草木染めの材料として用いられています。ジブリ映画『おもひでぽろぽろ』にも登場しました。
コチニールカイガラムシの色素の用途・使い道は?身近なものに!
普段の生活から着色料を意識することは少ないと思います。ですが気づかなかっただけで、私たちは日常のあらゆる場所の中で、コチニールカイガラムシを取り入れています。
虫嫌いな人にはたまったものではないでしょうが、下記記事のように、私たちは案外虫のお世話になって生きているものです。
コチニール色素の使い道①いちごオレなどの赤い食品
たとえばいちごオレ。牛乳と苺が混ざったピンク色が甘い風味を連想させてくれますが、この色は苺を潰して抽出したものでなく、コチニールカイガラムシを使用したためです。
本物の苺は時間が経過するとどうしても酸化で黒ずんでしまうため、いつまでも新鮮に見せてくれる食紅は欠かせないものでした。
コチニール色素の使い道②食紅・化粧品
また、食品を色づけるための食紅のほかに、その鮮やかな赤色から口紅などの化粧品に利用されることもあります。
食べるにせよ、見るにせよ、多くの人が好ましく感じる色であるからこそ、コチニールカイガラムシはこんなにも日常で多用されているのです。
コチニールカイガラムシの色素の安全性は?
いちごオレに虫?口紅に虫?!食べたり塗ったりして大丈夫なの?安全性は…?と不安になった人もいるでしょうが、そもそも人体に害がないからこそ添加されているのです。
抵抗感があるのはあくまで気分的な面の話です。事実いちごオレなどは日本で長く愛されている飲料ですが、これといって問題なく楽しまれ続けています。
コチニール色素は各種の安全性試験の結果は安全
食品検査に対し厳しい欧米でも、コチニール色素は温度や光度からの干渉に強く、安定した安全性があると評価されています。
発がん性物質なども確認されず、摂取し続けることによって蓄積される毒性もないとされています。子供のお菓子に使用しても大丈夫ということですね。
コチニール色素は自然由来で安全だという意見がある
また原材料が虫、あくまでも天然由来の自然生物であるため、むしろ安全であるという意見も多く聞かれます。
確かに、人為的に操作された化学薬品や遺伝改良品より、古代よりずっと人類と付き合い続けてきた虫のほうが、よほど危険性がないとも言えます。歴史が証明してくれた安全性ですね。
コチニール色素は菜食主義・信仰上の理由で批判される場合も
ですがコチニールカイガラムシ、つまり生き物を養殖・顔料とすることに、ベジタリアンをはじめとする菜食主義者や、宗教上制約のある人たちからは批判を受けることもあります。
こういった理由で一切の使用を取りやめる必要はありませんが、成分表記を明確にすることは重要でしょう。
コチニールカイガラムシの色素でアレルギーが起きた例も
甲殻類やナッツには注意を払えますが、コチニールカイガラムシのことを知らなければ、なかなか避けようとは思いつかないものです。
喘息・アナフィラキシーショックの原因になることがある
着色料の含まれたものを摂取することによって、喘息症状、またはアナフィラキシーショックの原因になることがあります。
これまでの発症例はすべて女性であることから、主となる要因は化粧品であると考えられています。いちごオレを毎日飲む人は少数派ですが、口紅を毎日使う人は珍しくありませんからね。
アレルギーは色素を生物から抽出する際のタンパク質が原因
アレルギーはコチニール色素そのものによって引き起こされるものでなく、原材料となったコチニールカイガラムシ由来のたんぱく質が原因と考えられています。
よって、原材料にアレルゲンを低下させる処理を施すなどの対策がとられています。
コチニールカイガラムシの色素が使われていると知った世間の反応は?
自分たちが日々口にしている食品に実は虫が使用されていたと知って、たいていの人は大きなショックを受けます。特に虫嫌いの人からしたらたまったものではありません。
この項目では、コチニール色素の正体と、コチニールカイガラムシの姿を知ってしまった人たちの反応をお伝えしましょう。
スタバの商品・ファンタなどに含まれていることにショックの声が
人気商品にコチニールカイガラムシが使用されていると知って、まさに混乱と困惑のコメントが満載です。
見た目がいかにも虫らしいのも悪評の一因のようですが、下記特集のようにかわいい虫であればそれはそれで問題視される気もします。
コチニール色素の現在は?切り替えが進んでいる?
発症例が少ないとはいえアレルギー報告があること、また健康被害を抜きにしても、人々に与える抵抗感が大きいとして、現在コチニールカイガラムシは別の食紅への切り替えがすすめられています。
たとえば次の商品は、こういった形の変化を遂げようとしているのです。
スターバックスはリコピンの使用へ切り替え
スターバックスには以前から、コチニールカイガラムシのような虫由来の食紅を使用することに不安の声が寄せられていました。健康上問題はないものの、消費者への配慮として、スターバックスは今後リコピンという植物由来の顔料に切り替えていくことを発表しています。
カンパリもコチニール色素の使用を中止
カクテルに多用されることで日本にもよく馴染んだリキュール・カンパリですが、ルビーのように澄んだ赤色を出すのにコチニールカイガラムシが使用されていました。