ヤママユガとはどんな蛾?幼虫や繭の特徴、種類や飼育方法など紹介

ヤママユガとは翅に目のような模様が入っている褐色の蛾で、大型の蛾の1種。そんなヤママユガからは「天蚕糸(てぐすいと)」という高級な繊維を摂ることができ、昔から日本で馴染みのある蛾でもあります。この記事ではヤママユガの幼虫や繭の特徴、種類や飼育方法など紹介します。

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日本の端っこに住んでいます。自然が大好きで、リフレッシュしたい時は海に行ってぼーっとしたり、山に登ってみたり・・・長いお休みがある時には旅行にでかけます。アウトドア情報が大好物です!さて、次はどこに行こうかな?
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ヤママユガとはどんな虫?生体や特徴などを紹介

日本在来の蛾の中でも代表的だとして知られていて全国様々な場所に生息しています。昔の日本で、蚕産業を生業としていたような地域ではよく目にする生物で、じつは慣れ親しんだ生物の一つであるという人もいるかもしれません。

日本では北海道から九州まで生息するヤママユガ

この蛾は外来種ではなく昔から日本にいた種類になります。日本全国の北海道から九州にかけて広い地域で生息していて主に季節に併せて葉が落ちるような種類の樹木が多い雑木林を住処としています。

ヤママユガは翅を広げると15cmを超えることも?大型の蛾

実物を目の前にするとその大きさに驚く人が多いようです。前の部分の翅一枚だけで約7cmから8.5cmの大きいものを持つモノも存在しているようです。両方の翅を広げると大きいものだと15cmを優に超える国内にる蛾の中でも大型のモノになります。

口は退化?蛹になってからはエサは食べないヤママユガ

実は、口の部分は進化の過程で退化してしまいありません。成虫になると、口から栄養を摂取するのではなく蛹になる前に幼虫の時に食べて蓄積しておいた栄養を使って生きていきます。そのため成虫になった後の寿命はとても短いのです。

ヤママユガは7月〜9月にかけて見ることができる

この種類は年に1回しか誕生しないので限られた時期のみ姿を見ることができます。だいたい7月から9月にかけて成虫を見る事ができ、卵を産んだ後は死んでしまいます。そしてその卵は冬を超えてよく年の4月以降に孵化するのです。

ヤママユガの幼虫を見かける時期や大きさなど紹介!

実際に言われてみれば、繭になった状態などはテレビや資料などで見た事があるけれど、幼虫がどのような姿をしているのか?を知っている人は限られるのではないでしょうか。そんな幼虫時代についてご紹介します。

4月〜6月にかけて見かけるヤママユガの幼虫

上でも紹介しているように、卵の状態で越冬し、次の年の4月ごろからどんどん孵化していきます。時期が限定されるので、その時期を狙って生息している地域にいけば珍しい姿を見る事ができるのかもしれません。

ヤママユガの幼虫はブナ科の木の葉を食べる

幼虫期には口があるので成虫になったときの分の栄養もしっかりと蓄えるように食事をします。主にブナ科のナラ、クヌギ、クリ、カシ、カシワあとはミズナラなどの葉を食べます。木の種類に注意してみれば以外に簡単に幼虫を見つける事ができます。

やがて鮮やかな緑色に!7cmほどの大きさになるヤママユガの幼虫

この幼虫は蚕になるまでに4回の脱皮を繰り替えして熟蚕になっていきます。その過程でとても色鮮やかな緑・黄緑色のような色になっていきます。体の節からは毛の束が飛び出していてまるでそれは外敵にむかって威嚇しているような姿にも見えます。

ヤママユガの幼虫に毒はある?猛毒を持つヤママユガも?

socialneuron / Pixabay

昆虫の世界では、奇妙な形・色鮮やか・尖っているなどの特徴は毒を持っている場合も見受けられますが、実際にこの蛾の幼虫には毒があるのでしょうか?見た目だけではわからないので覚えておくといいでしょう。

ヤママユガの幼虫は毒を持っていない!触れても問題なし

実はこの幼虫または成虫になっても毒は一切ありません。このヤママユガ科の仲間にも国内には毒を持つ種類の蛾は存在していないので安心してください。無毒だからこそ、産業として飼っていた人が多かったり現在でも飼育する目的で飼われているのかもしれません。

中南米に生息するベネズエラヤママユガの幼虫は猛毒を持っている

ただし、注意してもらいたいのは海外にいる同じ種類の蛾の幼虫です。ベネズエラに生奥しているモノは、奇妙な見た目の幼虫は猛毒を持っており、触った人間を死に至らしめることもあるようです。そして現地では「暗殺毛虫」とも呼ばれています。

ギアナで発見された品種も個性的!

フランス領であるギアナで発見された種がネット上で話題になっています。そのカラフルな姿はまるでピエロなどの道化師のようで目を惹く姿をしています。毒を持っているのかどうかは定かにはなってないのですが、それでも話題になった姿です。

ヤママユガの繭はどんな見た目?特徴など紹介

成虫の姿、幼虫の姿ときたら繭になった時の姿はどのような見た目なのでしょうか?実際に「蚕」の姿は知っているけれど違いはあるのでしょうか?ぜひ一度は知っていただきたい美しい繭についてご紹介します。

体の周囲に糸を出して繭をつくるヤママユガ

幼虫が繭を作る段階になると、葉っぱと葉っぱの間に隠れながら体から糸を出していきます。体の周りをおおうように少しずつ糸を出していき身体中を包み込んでいくと繭の完成になります。葉っぱに繭が隠れるように一緒に糸でくっつけていくのが野生のスタイルです。

ヤママユガの繭は卵形で緑色!蚕よりも大きな繭

出来上がった繭の形は、普通の蚕よりも大きなサイズで卵形になっています。そして、幼虫のあの色鮮やかな色合いを彷彿とさせるような美しい緑色をした繭が大きな特徴です。ヤママユガのこの美しい繭が見たくて飼育を続けている人もいるようです。

特徴

この美しい繭の特徴とは何でしょうか?色はすでにご紹介しているとおり、美しいグリーンです。時には生成り色のものもできたりします。この繭は光を乱反射吸収し、品のある艶感がでる仕上がりになるのが特徴です。

ヤママユガの繭からは高級な天蚕糸が採れる

長野県の信州安曇野の穂高有明地区では、この美しい緑色をした繭から紡がれた糸を使った特産品があり、実際に200年以上にも渡り伝統として守られてきています。なぜそんなにも人々を惹きつけるのか?調べてみました。

昔から人によって飼育されていたヤママユガ

この穂高有明地区では1780年代頃から飼育が始められていたと言われています。昔の史書には1828年に名前が登場しており、1800年代には農業している人たちのオフシーズンの副業として飼育されることが多くなってきたと言われています。

ヤママユガの緑色の繭からは緑色の天蚕糸を採ることができる

この繭から採れる糸は「てんさんし」とも呼ばれ、繭がずらりと並んだその光景はまるで木々の木漏れ日を浴びているような気分になるような優しく美しい緑色の世界を見ることができます。もちろんその繭から採れる糸の緑が自然の色なので、それで作る特産品もとても貴重なものになります。

てんさんし?てぐすいと?

天蚕糸と書いて様々な読み方があるようですが、主に安曇野などで特産品として使われている場合は「テンサンシ」と呼ばれます。釣りなどに使うような糸として使われる事もあったので「テグスイト」という呼び名も存在していますが、基本的には同じモノを指しています。

絹よりも柔らかい?高級品の天蚕糸

実は普通の繭から採れる白い絹糸と比べると、柔軟性がありしなやかなので製品化した後もしわになりにくおいう特徴を持ちます。「繊維のダイヤモンド」や「繊維の女王」と呼ばれほど高品質の製品を作ることができる高級な糸に仕上がるのです。

高級な着物として

この素材だけで織られた着物や、白地に模様の部分だけ天蚕糸がつかわれた着物などがあります。とても貴重なのもので現在はなかなか手に入らないです。何よりも天然の色でここまで美しく優しい色合いになるのが素晴らしいですね。

ジェルクリームとして

出典:楽天

実は織物以外にもお肌につける美容クリームという製品も作られています。アミノ酸タンパクが含まれているので、お肌にも良い影響を与えてくれるのを期待する事ができます。世界初の天蚕からうまれたジェルクリームとして知られています。

ヤママユガの幼虫を飼育する方法とは

そんなとても貴重で高品質な絹糸を作ることができるこの幼虫を育てる事はできるのでしょうか?実際に自分の手で蚕の飼育を楽しんでいる人も多いようです。ゆっくりと1年を通して飼育してみるのもいいかもしれませんね。

ヤママユガの幼虫は飼育可能!ブナ科の葉を枝ごと入手し瓶に活ける

実は簡単に飼育が可能です。幼虫を入手できたら、餌になるブナ科の植物を瓶に活けて幼虫と一緒の飼育ゲージに入れておくだけです。後々に枝に繭を作るので、葉っぱをちぎっていれるのではなく枝もついたまま入れるのを覚えておきましょう。

ヤママユガは日当たりや水はけの良い環境で育てること

野生の環境と極力同じ環境を整えてあげるといいでしょう。水はけのいい環境や日当たりは良好かどうか?なども重要なポイントです。また気温変動が激しすぎたり、乾燥しすぎたりするのも極力避けるようにしましょう。

多くの人が参考にしている書籍もある

天蚕―Science & Technology

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あなたの身近に蚕を飼育している人っていますか?なかなかいないですよね。実際に調べてみるとこのこの書籍を参考に飼育を工夫している人が多いようです。古い書籍ではありますが、的確な飼育方法をイラスト付きで紹介してくれるのがありがたいです。

ヤママユガを育てる上で病気や害虫には注意が必要

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