【西口彰】事件の概要の判決、犯人の生い立ちとは?家族・被害者の現在も

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また、ミッションスクールでもその厳しさに耐え切れず中退という自身の弱さを痛感し、自信を喪失したのではないかと考えられます。ここで思い出してほしいのが、西口が自身を弁護士など、地位のある者と詐称していた点です。

権力に屈した父の姿、他の人間が当たり前のように出来ている寮生活をリタイアしてしまったという挫折、それらが彼の自信や自己肯定感を低下させてしまっていたのだとしたら、自分を強く見せるため権力の象徴であるエリートになりきり、人を騙し殺めることで失った自信を埋めようとしていたのかもしれません。

西口彰の意外なエピソード

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西口は5人をも殺害した凶悪な犯罪者です。しかしその一方で、人のために必死になるという熱い一面も持ち合わせていました。ここではそんなエピソードをご紹介します。西口という人物の多面性、その深さをご覧いただきたいと思います。

西口彰のエピソード①ぐれた息子に20枚以上の手紙を書き更生させた

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西口が死刑判決を受けた後、長男は父親が凶悪な犯罪者だと知るとぐれて、学校にも通わなくなってしまいました。それを耳にした西口は「俺のような人間になるな」と獄中から20枚以上の手紙を書きました。それを読んだ長男は考えを改め更生。それを知った西口は非常に喜んだと言います。

自身も学校を中退したことから全てが狂ってしまった西口。犯罪者でありながら、子供に同じ道を歩ませまいと必死になる姿には、一瞬人殺しだということさえ忘れてしまいます。彼の特殊さは、この人間味のある人格にあると言えます。

西口彰のエピソード②死刑前にはボランティア活動

西口は死刑前、獄中で点字を翻訳するボランティアに従事していました。文通相手の女子大生からの依頼で、卒業論文に使う哲学書を点字に訳したのです。その量は膨大で、一日中作業をする日が6ヶ月も続きましたが、西口はそれをやり遂げました。

その後手記には「誰かのために本気で仕事をしたのは初めてだった」と記されています。また、この哲学書は他大学の男子学生も使用し、その卒業論文に一役買っています。獄中から人の役に立つため、過酷な作業を続けた西口。殺人を犯した人物にしては非常に意外に感じられます。

西口彰はサイコパス?

西口はその人格、行動から「サイコパス」、反社会的な精神病者なのではないかと言われました。サイコパスとは一般人に比べ非常に偏った思考や行動を平気でする人物のことを指します。例えば、口が非常に達者だが息を吐くように嘘をつく、道徳や倫理に反することに何の抵抗も感じない、人を傷つけることに躊躇や罪悪感を持たない、などです。

表面的にはコミュニケーションが上手く、自身の気分やこだわりによっては人に親切にするため、その落差に人は非常に驚きます。西口は5人もの人を殺害しましたが、前述したように家族、そして一部の他人には優しく、入れ込む一面がありました。このことから彼はサイコパスだと言われています。

 西口彰を始めとするサイコパスと言われる犯人たち

犯罪者の中には、西口以外にもサイコパスと診断された人間が沢山います。明確な怨恨などの動機、そして人を殺めた後の後悔、恐怖を全く持たないその行動は、私達一般人を驚かせるものがあります。ここでは、2人のサイコパスをご紹介します。

大阪姉妹殺人事件の山地悠紀夫

ふらっと買い物に行くように、ふらっと人を殺しに行ったのです(出典:Wikipedia)

こちらは16歳の時に金属バッドで母親を殺害、そこで殺人に快楽を覚え、21歳の時に大阪で、何の罪も関係もない20代の姉妹を強姦、殺害の上現場に火をつけた山地悠紀夫が話した言葉です。裁判で自身の死刑に対する嘆願書が提出されましたが、その感想を聞かれても「何も」と答え、「死刑でいいです」という無気力な言葉も残しています。

自らの快楽だけのために簡単に人の命を奪い罪悪感も持たないという点が、医師により正式に反社会的人格障害(サイコパス)だと診断されました。彼は逮捕後の車内を捕らえられた写真でも、ほのかに笑みを浮かべた異様な表情を見せています。

埼玉愛犬家連続殺人事件の関根元

死体を透明にする(出典:Wikipedia)

ひとめで異常性が高いと分かるこの発言は、妻と共謀し殺人事件を起こしたペットショップオーナー・関根元という犯罪者が残した言葉です。金銭トラブルをきっかけに、欲張りな人間は殺す、と発言し、口封じも含めて4人を殺害、その遺体も完璧に処理した異常な人物です。

人を殺した時に最も大切なのは死体の処理、いかに血を流さないかが重要、と発言し、実際に4人の遺体はほぼ形も残らず処理されました。また、殺人自体を楽しんでいるような発言も見られます。自身の財産や快楽のために迷いなく人を殺めそれを誇るかのような言動は、完全なるサイコパスであると診断されました。

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関根元、そして埼玉愛犬家殺人事件に関する詳しい内容は、こちらの記事をご参照ください。その事件の異常性、犯人の身勝手さやその後の判決などがご覧いただけます。

 他の犯罪者の意外なエピソード

犯罪者にはただの凶悪さだけでなく、意外性のある特殊なエピソードが多くつきまといます。それは西口だけではなく、他の犯罪者にも多々見られることです。そんなエピソードをいくつかご紹介します。

難読書を愛し記憶力に長けていた強盗殺人犯

1979年、昭和54年、三菱銀行殺人事件が起こりました。犯人は梅川昭美。30歳の時に銀行強盗を企て、結果失敗。そのまま立てこもり、5人の人間を殺害しています。そんな事件を起こした梅川ですが、高校中退ながら毎月難読書を何冊も紐解く読書家でもありました。

本にかける金額はひと月に1万円以上、ニーチェ、ドフトエフスキー、ヒトラー、ムッソリーニ、スターリンなどの伝記、医学書、経営学書、六法全書など、家には600冊に及ぶ本があったと言います。また記憶力が非常によく、立てこもりの際も人質39名のフルネームと顔を覚えていました。

多すぎる犯罪を重ね8人をも殺害した有能消防士

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1972年から10年間に渡り「勝田清孝事件」という事件が起こりました。これは、勝田清孝という人物が24歳から34歳までの間におよそ300件の窃盗や強盗を犯し、8人もの人間を殺害したものです。あまりにも残虐かつ過激な犯行でしたが、実は犯人の表の顔は真面目な消防士でした。

しかも事件の真っ最中、勝田は夫婦でクイズ番組に出演、優勝を勝ち取っています。また、同じく犯行のさなかに仕事では20回の表彰を受け、全国消防救助技術大会に2年連続で入賞、消防士長に昇格していました。10年間で300回以上も人を傷つけ続けた勝田には、明るく社交的で人を助けることに長けているという皮肉な別の顔があったのです。

西口彰の逃走劇の警察への影響

戦後、日本では道路の整備や自動車の普及が加速しました。それにより犯罪者がより速く、より遠くまで逃走出来るようになってしまいましたが、西口彰事件当時、警察の都道府県同士での連携は万全ではありませんでした。そのため事件の早期解決が難解になっており、この事件でも被害者を増やす結果に繋がりました。

西口彰事件を受けて警視庁は、以上の状態を非常に深刻に捉えました。そして1964年に「広域重要事件特別捜査要綱」というものを制定します。これは犯人が都道府県をまたがって犯罪を繰り返したと思われる時、また他の都道府県に協力の要請が必要な時に、各県警が協力し合うための調整を警視庁がする、という規定でした。

西口彰が題材になったドラマや小説

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西口彰事件は、西口の異常さ、軽薄さ、その人物像が意外性に満ちていたことから、多くのメディア化が為されました。ここではその中から2作品をご紹介します。どちらも読者や視聴者の反響、評価ともに大きく、作家や役者の力量もさることながら、この事件の魅力の高さが伺えました。

 西口彰が題材の作品①小説「復讐するは我にあり」

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この事件を題材として1976年、左木隆三というノンフィクション作家が「復讐するは我にあり」というタイトルで小説を発行しました。内容は、西口の名前が変更された以外はほぼ事実に沿って描かれています。ただ、左木は西口を肯定も否定もしないというスタンスで作品を書き切りました。

この小説は第74回直木賞を受賞。ドラマ化、映画化もされています。映画の方も、数々の映画賞を総なめにしました。「復讐するは我にあり」というタイトルは新約聖書から取られた言葉で、「悪人に罰を与えるのはただ神のみである」という意味を持っています。

西口彰が題材の作品テレビドラマ。陣内智則主演

2014年、フジテレビ系列のドキュメンタリードラマ「東京オリンピックと世紀の大犯罪」において、お笑いタレントの陣内智則が西口を演じ、事件がドラマ化されました。ドキュメンタリー作品、しかも犯罪者を演じるのが初めてだった陣内は、当時以下のように話しています。

「劇中の指名手配用の写真を撮ったときに、我ながらちょっと似ているのでは? と思いました(苦笑)。彼は言葉巧みに人をだますので、とても頭が切れたんだろうと思いますね。その才能が殺人に向いてしまったのは非常に残念」(出典:シネマトゥデイ)

ドラマ内では服装や髪形、西口が実際に読んでいた本などを用いて事件を再現し、そのクオリティの高さは好評を得ました。実際、西口の写真とドラマでの陣内氏の写真を身比べると、表情や容貌などがかなり寄せられていることが伺えます。

他にもメディア化された犯罪事件は沢山!

西口彰事件以外にも、犯罪がメディア化された例は多くあります。その中から、ふたつの映画作品をご紹介したいと思います。グロテスクな表現もありながらその内容は我々に強く訴えかけるものがあり、一度はご覧いただきたい作品ばかりです。

埼玉愛犬家殺人事件を描いた「冷たい熱帯魚」

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上記でもご紹介した埼玉愛犬家殺人事件。こちらは2010年、園子音が監督となり映画化されました。タイトルは「冷たい熱帯魚」で、小さな熱帯魚店を営むオーナーが、人気熱帯魚店のオーナーと知り合い犯罪に巻き込まれていくストーリーです。

実際の犯人、関根は高級ペットショップの経営者でしたが、そこが熱帯魚店に変更されているだけで、ストーリーは基本的に事実を元に構成されています。人間関係や経緯に少しの違いがあり、ラストは映画オリジナルになっていますが、小さな店のオーナーが巻き込まれ共犯にされるというのも実際にあったことでした。

地下鉄サリン事件をモチーフとした「Distance」

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誰もが知っている史上最悪のテロ事件、地下鉄サリン事件。本作はこちらをモチーフとした映画です。巣鴨子供置き去り事件を描いた柳楽優弥主演作「誰も知らない」や、「海街ダイアリー」などを手掛けた是枝裕和が監督、2001年に公開されています。

無差別殺人事件を起こしたカルト教団の加害者家族を描いた作品で、地下鉄サリン事件に直接関係のある描写は登場しませんが、誰しもがオウム真理教を想起するでしょう。4人の加害者家族、そして1人の元信者がひとつのロッジで一夜を明かすこととなり、そこで彼らの心情が繊細に表現されています。

俳優陣の高い演技力にも引き込まれる

被害者のみでなく加害者家族の苦しみ、その後の生き方について淡々と語られ、考えさせられるストーリーとなっています。ARATAをはじめ、伊勢谷友介、寺島進、浅野忠信など、そうそうたる俳優陣による奥深い演技も見どころのひとつです。

 西口彰は凶悪殺人犯でありながら、人の役に立とうとする一面もあった

西口彰事件、これ自体は非常に凶悪なものでしたが、その犯人である西口は非常に人間味があり、自分以外の人間を心配し、役にも立とうとする優しさを持った人物でもありました。エピソードを聞けば聞くほど、彼が罪さえ犯していなければ、人のためにも生きられる人間になれたのではないかと推察されます。

犯罪に手を染めてしまったばかりに彼の長所が霞んでしまっていることを、彼を知る人々はやるせなく感じたのではないでしょうか。人間が自らの弱さに屈せずその魅力を輝かせていけるように、そして犯罪がひとつでも減るように、この事件がきっかけになればと祈るばかりです。

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