九相図(くそうず)とは?美女の遺体が朽ち果てる姿から見えてくる教えとは

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まず、京都市左京区に建つ浄土宗のお寺「住蓮山安楽寺(じゅうれんざんあんらくじ)」です。通称「松虫鈴虫寺」として親しまれます。毎年7月25日の「カボチャ供養」でも有名な場所ですね。拝観料は500円です。

ここで見られる九相図:「小野小町九相図」

安楽寺では、最初に一枚ずつ紹介した「小野小町九相図」を所蔵しています。つねに展示されるわけではないので、「小野小町九相図」を目的に訪問する予定であれば、予め安楽寺のホームページで展示予定を確認したり、電話をして閲覧は可能か聞いてみてください。

住蓮山安楽寺までの行き方を紹介

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通常は非公開のお寺です。春のさくらやつつじの時期、秋の紅葉の時期に特別公開されます。最寄り駅は京都駅です。京都駅から「岩倉操車場」行きの市バスに乗り、「真如堂前」で下車後、徒歩15分程度で到着します。安楽寺のホームページ上に地図も載っていますので、ご覧になってみてください。

見られる場所②桂光山西福寺

桂光山西福寺(さいふくじ)は、京都市東山区にある浄土宗のお寺です。空海がこの地に「土仏地蔵尊」を祀ったことから始まりました。生前、空海を信奉した檀林皇后も、この地を何度も訪れたと云われます。

ここで見られる九相図:『檀林皇后九相観』

檀林皇后の死後の過程は、画師により収められました。『小野小町九相図』よりも描写が細かくリアルであり、グロテスクです。動画2分30秒あたりから見ることができます。『檀林皇后九相観』は、六道参りの時期である8月上旬の3日間だけ公開されます。

桂光山西福寺までの行き方を紹介

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市バス利用の方は「五条坂」バス停で下車し、10分程度歩きます。京阪電車をご利用の方は、「清水五条駅」下車後、徒歩10分程度で到着します。鴨川沿いから、松原通を東方向に直進で西福寺が見えてきます。

見られる場所③九州国立博物館

たくさんの貴重な史料が保存される九州国立博物館においても、保管されています。しかし基本的に公開はされていない史料なので、イベント情報を確認しつつ、公開日を静かに待ち望むしかありません。

ここで見られる九相図:『九相詩絵巻』

『九相詩絵巻』とは、絵巻の形で残る「九相図」として最古のものであり、鎌倉時代に作成されたと云われます。もともとは神奈川県の個人が保有していたものを、現在は九州国立博物館が管理しています。

九州国立博物館までの行き方を紹介

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西鉄バスの最寄駅は「大宰府駅」です。太宰府駅から徒歩10分で到着します。JRを利用の際は、博多駅から鹿児島本線に乗り換え、二日市駅から西鉄バスを利用しましょう。駐車場もありますが有料で、1時間500円となっています。

「噉相(たんそう)」の一幕・『鳥葬』

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九相図の第六段階目にみられた「噉相(たんそう)」の一幕には、鳥に啄まれる描写が存在します。死体を鳥に処理してもらう、「鳥葬」という弔いの方法を今でも用いる地域があります。ここでは、「鳥葬」について解説を加え、より九相図への理解を深めていきます。

鳥葬とは

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チベット仏教、ゾロアスター教において行われる葬儀の方法です。中国のチベット仏教においては、鳥葬用の施設が存在しています。鳥がうまく食べてくれるように、僧侶が骨を石で砕きながら、細かく遺体を解体していきます。西インドのゾロアスター教でも、現在同じような手法がとられています

鳥葬を行う意義は?

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鳥葬を行うことで、鳥によって肉体をも「天へと送り届ける」ことができると信じられています。また、人間は生前に様々な生き物の命を奪い、食してきたのだから、死後くらい肉体を他の生物へと与えよう、という考え方も根幹にはあります。

日本ではタブー

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日本で鳥葬を行ってしまうと、刑法190条の「死体損壊罪」に抵触するおそれがあります。法的にもタブーです。鳥葬は遺体が傷つくのが前提ですから、遺体を傷つける意図があると解釈されることもあるのです。

九相図を描かせた檀林皇后や小野小町の思想の根幹にも、鳥葬に通ずる考え方がみられました。「噉相(たんそう)」という過程は、人間が他の生命と調和をする瞬間をとらえた一幕だといえます。鳥葬についての記事はこちらをどうぞ。

「九相図」をリアルに展望できる『死体農場』

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「九相図」が具現化したような場所があるのをご存知でしょうか?アメリカにある『死体農場』という場所です。名前からしておどろおどろしいですよね。でも名前とは裏腹に、真面目な研究施設なんです。

『死体農場(Body Farm/ボディ・ファーム)』とは

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『死体農場』とは、アメリカの法医人類学研究のための施設です。国の認可が下りた、公的な機関です。1981年、アメリカ・テネシー大学の敷地内が最初で、現在米国内に8か所存在しています。

本人や家族の意思により献体された、人間の死体を野ざらしにし、その腐敗と分解されゆく過程を観察し、そのメカニズムを明らかにすることを目的とした施設です。九相図に描かれたような人間の朽ち行く姿を、実際に見ることができます。しかし、研究施設ですので、気軽に入れる場所ではありません。

ハゲワシは最初に「眼」を食べる

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「噉相(たんそう)」の段階で、いくつか判明したことがあるようです。ハゲワシは人間の死体を、必ず眼球から食すのだそうです。また、動物に食べられると遺体の死亡時刻の判定は変わってしまうということも判明したそうです。

驚きの事実も判明

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そして研究者たちに一番大きな衝撃を与えた事実は、「シカ」が「人骨を食べる」というものでした。前々から人骨に噛み跡が残っていたが、肉食動物が肉を食らった際についたものだろうと、誰しもが思っていました。

しかし、経過を観察していると、シカが骨に噛みつく姿が映っていたのだといいます。草食動物も人骨は食すという衝撃的な結果です。『死体農場』について興味をお持ちいただけた方は、さらに詳しく解説されている次の記事もご覧になってみてください。

九相図から得られる物はあなたにも必ずある

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とてもグロテスクで、「なんでこんなものが残したのかわからない!」という印象を与えがちな「九相図」。煩悩を取り払うためだけの九相図ではありません。「九相図」からは、人間の肉体のもろさやはかなさ、さらには生命のつながりを読み取ることができます。

「九相図」を見て感じることは、人それぞれです。ただの「グロい絵」として「九相図」を眺めるのではなく、「九相図」が描かれた背景をしっかり理解し、今一度眺めてみることをおすすめします。その時はきっと、違った感情で「九相図」を受け止めることができるでしょう。

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