ひかりごけ事件とは?初めて裁かれた食人事件の内容や判決は?映画化も

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小説が発表された約40年後、その映画が世に送り出されました。主演は釣りバカ日誌などで有名な三國連太郎さんです。著名な俳優さんを起用されていることからもこの作品への力の入り方がわかります。それだけやはりこの事件は衝撃的なのでしょう。

今から30年程前というかなり昔の作品ですが、DVD化もされていますので興味のある方はぜひご覧になってみてください。

取材から描かれた合田一道によるノンフィクション作品も

「ひかりごけ」事件―難破船長食人犯罪の真相 (新風舎文庫)

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噂だけで書かれたフィクション小説がある一方で、真摯に事件と向き合い辛抱強く取材を行い書かれた著作もあります。断片的だった彼の供述を繋ぎ合わせ、整理し筆者は計3冊ものノンフィクション作品を仕上げました。

筆者が北海道出身ということもあり、土地の地理や事件の様子、実際の冬の過酷さなどよく理解されており、生涯非難され続けた船長の内面や苦悩によく寄り添った作品です。現在も購入可能なのでこの事件をより深く知りたい方はぜひ読んでみてください。

オペラや舞台でも描かれたひかりごけ事件

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フィクション小説を元にした舞台も行われました。最近だと2006年にも公演されています。現代においても、この一件は人々の心を今でも釘付けにする魅力があるのでしょう。元から小説も戯曲風に仕上げられており、より原作の雰囲気を忠実に楽しめます。

極限の状態で人はどのような選択をするのか、自分ならどうするかなどを考えるきっかけとして、舞台や映画に触れてみてもよいでしょう。

問われる倫理観

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ひかりごけの小説が世に出ることによって、事件の当事者であった彼は生涯苦しむことになりました。表現の自由は保証されるべきものですが、一人の人間の一生を苦しいものにしてよいのでしょうか。

発明家には「技術者倫理」が問われる

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現代では技術者が新しい技術を世の中に出す際、それがどのような影響を世に与えることになるのかを考えなければなりません。悪用されることはないか、人類にとって危険ではないのか技術者の責任を以て吟味するのです。

それが技術者として当然の行為であり、これが蔑ろにされて自身の発明により人類に大きな不幸が訪れれば、それは技術者自身の罪となり本人にふりかかるでしょう。

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どんな発明をしても自由ですが、だからこそ発明家自身がその影響を考慮しなければ人類は間違った方向へ技術を進化させてしまいます。その命運を握っているかも知れないという責任をひとりひとりが持たなくてはならないのです。

発明家にそれが求められているのは、過去に無責任な発明によりたくさんの危険な兵器を生み出してきてしまっているからです。過去ひどい失敗をしてしまったとしてもそこから学びそれを生かすことは素晴らしいことです。

「小説家倫理」は必要か

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今回の一件ではひとりの小説家が世に送り出した小説が発端となり、事件の加害者となった青年に風評被害が起こりました。書き手はまだ事件の風化もしていない時期に事件のことを本人に確かめるでもなく噂のみを元として青年が殺人を犯したかのような作品を生みました。

本当の事件を元にしているのであればその小説が世に出たときどのようなことが起こるのか少し考えれば予測できたはずです。もしこの作品が販売されなければ彼も多くの人に殺人者と噂されることなく生涯を過ごせたかもしれません。

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書き手はそのことについて考えるべきだったという意見もあるでしょうし、作り話を書くことにそのようなことを気にする必要はないと言う人もいるでしょう。どちらか正解だと断言することはできませんが、小説を出版することで一人の人生に不名誉の風評被害を生んだことは確かです。

その責任は、書き手が背負うべきものであるはずです。しかし責任を背負うと言っても、ひとりの人生の責任は誰にもとれません。つまり、終えないほどの責を産むようなことはするべきではないという考え方もあるでしょう。

自由だからこそ気をつけねばならないこと

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表現には自由があり、書くなということは誰にもできません。しかし、だからこそ、書く側がよく考え、その作品の影響を慮る必要があるのではないでしょうか。そのような倫理感を、できることなら小説の作者も持つべきなのかも知れません。

この問題にも正解はありませんが、皆さんもぜひこの倫理の必要か否かについて考えてみてください。

食人による事件で初めて刑が科されたひかりごけ事件

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生存するために仲間を食らい生き延び、そのことを罪に問われて世間からも非難されてきたこの一件は、その恐ろしい過酷な状況で私たちが一体どういった行動をとればよいのかについて考えさせられます。

禁忌を破った男というセンセーショナルな一面から小説や映画などの題材にもなりましたが、その実態はただ「生きたい」という生物として当たり前の願望をもち行動したひとりの人間の物語です。みなさんも自分なら彼の立場に立ったときにどうするか、ぜひ考えてみてください。

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