石狩沼田幌新事件!人食い羆が起こした日本史上二番目の獣害事件

石狩沼田幌新事件は三毛別羆事件に次ぐ2番目に被害が大きかった獣害事件です。現在は三毛別の知名度が上ですが、かつては丘珠事件と並ぶ北海道の羆による獣害事件として知られていました。今回は「ゴールデンカムイ」でも触れられた石狩沼田幌新事件について紹介していきます。

この記事をかいた人

自由気ままな子なし主婦。興味があること、みんなに知ってもらいたいことを書いていきます。
Array

石狩沼田幌新事件は史上二番目の獣害事件

Alexas_Fotos / Pixabay

羆の獣害事件と言えば、北海道が真っ先に出てくるほどに北海道は羆による獣害事件が非常に多いです。こんなにも有名なのは三毛別羆事件のような悲惨な獣害事件が二度と起きないようにテレビやネットで度々取り上げられているからです。三毛別羆事件の他にも北海道では今回ご紹介する石狩沼田幌羆事件という獣害事件が起きています。

この獣害事件でもかなりの被害が出てしまい八名の人が死亡する、重症を負うなどの多大な被害を受けました。今回はこちらの石狩沼田幌羆事件の内容と被害が出てしまった背景と羆の怖さについて説明していきます。なお、羆はヒグマと読み、熊とは違う漢字ですのでご注意下さい。

石狩沼田幌新事件①現場は雨竜郡沼田町幌新地区

AG2016 / Pixabay

日本史上最悪の獣害事件の次に被害が大きくなってしまった石狩沼田幌羆事件です。地元の方以外はイマイチ地名が分からないと思いますのでまずこちらの地域の情報と現在のこちらの地域について説明致します。

事件当時は原生林が広がる羆の生息地

Valiphotos / Pixabay

三毛別羆事件が起こってしまった苫前町が海沿いだったのを比べると沼田町は比較的に北海道の内陸の方にあります。大正12年頃の沼田町はまだそこまで開拓されておらず人が伐採をしていない森林が多くありました。環境破壊で原生林は減ってしまっていますが土地が大きいこともあってやはり北海道には多く原生林があります。

羆は松の木や杉の木のような針葉樹林の多い森林地帯を好み、寒い地域の方が住みやすいので羆にとって北海道は好みにぴったりの住みやすい地域なのでしょう。羆は北海道のみに生息しており、本州にはツキノワグマしか居ません。

事件後炭鉱開発で栄える

MichaelGaida / Pixabay

悲しい羆事件が起きてしまいましたが約7年後昭和炭鉱というとても大きな炭鉱が開業しました。沼田町の付近三つの町を跨ぐ留萌炭田(るもい)という大きな炭田の中でも昭和炭鉱は存在感のあるものでした。こんなにも資源豊かな北海道の開発がなかなか進まなかったのは北海道という場所柄、輸送手段に困ってしまっていたからでした。

幌新地区の現在

1443435 / Pixabay

こんなにも栄えた昭和炭鉱でしたが維持するのが難しく40年後には閉業し、幌新ダムの建設に伴い埋め立てられてしまいました。現在の沼田町はふるさと納税の返礼品に雪中米というお米が選ばれるほどにお米作りに力を入れています。

獣害という悲惨な事件に見舞われてしまった地域ですが、住みたい田舎ランキングでは一位を獲得したこともある素敵な町です。NHKのすずらんという朝ドラのロケ地にも選ばれたほどです。田舎特有の閉鎖感がなく移住者への対策や施設なども豊富に作られて住民みんなが暮らしやすい町へとなる工夫を頑張っています。

石狩沼田幌新事件②事件の始まり

Counselling / Pixabay

田舎ですがとても自然豊かな様々な魅力のある町を襲った羆によるどうしようもない悲しい事件。この石狩沼田幌羆事件が起きる前や当日、その背景には何があったのか事の始まりの全てを説明致します。

事件の前から羆による事件は相次いでいた

suju / Pixabay

この石狩沼田幌羆事件が起こる前から実はこの地域は羆による被害に悩まされていました。内蔵を全て食べられて殺された小学生や田んぼ作業の最中に羆に出会い亡くなった女性など羆に襲われた人が死亡してしまう事件が前からたびたび起きている危険地域でした。被害は人間だけではなく出荷予定だったトウモロコシを全て食べられるなど農業を営む方には致命的な被害も受けていました。

当日は太子講の祭り

Free-Photos / Pixabay

恐怖の事件が始まってしまった大正12年8月21日は運が悪いことに普段地元の人しか集まらない地域にたくさんの人が集まってしまっていました。この日は太子講という聖徳太子を崇めるお祭りが開催されていたのです。昔の田舎暮らしの開拓地民にとってはお祭りとは非常に心躍る行事でそれ故に色々なところから人が集まっていました。

羆の生態や特徴については後で詳しく説明致しますが羆は自分の餌に対し非常に執着心が強い生き物です。最初の被害者が祭り帰りに襲われた場所には羆が食べようとしていた馬が埋められていて、いきなりたくさんの人が現れてしまったことで餌を取られると思い食糧を守るために襲いかかったという見方が強いです。

羆による襲撃

Pixel-mixer / Pixabay

たまの娯楽であるお祭りも日付が変わる前に終わり、羽を伸ばした者達がみな楽しい気分で帰っているところに悲劇は起こりました。帰宅のために8人の人たちが一時間ほど歩き山道に辿り着き暗さも相俟って何かが出そうなところ道路脇の林から羆が現れたのです。最後尾を歩いていた19歳の少年は真っ暗闇からいきなり現れた羆に気付くことなく背後から爪で切り付けられました。

羆の爪の攻撃とはかなり強いと言われていて即死してもおかしくないですが重症を負いながらもどうにか逃げ果せた少年は先を歩いていた仲間に事態を知らせねばと急ぎます。しかし、羆は一撃を負わせたが逃げられた少年のことは諦めて先を歩いていた兄弟へとターゲットを変更していました。弟を一撃で殴り殺したあと、兄にも怪我を負わせ後で食べるためにと土の中へ埋めてしまいました。

石狩沼田幌新事件③暗闇から聞こえる念仏

DarkWorkX / Pixabay

悲劇の幕が開けられ三人もの人が被害に遭い死者も出てしまいましたがまだ悲劇は始まったばかりです。そして羆の恐怖は続き人々が怯えている中、夜は明けて更に犠牲者が出てしまいます。ここでは夜が更けてからの羆の行動と被害について説明致します。

逃げ込んだ持地乙松宅の悲劇

pixel2013 / Pixabay

どうにか羆から身を隠したいと思った祭り帰りの一行は近くにあった家に逃げ込みました。そして羆を遠ざけるべく動物が火を怖がるという習性を利用しようとありったけの資源を使い暖炉の火を強める、屋根裏、押入れに隠れるなどしてどうにかやり過ごそうと思っていました。

奇しくもこの家の持ち主は先ほど羆に襲われてしまった兄弟の両親でした。昔の家は現代の家ほど頑丈でなく羆は簡単に侵入出来てしまうのです。

455992 / Pixabay

どうにか羆がこのままどこか行ってくれないかという願いも虚しく羆は家の周りをウロウロし続けやがて玄関のドアを壊し家の中へと入ってきました。家の家主である夫は羆に対抗し必死に抵抗しますがドアこと押し倒されてしまいました。昔の家は現代の家ほど頑丈でなく羆は簡単に侵入出来てしまうのです。

母親のウメが羆にさらわれ…

Pixel-mixer / Pixabay

夫の抵抗も虚しく羆は家の中に入ってきてしまいましたが、この時羆は先ほど襲った兄弟の内臓を咥えたままのまさに獣のような姿でした。羆の姿を見ても夫は怯むことなくスコップで羆に対抗しようとしますが叶うはずもなく重傷の怪我を負ってしまいました。

そして、部屋の隅の方に隠れていた妻の姿を見つけると暖炉の火など微塵も気にせず踏み消して、妻の方へと近づいて行き妻を咥えて山へ帰ろうとしました。自身も怪我をしていましたが妻を守るために羆に立ち向かいますが羆は気にすることなくそのまま闇の中へと去って行きました。

BedexpStock / Pixabay

羆がいなくなる際、妻の叫び声と念仏だけが静かな田舎町に響いていました。羆は非常に賢く高い学習能力を持つため重傷を負わせた夫よりも妻を連れて行ったのは女の人の方が力が弱いと学んだからでしょう。

石狩沼田幌新事件④悪夢の夜が明けて

jplenio / Pixabay

怪我人や死者などの様々な被害が出てしまいましたがようやく夜が明け明るくなりました。しかし、羆の被害はここでも出てしまいました。一夜明けてからの住民の行動とまた起きてしまった被害について説明します。

別の村人によってようやく外に

cscnewsletter / Pixabay

羆がもしかしたらまだ近くで獲物を探しているかもしれないという恐怖に怯えていましたが外が明るくなった頃に偶然近くを通った村の人がいたことで羆が去ったことを知りました。そうして眠れない悪夢の一夜からようやく解放され助けを求めることが出来ました。偶然通りかかった村人の助けによって羆の被害はその日のうちに知れ渡ることとなりました。

ウメと与四郎が発見される

StockSnap / Pixabay

羆が一旦はいなくなったことを知って脱出出来たのは良かったですが、家の持ち主の夫は知りたくなかった真実を知ってしまいます。まだ自分の家族が生きているかもしれないと信じて近隣を捜索していると藪の中から下半身をすでに食われていて上半身だけ残された自分の妻の変わり果てた遺体を見つけました。

そしてその側から今度は夜中に襲われて生きたまま埋められた兄を発見し病院へと搬送されましたが助かることはありませんでした。こうして家の主人であった夫は一夜にして家族全てを獣害によって失ってしまいました。

猟師の一人が単独で山に消える

Vitabello / Pixabay

これほどの獣害事件ですからすぐさま腕に自信のある三人の狩人が助けに駆けつけてくださり、その中には羆殺しの名人と言われるスペシャリストもいました。

その中の一人が酷く憤慨し一人では危ないからと周りが必死に止めるのに耳を貸さずに単独で山へと行ってしまいました。そんなに自信のあった方でも羆に勝つことは出来ず何発かの銃声を響かせた後村へと帰ることはありませんでした。

石狩沼田幌新事件⑤羆の討伐

散々な被害を出した石狩沼田幌事件でしたがようやく終止符を打つことが出来ました。しかし、ここでもまた被害が出てしまいました。討伐の時の様子とその時の被害、事件の元凶である討ち取られた羆について説明致します。

討伐隊を襲う羆

Alexas_Fotos / Pixabay

山へ狩人が単独で入って行ってしまった次の日300人もの応援が羆一体を退治するために集まり山へと入って行きました。そして羆を倒すべく山を歩いている最中に羆と出会い最後尾にいた男性一人が死亡しもう一人も重傷を負いました。

しかし、襲われそうになった軍人がとっさに撃った散弾銃が見事命中しそれをきっかけに次々と銃弾が撃ち込まれ多大な犠牲を払ってしまいましたがどうにか羆を仕留めることに成功しました。

事件の元凶たる羆

Alexas_Fotos / Pixabay

この石狩沼田幌事件の羆はこの事件の8年ほど前に起こった三毛別羆事件の羆よりは小さかったものの2メートルはあり、体重も200キロあり標準的な羆の大きさでした。そして、身の毛がよだつことに解剖された羆の胃の中からは大量の人間の死体の一部が出てきました。こうして4日間にも及んだ羆による獣害事件は幕を閉じました。

石狩沼田幌新事件が起こった背景

Alexas_Fotos / Pixabay

本来なら羆がわざわざ人里に自分から望んでやってくることはありません。このような悲惨な獣害が起きてしまったのは北海道だからでは理由がありました。羆の生態とともになぜこのような事態になってしまったのかを説明致します。

羆が冬眠できずに凶暴化していた

Efraimstochter / Pixabay

羆は本来なら冬の間は穴の中で冬眠や出産などをして冬を越します。しかし、三毛別の羆や丘珠の羆のように冬眠が満足に出来なかった羆はお腹を空かせ冬の山には何もないため必然的に人里に降りてきて餌を求めます。お腹をすかせた獣が凶暴になってしまうのは仕方ないことです。

また夏も山の食料が少なくなってしまうため人里に降りてきて田畑を荒らすなどの被害が多く出ます。日本で起きた獣害事件の被害の大きかった事件のほとんどが夏と冬に起きているのも以上のことが関係していると言えるでしょう。

羆の保存食である馬を人間が横取りしにきたと勘違いした

Ellen26 / Pixabay

先ほど説明しましたが今回の発端となってしまったのは羆が餌を横取りされると思ったからでした。福岡ワンダーフォーゲル部の事件であったように羆に一度取られたものを奪い返そうとする、羆の餌が埋められている側をうろつくなどの行為は大変危険です。

羆に対する知識不足

qimono / Pixabay

後に詳しく説明させて頂きますが、羆とは火を怖がらず他の野生動物と違っています。そして人間を遥かに上回る強靭的な肉体と運動能力を持ちます。それ故に正しい対処をしなければ今回のような悲惨な事件に発展してしまいます。

 

石狩沼田幌新事件のその後

12019 / Pixabay

悲惨な獣害事件は討伐隊の命懸けの行動により終止が打たれましたが事件の残した爪痕はとても大きいものでした。土地であったり、被害に遭ってしまった人などに様々な影響を与えました。今回は事件のその後に起きた出来事をお話しします。

羆の毛皮は幌新小学校幌新会館を経て沼田町郷土資料館に展示

Free-Photos / Pixabay

三毛別羆事件で討たれた熊が資料館に飾られて事件現場も復元され忘れないようにされていますが、こちらの事件の熊も毛皮を幌新小学校に飾られていました。小学校が廃校になってしまった後も毛皮は他の場所に移され展示されて今でも沼田町郷土資料館に置かれています。こうして悲惨な獣害の事件を今でも忘れないようにしています。

林謙三郎はもう2度と山に入らず

moinzon / Pixabay

この事件の一番最初に羆と遭遇し怪我を負ってしまった男性はその後生涯山に入ることは二度とありませんでした。自身も重症を負いながらも必死に逃げて先を歩いていた人に知らせようとするなどとても勇敢な男性でしたがやはり羆がトラウマとなってしまい二度と山には入れませんでした。

幌新太刀別川上流部はダムになった

事件が起きてしまった幌新太刀別川上流部はその後炭鉱が出来て田舎にしては非常に多い2000人以上の人が生活をする街になりました。その後も鉄道が開通するなどし、非常に発展した街となりました。しかし、炭鉱が無くなったのをきっかけとし人が居なくなってしまいダムが作られ悲劇の地は消滅してしまいました。

「ゴールデンカムイ」にて触れられる

Pixel-mixer / Pixabay

ゴールデンカムイとはヤングジャンプで連載されていたバトル漫画です。アイヌについて書かれてる描写が多々ありその描写も上手く書かれていると評価も上々で、2019年には漫画大賞を受賞するほどの人気っぷり。そんな人気漫画でこちらの事件が触れられたので紹介していきます。

人気エピソード「モンスター」編

ゴールデンカムイ 19 アニメDVD 同梱版 (ヤングジャンプコミックス)]

Amazonで見る

どのストーリーもとても面白く人気があるのですが、石狩沼田幌羆事件を描いているモンスター編はとても高い人気を博しています。大雑把にモンスター編のあらすじを説明すると主人公の杉元が幼なじみの梅子の病気を治すために金塊を探そうとしていたところ例の羆に襲われるという話です。

事件を紹介したのでご存知かすとは思いますが内容が内容なので人気のあるストーリーでしたが地上波で放送することは叶いませんでした。しかし、ゴールデンカムイファンにはたまらない漫画19巻の特典としてモンスター編が映像で見ることが出来ます。

事件に触れられた経緯

Jacama / Pixabay

こちらは詳しく解説してネタバレも含まれますのでこれから見る予定の方は閲覧をお控え下さい。元にあった事件を参考にしているとはいえやはり違う部分もあり一番驚きなのが羆は一匹じゃありません。そして、なんと不死身と呼ばれている羆が三匹もいて不死身のモンスターと呼ばれていることがこの物語のストーリー名由来です。

ゴールデンカムイに出てくるキャラはどれも個性的でかなり高い戦闘力を持っているのですがやはり羆は強い。ここでかなりの犠牲者が出てしまいますが、主人公とアイヌの女の子アシリパが共闘し毒矢でどうにか羆を倒します。羆の怖さやバトルの迫力などどれをとってもかなり素晴らしいストーリーとなっていますので是非見てみてください。

ノンフィクション小説・羆嵐

羆嵐 (新潮文庫)

Amazonで見る

羆嵐と書いてくまあらしと読む小説でこちらは三毛別羆事件について書かれた物ですが羆の怖さが分かる小説なので紹介させて下さい。

ネットに載っているような知っている話だけでなくこの事件の生々しい怖さが書かれており詳しく知りたい方、臨場感を味わいたい方には是非オススメしたいノンフィクション小説です。羆の毛皮が飾られている資料館にてこちらの50分ほどにまとめられた縮小版ビデオを閲覧することが可能です。

石狩沼田幌新事件と同様の羆事件

DanielBrachlow / Pixabay

日本では昔から悲惨な獣害事件が多々起こっていることをご存知でしたか?有名な事件以外にも北海道を中心とした北の方では度々熊に襲われて負傷するという事件が起きてしまっています。今回は有名なものも含めて日本で起きた熊による負傷者数が多かったものを紹介していきます。

三毛別羆事件

DanielAlon / Pixabay

こちらのお話しは日本最悪の羆による事件でもはや知らない方はいらっしゃらないかもしれません。合わせて10名もの死傷者が羆一匹によって出てしまい、またこの羆が400キログラム近くあり羆を見たことがある住民でさえも驚くほどの大きさでした。この事件は度々テレビでも取り上げられ海外でも話題になり世界的に有名な獣害事件の一つと言えるでしょう。

三毛別羆事件の詳細を分かりやすく読みやすくまとめてある記事があります。悲惨な獣害を忘れないために事件を既に知っているという方も是非こちらの記事をお読みになって改めて日本最悪の事件の真相を思い出して下さい。オカルト的な怖さではないですがかなり怖い話ですので注意して閲覧下さい。

NEXT 三毛別羆事件