マリアナ海溝は世界一深い海!その深さは?海溝に住む不思議な生き物もご紹介!

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動画だけではなく、1996年2月の調査においては深海から試料を11000メートルの海底から持ち帰ることにも成功し、その中に存在していたバクテリアを世界で初めて発見しました。

マリアナ海溝探索の歴史⑧ジェームズ・キャメロンが初の単独潜航

1960年にジャック・ピカール氏とドナルド・ウォルシュ中尉が到達して以来、人が足を踏み入れることのなかった場所へ挑戦した人がいます。タイタニックなどの映画で知られるジェームズ・キャメロン監督でした。しかもたった一人での潜航です。ディープチャレンジャー号と名付けた調査船で潜航し、10,898mの地点まで到達しました。2012年のことでした。

ナショナルジオグラフィックとロレックスの協賛のもと、オーストラリアで調査船の開発・製造から行われました。7年もの時間をかけて作られたディープチャレンジャー号にはこのために開発された新しい素材や照明装置、バッテリー設備、通信装置などがふんだんに搭載されていました。

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様々な最新設備を搭載したディープチャレンジャー号は世界で初めて11000mへ到達したトリエステ号と比べて重量は実に1/10に軽量化され、かつはるかに多い観測装置を搭載することに成功し、水面からわずか3時間で11000mの海底に到達したのでした。

無事帰還した監督は次の様に述べています。

「海底はまるで荒れ果てた地のようでした。世界とは完全に隔絶されていた。私は自分が全人類から切り離されたように感じた。海底に行ったのは確かに今日起きた出来事でしたが、まるで他の惑星に行って帰ってきたような気さえします」(引用:ロケットニュース2)

映画史上様々な記録を打ち立ててきたジェームズキャメロン氏の目には地球でもっとも深い場所はどのように映ったのでしょうか。世界でたった3人しか見たとこのない景色を見た彼がこれから作る映画に期待が寄せられています。

マリアナ海溝探索の歴史⑨アメリカの無人探査機が最深部へ到達!

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そしてついにその日がやってきます。とんでもない深い地があるらしいと、何年もの月をかけて計測し続けてきましたが、その数値でしか知りえなかった地点に2009年5月にアメリカの無人探査機Nereusが到達したのです。深度計は10,902mを指していました。大気圧の1000倍もの圧力に耐えながら10時間以上滞在を果たしたのでした。

日本の深海調査船開発の歴史

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マリアナ海溝調査の歴史をご紹介してきましたが、度々日本の調査が登場したことにお気づきでしょうか?日本の高い技術は深海探査に大きく貢献してきました。ここではそんな深海調査に貢献してくれた調査船をいくつかご紹介します。

マリアナ海溝探索に活躍した「かいこう」は「かいこう7000」へ生まれ変わった

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無人探査機「かいこう」は1990年代に実用化されてから世界初であり世界唯一の無人潜水機でした。先ほどご紹介したように世界一の深度を誇るチャレンジャー海淵に実に19回も挑み数々の新しい発見を打ち立てました。2003年の調査中の事故により部品を欠損してからは深度を浅くし、対応深度7000m級の「かいこう7000」に生まれ変わって再び調査に活躍してくれました。

日本唯一の深海有人探査機「しんかい6500」

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このような様々なモデルを作り上げながら日本の深海調査船製造技術はどんどんレベルアップしていき、現在活躍している「しんかい6500」の開発にこぎつけました。「かいこう」や「かいこう7000」とは違い、「しんかい6500」は「有人」の調査船です。世界で2番目に深く潜れる現役の潜水調査船です。2007年の時点で深海への潜水回数は実に1000回を突破。

4枚ものプレートの上に存在するプレート大国日本が誇る深海調査船製造技術といえるでしょう。

しんかい6500の功績

1989年に着水して以降、深海の不思議を探求するため働き続けてきたしんかい6500の輝かしい功績を少しご紹介しましょう。

  • 1991年:三陸沖日本海溝(水深6,200m)で太平洋プレート表面の亀裂を確認(世界初)。
  • 2007年: 潜航回数1000回突破。
  • 2011年:三陸海岸沖での深海調査を行う。この際に東北地方太平洋沖地震によるものと推測される亀裂を発見。
  • 2013年1月:世界一周海底調査「Quelle2013」に挑戦。リオデジャネイロの南東の海底で、花崗岩と石英の砂を発見。これらは海底にはもともとは存在しないものであることからアトランティス大陸の痕跡ではないかニュースになる。残念ながら文明の痕跡発見には至らなかったものの様々な議論を呼んだ。
  • 2013年6:カリブ海ケイマン諸島沖での水深5000メートル付近の深海熱水噴出域をネットにて生中継する。熱水噴出孔から吹き出る様子や棲息する深海のエビ類やイソギンチャク類の撮影・配信に成功。

深海を調査することで新しい生物の発見はもちろん、まだ見ぬ文明の存在を感じたり地震の影響を目視することができたりと多くのことが見えてくることがよくわかります。地球のほとんどが海ということもうなづけるロマンあふれる「しんかい6500」の大冒険の記録といえるでしょう。

マリアナ海溝が汚染!?環境問題がここでも

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人の生活が地球上に広がり技術や文明が発達してきたことは素晴らしいことといえるでしょう。しかし、その一方で私たち人間の活動によって地球が汚されてしまっていることは周知の事実です。なんと地球の奥の奥であるマリアナ海溝でさえ、その汚染の影響がみられているというのです。

マリアナ海溝の底に有害物質やプラスチックが?

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先ほどご紹介した有人潜水調査船「しんかい6500」を用いて太平洋など広い範囲、かつ長い年月をかけて行った5000回を超える調査の結果、なんとマリアナ海溝の水深10000mを超える地点でもプラスチック製の袋の破片が見つかったというのです。他にも金属片など環境を汚染してしまう物質も発見されました。

他の調査船による観測でも同様にプラスチックをはじめとするごみの汚染が確認されています。さらにはその深海に暮らす生物の体からはとんでもない高濃度の有害物質が検出されました。このことは実に衝撃的な事実で世界に激震が走りました。

マリアナ海溝の汚染度は最も汚染された中国の河を超える!

こちらの動画は米国海洋大気庁(NOAA)が公表した実際のマリアナ海溝の様子です。様々な場所で捨てられたごみが広大な海を漂いながら流れ着いた先にあるマリアナ海溝。その汚染度は最も汚染されているともいわれる中国の河よりも汚れているという残念な事実も明らかになりました。

中国の汚染された河で生きているカニから検出されるポリ塩化ビフェニルという有害物質はマリアナ海溝に生きるエビの仲間からも検出されおまけにその濃度は中国のカニの50倍だというのです。

ポリ塩化ビフェニルやポリ臭化ジフェニルエーテルといった物質は生物の営みによって分解されることはなく、長い長い時間ひたすらそこに漂い生物たちの体に静かに濃縮されながら残り続けてしまいます。やがて私たちが口にする食べ物に濃縮された有害物質が巡り巡って届く日はすぐそこまで来ていることでしょう。

1億5000万トンのプラスチックごみが海に存在する

WWF(世界自然保全基金)の発表によるとすでに現在の段階で海には1億5000万トンものプラスチックごみが海に流れ着いていると言います。そこへ毎年800万トンものプラスチックごみが新たに流れ着いています。

このごみによって魚たちはもちろん、海鳥やアザラシなどの哺乳類、ウミガメたちの命が脅かされています。特にクラゲなどを好んで食べるウミガメは海に浮かぶポリ袋をクラゲと間違えて摂取してしまうことは珍しくなく、プラスチックごみを摂取してしまうウミガメはなんと52%に上るというのです。

海洋プラスチックごみが分解されるには途方もない年月がかかる

自然界に存在しない人が合成によって作り出したプラスチックですから、そこに暮らす生き物たちが分解できるわけがないのです。海にたどり着いたプラスチックごみは誰にも分解されることなくただ海を漂い続けます。

ほんの僅かずつ劣化し分解されていくのにかかる年月を試算するとレジ袋で20年、ペットボトルで400年、釣り糸に至っては600年かかるとされています。

やっと分解されても「マイクロプラスチック」となり私たちのもとへ帰ってくる

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紫外線や物理的なダメージによって海洋プラスチックごみは少しずつ分解されていきます。長い時間がかかっても分解されるならそれでいいじゃないかと思うかもしれません。

しかし、5㎜以下にまで小さくなった「マイクロプラスチック」は知らず知らずのうちにまた海の生き物たちの体へ取り込まれていきます。そしてやがて私たちの食卓にマイクロプラスチックをふんだんに蓄えた魚が並ぶ日が来るでしょう。このマイクロプラスチックが私たちの体にとって有害であるかどうかは誰にもわからないのです。

不法投棄や海洋事故で流出したごみが世界の隅々まで存在する

不法投棄や海洋事故などで海にゴミが流出してしまうのはもちろんのこと、日ごろ私たちが道端で見かける小さなゴミすら正しく処理しない限りは最終的には海へ流れ出てしまうのです。こんなにも広大な海にも関わらず海のほとんどを汚してしまい、それは海に生きる生き物たちの生態を脅かす脅威以外のなにものでもありません。

命が最初に生まれたといわれている海を守ることができるのは、陸に暮らしている私たち人間に他ならないのです。まだ見ぬ深海の生き物に思いを馳せながら、私たちができる小さなことを日々積み重ねていくべきです。

2050年には魚よりプラスチックごみが多い海になる

なんともショッキングな話です。世界経済フォーラムで発表されたデータによると2050年には魚よりもプラスチックごみが多い海になってしまうというのです。

ニュースでも最近目にするようになった方も多いと思いますが「脱プラスチック」の暮らしは海を守り、私たちの暮らしを守ることにもつながると言えるでしょう。

日本の海も例外ではない

四方を海に囲まれた日本もこの問題の当事者です。九州大学磯辺篤彦教授らの研究によると、日本近海のマイクロプラスチックの密度は世界平均の約27倍にも上るというのです。当初、これらのマイクロプラスチックは中国やアジア諸国から流れ着いたプラスチックであると考えられていました。

しかしながら、東京理科大の二瓶泰雄教授たちの調査によれば日本の河川のプラスチックごみの密度が日本近海と同等だったというのです。このことが何を示しているかというと、よその海からやってきたプラスチックごみで日本近海が汚染されているのではなく、日本の河川を日本人が汚し、そのプラスチックごみが海へ流れ出ているということです。

マリアナ海溝プラスチック汚染の救世主現る

マリアナ海溝や深海の秘めたる可能性、魅力をお伝えしてきましたが、最後の海の汚染は実に悲しい深刻な事実といえるでしょう。しかし、人間捨てたものではありません。そんな問題に立ち向かえる救世主が2006年に発見したのです。

それは、マリアナ海溝ですでに見つかっている原油(炭化水素)を分解するバクテリアのように、プラスチックを食べるバクテリアの存在です。この発見者は京都工芸繊維大学名誉教授の小田耕平氏でした。

プラスチックを分解する「イデオネラ・サカイエンシス」

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2016年大阪府堺市のごみ処理場で発見されたその小さな小さな存在はなんとプラスチックを分解しエネルギーにしているというのです。「イデオネラ・サカイエンシス」と名付けられ現在急ピッチで研究が進められています。このバクテリアは真菌類の仲間で、プラスチックの中でもペットボトルの原料に用いられているポリエチレンフタラート(PET)を分解する酵素を持っています。

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先ほどご紹介したように、ペットボトルが自然に分解されるには400年もかかると算出されています。今回発見されたバクテリアの分解能力を人が利用できるようになればこの400年という途方もない時間をあっという間の時間に短縮することができるのかもしれないのです。

炭化水素の多い環境では原油を分解できるバクテリアが生まれ、大きな水圧がかかる場所ではその圧力があるからこそ増殖するバクテリアが生まれていました。ごみ処理場という誰も分解できないプラスチック人がない場所ではそれをエネルギー源汚できるバクテリアが誕生していたのです。まさに生命の力強さを感じる大発見といえるでしょう。

マリアナ海溝は多くの謎とロマンに溢れる深海。今後の解明に期待!

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人類の歴史でたった3人しか最深部に到達していないマリアナ海溝。そこに到達するために目まぐるしい技術の発達もありました。見たことのないバクテリアから新しい画期的な技術が誕生するかもしれません。いつか誰も見たことのない巨大生物に遭遇する日が来るかもしれません。多くの謎とロマンを伝えてくれる深海の今後から目が離せません!

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