イエグモとは?
家の中にふらっと出現する蜘蛛を総称して呼ぶ呼び方ですが、その生態や特徴に関して詳しく知っていらっしゃる方はどれほどいらっしゃるでしょうか。そして、虫を嫌いな方が多い中で彼らも際われてしまいがちですが、彼らは人に良いとって良い事を行ってくれる益虫なのです。
一方で人のいる家の中に足を運ぶことで彼らも得をしている点があります。つまり私たち人間と彼らは共生しているという表現が正しいのかもしれません。そんな私たちの生活を助けてくれている彼らについてこの記事では詳しくご紹介させていただきます。
イエグモとは家で見かけるクモのこと
雨の日や湿度の高い日になると、窓を閉め切っていてもどこからともなく表れ、人々を驚かせている小さな存在ですが、この呼び方は10種類の家の中に現れる蜘蛛達をまとめて呼ぶ時の総称です。家の中でよく見てみると姿かたちが違う蜘蛛達を見かけることがあるかもしれません。
家の中にいない蜘蛛の呼び方はイマイチ定まっていませんが、野生とでも呼ぶのでしょうか。家に姿を見せる習慣のない種類の中には蜘蛛のイメージ通り私たちに実害を持つ種類も沢山存在していますが、家の中に現れる種類は私たちから自発的に逃げていってくれる存在です。
イエグモの特徴は?
では、実際に彼らはどのような生き物なのでしょうか。詳しくなることで恐怖心がなくなり、良い虫である理由を知れば、きっと良い共存者として家の中にいても気にしなくなる事も有ります。こちらではそんな彼らの特徴をまとめてご紹介させていただきたいと思います。
今までその見た目からちょっと家に居るのは気が引けると感じていた方も、少し気持ちが楽になる可能性があるかもしれません。ひっそりと私たちの目を盗んで働いている掃除夫さん達のあまり知られていないような特徴もご紹介させていただきます。
イエグモは益虫と呼ばれている
古くから様々な場所で見かけるこの生き物は私たち人間にとって利益をもたらしてくれる益虫として扱われてきました。きっとこの利益を知れば、家の中で見かけた際に殺虫剤や新聞紙を手に取るなんてことがなくなる可能性があります。
益虫といえど、何かしら悪い点もあるのでは、と思われがちですが、珍しく彼らは私たち人間にとっての実害を持たない種類です。害をなす場合は私たちの無知故に彼らを驚かせてしまったり、恐怖を与えてしまったりといったシチュエーションのみなのです。
イエグモはゴキブリなどを退治してくれる
彼らも生き物であるため、餌を探して行動します。また、餌のないところに出没するメリットもありません。餌は小さな虫など人間に害を成す虫を食べるため、家の中にいる小さな虫のお掃除屋さんとして私たちの衛生面を守ってくれる存在なのです。
私たちの残飯や何から何まで口にしてしまう害虫の体内では私たちに感染すると命に関わるような病気まで運んでいます。そんな危険な存在と1つ屋根の下で共に過ごしていると考えると夜も寝れなくなってしまいます。しかし、そういった害を知らぬ間に排除してくれている素晴らしい生き物です。
イエグモにはゴキブリなどが持つ病原菌がうつらない
害虫と呼ばれる虫たちは、私たちに不利益な病気などを運び不衛生にしてしまうため、家の中にいてもらっては困ります。しかし、それを駆除してくれる彼らは、餌として食べてもその病気を自身が振りまくという事はしません。
また、彼ら自身も私たち人間に移す病気は一切持っていないため、ただお掃除して病原菌を家から排除してくれるメリット盛りだくさんの共存者なのです。つまり彼らを1匹殺すとそれだけ家の中に病気が充満してしまう可能性を作っているといっても過言ではないのかもしれません。
イエグモは毒を持っていない
蜘蛛といえば毒蜘蛛のように毒を持って害をなすというイメージを持たれがちです。しかし家の中に現れる種類の中に私たちを毒で脅かす存在は一切存在していません。一時世間ではセアカコケグモの出現により蜘蛛の毒が危険というイメージの植え付けがなされ、誤解を生んでいるのです。
限られた種類の毒蜘蛛以外はそこまで強い歯を持っていないため、噛まれても私たちの皮膚を貫通できないとされています。また毒の強さも弱く特に家に入ってくる種類は私たちが近づくと攻撃より先に一目散に逃げていくでしょう。
イエグモは排泄をほとんどしないので衛生的
排泄をほぼ行わない理由は彼らの食事形式にあります。彼らは獲物の中に直接消化する液を流し、分解してから体内に取り込みます。そのため消化後のいらない物を排泄する必要もないのです。そのため家の中が彼らの排泄により汚染されるという事は考えられないのです。
そんな彼らはまさしく、百利あって一害なしの存在なのかもしれません。ただ1つ問題があるとしたら、虫の仲間である彼らのその見た目でしょうか。抵抗がない方からするとその見た目すらかっこいいと利点に含まれますが、苦手な方には受け入れられない点でしょう。
イエグモの種類①アシダカグモ
中でも大きな体を持つ種類で、その大きさは20~30mm、足を含めると100~130mmとかなり大きな種類です。しかし彼らも家の中に生息しており、家の中で見つけると少し後ずさりしてしまいそうな恐ろしい見た目を持っています。
またこの生き物が家の中に侵入した際にはゴキブリたちが仲間へ撤退や移動の信号を出すと言われています。それほどまでに存在だけで害虫を家から追い払ってくれるほどの存在です。つまりこの種類をペットとしてお迎えすると家の中から彼らが消える可能性も捨てきれません。
【イエグモ】アシダカグモについて
原産地はインドとされていますが、現在では日本を含む世界各国の温かい地域に生息しています。主食は黒光りした害虫です。寿命は3~7年ほどで、日本各地に生息して家の中に現れる事もありますが、大抵は夜行性のため夜に姿を現すのです。
夜の暗い中で家の中を徘徊して獲物を駆除し、朝電気をつけるとそのまま壁にいる姿を発見して驚かれる方も少なくはありません。しかし、彼らはちゃんとお勤め後なのです。それを考えると、丸めた新聞紙や手に持ったスリッパはそっと降ろしてしまうかもしれません。
【イエグモ】アシダカグモはゴキブリを退治
かなり巨大な蜘蛛のため、噛まれると大変なことになるかもしれないと思われがちですが、近づいて怖がらせたり、危害を加えない限りは人間に対して無害です。また、主食の虫しか標的としないため、手出しせず見守るのがベストです。
見つけた際にはそっと、お勤めご苦労様ですという言葉をかけてあげるべき存在です。ましてや叩き潰したり、殺虫剤を噴射すると自身の家に病原菌を蔓延らせる原因となりかねないため、彼らが自然に撤退するのを待つのがベストではないでしょうか。
【イエグモ】アシダカグモは「軍曹」の異名を持つ?
そのハンティング能力の高さから付けられた敬称で、この蜘蛛が2~3匹いると家の中のゴキブリは半年で殲滅されると言われているほどです。そんな害虫ハンターを殺してしまうのは勿体ないのではないでしょうか。きっちりとお家の中の害虫を駆除してもらいましょう。
また、共に過ごしている中で興味がわいてくる方も少なくはなく、野生の彼らを捕獲して飼い始めてしまう方も少なくはありません。かなり大きな蜘蛛のため、見た目もカッコよく飼育も簡単に行えるため、もし飼育してみたい方は虫取り網片手に対面してみてください。
【イエグモ】アシダカグモは通販で取引されるほど人気!
馴染みが深いこの蜘蛛ですが、ペットとして飼育されるケースも少なくはありません。その理由も温度管理が必要なく、人に害をなすほどの強い毒を持ち合わせていません。一方で毒蜘蛛を連想させるような大きなフォルムで蜘蛛好きに人気を得ています。
軍曹として愛され、ペットとして飼育されている方も多い魅力あふれる個体ですが、詳しいご紹介は別の記事で行わせていただいております。もし捕獲して飼育してみたいという方は、より深く知るためにこちらの記事を参考にしてみてください。
イエグモの種類②アダンソンハエトリグモ
日本中各地で見られる小型の蜘蛛で、家の中にいてもあまり気に留める事がない種類かもしれません。雌は明るい茶色っぽい体をしており、オスは黒に白の模様が入っています。5~9mmで家に居る事すら気付かないうちに害虫駆除してくれているかもしれません。
小さい体を持つため、恐れられるよりは手に乗せてスキンシップを図る方もいらっしゃるほどです。また昔から子供達の遊び相手にもなっていたり、江戸時代にはジャンプに優れる個体が高値で取引されていたりと、人々とかなり近い距離にいる種類なのです。
【イエグモ】アダンソンハエトリグモについて
屋外で観測されることもありますが、如何せんその体の小ささから家の壁にいる個体のみが見つかりやすく、屋内でしか生息していないと思われがちです。オスとメスで違い見た目を持っている事から別の種類にも間違われる事があります。
またこの種類が家の中にいても、あまり気にする人が少なく、思わず殺傷してしまうという事もないのではないでしょうか。捕まえようとしてもピョンッと跳ねて逃げてしまう事もあり、諦めて放置してしまったりという人に近い種類の1つです。
【イエグモ】アダンソンハエトリグモはダニやコバエを退治
その小ささから自身よりも小さい害虫を餌としていますが、対象はどれも人間や愛玩動物に害をなす生き物ばかりで、良いお掃除屋さんです。また餌のない家にはあまり現れないため、出来るだけ綺麗に保つと彼らの姿をお目見えする機会はありません。
家の中ではよく日の入る明るい窓際に現れ、メスはあまり見かけないとされています。オスは白い触肢を頻繁に動かしながら歩く姿が見られます。何故家の中にメスがあまり入って来ないかはいまだ改名されておらず不明なままなようです。
【イエグモ】アダンソンハエトリグモは巣を張らない?!
蜘蛛の中には餌を求めて徘徊する個体も多く、この種類も餌が無くなると別の場所へ移動します。一生そこで生活しない事から巣も必要ではなく、繁殖を行う時のみ雌は巣を貼ります。しかし臆病な蜘蛛は人目のつく屋内などにはあまり巣を貼らないとされています。
【イエグモ】アダンソンハエトリグモは跳ねる姿が可愛い
小さな体でピョンピョン飛び跳ねる姿はどこか愛らしく、人間にも害をなさないためそのまま見守ってあげる事が良いでしょう。また人が近づくと攻撃はせず逃げていきますが、その際にもこの可愛らしいジャンプ姿を見る事ができるかもしれません。
このジャンプ力のお陰で生きながらえているといっても過言ではありません。かなりすばしっこく、素手で捕まえるのはほぼ不可能かもしれません。もしペットとして捕獲を考える方は虫取り網などを使い、遠くから一瞬で捕まえる事をおすすめします。
イエグモの種類③チャスジハエトリグモ
蜘蛛の中でも大型の個体で一見すると猛毒を持っているかと思われがちな見た目をしています。虫が嫌いな方は家の中にこの姿を見つけると失神してしまうかもしれません。しかし、危害を加えない限りはこちらへ向かってくることもありません。
【イエグモ】チャスジハエトリグモについて
大きさは7~12mmとかなり大きく、身体はふっくらとしており、足の短い典型的な蜘蛛の見た目をしています。オスには真ん中に白い1本線の模様が入っており、メスにはありません。日本では様々な地域の屋内で観測されています。
【イエグモ】チャスジハエトリグモはダニやコバエを退治
徘徊して餌を探す習性を持ちますが、巣も形成する種類です。巣にかかった昆虫や家の中では小さな害虫たちをお掃除して食べてくれています。ジャンプと走りを織り交ぜたハンティングを行うため、その姿はどこか勇ましく計画性のある捕食行動をしているようです。
中には自身の2倍にも及ぶ大きさの虫も餌としてしまいます。捉えた餌には毒を注ぎ込み、毒が効くまでじっと待ち、息絶えた獲物を食べるのです。巣から逃げようとした獲物もしっかりと追い、巣から離れた状態のまま毒を与える事もあるようです。
イエグモの種類④イエユウレイグモ
かなり特徴的な見た目を持っており、一見すると壁を這っているアメンボのような印象を受けますが、それほどまでに細い体と細く身体よりも長い足を持っています。しかし、アメンボが壁を伝う訳ではなく似たような見た目はこの種類なのです。
また、身体の色は透明にも見えるような白っぽい体を持っており、不規則な網の巣を作り、その中心からぶら下がって獲物がかかるのを待っている姿が特徴的です。またその巣にかかった獲物は巣へと釣りあげられるような緻密な構造の罠を作る種類です。
【イエグモ】イエユウレイグモについて
とても小さい体を持ちますが、足のサイズを合わせるとかなり大きな個体です。季節に関係なくほぼ1年中現れます。巣を作るため嫌がられがちですが、害虫駆除を行ってくれる良き来訪者です。蜘蛛の巣を貼られないように家の中は綺麗に保っておきましょう。
繁殖時期に卵を産んだメスはその卵を糸で丁寧に包み、卵嚢を形成します。そして卵を守るためにその卵が孵化するまで口で加えて保護するのです。卵嚢で包んでいる卵は少な目で10~40個ほどと言われており、付加した子供は成長するまで親の巣で過ごしています。
【イエグモ】イエユウレイグモはダニやコバエを退治
小さな害虫を食べている益虫です。コバエが発生する時期などにはよく家の中に目にするかもしれません。巣を張るため駆除されがちなのですが、人間に対して実害はありません。寒い地域には生息しないため北海道には生息していないとされています。
【イエグモ】イエユウレイグモはとっても紳士的?
この敬称には理由があり、雌雄で同居している際に、オスはメスへと餌を献上します。また、網にかかったゴミを捨てたり、巣が壊れかけたら直したりと主夫のような立ち振る舞いを見せる事からこう呼ばれるようになりました。蜘蛛の世界にも鬼嫁が存在しているのでしょうか。
繁殖時期の巣ではオスがせっせとメスのお世話をしている姿を目にすることができるかもしれません。こういった蜘蛛社会のルールを知ると、少し観察する楽しみができるかもしれません。無害な生き物であるため少し距離を取って、その行動を観察してみるのをお薦めします。
イエグモの種類⑤ヒラタグモ
その特徴は何といっても扁平な体ですが、あまり大きな種類ではないため本当に扁平かを確かめるには近寄る必要があります。巣を形成しますが、歩き回って餌をとる事も有り、餌は巣に持ち帰って取り込みます。巣は雨の当たらない場所へと形成します。
【イエグモ】ヒラタグモについて
大きさは3mmととても小さな蜘蛛で、その存在が家の中にいる事すら気付かない方も多いかと思います。人目がつかず水にぬれない場所で巣を見つけた事により存在を知り、急いで巣を除去した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
平らな体の形が特徴的で、他にこのような体の蜘蛛で人の生息している環境に良く出没する蜘蛛がいないため、見た目で種類を特定することが可能です。1年中活動しており、2~3年の中で産卵を夏に行う生き物です。この時期の巣には卵が産みつけられているかもしれません。
【イエグモ】ヒラタグモはハエや昆虫を退治
この種類の餌も小型の害虫です。巣にひっかかった餌をとる場合もありますが、家の中では獲物を自身の足で追いかけて捕獲を行っています。しかし獲物はその場では食さず、糸で器用に巣へと持ち帰り、安全な場所でゆったりと食事を行います。
【イエグモ】ヒラタグモはテントのような巣の中で獲物を待つ!
この種類の特徴は何といってもその特徴的な巣の形です。まるで見た目はテントのように中央が少し出っ張っており、壁に張り付いている糸は数本の細い糸なのです。この蜘蛛の体の形はこの巣の形に適しているからだと言われています。
イエグモの危険種類
家の中に入ってくる蜘蛛の中には危険な蜘蛛はいませんが、私たちの身の回りには危険な蜘蛛が存在することも知っておかなければいけません。ほとんどの蜘蛛は自身の身の危険を感じない限り人間を噛むことがなく、肌を突き破るほどの強さの歯を持たないのです。
イエグモの危険種①ジョロウグモ
噛まれたとしても組織の機能障害を起こすほどの威力はない毒を持っている蜘蛛ですが、少なからず人体へ悪影響を及ぼす毒を持つ毒蜘蛛です。また体のサイズも大きく、巣や姿を見かけたら近づかないに越したことはありません。
黒と黄色の身体を持つイメージが強いですが、これはメスの姿です。オスはこのような特徴的な見た目を持っておらず、黒一色の地味な見た目をしています。一番安全に過ごすためには外で大きな雲を見つけた場合、安易に近づかない事ではないでしょうか。
イエグモの危険種②セアカゴケグモ
本来は日本にいないはずの種類でしたが、近年日本での発見報告もあり、用心しておきましょう。見た目は分かりやすい黒の体に赤い模様が入っています。駆除にはピレスロイドが有効とされていますが、卵は焼くか潰すかで対象が必要です。
万が一この生き物を見つけた場合は絶対に近づかないようにしてください。また噛まれてしまった際には早急に病院を受診しましょう。神経毒は1分1秒を争います。血の循環を通して体全体をめぐり、全身性に症状が発症してしまい、最悪の事態も考えれるのです。