三島由紀夫の5作目長編小説で、1950年に発行されました。光クラブ事件をなぞらえた作品であり、主人公の生い立ちから、闇金学生社長に至るまで、山崎晃嗣の人生をストーリーに仕立てています。
主人公である川崎誠は、千葉県K市(木更津市)に生まれ厳格な父に大きく影響を受けて育ちます。父親に反発しながらも東大に入学した誠は、一高時代からの友人愛宕と共に「太陽カンパニイ」を設立します。瞬く間に規模は拡大するが、事務員の耀子が税務署に収入を密告し、あっという間に「太陽カンパニイ」は転落していきます。
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三島由紀夫は、山崎と同時期に東大へ進学しています。復学した山崎と同じ授業を受けていたとも言われています。また、小説の中に登場する川崎家の内部は、実際の山崎家と共通点があり、三島由起夫と山崎晃嗣は交流があったという人もいます。三島由紀夫に関する事件はこちらをご覧ください。
光クラブ事件の影響を受けた作品②『白昼の死角』(高木彬光 著)
『白昼の死角』は、高木彬光著の推理小説です。1959年5月1日から1960年4月22日にかけて『週刊スリラー』に連載されていました。1979年には映画、並びにテレビドラマ化され話題になりました。光クラブ事件を題材にしていますが、主な舞台は事件後のオリジナルストーリとなっています。
現役東大生社長隅田光一が、同級生の鶴岡らと共に設立した「太陽クラブ」は、隅田の逮捕により崩壊。隅田は焼身自殺します。隅田の自殺を見届けた鶴岡は、法律の盲点をついた完全犯罪を決意します。あらゆる犠牲者を出しながらも、鶴岡は犯罪者への道をひたすら歩もうする、という物語になっています。
光クラブの与えた影響②事件
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「リクルート事件」「ライブドア事件」は、事件発覚時大きく騒がれた知能犯罪事件であり、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。しばし光クラブ事件と引き合いに出されることのある事件ですが、どのように関係しているのでしょうか。
光クラブ事件の影響を受けた?事件①リクルート事件(1988年)
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日本中がバブルに沸いていた1988年、戦後最大の賄賂事件として騒がれた事件です。リクルートの創業者であり、当時会長の江副浩正が、贈賄罪で逮捕され大きく報道されました。有利な人脈を作るため、グループ企業リクルートコスモスの未公開株を、賄賂として政治家・官僚などの実力者へばらまきました。
江副浩正も山崎と同様、東京大学出身です。戦時中の1936年生まれで、戦災で家を無くす経験をしています。高校時代は、医大を目指す同級生を尻目に、東大受験を有利に運ぶため、英語ではなく単位の取りやすいドイツ語を選択するなど、目的のためなら手段を選ばない一面が伺え、それが賄賂事件に繋がったのかもしれません。
光クラブ事件の影響を受けた?事件②ライブドア事件(2006年)
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元ライブドア社長、堀江隆文が有価証券報告書の虚偽記載で逮捕された事件です。ライブドアは様々な事業をおこなっていましたが、企業買収で得た売上げを大きな収入の柱としていました。その事業運営の手腕により、様々なメディアに取り上げられ、時代の寵児として大きくもてはやされます。
彼は、東京大学在学中にライブドアの前身であるベンチャー企業を立ち上げています。(後に中退しています。)光クラブ事件の首謀者である山崎と、東京大学・学生社長という共通点から引き合いに出される事がありますが、両者の生い立ちや人生観などの共通点は少なく、似て非なるものという人もいます。
戦中戦後の人生を駆け抜けた著名人
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激動の時代を生き、その名を残した著名人は数多く存在します。同じ東大生で作家の三島由紀夫、「日本マクドナルド」創始者の藤田田が挙げられます。山崎もその1人といえますが、その人生を一気に駆け抜けて、散っていきました。同時期に生き、劇的に生涯を終えた著名人をご紹介します。
1948年に自殺した太宰治
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太宰治は、第二次世界大戦前から戦後にかけて数多くの小説を残しています。父親は県議会議員を務める地元で有名な一家に生まれ、小学校時代は6年間主席の通し開校以来の秀才と言われていました。19歳から本格的な執筆活動を開始し、彼が30才の時、代表作『走れメロス』、38歳で『人間失格』を執筆します。
太宰といえば薬物中毒や自殺未遂を繰り返すなど、乱れた私生活で有名です。その繊細さや脆さ故、自堕落な生活を送り、何人もの女性に溺れます。山崎が自殺する前年1948年に、愛人と入水自殺しますが、その刹那的な生き方は、山崎と共通するところがあるのかもしれません。
天才ゆえ?波乱の生涯
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太宰治は多くの作品を生み出しながら、その人間性や才能ゆえ、波乱に満ちた生涯を送りました。光クラブ社長山崎晃嗣も同様、独自の手法で事業を成功させ、その主義を貫くため自ら人生を終えました。天才ゆえの劇的な人生の終え方だったのかもしれません。
天才・山崎の心の闇が引き起こした事件
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東大史上最も天才と謳われた山崎晃嗣。学生社長として注目を浴び、たった数ヶ月で事業を拡大するほど頭脳明晰であったにもかかわらず、逮捕の末、あっけなく自殺の道を選んでしまった彼は、一体どこで道を誤ってしまったのでしょうか。
戦争という時代に翻弄され、生活だけでなく人生観さえ深く影響されてしまった山崎は、悲劇の天才と言えます。彼の心の闇は、彼の人生そのものを飲み込んでしまいました。もし、生まれる時代が違ったら、その才能を誤った方向に使わなければ、偉大な人物として現在も名を残す存在になってかもしれません。
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