華城連続殺人事件とは?韓国を揺るがした未解決の連続殺人事件
1986年から1991年のわずか5年間の間に大韓民国の華城市近辺で10代から70代の女性10名が殺害された未解決事件となります。韓国で起きた史上初の連続殺人であり大規模な操作が展開されることになりましたが、結局のところ犯人をみつけだすことができず時効が成立し迷宮入りした未解決事件となります。
未解決事件は、残虐性や未解決となった理由などから社会的関心が高くなります。そのため映画やドラマなどの題材に取り上げられることもあり、作品の中でもう一度事件を洗い出し解決のヒントを見出すこともできます。この華城連続殺人事件を題材にした映画も存在しています。
華城連続殺人事件で起きた10件の殺人の概要
韓国をの歴史上類をみない残虐な事件として韓国国内だけでなくアジア全土を驚愕させた事件となります。この事件は京畿道華城郡(現在は市)台安村の 半径2㎞圏内で10名の女性が犠牲となった事件になります。殺害された女性の概要について紹介していきます。他に日本や世界で起きた謎の多い事件に関する記事はこちらをご覧ください。
初めの犠牲者となったのは71歳の女性
最初の犠牲者が出たのは71歳の女性で、1986年の9月早朝、娘の家に泊まり帰宅途中に被害にあったとみられています。遺体は畑の中から発見され下半身のみ裸にされており足はXの字になるように縛られて腹部に密着させられていたそうです。
2人目の犠牲者は25歳の女性、現場からは毛髪が発見される
最初の犠牲者出てからわずか1カ月後、次の犠牲者となったのは25歳の若い女性でした。お見合いの帰りに殺害され遺体は用水路に足を折り曲げて全裸の状態で発見されています。遺体から細いもので刺したような傷が4か所見つかりましたが、直接の死因は首を絞められたことによる窒息死でした。
また、今回の現場からは前回は発見できなかった犯人のものと思われる毛髪が見つかっており、6本見つかった毛髪の内4本がB型の血液型で他の遺留品から採取された血液型もB型であったため、犯人はB型の可能性があると推測されています。
3人目の犠牲者は24歳の女性、遺体には異常な行動の痕跡
3人目の犠牲者となった24歳の女性は、夫と食事に行き夫は仕事に戻ったため一人で帰宅途中に行方不明になっていましが。行方不明になった約4か月後に被害者の家から僅か50mしか離れていない田の畦から発見されました。
遺体は、死後かなり立っているとみられ腐乱した状態で、被害者の頭部から顔にかけて下着が被せられ口にはガードルとストッキングの片方が押し込められて異様な状況でした。もう片方側のストッキングが首に巻きつけられており首を絞められて殺害されています。
4人目の犠牲者は23歳の女性、傘で陰部を刺されていた
3人目の犠牲者となった女性同様、遺体は腐乱した状態で発見されています。被害者は帰宅途中に行方が分からなくなっていた23歳の女性と判明しましたが、この被害者の殺され方も異質な状況でした。
被害者は自分の傘で陰部を何度も刺されており、両手を後ろに回された状態でブラウスで拘束されており、頭にはガードルが被せられており首にはストッキングが巻き付けられた状態で田の畦の胡麻の束の中で発見されました。
5人目の犠牲者は18歳の女性、犯人の血液が検出
学校の帰りに友人と別れたあとから行方がわからなくなっていた18歳の少女が5人目の犠牲者となりました。行方が分からなくなった翌日、両手を後ろで拘束され口には靴下が押し込まれており衣類は一度脱がせた後再び着せている痕跡がありました。
マフラーで首を絞められ殺害されていましたが、犯人のものと思われる血痕と体液が見つかっておりいずれもB型の血液型であることが判明しています。今回の事件で初めて未成年者が犠牲になりました。
6人目の犠牲者は30歳の女性、犯人の足跡が発見される
夫を迎えに村の入口へと向かう途中で殺害された30歳の女性が6人目の犠牲者になります。迎えに来るはずの妻が来ないことから夫が捜索願を出し付近を捜索した結果松の枝の下からブラジャーブラウスで首を絞められ上半身裸の状態で発見されました。また、現場からは犯人と思われるスニーカーの足跡が発見されています。
7人目の犠牲者は19歳の女性、行方不明だったが遺体で発見
クリスマスイブから行方が分からなくなっていた19歳の少女が年が明けた1月14日に首を絞められた状態で発見されました。この被害者についての詳細は残されていませんが手口がこれまでと同一であることから7番目の被害者であるとされています。
8人目の犠牲者は52歳の女性、バスの運転手が犯人を目撃
息子が経営している食堂を手伝っていた帰宅途中に54歳の主婦が殺害されます。農水路脇から両手を衣服で後ろに拘束され、靴下とハンカチを口に押し込められておりリボンで首を絞められた状態でした。被害者の陰部からは桃の欠片が発見されています。ここでは犯人と思われる人物が乗ったバスの運転手が顔を目撃しています。
9人目の犠牲者は14歳の女性、犯人の白髪が発見される
14歳の少女が学校からの帰宅途中殺害されてしまいます。遺体の状態は凄惨なもので、ストッキングで両手足を後ろで弓のようにそらした状態で拘束されており、被害者の陰部からは被害者の所持品と思われるボールペン・フォーク・スプーンが入れられていました。
両胸には傷が20か所ほどありましたが、いずれの傷口も浅く口にはブラジャーが詰め込まれていました。ここでも犯人のものと思われるB型の体液と、白髪の毛髪が発見されています。8番目の犠牲者と9番目の犠牲者との間の犯行期間は2年程空いていますが、その謎は明らかになっていません。
最後の犠牲邪は69歳の女性、自宅付近で殺害
この連続殺人で最後の犠牲者となったのは、69歳の女性で自宅から100m付近の場所で殺害されました。長女の家からの帰宅途中だったとされており、ストッキングで首を絞められており、上半身は裸で下半身だけ下着を身に着けていましたが、陰部には靴下が挿入されていました。
華城連続殺人事件の犯行手口と犯人像
5年間で10名の女性を手にかけた犯人はどのような手口で被害者を殺害するに至ったのでしょうか。また様々な目撃証言や証拠などが出ていたにもかかわらず真犯人を突き止めることが出来ず迷宮入りになっています。犯行の手口と犯人像についてみていきます。
華城連続殺人事件の犯行の手口
この事件には多くの共通点があり、被害者が全員女性、女性に大きなトラブルなどなく、被害者同士の接点がないことです。また、犯行現場にも共通点があり犯行現場は畑か農水路もしくは山中であること、犯行が行われたのは雨の日か曇りの日であることです。
他には犯人は被害者が所持していた物でで陰部を刺したり首を絞めていること、被害者の衣類を畳んでいること、物的証拠を残していないこと等多くの共通点があり計画的に行っていたのではと言われています。
華城連続殺人事件の犯人像
目撃情報や、犯行現場での様子から警察は犯人像を作成していました。犯人は身長165㎝から170㎝で20代から30代のB型の血液の男性であり、犯行現場が華城で集中していたことから、華城の居住する住人であり女性に対して憎悪を持っていることです。
また、目撃証言から髪はスポーツ刈りであり機械や金属を扱った仕事をしている可能性が高く犯行の手口などから性格は冷静であるが犯行の方法などから極めて残忍な性格の持ち主であるとされています。
10件の殺人の中に華城連続殺人事件の模倣犯の犯行も含まれる?
10件中7件は若い女性が犠牲になっているのに対して、最初と8番目と最後の犯行は71歳と52歳・69歳の年配の女性が犠牲になっていることから、この2件は別の人物による犯行ではないかとの意見もあります。
また、8件目の被害者に関しては事件の事をテレビで知った人物が同じ手口で殺害した模倣犯による犯罪であることが分かっており、8件目の女性を殺害した人物については、犯人は捕まっていますが残りの9件との関与はなかったことが明らかになっています。
華城連続殺人事件の取り調べを受けた5人の容疑者
この事件では現場周辺に住む男性約2万人が警察の捜査の対象となっていました。その中で、この連続殺人の犯人ではと容疑をかけられ取り調べたを受けた人物が5人います。2万人の中から容疑者とされた理由と犯人ではないとされた理由についてみていきます。
華城連続殺人事件容疑者①43歳の電気職員
最初の容疑者として1987年に43歳の電気職員の男性を容疑者として警察は取り調べを行うことになりました。この男性は一度犯行を自供したため、犯人と思われましたが目撃証言や犯人と断定できる物証もないことから取り調べから7日後に釈放されました。
華城連続殺人事件容疑者②別件で捕まった16歳の学生
次に容疑者として挙げられたのは、窃盗で捕まった16歳の少年でした。警察の犯人像では20代から30代の男性とされており年齢は犯人像に一致していませんでしが、警察が関連があるのではと尋問しますが、少年は死亡してしまいます。
取り調べの最中において拷問などの暴力行為があったのではとされており、少年を取り調べていた3人の刑事が拷問致死罪に問われ起訴されています。そのため3人の刑事は懲戒処分・免職処分となる事態になりました。
華城連続殺人事件容疑者③22歳の工場勤務者
3人目の容疑者は、兵役後工場に勤めていた22歳の男性で周囲からは真面目な青年であると定評があった人物になります。3件の罪を自白しましたが、自白に一貫性が無くまた確たる物的証拠もないため検察は釈放することになりました。
華城連続殺人事件容疑者④暴行事件で捕まった19歳の楽器工場勤務
続いては、別件の暴行による罪で捕まっていた楽器工場の勤めていた19歳になります。目撃証言もあり男性の衣服から血痕も見つかっており9番目の事件について自供をしますが現場に残されていた毛髪と体液のDNAが一致しなかったため、暴行のみでの有罪判決となりました。
華城連続殺人事件容疑者⑤38歳無職の男性
5人目の容疑者として挙げられたのは38歳の無職の男性でした。9番目の犠牲者に対しての容疑で取り調べを受けていましたが釈放後村中を駆け回るなどの精神的異常行動をした後で列車に飛び込み自殺を図ってしまいました。
捜査段階で被疑者3人が自害したことで「華城怪談」という言葉も
他にも捜査対象となった人は多くいましたが、捜査対象となった人物の内3名の人間が自らの命を絶っています。またそれだけではなく、事件を捜査していた警察側にもストレスなどから死亡者が出るなどしており華城怪談という言葉が生まれてしまうほどの事件でしたが、真相解明には至りませんでした。
華城連続殺人事件の捜査は韓国史上最大規模だった
この華城連続殺人事件の捜査は韓国の歴史において史上最大規模で行われることになりました。捜査に動員された警察官の人数や発見された証拠品等の他にもスパイによる犯行なのではという様々な噂や憶測が飛び交っていますので、詳しく見ていきます。
華城連続殺人事件の捜査で約180万人の警官が動いたと言われている
警察と機動隊を合わせて約180万人近い人数が動員されと言われています。これほどまでに多くの人数が動員されたことは韓国では未だかつてなく、それほど世間の注目を集めていた事件でした。
事件現場でタバコの吸殻や髪の毛6本も発見されていた
事件現場からはタバコの吸い殻や犯人のものと思われる毛髪が発見されるなどしていましたが、当時韓国ではDNA鑑定は導入されておらず日本へ送ってからの鑑定となっていたそうです。しかし、日本でも科学捜査はまだ正確な鑑定ができるほど設備が整っていませんでした。
そのため、多くの人が捜査線上に上がったにも関わらずDNAの不一致などから犯人を特定することができず容疑をかけられた人が3人自殺してしまうだけでなく、捜査員の中にも過労や過度のストレスなどから死亡してしまうなどの事が起こりました。
華城連続殺人事件当時は韓国五輪を妨害するスパイによる犯行説も
この事件には当初スパイの犯行ではとの説もあります。ソウルオリンピックの妨害が目的で送り込まれたスパイが行った犯行として公安警察が動き出したこともあり警察の初動捜査の水準の低さが浮き彫りになりました。
華城連続殺人事件は2006年時効とその後
犯人の血液型が特定できていたことや、目撃証言が多く寄せられていたことにより事件は解決するのではと目されていましたが、犯人は捕まることなく2006年にすべての事件に対する時効が成立し事件は未解決のまま幕を閉じることになりました。
華城連続殺人事件の時効成立後に担当指揮官が犯人にメッセージ
この事件を担当した指揮官は犯人に対してメッセージを残しています。「これまで私は随分苦労してきたが君はその反対だったであろう」「君には私の手錠を必ずかけたかったが時効と自分の定年で手錠が使えなくなる」「みじめだ」「私より先に死なないでくれ、私たちは会わなければいけない」
犯人に対してかなり長いメッセージを残しており、被害者の無念・被害者遺族の悲しみ憤りを一身に背負い努力してきたにも関わらず公訴時効という制度により犯人を捕まえることが出来なくなったことに自分の不甲斐なさと腹立たしさを現わしているメッセージになります。
担当刑事は華城連続殺人事件についての本も執筆している
この事件を担当した捜査員の1人は、華城事件はまだ終わっていないとゆう本を出版しています。それは、この事件を決して風化させてはいけないという思いと、例え時効が成立していて、法律で罪を裁くことはできないが必ず犯人を突き止めてみせるとゆう刑事としての執念が伺えます。
2008年に華城連続殺人事件の真犯人と思われる人物が登場
時効成立からわずか2年後の2008年には、安養小学生拉致殺害事件が起きた際にこの事件の犯人として逮捕された39歳の男性が本事件の真犯人かもしれないという噂がインターネット上で流れ韓国を騒然とさせましたが、信憑性は低いと言われています。
この男性が犯人であると決定づけられなかった理由としては、華城事件で採取された犯人とされる体液などを進歩したDNA鑑定で確認すれば犯人かどうか判断できるが警察は何も発表していないことからによります。
華城連続殺人事件ではなぜ犯人を特定できず時効を迎えてしまったのか?
韓国史上最大規模と言われる、180万人近い捜査員を導入した事件だったにも関わらずなぜ、犯人を見つけることができず迷宮入りしてしまった原因はどこにあったとされているのでしょうか。この事件が迷宮入りした謎について迫ります。
華城連続殺人事件の犯人に繋がる証拠が少なかった
捜査の内容は、被害者の周囲の人物のみだったことや、目撃者などの聞き込み調査・現場の検証のみという基本捜査だけだったからとされており、犯人のものと思われる物証が少なかったからと言われています。
華城連続殺人事件の捜査当時にはDNA鑑定が導入されていなかった
事件が起きた1986年当時韓国にはDNA鑑定が導入されておらず、体液などの証拠は日本へ送られ、鑑定を行うことになりました。しかし、日本側の調査でもDNA鑑定の方法がまだ完全に確立されていなかったことや、証拠が変質して正確な結果は得らることができず証拠が残っていたにも関わらず、犯人を特定することはできなかったためです。
華城連続殺人事件が起きた華城の現在
事件が起きていた当時、世間を震撼させ周囲の人々や韓国全土を恐怖に陥れた事件が起きた華城は現在どうなっているのでしょうか。当時は夜に女性の一人歩きができないや学生を独りで帰宅させるのが怖い等恐怖で溢れていました。最初の事件発生から33年が経過した今の華城の様子を紹介していきます。
現在は世界遺産「水原華城」を中心に観光スポットとなっている
華城は現在、世界遺産となっている水原華城を中心に観光スポットとなっています。済扶島は干潮の時だけ地続きとなり海割れが見れる場所になります。次は自分かも、自分の身内かもと人々が恐怖に怯えていた華城は現在観光客で賑わう場所へと生まれ変わっています。
華城連続殺人事件がモチーフとなった映画やドラマ
華城連続殺人事件は社会的な観点から見ても関心の高い事件でした。そのため、この事件をもとにした映画やドラマが作られています。この事件がモチーフとなっている映画やドラマを紹介していきます。
華城連続殺人事件がモチーフの映画①殺人の追憶
映画は事件の被害者の様子や容疑者として疑われた人物の様子などが克明に表現されており事件を風化させないためにも作り上げられた懇親の一策ともいえる作品になっており韓国国内においても非常に人気を博しこの映画の監督は自分のお気に入りの作品20の中に選出しており21世紀最高の映画と称しています。
また、この作品は、批評家と観客の両方から好意的に評価を受けた映画になります。2003年度大鐘賞で最優秀作品賞を受賞し、主演を務めたソン・ガンホは主演男優賞を受賞し、韓国では510万人以上を動員した作品になりました。
華城連続殺人事件がモチーフの映画②22年目の告白 -私が殺人犯です-
こちらは2017年に公開された日本映画になります。2012年に韓国で公開された「殺人の告白」という映画のリメイク版となり舞台は華城ではなく日本になりますが被害者の残虐な殺害方法や捜査の状況などを華城連続殺人事件をモチーフにした作品になっています。
華城連続殺人事件がモチーフの韓国ドラマ「シグナル」
このドラマは、現在と過去の刑事が未解決事件の真相を捜査していくサスペンスドラマとなっています。日本でも2018年シグナルのリメイク版として「シグナル 長期未解決事件捜査班」という名前で放送されています。
韓国版の「シグナル」では、華城連続殺人事件をモチーフにドラマが構成されており、当時の痛ましい記憶をよみがえらせたドラマとして注目されていました。インパクトの大きかった事件が元になっている為、社会の闇とその事件を解決しようとする刑事達の人間性も描かれているドラマになります。