精神鑑定によって金川が「自己愛性パーソナリティ障害」と診断し、責任能力が認められる、と判断します。
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自己愛性パーソナリティ障害については後述しますが、この鑑定結果は非常に重要でした。もし責任能力が認められなければ、金川の望む死刑への道は閉ざされてしまっていたのです。
精神鑑定を用いて刑事責任を判断する際、心神喪失状態で無罪となる場合、心神喪失状態であっても一部責任を負い減刑になる場合、全ての責任を負える状態で有罪となる場合とがあります。
裁判が長引くと激高し、机をひっくり返すなどの手段に出ることも
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土浦連続殺傷事件の公判中、証言等により裁判が長引いたり、次の公判日の日程が数か月先に設定されたりすると、金川は激高し、目の前の机をひっくり返して一部を破壊するといった行動に出ることもありました。
法廷でその様子を見ていた人からの証言では、机は重く少し押しただけでは動かないと思われるとされています。相当な強い怒気が含まれていたと推察されます。
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弁護側が死刑を避ける方向で裁判を進めていたことも苛立ちの一因であったと思われます。自分の思い通りに物事が進んでいかないことに強い憤りを感じていたのでしょう。
この反抗的な行動や悪びれない態度からも、いかに死刑になりたかったかが分かります。もはや死への異常な執念は狂気さえ感じさせます。
金川真大の希望通り死刑判決となり「完全勝利」と発言
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2009年(平成21年)11月、土浦連続殺傷事件の量刑の主張が行われました。検察側は死刑を求め、弁護側は本人が死刑を望んでおり死刑にしても刑罰にあたらないといい、更生の余地はあると主張しました。
そして翌月12月、土浦連続殺傷事件における金川真大への判決が下ります。水戸地裁は弁護側の訴えを退ける形で検察側の求刑通り、死刑という極刑を言い渡します。
裁判長は事件が与えた被害者遺族への苦しみは甚大であること、被告の反省や後悔が全く見られず、今後も更生の余地がないと断罪します。そして土浦連続殺傷事件は極刑と判断したのです。
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死刑という結果について、新聞社記者との面会で「完全勝利」という表現で金川は嬉しさを語ったようです。自分の欲しいものがやっと手に入ったという気持ちなのでしょう。
人を殺害した上で完全勝利という言葉を使うこと自体に歪んだ発想が垣間見えますが、金川の望んだ通りの結果だったという点ではまさに土浦連続殺傷事件公判はその通りになってしまったのです。
すぐに弁護側が控訴しましたが、金川本人が望まなかったため取り消されます。そして2010(平成22)年1月、土浦連続殺傷事件はとうとう死刑判決として結審されたのです。
2013年2月に死刑が執行された
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こうして裁判が終結した土浦連続殺傷事件。裁判後は死刑囚となった金川は東京小菅にある東京拘置所に収監されました。死を待ち望む気持ちは全く変わらず、事あるごとに早期の死刑を望む発言を繰り返します。
面会の中で金川に反省を促したり、生きる望みを持つよう働きかける動きもありましたが、金川の気持ちが揺らぐことはありませんでした。誰も心変わりさせることはできなかったのです。
2008年の土浦連続殺傷事件発生からおよそ5年後。2013(平成25)年2月、収監先の東京拘置所内にて絞首刑による死刑が執行され、29歳になっていた金川は死へと旅立ちました。
自己愛性パーソナリティ障害とは?
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土浦連続殺傷事件についての公判が始まる前に精神鑑定を受けた金川真大は「自己愛性パーソナリティ障害」と診断を受けました。この障害の特徴はどのようなものでしょうか。事件との関連性についてみていきましょう。
自分は特別で素晴らしい人間だと信じている
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障害の症状は人によって様々ですが、共通する特徴について述べていきます。この障害の特徴として「自分は特別で素晴らしい人間である」という優越感を抱いており、さらにそれを誇示したいという傾向があります。
そのため、常に自分を過大評価し、尊大で高慢な態度をとってしまう傾向にあります。自分は褒められて当然と思っており、褒められないというのは周りが無能なんだ、理解できないんだと思ってしまう傾向にあります。
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また、人口の1パーセントの人が発症する可能性があるとされており、特別珍しい障害ではありません。ただ、診断が難しく、病院を受診し適切な治療を受けている人は少ないのが現状です。
もし金川が事件を起こす以前に病院を受診しこの診断を受けていたとしても、治療やカウンセリングで彼の考えや他者への接し方を変えることは容易ではなかったはずです。
崩れやすい自尊心を抱えている
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一方で、客観的に自分を見つめることが難しいため、自分に対する批判には弱く、周りからの批判や助言を受け入れにくく思考が頑なになっていく傾向があります。
実際には自分が思うほど周りから認められないため、土浦連続殺傷事件の犯人・金川真大のように打たれ弱く脆い自尊心を抱えていることが多いとされています。
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和菓子会社の件で金川は周囲に見栄を張っていました。このように自分のことを実際より良くみせたり、誇張する点も一つの特徴に挙げられ、歪んだ自尊心の形成の一因となってしまします。
自信もあってかつ打たれ強さもあれば、批判や指摘にも耐えることができます。それが成長に繋がることもあるでしょう。しかし、この障害はアンバランスさが特徴なのです。
他人の気持ちなどを考えられない
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自分に対する評価が高く、自分のことは過剰に愛していますが、他人のことはあまり認めず、共感の気持ちが低い特徴があります。自分が他人より優れていると思ってしまいます。
そのため、利己的に他人を利用したり、相手の気持ちが理解できないため平気で人を傷つけることができます。また、そうした行為に罪悪感を感じないタイプが多いようです。
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他者への共感や気持ちを理解することは家庭でも社会でも必要な要素です。しかし、この能力がうまく育たなければ、どんなに知能が優秀でも人間関係で躓いてしまいます。
事件後に、殺人は悪いことではないという認識も示しており、自分の目的を達成するためなら他人の命や尊厳などは気にしていない様子もうかがえます。
強烈な劣等感や愛されないという感覚への防衛反応
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この障害は生まれつき備わっているものではなく、本人の本来気質や生まれ育った環境等の生い立ちが多分に関連すると考えられています。周囲からどのような影響を受けてきたかが重要ということですね。
土浦連続殺傷事件を起こした金川の幼少期の生い立ちには、強い期待をかけられたものの応えられず見放された過去があります。その経験が強い劣等感を形成したと推察されます。
後の裁判においても金川の家庭環境や両親からの接し方などが話題にのぼっており、金川の行動や犯行、他人を大切にしない思想背景との関連が指摘されました。
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幼少期は親から認められたいという承認欲求が強くあり、その要求に対して親が肯定的に応えて「共感」の態度をとることは、生い立ちの中での適切な自己愛の育成に必要です。
土浦連続殺傷事件を起こした金川は成長過程の中で、早い段階で親から見放されており、そのような子どもながらの欲求が満たされにくい生い立ちでした。
次第に自己中心的過ぎる自己愛が形成されたのでしょう。それが「自己愛性パーソナリティ障害」を引き起こす一つの素因になってしまったのではないかと推察されます。
土浦連続殺傷事件では県警のずさんな対応も明らかに
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土浦連続殺傷事件では最初の犯行現場に残されたマウンテンバイクから早い段階で金川真大を容疑者として特定し捜索していましたが、警察は二度目の犯行を防ぐことはできませんでした。
何故未然に捕まえることができなかったのでしょうか。土浦連続殺傷事件における警察の動きについて追ってみましょう。
捜査員同士の連絡手段を持っていなかった
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土浦連続殺傷事件で県警は二度目の犯行現場となった荒川沖駅に犯人が再度現れることを予測し、8名の捜査員を配置していました。予測が正しかったと言えます。
しかし、無線機等の捜査員同士が連絡を取り合う手段を確保していませんでした。金川が現れても他の捜査員に伝えることができず、連携することはできなかったということです。これは無視できない失態といえるでしょう。
事件後に警察がこの点について聞かれた際には、無線やイヤホンをつけていては容疑者に気付かれる可能性があった、容疑者確保を最優先にしたと述べています。
駅に配置された捜査員は金川真大の写真を持っていなかった
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土浦連続殺傷事件二度目の凶行の現場となる荒川沖駅で張り込んでいた捜査員は驚くべきことに金川真大の顔写真を持っておらず、改札を通過した金川に気付かずに取り逃がしてしまいます。
この件について県警は、金川が髪型を変えスーツを着る等の変装をしており、また写真自体も2年前の物であったことから気付けなかったと釈明しています。
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もし捜査員の目の前を通る男が犯人だと分かったならその場で取り押さえ、第二の犯行が起きず8人の被害者は出なかった可能性は十分に考えられます。
また、捜査本部に第二の犯行が伝わったのは、現場にいる捜査官からではなく市民からの110番通報だったということです。張り込んでいた捜査官の中には事件に気付かなかった者もいたようです。