ですが10年以上前に他の食紅に置き換えられています。今後も安全に問題なくお楽しみいただける食品のひとつです。
三栄源エフ・エフ・アイは低アレルゲンコチニール色素を開発
三栄源エフ・エフ・アイが開発した、アレルゲン物質を極限まで排除した新しいコチニール色素のおかげで、ここ十数年新しいアレルギー症例は報告されていません。
よって国産の食紅で問題が起きることはまずないでしょうが、海外産は同じ精度とはいかないため、今後も注意が必要です。
Contents
コチニールカイガラムシはどんな虫?生態は?
ここからはコチニールカイガラムシの生き物としての生態を勉強していきましょう。
日本では生きた状態でお目にかかることはめったにありませんが、養殖という形で人類と何千年も共に歩んできた彼らは、友と呼んでも大げさでないくらい身近な存在なのです。
コチニールカイガラムシの別名はエンジムシ(臙脂虫)
その身体から抽出される濃い赤色から、別名臙脂(エンジ)虫と呼ばれることもあるコチニールカイガラムシ。
臙脂色の染料は多々ありますが、虫が使われたものを生(ショウ)臙脂と呼び分けることもあります。日本には中国を経由して輸入されました。
コチニールカイガラムシのメスの成虫の体長は3mmほど
コチニールカイガラムシは雌1匹が3mmほどと大変小さな虫です。雄と雌の生態に大きな違いがあることも特徴で、雄の体長は雌の半分しかなく、生まれた時から一生の定住先(サボテン)を決め動かない雌に対し、羽根の生えた雄はあたりを自由に飛翔することができます。
また、雄には顔料となる成分を分泌する機能がありません。
コチニールカイガラムシはサボテンの裏側に生息
雌のコチニールカイガラムシはサボテンの裏面に寄生して一生を過ごします。
主に南米に生息するウチワサボテンなどに張り付き、植物からの栄養素のみで生きるため、養殖風景は虫の飼育というより植物の栽培に近いものがあります。人がすることはサボテンの世話が主であり、虫に手をかけてやる必要はほとんどありません。
コチニールカイガラムシの色素は代用できるの?
先に記載した通り、虫を苦手としている・またアレルギーの消費者に配慮して、コチニール色素は代用品への置き換えが進んでいます。
そこでもちろん気になってくるのが「他の色素は一体何が原材料とされているんだろう?」という点です。現在主流とされているのは、たとえばこんな顔料たちです。
トマトから採取される「リコピン」
リコピンはトマトやスイカに含まれるカロテンの一種であり、健康維持やダイエット・美白効果があるとして、近年高い注目を浴びる栄養素です。
食品由来の食紅という心理的な安心感と、鮮やかな発色のおかげで人気の着色料となっています。
赤キャベツから採取される「アントシアニン」
赤キャベツやあじさい、ブルーベリーなどの紫色のもとになっているのがアントシアニンという色素です。
植物の世界に広く浸透しているのはもちろん、抗酸化・抗炎症作用があるため我々もサプリメントなどでよくお世話になっています。
ムラサキイモを利用
また同じようにアントシアニンを含む素材に、ムラサキイモが挙げられます。粉末にすると非常に扱いやすくなるため、市販の製菓材料としても販売されています。pH(ペイハー)を調節することにより、青味や赤味を変化させられるので、かわいいピンク色や黄色にすることも可能です。これならいちごオレに入っていても安心ですね。
コチニールカイガラムシ以外の虫由来の色素
コチニールカイガラムシの他にも、意識していないだけで、我々は虫の恩恵に与りながら生活しています。
では他にどんな虫のお世話になっているのか?あらためて知れば、嫌うどころか虫への感謝に目覚めようになるかもしれません。
ラックカイガラムシから作る「セラック」
キャンディやマーブルチョコには、食欲をそそるツヤを作るため、ラックカイガラムシという昆虫の分泌液が使用されています。
この天然樹脂は無味・無臭・無毒という非常に安全性の高い素材です。そのため、食品だけでなく医療用に使用されることもあります。
蚕の幼虫のフンから作る「銅葉緑素」
抹茶は世界中で人気のフレーバーですが、食品を美しい緑色に染めるため、銅葉緑素という着色料が使われることがあります。原材料は、蚕の糞です。
漢方薬として使用されるぐらい栄養豊富な食品なのですが…。養殖は簡単ですがやはり「糞」という抵抗感と、そもそも養蚕文化が無くなりつつあるため、植物色素に置き換わってきているようです。
ビーバーの持つ香嚢「カストリウム (海狸香) 」
バニラやベリー系食品の香料として使用されるカストリウムは、漢字で書くと海狸香。つまり、動物のビーバーのことです。
彼らは肛門のすぐそばに匂い袋を持っていて、そこに蓄積される分泌物が香料として利用されています。そのままでは強い臭気を放ちますが、希釈することにより実に良い香りに変化します。
鮮やかなブルーの色素も!その名を青色1号
赤い色素にはコチニールカイガラムシをはじめ、さまざまな原材料が利用されていることが分かりましたね。では対となる、青い色はどうなのでしょう?
その顔料の名は「青色1号」、食品にもよく使用される目の覚めるようなブルーです。
原材料はタール系
青色1号はタール系顔料です。かつてコールタール(石炭を熱で分解したときに生まれる物質)から作られていたためそう呼ばれていますが、現在は石油由来のナフサという物質から化学合成により生み出されています。
石油なんて食べていいの?!と驚かれますが、異常な量を摂取しない限り健康上の問題はありません。
使用用途はゼリー、アイスなど
コチニール色素はいちごオレやカンパリに使われましたが、ブルーの食品といえば、夏に涼しげなサイダーゼリー、ブルーハワイのアイスやかき氷、またカクテルなど目で楽しむドリンクにも多用されています。
以前コンビニで発売されて話題を呼んだスライム肉まんも青色1号による着色食品です。
脊髄損傷に対して回復効果あり!だが副作用も…
青色1号は顔料として安全なだけでなく、動物実験を行った結果、損傷した脊髄への回復効果まで認められました。
今後は医療面での活用も期待されますが、深刻な副作用として、細胞が青色に染められてしまうことも確認されています。つまり「怪我は良くなるけど身体が青く染まっちゃう!」と…。
こんなにある!意外な原料を使った商品
また着色料に限ったことでなく、世の中は意外なものを原材料とした商品で溢れています。
人間のくらしを豊かに彩ってくれる生き物たちに感謝すべきですが、何より驚きなのは、これらの素材からこういうものを生み出そうという発想の柔軟さですね。通常であれば決してこのような使い方をしようとは思わないものばかりです。
鳥の糞を使った化粧品
日本では昔から美白・美肌効果があるとして、乾燥させ粉末状にした鶯の糞を洗顔料やパックに利用してきました。
使用感が良く効果も高いことから長年婦人たちに愛用されてきたものの、近年鶯が鳥獣保護法によって捕獲禁止となり、また養殖しても大量生産できず、今となっては非常に入手困難な高級化粧品になってしまいました。
猫の糞を使った飲料
インドネシアに生息するジャコウネコがコーヒーの実を食べると、未消化のまま糞と一緒に排出されます。その実を焙煎することにより、何とも甘やかで香り高い最高品質のコーヒーが出来上がるのです。
いちごオレと虫が霞むレベルの衝撃ですが、その豊かな風味は高い評価を得ており一杯数千円するものも珍しくないほどです。
鯨の結石を使った香水
結石といえば病気が生み出す苦痛の石ですが、ひとたびそれが鯨にできると一気に貴重な素材に早変わりします。
加熱によって馨しい芳香を放ち、香水の原料として重宝されています。しかしその性質上養殖は不可能であり、偶然にしか入手できないため、大変に高価であり1kg200万円でやり取りされることもあるとか。
コチニールカイガラムシの色素は意外と身近なもの
コチニールカイガラムシをはじめ、思いもよらない材料を使った着色料は意外と身近にあるものです。
これを期に食紅や成分表示を意識して、気になる素材があったら調べてみるのも良いかもしれません。いちごオレを飲むときはこの記事を思い出してみてくださいね。
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