また、雄には顔料となる成分を分泌する機能がありません。
コチニールカイガラムシはサボテンの裏側に生息
雌のコチニールカイガラムシはサボテンの裏面に寄生して一生を過ごします。
主に南米に生息するウチワサボテンなどに張り付き、植物からの栄養素のみで生きるため、養殖風景は虫の飼育というより植物の栽培に近いものがあります。人がすることはサボテンの世話が主であり、虫に手をかけてやる必要はほとんどありません。
コチニールカイガラムシの色素は代用できるの?
先に記載した通り、虫を苦手としている・またアレルギーの消費者に配慮して、コチニール色素は代用品への置き換えが進んでいます。
そこでもちろん気になってくるのが「他の色素は一体何が原材料とされているんだろう?」という点です。現在主流とされているのは、たとえばこんな顔料たちです。
トマトから採取される「リコピン」
リコピンはトマトやスイカに含まれるカロテンの一種であり、健康維持やダイエット・美白効果があるとして、近年高い注目を浴びる栄養素です。
食品由来の食紅という心理的な安心感と、鮮やかな発色のおかげで人気の着色料となっています。
赤キャベツから採取される「アントシアニン」
赤キャベツやあじさい、ブルーベリーなどの紫色のもとになっているのがアントシアニンという色素です。
植物の世界に広く浸透しているのはもちろん、抗酸化・抗炎症作用があるため我々もサプリメントなどでよくお世話になっています。
ムラサキイモを利用
また同じようにアントシアニンを含む素材に、ムラサキイモが挙げられます。粉末にすると非常に扱いやすくなるため、市販の製菓材料としても販売されています。pH(ペイハー)を調節することにより、青味や赤味を変化させられるので、かわいいピンク色や黄色にすることも可能です。これならいちごオレに入っていても安心ですね。
コチニールカイガラムシ以外の虫由来の色素
コチニールカイガラムシの他にも、意識していないだけで、我々は虫の恩恵に与りながら生活しています。
では他にどんな虫のお世話になっているのか?あらためて知れば、嫌うどころか虫への感謝に目覚めようになるかもしれません。
ラックカイガラムシから作る「セラック」
キャンディやマーブルチョコには、食欲をそそるツヤを作るため、ラックカイガラムシという昆虫の分泌液が使用されています。
この天然樹脂は無味・無臭・無毒という非常に安全性の高い素材です。そのため、食品だけでなく医療用に使用されることもあります。
蚕の幼虫のフンから作る「銅葉緑素」
抹茶は世界中で人気のフレーバーですが、食品を美しい緑色に染めるため、銅葉緑素という着色料が使われることがあります。原材料は、蚕の糞です。
漢方薬として使用されるぐらい栄養豊富な食品なのですが…。養殖は簡単ですがやはり「糞」という抵抗感と、そもそも養蚕文化が無くなりつつあるため、植物色素に置き換わってきているようです。
ビーバーの持つ香嚢「カストリウム (海狸香) 」
バニラやベリー系食品の香料として使用されるカストリウムは、漢字で書くと海狸香。つまり、動物のビーバーのことです。
彼らは肛門のすぐそばに匂い袋を持っていて、そこに蓄積される分泌物が香料として利用されています。そのままでは強い臭気を放ちますが、希釈することにより実に良い香りに変化します。