オチョナンさんとは?
ひらがなだけで書かれた家族についての男の子の絵日記に、家族以外の”何か”が家の中に居る事が書かれているのを読んで不安になったお母さんはお父さんに相談すると、お父さんにも思い当たる節が。たった3ページであっと言う間に「怖い」と噂が拡散された「オチョナンさん」についてご紹介します。
漫画「不安の種」に登場する謎の存在
週刊少年チャンピオンに連載された中山昌亮の作品「不安の種+」#5に登場する謎の存在がオチョナンさんです。決して何かをするわけでも無く、最初からそこにいて、いつの間にか家に居座る恐怖の対象ですが、子供にしか見る事ができないようです。また、ある地方では守り神のような存在でもある「オチョナンさん」とはどう言った怪異なのでしょう。
見た目は人間のようなもの
作中でのオチョナンさんは、胸部から上の描写だけなので全身像は不明ですが、人間と同じように頭と身体があるようです。ただ、じっとこちらを見つめるその顔は、とても人間とは言い難い異形の表情をした怪異そのものです。
田舎の農村に現れる
田舎の農村の道の上に現れた”何”かは、オチョナンさんと同じ口とシルエットだけで正体はハッキリしません。ですが手と足まで生えており、更に不安と恐怖を煽ってきます。
オチョナンさんの特徴
人間が恐怖を感じるのは、日常生活でのあり得ない違和感であり、それは異形のクリーチャーが現れるよりも人型の怪異である事で、根深く心臓に突き刺さるインパクトがあります。こちらを見つめるだけのオチョナンさんの特徴はまさにそこを的確に突き刺してくる謎の存在です。
90度に傾いた目と口
見た目や輪郭は人間のそれと同じ形状でも左右の目と口は90°縦になっており、何かを仕掛けてくるわけでもなく喋りかけてくるわけでもなく、ただじっとこちらを見つめるだけのところは、どうしたら良いのかわからない焦燥感がハンパなく恐怖を煽ってきます。
無気力な表情
男の子が「おちょなんさんのかおは、こんなです」と絵日記に描いたオチョナンさんと、お父さんの確認する写真に写り込んでいたオチョナンさんには、感情を表す様子のない無気力な表情でこちらを見ています。
手足がある場合も
田舎道で少女が夕暮れに気配を感じ後ろを振り返って見てしまったオチョナンさんのような”何か”は、遠く離れた道路の真ん中にしゃがみ込んだシルエットだけですが、確かに細長い手足を有する異形のモノでした。
オチョナンさんの伝承
男の子の家族がおじいちゃんの家に行き聞いた話では、おじいちゃんも子供の頃にオチョナンさんが見えていたと話します。そこで不安になっているお母さんがおじいちゃんに更に詳しく話を聞きました。
人ではなく家に憑く
おじいちゃんが話すには、「守り神のようなもので悪いものではないから心配することはない」と不安を隠しきれないお母さんに伝え一安心したと思いきや、「ただな….」と更に続けてきます。
つり目のオチョナンさんは危険
おじいちゃんは「こんな感じの目ぇしたやつには、ちょいと気を付けた方がええな」と絵に描いて見せてくれましたが、そこには目が釣り上がった、怒ったような表情のオチョナンさんが描かれていました。それがどう危険なのかは語られていませんが「こういうのに見込まれんようにしなきゃな」と釘を刺します。そして窓にその表情の顔が浮かびます。
農村の守り神説
とある村では守り神のような扱いを受け、わざわざ家に招き入れる風習があるようです。おじいちゃんがオチョナンさんについて説明してくれていた時にも「守り神みてえなもんだ」と語っています。おじいちゃんやお父さん、お父さんのお兄さんにも子供の時分には見えていたそうです。
オチョナンさんの元ネタ
オチョナンさんとはいったい何なのか、これまででハッキリしているのは男の子の絵日記に描かれていた事と、おじいちゃんから聞かされた話のみ。どうやら守り神のようでもあり、目が吊り上がったヤツには気をつけた方が良いと言う話しです。もう一度絵日記に書かれた内容を振り返ってみましょう。
漫画に登場する不気味な日記
「ぼくのうちはぼくとおとおととおかあさんとたまにおとさんと それからおちょなんさんがいます」「おちょなんさんはみんながいるときかくれてます ぼくだけのときうちのなかおぐるぐるまわります」「おちょなんさんのかおは、こんなです」子供の書いた文章とは言え、所々に少し不自然さを感じる文面です。
家族について書かれた日記に当然のように、家族以外の誰かが家族として男の子に認識されていて、お父さんとお母さんが知らないのに家に居るのはとても不気味ですね。
引っ越してからも不幸に見舞われる家族
そしてその家族はオチョナンさんから逃げるように引っ越すのですが、おじいちゃんが認知症になり入院したり、お父さんの仕事が上手くいってない事、なぜ新築の家からわざわざ賃貸アパートに引っ越したのかなどの話を引越し先のアパートの人?と話している時に、龍太(ここで初めて名前が判明します)と遊んでいたその家の女の子が突然泣き叫びます。
どうやら龍太が描いた絵を見て泣き出したようなので、お母さんが「龍太、何を描いているの?」と聞くと「今はこんなになっちゃってるんだよ」と目が吊り上がり今にも噛みつきそうな恐ろしい形相になったオチョナンさんの絵を差し出します。オチョナンさんが憑いていた家から離れたせいでオチョナンさんが怒り、家族を不幸に招いたのでしょうか。
オチョナンさんが登場する「不安の種」とは
2004年秋田書店刊行のチャンピオンREDに連載され週刊少年チャンピオンに移籍し、タイトルを「不安の種+」に改変し、読者に恐怖と不安の種を植え付ける1話完結型のオムニバスホラーです。
一話完結型のホラー漫画
どこにでも普通にいる一般人が毎回変わる主人公なので感情移入がしやすく、親近感がある事が災いして自分の身の上にも起こりそうな既視感と感じながら非日常で正体不明の怪異と出会うストーリー。最大の特徴として、結末はあえて書かれず、読者に結末を予想させるように不安を煽って投げっぱなしに終わる新感覚のホラー漫画です。
原作者は中山昌亮
原作も手がける中山昌亮さんは1966年北海道旭川市出身の漫画家です。1988年アフタヌーン四季賞冬のコンテストや第20回ちばてつや賞一般部門で準入賞を受賞。主に講談社のモーニングで連載を抱え2006年に「PS-羅生門」がTVドラマ化。2012年より秋田書店刊行の少年チャンピオンに「不安の種」を連載し、翌2013年に実写映画化されました。
作品の舞台は実在する
不安の種の舞台は都心から少し離れた郊外の町が多く、作品の最後に必ず場所が記されています。華やかな都心部ではなく少しローカルな「阿佐ヶ谷」「川崎」などの地名が出てくるので妙に不安が募ります。ただし「オチョナンさん」だけは毎回「場所は伏す」となっており、どこに現れるのか不明のままです。
第2のオチョナンさん?「夏の思い出」
これはオチョナンさんなのか?と噂された怪異が登場する「不安の種+」#62「夏の思い出」には、手と足がありシルエットを見る限りではオチョナンさんとは似ても似つかぬそのフォルム。しかし口が縦に開くオチョナンさんの特徴を持ち、人々が”それ”を指す時に「…なん様」と呼んでいる、その正体はオチョナンさんなのでしょうか。
あらすじ
毎年夏は田舎の祖父母の家で過ごす少女が、仲の良い従兄弟姉弟の家からの暗い帰り道、何か白い物が線上に長く続く米を見つけます。振り返ると暗い道の先に手足の長い異形の影がしゃがみ込み米を食べています。その米を辿ると祖父母の家まで続いている事に気付いた少女は、夢中で米を蹴散らして走って逃げ帰り布団に潜り込みます。
「何で…来ん…」「….呼んだのに…」「…なん様」夜の間中大勢の大人の声がしていました。次の朝血跡がある昨夜の場所で従兄弟姉弟に会うと弟の方は片目に血の滲んだ包帯を頭に巻き、姉の方は「お前のせいで」と怒り「これからお前は知らない人だ」。何が起きたのか全く理解は出来ず、その夏以来少女の家は親戚付き合いを無くしました。
物語の舞台は不明
不安の種シリーズは必ずラストにその地名を記すのがお決まりですが。オチョナンさん登場回のみ「場所は伏す」となります。どこに現れるのか不明な所が怖いですね。田舎が舞台の「夏の思い出」のラストにも「場所は伏す」となっていると言う事は、暗い道の遠く向こうで蹲って米を食べていたのは?そのヒントは大人達の会話の中にあります。
「夏の思い出」を考察
「…なん様」と会話にあったのは「オチョナン様」で土地の守り神的な存在と考えると、大人たちが道に米を撒きオチョナン様を招き入れようと待っていたが、事情を何も知らない少女が米を蹴散らしたため祖父母の家には来れず、行き場を見失ったオチョナン様は代わりに従兄弟を襲ったと言う事でしょうか。
その風習を乱したために祖父母の家は責められ親戚付き合いを無くすほどの大事に発展したのだと考察します。仮に少女が米を蹴散らさず祖父母の家に来ていたらどうなったのでしょう。米で招き入れられたオチョナン様に、何も知らない少女が生贄にされ喰われていた?最悪な結末も推測できます。
「オチョナン」さんの正体を考察
そもそもオチョナンさんの正体とはいったい何なのか、何故オチョナンさんと呼ばれているのか。怪異に意味を求めるのはナンセンスかもしれませんが、少しでも恐怖と不安を取り除くために人間の理解の範疇を超えたオチョナンさんの正体を考察します。
オチョナンさんの正体①亡くなった長男説
何らかの事情で亡くなった長男を指し示すと言う説も浮上しています。絵日記に記されたいくつかの不自然な点、人に憑くのではなく家に憑くのは長男だからではないかと言う2点から考察してみます。
日記から不自然に消えた「う」
絵日記に記されたひらがなの文章の中で弟を「おとおと」お父さんを「おとさん」と書いています。子供の書く文章だからと言うなら「ぼくのうちは」「うちのなかお」と”う”をちゃんと使い、人を指す場合にのみ故意に”う”を消している点は不自然です。とすると「おちょなんさん」は「おちょ”う”なんさん」となり、お長男さんと解釈できます。
家に居つくのは長男
絵日記を書いた男の子の家はお父さんが手にした写真からも分かる通り、建築中から既にその家に取り憑いていたとも考える事ができます。家を継ぐのは長男と世間一般の常識からすると、お父さんが長男だからか、男の子の上に何らかの事情で亡くなっていた長男がいたのか、謎は深まりますが作中では一切明かされないので推測の域を脱しません。
オチョナンさんの正体②座敷わらし説
おじいちゃんの話にもあったように「いい子にしてれば」基本的には悪さをしない存在であり、おじいちゃんやお父さんも子供の時にだけ見えていたと言う、好意的に解釈するのならば、子供の目にだけは映る事のできる座敷わらしのようなものであるとも考えられます。