世捨て人とは?社会との関わりを断ち生きる人達
スマートフォンなどの通信機器の普及により、SNS等を媒介として他人との交流が簡単に出来る世の中になりました。仕事の場面でも、ネットを使用しないことの方が、現代では希少なのではないでしょうか。
そんな俗世間と離れ、「誰からも評価されない暮らし」「煩わしい人間関係のない暮らし」に憧れを持つのは自然と言えるでしょう。世捨て人に憧れを抱く人のために、その意味や暮らしについてご紹介していきます。
世捨て人の意味と類語は?
「現在の生活から飛び出す」という意味では、近年よく耳にするようになった「バックパッカー」も連想させますが、意図を比較すると全く別物であることが分かります。
バックパッカーは低予算で行う個人旅行のことを言い、「世界を知る」といった意味合いも含む場合が多いでしょう。世捨て人は、これとは全く反対なのです。
世捨て人とは世間と関係を断った人のこと
世捨て人とは、俗世間(求道・修行に無関心な人たちが、暮らしている世界)との関係を絶った人のことを指します。「現在の生活に嫌気がさした」「世間から逃れたい」という気持ちを心に持っている人は、世捨て人になる可能性を持っていると言えるでしょう。
世捨て人は決してニートではない
この二つを同様のものと誤解している人が少なくないようですが、こちらも内容が全く異なります。ニートは、主に親の収入に頼っており、一人では生活できる状態にありません。
しかし世捨て人は、一人で俗世を離れて生活をするのですから、自分の面倒はすべて自分でみなければなりません。自立した生活を送っているのです。
また、ニートは家から出ずに人との面と向かっての関りは避けていますが、ネットを介してオンラインゲームやチャットで交流しています。これに対して世捨て人は、生活のための最低限の交流しかしないというのが特徴です。
世捨て人の類語に僧侶や遁世者も
僧侶や隠者・遁世者と呼ばれる人も、この世捨て人に分類されます。「僧侶」と言うと、世捨て人がどういったものであるか、イメージがしやすいでしょう。
日本では平安時代にはすでに、出家の歴史があったとされています。近年では時代劇など、物語の中の話としてしか聞くことがありませんが、現代の世捨て人はどのような暮らしをしているのでしょうか?
世捨て人の生活とは?
現代の世捨て人がどのような生活をしているのか、詳細をご紹介していきます。「俗世から解放される」と言えば聞こえは良いですが、私たちの生活は知らぬうちに、多くの人があってこそ成り立っているものですから、それを全て自分で行うことは、簡単なことではありません。
世捨て人の生活①出勤をしない
世捨て人の殆どは、企業に属していないと言えるでしょう。小さな会社では緻密な人間関係を、大企業であれば、大勢の人に気を使いながら働かねばなりません。
毎日決まった時間に、決まった場所に行く。ルーチンワークは大切ではありますが、これにストレスを感じる人は少なくありません。
打って変わって、出勤しないということは、時間に縛られることもなくなります。他人を気遣うこともなく、自分の好きなタイミングで物事を行えばよいのです。
世捨て人の生活②自給自足で生活
俗世を離れるということは、街に足を運ぶこともなくなるということです。自分でどうしようもないものは購入するしかありませんが、食料品は主に自給自足で生活をしています。
手間暇かけて自家栽培した野菜や果物は、ありがたみを持って食べることが出来るしょう。食料は必ず必要となるので、こうして食費を減らすことが出来るのは生活する上で重要であると言えます。
世捨て人の生活③ネットは繋がない
近年、自然災害が多くなっているので、そういった必要な情報が入るようラジオを用意することはあっても、インターネットなどは一切利用しません。最新のニュースや流行を、知る必要がないのです。
私たちの生活の中では、「情報は知っておかねばならない」「ニュースや新聞を確認せねばならない」というのが当たり前ですが、世捨て人はこういった「常識」からも解放されるのです。
世捨て人の生活④人付き合いをしない
職場の関係はもちろん、世捨て人は家族や友人との付き合いも減っていきます。万が一の時のために、携帯電話などの連絡手段は残しているかもしれませんが、普段から連絡を取ったり、会ったりすることは稀になります。
人と関われば、多かれ少なかれ必ず自分に影響を及ぼします。これは私たちの成長に必要なものの一つではありますが、自分の心が消えてしまうのでは意味がありません。
現代では、そうしてアイデンティティを探しているように見える人がいますが、答えが自分の内側にあることもしばしばあるのです。世捨て人は人と殆ど関わらないので、自分を見失うということもなくなります。
世捨て人の収入源は?
基本的には自給自足で生活していると言っても、お金にまで関わらずに生きていけるという訳ではありません。暮らす場所や光熱費などは、自分でどうにかするのは難しいですよね。
畑をするにも、土地が必要なのです。彼らはどうやって収入を得ているのでしょうか?
世捨て人の収入源①貯金を切り崩す
いきなり生活の全てを放り出して、世捨て人になれるわけではありません。「ストレスのない生活」に憧れて世捨て人になるという人も、お金がなければそれがストレスになってしまします。
ある程度の自給自足が出来るようになるまで、別のところから食料の調達をせねばなりません。そのためには、ある程度の貯金を用意しておき、切り崩して生活をすることが必要になるでしょう。
世捨て人の収入源②不動産収入
家・土地などの不動産を人に貸すことで得られる不動産収入により、不労所得を受け取ることが出来れば、毎月決まった金額が入ってくるので生活にもゆとりができるでしょう。
口座に振り込まれるようにしておけば、連絡を取る必要もありません。安定さえしていれば、一番悠々自適に世捨て人の生活を出来る収入源であると言えるでしょう。
世捨て人の収入源③株やFX
こちらはネット環境は必須となりますが、株やFXを収入源とする方法です。貯金額をただ生活費にするのではなく、投資にあてれば金額はプラスになっていきます。
ただし、株やFXを運用して利益を出すのは簡単なことではありません。必要な情報を集めなければなりませんし、運用の方法やノウハウに長けていなければならないので、万人向けとは言えないというデメリットがあります。
世捨て人の収入源④自由業
文筆業や画家として収入を得ることが出来るのであれば、これらは道具が揃っていれば仕事ができるので、場所を選びません。
特に文筆業は、一度本が出版されて売れれば印税が入ってきますし、新作を出すにしてもデータをメールで送ったり、FAXや郵送といった方法があるので、出版社へ赴く必要もありません。
画家の中でも、パソコンを使用したイラストレーターであれば、データを送信するだけで仕事が出来る時代となりました。例に出した2つの職業は、才能がなければならないではないか、と思われた方もいらっしゃるでしょう。
近年では、在宅でできる仕事を斡旋している企業もあります。そういった仕事であれば、ある程度は自分の時間で仕事ができ、努力次第で収入へ繋げることもできます。
世捨て人になるための準備は?
世捨て人には、一朝一夕でなれるわけではありません。生活の土台となる場所も必要ですし、自給自足するための畑は耕すことから始めなければなりません。
家族や、親しい友人がいるのであれば、一言残していくのも大切なことでしょう。世捨て人になるための準備や必要となるものを、ご紹介していきます。
世捨て人になるためには貯金をしておく
会社を辞めることになるので、辞めてからの収入の見込みがない、生活に困るような見通しがあるならば、貯金をしておくようにしましょう。自分が安心できるだけの貯金があれば、世捨て人になってからの生活も、逼迫したものにはならないでしょう。
世捨て人になるためには断捨離も必要
世捨て人になるということは、ある意味「欲を捨てる」ことであると考えることもできます。僧侶や尼も、浮世を離れて仏教の道へと進む際には、煩悩を捨てて心を整える修行をします。
昔は髪は欲を表すものだったため、出家の際には剃髪することが当たり前でした。物欲も同様です。自身の欲に値するものは、世捨て人の生活には持ち込む必要がありません。
持ち込めば、俗世への未練となって付きまとうことになるでしょう。本当に必要なものだけを残し、身に余る残りの物は断捨離することをお勧めします。
世捨て人になるためにアドレス帳も整理しておく
現代で、人間関係で悩んだ経験がないという人は存在しないでしょう。煩わしい人間関係も断捨離して、さっぱりと身を軽くしてから世捨て人となるのが良いです。
インターネットの発達により、私たちは容易に他人と結びつくことが出来るようになりました。これにより人間関係の在り方が大きく変化したことは、否定しようがありません。
様々な人の意見を取り入れやすい、同志を募ることが出来るといったメリットもありますが、移り変わりが激しく、人間関係を軽んじてしまいやすくなるなどの、デメリットも持ち合わせています。
世捨て人になるための準備をする過程で、自分に本当に必要な人間関係が見えてくるかもしれません。
世捨て人になるために自給自足について学んでおく
一言で「野菜を育てる」と言っても、野菜ごとに育て方の注意点が異なりますし、季節に合った野菜、植えるタイミングなどの重要です。とりあえずやってみよう!では、種を無駄にしてしまうことになります。
そうならないためにも、自給自足に必要な知識を頭に入れておきましょう。本を買っておけば、調べたい時に調べることもできます。
野菜だけではなく、鶏を飼って卵を調達する人もいます。鶏は雑食なので、自身の残飯や食べられなかった野菜をあげるのも良いです。
ただ鶏は代謝が良いので、毎日ある程度決まった量のエサが必要になります。良い卵を産んでもらうには、タンパク質と炭水化物を意識して与えるようにしましょう。
世捨て人になるためには物件を探しておく必要も
世捨て人になるにしても、家は必須です。物件を探し出してみれば、どのような生活をするかのイメージがさらに湧き上がってくるでしょう。
まったく新しい生活始めるには、思い切って県外や国外へ出てみるのも良いかもしれません。いずれにしても、自分が望んだ生活をするために、念入りに下調べをすることをお勧めします。
「アーリーリタイア」とも呼ばれている
定年を待たずして、フルタイムで働くという仕事を辞めることは、「アーリーリタイア」「セミリタイア」と呼ばれています。この生活を始める際の資金・収入別に、さらに異なる呼び方もされています。
「アーリーリタイア」と「セミリタイア」の違い
アーリーリタイアとは、定年を待たずに退職するというそれ自体を指しています。その中でも、収入が得られる状態でこの生活を始めることを「セミリタイア」と呼びます。
対して、収入がない状態で始めることを「完全リタイア」と呼びます。普通のサラリーマンで、他の収入源を持たない人がここに属することになるでしょう。
前述でご紹介したように、ここからスタートする場合は、安定した生活がないというデメリットを抱えていかねばなりません。
セミリタイアのランク
- ヒキコモリタイア : 月数万円の収入。とにかく社会に出たくない。
- 質素リタイア : 月十数万円の収入。自給自足の生活をする。
- のほほんリタイア : 月20~50万円程の収入。働かずとも、生活が安定。
- プチブルリタイア : 月50~99万円程の収入。堂々と仕事をせずに生活が出来る。
- 勝ち組リタイア : 月100~199万円程の収入。質素な生活とは程遠い。
- セレブリタイア : 月数百万円以上の収入。家族がいても安心。
家族がある人が世捨て人になるには
世捨て人になる人の多くは、独身であると言えるでしょう。収入がなければ家族を養えませんが、家族を養うには相当のお金が必ず必要となります。
家族がありながら、完全リタイアの道を選ぶ方もいらっしゃいますが、残りの人生に必要な貯蓄をした上で仕事を辞めています。近年、AI(人工知能)が進化を遂げており、「無くなる職業」がリスト化されたものを目にするようになりました。
この技術が進化し続ければ、人が働かなくても良いという夢の時代がやってくるかもしれません。これにデメリットがあるとすれば、その環境が浸透するまでに「就職難に陥るのでは?」ということでしょう。
十分な貯蓄をしたのちに会社を辞めるという選択をした人の中で、将来を危惧してこの選択をした人もおられます。
世捨て人に向いている人の特徴
俗世を離れた世捨て人としての生活に憧れる人は少なくないかもしれませんが、全ての人がなれる程に容易い道のりではありません。今まで過ごしてきた人生とは、まったくかけ離れた生活になるのです。
それでもいつの時代も、世捨て人になる人は存在したのです。どのような人が、世捨て人に向いていると言えるのでしょうか?
世捨て人に向いている人①人付き合いが嫌い
人見知りなんてレベルじゃなく、人付き合いそのものを嫌っている人もいるでしょう。人付き合い自体に魅力を感じなければ、それはただの煩わしいモノでしかありません。
進んで人と関わらない道を行く世捨て人は、人付き合いを嫌っている人が向いていると言えます。
世捨て人に向いている人②自然の中で生きていける
自給自足で生活するにあたって、土いじりは必須となります。土いじりには虫がつきものですが、男性も女性も苦手な人が多く、相当の覚悟が必要でしょう。
畑仕事では、鍬をもって耕したり種を植えたりと、自然と接する機会が増えます。鶏の声で目を覚まして、早朝から畑の様子を見る、と想像するととても健康的なイメージが膨らみますが、都会で暮らす人にとっては未知の世界と言えるかもしれません。
世捨て人に向いている人③体が丈夫である
人との関わりが殆どない環境になるので、持病を持っていたり、身体を壊しやすい人には危険です。風邪をひいても寝れば治る!というくらい、免疫力や治癒力が高い健康な身体を持った人の方が向いています。