アイゴとは
アイゴの特徴
アイゴとは、スズキ目アイゴ科の海水魚で、成魚になると体長30cmほどになります。平べったく木の葉のような形をしており、おちょぼ口のような唇の厚い口が特徴です。体は茶褐色から灰色で白い斑点がありますが、生息場所や刺激などによって変化します。そして、ひれには毒を持っており、この毒はアイゴが死んでも消えることはありません。
アイゴの生息域
アイゴは温帯から熱帯までの広い海域に生息していて、熱帯に近づくほど種類が増えます。日本では本州から沖縄まで広く分布し、主なすみかは沿岸の浅い岩礁や藻場です。河川の汽水域で見られることもあります。
アイゴの生態
雑食性で甲殻類やゴカイなども食べますが、藻類を特に好んで食べる魚です。7~8月に産卵し、孵化してすぐは動物プランクトンを食べますが、成長すると群れをなして沿岸の海藻を食べるようになります。これが藻場が消失する「磯焼け」の一因ともみられています。
アイゴの種類と地方名
アイゴの種類
スズキ目アイゴ科に属する魚は日本産で12種、世界では28種います。アイゴのように唇の厚い種類と、ヒフキアイゴのように口が突き出ている種類がありますが、いずれも毒針を持っています。体色のきれいなヒメアイゴ・ヒフキアイゴなどは水族館でもよく飼育されています。
ゴマアイゴ
アイゴの種類の中では大型で、大きいものは50cmほどにもなります。体に多数の黄色い斑点があるのが特徴です。比較的臭みが少なく、肉質もよいため、特に沖縄では珍重され、高級魚としても扱われています。
ハナアイゴ
体全体が青みがかった色をしていて、全体的に黄色い斑点がある種類です。この体色の鮮やかさからハナアイゴという名前がついたともいわれています。また、尾びれが二又に分かれているのも特徴で、体長は35cmほどにまで成長します。
ヒメアイゴ
背側が鮮やかな黄色、腹側が銀白色で、頭部から体側にかけて斜めに2本黒い線があります。体長は20cmほどで、岩礁やサンゴ礁に生息しています。沖縄では食用にされますが、比較的安価です。
ヒフキアイゴ
ヒメアイゴにやや似た体色をしていますが、ヒフキアイゴは銀白色なのは頭部付近のみで、他の部分は鮮やかな黄色です。また、口が突き出ているのと、体の側面に黒い斑点があるのも特徴です。よくヒメアイゴとともに群れになっています。
アイゴの地方名
アイゴの「アイ」とはアイヌ語から来ており「棘のある」という意味です。また、「ゴ」は魚を表す語尾で、これが合わさって「アイゴ」という名前になったとされています。しかし、アイゴは日本各地で獲れるため、地方によって様々な呼び方があります。
例えば、イタイタ(富山)、アイバチ(山口)などの呼称は、毒針を持つことに由来する呼び名です。また、バリ(西日本各地)、イバリ(福岡)、バリゴ(熊本・宮崎)などといった呼び方もありますが、バリとは小便の別称で、身の臭みを小便臭さにたとえた呼び名です。他にも、アイノウオ(島根)、エーグァー(沖縄)などもあります。
アイゴの毒針に気を付けて!
アイゴの毒針がある場所
アイゴはほかの魚に比べ背びれ・腹びれ・尻びれが太く鋭く発達して針状になっており、そこに毒を持っています。また、頭部背びれのすぐ前の部分にも隠し棘があります。毒針は軍手などをしていても貫くほど鋭いので、釣り上げた際や調理の際は十分に取り扱いに注意しましょう。
アイゴの毒針に刺されたら
アイゴの毒は命にかかわるほどの毒ではありませんが、刺されてしまうと患部が腫れて激しく痛みます。数時間ほどはズキンズキン脈打つように痛み、それが収まっても数日から数週間はじわじわとした痛みが残る場合が多いです。しびれや関節痛などが起きることもあります。
アイゴにの毒針に刺されたときの対処法
まずは患部をきれいに洗い流し、できるだけ毒を絞り出しましょう。このとき口で吸い出すと、唇や口内に傷や虫歯などがあった場合、その場所からも毒が入って痛みが出てきてしまうので絶対にやめましょう。
このようなとき、ポイズンリムーバーを使うと効果的です。これは空気の圧力を利用して傷口から毒を抜く道具で、アイゴ以外の毒を持つ生き物に刺されたときの応急処置としても使えるので、釣りに出掛ける際にはぜひ持っていくことをお勧めします。アウトドア用品店やインターネットで購入することができます。
その後、火傷しない程度の熱いお湯(40~60℃)に刺された患部を30分程度漬けましょう。アイゴの毒の主成分はタンパク質なので、熱を加えると変性して毒素が反応しにくくなり、痛みが和らぎます。
水筒で白湯や熱いお茶などを持参して患部にかけたり、自動販売機であたたかい飲み物を買って患部にあてたりするだけでも効果があります。それでも痛みが引かない場合や、傷口が化膿してきた場合などには必ず医師の診察を受けるようにしてください。
アイゴのさばき方と処理方法
アイゴのさばき方
アイゴは毒を持っているうえに独特の臭みがあるので、釣り人の間では外道(釣れたとしてもリリースする魚)として扱われがちです。しかし、新鮮なうちに適切な処理をすればとてもおいしく食べることができます。
アイゴの独特の臭みは内臓と皮から出ていますが、内臓は死んでから時間が経つほど取り除きにくくなり、臭みも増してしまいます。アイゴが釣れたら、血抜きをし、毒針を処理し、内臓を抜くところまですぐにやってしまうのが理想的です。
処理には包丁・まな板とキッチンばさみがあると大変重宝します。内臓を取った後は海水できれいに洗い、クーラーボックスなどに氷詰めにして持ち帰って三枚おろしにするなどして調理します。