世界で最も危険な木!
植物は我々動物の様に自由に動くことはできません。そのため環境の変化のストレスにさらされやすく動物に比べより環境への適応が求められまます。過酷な環境を生き抜くために実に多様な進化を遂げています。中には特別な代謝経路を獲得し、我々人間にとっては有毒となるような化学物質を合成しているものも数多くあります。
今回取り上げるこの危険なマンチニールはトウダイグサ科に属しています。世界最大の花で有名なラフレシアもこのトウダイグサ科に分類されるという説が発表されています。日本にトウダイグサ科はあまり育成しておらず、主に熱帯地方の植物に多く見られます。
触るだけでも大変危険!
この植物はとんでもなく危険な毒を持った植物なのです。常緑の樹木で高さ15メートルにもなるこの木は幹にただ触れるだけでもあっという間にダメージを被ってしまいます。触れた箇所は猛烈な痛みに襲われ、やけどをした時の様に水ぶくれができてしまいます。
スペイン語圏では「死の木(arbol de la muerte)」
スペイン語で「死の木」と通称があるほどの猛毒を持っており、強いアレルギー症状を引き起こします。皮膚に触れた場合は痛みと水ぶくれができますし、万が一口にした場合は喉の粘膜がはれ上がり気管を圧迫、最悪は呼吸困難となり死に至ることもあります。
「世界で最も危険な樹」としてギネス記録を保持
この木はその果実にも猛毒が存在し、コロンブスも「死の林檎」と表現したほどです。現在もこの木は地域が限定されますがこの地球上に今もなお存在しており、ギネスブックに登録もされています。
生息域には必ず警告の看板!
その猛毒故、自生している場所がわかっている場合はその近くにはっきりと警告の赤い看板も写真の様に設置されています。樹液も猛毒があり、絶えず幹に染み出しているため近づくことすら禁止されています。
致死性の毒を持つスベスベマンジュウガニについて詳しく知りたい方はこちら
マンチニールの木について詳しく説明!
恐ろしい毒性は伝わりましたでしょうか?ここからはもう少し詳しくこの木の原産地をはじめとした生息地域についてお話していきましょう。どれほどの強い毒なのか、どこに毒があるのかなど具体的にお話していきます。
マンチニールの木とは?
原産地は北アメリカおよび南アメリカとされています。英語ではManchineelまたはManchioneelと表されます。スペイン語のmanzanilla(小さな林檎)が由来となっています。事実、先ほどお伝えしたように「死の木(arbol de la muerte)」と今もスペイン語では呼ばれています。
おそろしい毒性
毒の組成は主にアルカロイド類で、果実中に主に存在するフィゾスチグミンをはじめヒポマニンやホルボールといった物質があります。他にも未だ同定に至っていない物質も多く含まれています。中でもヒポマニンはマウス試験において致死量はたった40-60mg/kgです。
この植物の毒を摂取すると人は代謝することのできないので強いショック症状を起こします。その上そこに存在する微生物が原因となる胃腸炎はもちろんのこと、強いアレルギー症状を引き起こし気道や口腔内の粘膜がはれ上がり、息ができなくなってしまいます。
毒は実にもある!
この強いアルカロイド類は樹木全体をめぐっていて、「小さな林檎」と言われる果実部分にも存在します。緑色から黄緑色をしたコロンとした林檎に似た小さな果実はとてもおいしそうに見えますが決して食べてはいけません。
マンチニールの実は別名ビーチアップル!
英語圏での通称は「beach apple」です。この植物は主に沿岸や汽水域の砂浜に広がるマングローブ林の中で成育しており、砂浜に小さな林檎のような実が転がって落ちいていることから「ビーチ」が定着したのでしょう。
実はとてもかわいい!
果実はとてもかわいらしい見た目をしています。スダチより少し大きく、砂浜にコロコロと転がっているとまさに小さい林檎のようでおいしそうに見えるので思わず手を出してしまいたくなりますが決して触れてはいけません。
実も見た目から想像できないほど危険
かわいらしい白い5枚からなる花びらをもつ花が散った後に結実します。子供の手のひらでぴったり持てるくらいの大きさで到底毒があるなんて想像もつかない姿をしています。ですがここまでお話ししてきたように猛毒を含んでいます。
実を食べるとどうなる?
この猛毒の果実を実際に食べてしまった人の記録がイギリス医師会雑誌に残っています。放射線医学顧問であったニコラ・ストリックランドはトバゴ共和国の旅行中に、実を食べてしまった経験を以下の様に述べています。
「海辺の砂浜を歩いていたらココナッツやマンゴーに紛れて、緑色の丸い木の実を見つけました。私と友人はその果物を一口齧ると、たちまち甘い、心地よい味わいが口の中に広がりました。しかし数分後、口の中全体が違和感に包まれ、徐々に燃えるような痛みと共に喉が締め上げられる感覚を覚えました。」 (引用:Eating a manchineel “beach apple”(2000))
マンチニールは実だけでなく樹液や葉腋も危険
繰り返し述べていますがこの毒性はその樹木全体にあります。樹液や葉の付け根である葉腋、果実までです。古くから知られているこの毒性をうまく利用したケースもありますが大きな被害を受けたケースもあります。
樹液は先住民が毒矢として利用
猛毒があることを知っていたカリブの先住民たちは狩りのときに使用する矢の先にこの植物の樹液を塗り獲物をしとめていました。狩りに使うだけでなく戦闘の末の捕虜をこの木に縛り付け、徐々に幹から毒を浸透させ処刑したなんていうおそろしい話も残っています。
樹液で探検家は死亡
先住民たちの間では知れ渡っていた強い毒性は戦いにももちろん利用されていました。水にこの毒を溶かして敵に飲ませていたり、戦闘の際にも毒矢を使用していました。スペイン探検家のフアン・ポンセ・デ・レオンはこの毒矢を受けて死亡したとあります。