平家蟹にまつわる呪いと悲しい話:歴史に埋もれた平家の怨念とは?

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1331年の鎌倉幕府倒幕運動の際に起きた元弘の変により、摂津国(現在の兵庫県)の海で戦死した「秦武文」という武将から由来しています。タケブンガニの大きさは30センチほどで、ハサミに白い斑点を持つ特徴があります。

シマムラガニ

1500年代、室町時代の後期に戦国大名の細川晴元に家臣として仕えていた「島村貴則」という武将から由来します。島村は戦の最中に敵兵を複数人捕らえ共に海へ身を投げ出しそのまま帰らぬ人となりました。のちに摂津に生息する人面模様の蟹をシマムラガニと呼ぶようになりました。

平家蟹が見られる場所

生きたヘイケガニから標本、浮世絵まで日本各地にヘイケガニを見ることが出来るスポットがあります。ここではヘイケガニゆかりの地、山口県を中心にヘイケガニが見られる施設、作品をご紹介します。

下関海響館

山口県の下関市にある海響館では関門海峡に生息する海洋生物を多く展示しています。ヘイケガニもそんな展示物の一つで、寿命が短く飼育が難しいとされているヘイケガニを育てています。卵から孵化したばかりの赤ちゃんヘイケガニも見ることが出来る日本でも珍しい水族館です。

赤間神宮社務所

壇ノ浦の戦いで幼くして亡くなった安徳天皇を始め、様々な皇族や偉人を祀る神社。平家一族を祀っていることでも有名なほか、耳なし芳一の舞台としても縁が深くパワースポットとしても名高い土地です。竜宮城のような外観は安徳天皇が死の直前に思い描いた海の中の都を彷彿とさせます。

歌川国芳の浮世絵

江戸時代の浮世絵師歌川国芳が残した作品にも登場するヘイケガニ。10匹もの蟹が描かれている「大物之浦海底之図」ではその内4匹がヘイケガニで、「壇浦戦之図」では5匹の蟹が描かれています。いずれも人面の蟹を描くことにとって平家の怨みを表現したのではと言われています。

ヘイケガニを詠んだ歌集

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大昔から様々な学者や偉人たちがヘイケガニについて研究、議論を繰り返していましたが、江戸時代には歌人や絵師などの手によって文化の一つとしてもヘイケガニは取り上げられていました。ここではその中でも一風変わった歌集をご紹介します。

江戸時代のトレンド?「狂歌百物語」

妖怪画本・狂歌百物語

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錦絵や花屋敷、見世物小屋など様々なサブカルチャーが発展した江戸時代。そんな時代に描かれた狂歌百物語は、妖怪をテーマとした狂歌にイラストが添えられた妖怪図鑑であり、当時の人々に親しまれていました。ヘイケガニに関する狂歌も多数収録されており、現在でも狂歌百物語の翻刻版として出版されている「妖怪画本・狂歌百物語」は妖怪研究家の重鎮、京極夏彦氏による丁寧な解説付きです。

平家蟹と連子鯛

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ヘイケガニは平家の男性が死後に姿を変えたとの伝承がありますが、同様に壇ノ浦の戦いで犠牲になった女性も人間とは違ったものに姿を変えたという言い伝えが残っています。

連子鯛とは?

関門海峡付近で多く水揚げされるキダイと呼ばれる鯛です。関東にはあまり流通せず、西日本で多く見かける事が出来ます。キダイの別名を連子鯛と呼び、漁獲量の多い山口県や長崎などでは連子鯛の名前で親しまれています。

平家の女官の化身

九州地方で連子鯛と呼ばれるようになったのは、壇ノ浦の戦いで安徳天皇と共に海中へ身を投げ出した女官たちが鯛の姿になったという伝承が残っているためです。

安徳天皇を竜宮に導く役目

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何故女官たちは鯛の姿に変わったのかという理由については、海へ身を投げ出す直前に安徳天皇を抱いていた女官たちが「波の下にも都がございます」とまだ幼い安徳天皇を慰め、深海にある竜宮城へと導くために鮮やかな鯛の姿になったのだとされています。

ヘイケガニだけじゃない!人の魂が乗り移った生き物たち

人が亡くなった後、どこへ行くのかは宗教や国によって現在も捉え方は様々ですが、古い時代の日本では人は死後、人間とは違った形で現世にとどまることがあると考えられていました。そんな文化の中で生まれた生き物の言い伝えをご紹介します。

日本一有名な怪談 番町皿屋敷

日本人であれば、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう怪談が「お菊さん」で有名な番町皿屋敷。江戸時代に起きた、縛られた女性のような形をした蛹が大量発生した事件の際に町の人々の間では、殺されたお菊の霊が虫に宿ったのだと噂が持ち切りになったそうです。

平安末期の武将 斎藤実盛

平家に仕え、東国で腕を鳴らした豪傑でしたが、篠原の戦いで落馬したところを打ち取られました。戦の前に自前の白髪を黒に染めなおしたという言い伝えが残っており、実盛の打ち取られた首を洗ったとされる篠原の古戦場には白髪の実盛の亡霊が現れる伝承があります。また落馬の際に稲の切り株に馬の足に引っかけてしまった無念から、稲を食い荒らす虫に生まれ変わったという言い伝えもあります。

海峡怪獣「カイセンドン」!

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関門海峡に現れるという怪獣カイセンドンをご存知でしょうか。下関と北九州の名産品、蟹・たこ・フグがタッグを組んだ恐ろしいモンスターのご紹介です。

関門海峡に潜む怪獣

山口県と福岡県を隔てる関門海峡に生息するカイセンドン。水深47m、潮の流れが速い事で有名な関門海峡に突如として現れる海洋生物の集合体です。謎の怪獣カイセイドンは沿岸部への上陸を目論んでいるとのことです。

フグ・カニ・タコが合体

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身長229メートル、体重12万トンという巨体のカイセイドンですが、その正体はヘイケガニが長い年月を経てフグ・タコなどの海洋生物と合体した姿です。得意技はフグの毒ビーム・何でも切断する蟹ばさみ・蛸足による締め上げ攻撃など、その強暴さが伺えます。

「COME ON! 関門!海峡怪獣」

そんな強暴なカイセイドンですが、関門海峡の潮の速さに足をすくわれるといったオチャメな一面も持っており、関門海峡のPRキャラクターとして活躍しています。シン・ゴジラを手掛けたチームによるPR動画でその姿を確認する事が出来ます。

 

平家蟹にまつわる話は悲しいものだった

鬼のような形相で昔から人々に恐れられてきたヘイケガニ。しかし、そのルーツを紐解いていみると、いたずらに怖がってばかりではいられない悲しい歴史の裏側がありました。今も壇ノ浦の海には平家たちの無念の思いが漂っているのかもしれません。

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