伊勢海老ってどんなエビ?
おせち料理や料亭の和懐石でお馴染みの食材の伊勢海老ですが、料理のイメージは沸くものの、生態について把握している人は意外と少ないようです。伊勢海老について、名前の由来や生態、よく名前が挙がるロブスターとの違いについて、纏めてみました。
伊勢湾で獲れたから伊勢海老?
名前の由来は、初めて捕獲された場所が伊勢湾岸で、「伊勢」で捕れた「海老」なので、「伊勢海老」と名付けられたという説が挙げられます。他にも、磯によく生息していることから、「イソエビ」と呼ばれていたのが訛って「イセエビ」になったという説もあります。
伊勢海老の生態・生息域
日本では千葉県の南総半島より南に生息しており、千葉と三重でよく漁獲されています。夜行性の為、昼間は岩陰などに身を潜めて大人しくしています。夜になると、餌を求めて活発に動き回ります。肉食で、貝やウニをよく捕食します。タコが天敵で、タコを餌としているウツボと共生関係を築いており、行動を共ににしています。
伊勢海老とロブスターの違い
同じ大型の海老である伊勢海老とロブスターのは見た目もサイズもそっくりで、いまいち違いが判らない人も多いことでしょう。この2種の違いは、生物学の分類にあります。伊勢海老はイセエビ科目、ロブスターはザリガニ科目なので、全く別の種類になります。
伊勢海老はなぜ高い?
伊勢海老と言えばモノによっては1匹で2万円近くするものすら存在する、庶民には中々手が出せない食材です。同じ海老のブラックタイガー等は低価格で手に入るのに、この違いは一体なぜなのでしょうか?実は伊勢海老は養殖が出来ず、漁獲量も少ない希少な海産物なんです。
伊勢海老は養殖ができない!
日本では1890年代も昔から、伊勢海老の養殖研究が進められてきました。しかし、未だに成体までの育成は成功していません。幼生の時期が長いことと、幼生期の死亡率が非常に高いためです。今現在も研究は進められていますが、養殖が成功しないので、100%天然のものしか市場に出ない為、その分価格も高いのです。
伊勢海老はそもそも漁獲量が少ない!
生息域からして、伊勢海老は比較的温暖なところに分布しています。しかし、最も暖かくなる5月から8月は産卵期に当たるので、生態保護の為にも漁獲が禁止されています。活動が活発で捕れやすい時期に漁が出来ないので、あまり漁獲が望めないのです。漁獲量が少ないことも、値段が上がる要因です。
伊勢海老は縁起物!
おせち料理などのお祝いの席で登場する伊勢海老は、日本では縁起物として喜ばれていました。特別なハレの日に振舞われる食材だからこそ、価格が高めに設定されているのです。また、大振りのものほど見栄えも良く縁起がいいとされています。サイズが大きくなればなるほど、値段も高くなるのです。
伊勢海老の旬
最も身が引き締まり、甘味も増すのは、11月から1月の真冬です。漁が解禁されるのが10月から4月までとされています。資源保護目的で、5月から8月までは禁漁期間に設定されています。この時期が伊勢海老の産卵期間に当てはまるからです。
伊勢海老は10月から4月が漁期
漁獲量も少なく、養殖方法も確立されていない伊勢海老は資源保護の為に禁漁が定められている時期があります。場所によって多少前後はしますが、基本的に5月から8月の産卵期が禁漁期間にされています。その為、伊勢海老漁が解禁されるのは10月から4月となり、最も美味しい伊勢海老が捕れるのは、11月から1月と言われています。
伊勢海老の産卵期は春以降
温度の上がってくる春から夏にかけて、伊勢海老は産卵の時期に入ります。活発に動きだす時期ですが、多く出てくるからと乱獲してしまうと、絶滅しかねません。なのでこの時期は保護目的で禁漁になっている場合が多く、捕獲すると罰則対象になります。また、産卵期の伊勢海老は身が痩せてしまい、ぼそぼそとした食感で味も格段に落ちます。
おいしい伊勢海老の見分け方
折角の高級食材、どうせなら最も美味しいものを頂きたいところです。美味しい伊勢海老とは、腰が抜ける、ずっしり感のあるものが良いとされています。そしてもちろん生きているものが最もよいのですが、死んでるものよりも冷凍物のほうが美味しいともいわれます。見分け方のポイントを一つづつ見ていきましょう。
伊勢海老の「腰が抜ける」とは?
なるべく活発で、生きているものが鮮度も良く、刺身などでも美味しく食べる事が出来ます。動きもですが、生きているかの判断は、伊勢海老の腰に注目して下さい。胴体と尾の接続部分である腰が伸び切って関節内部が見えていると、その伊勢海老は死んでいるものになります。この状態のことを「腰が抜ける」といいます。
手に持った時の「ずっしり感」
身がしっかりと詰まっている伊勢海老ほど、手で持ってみた際にずっしりとした確かな重量感があります。そして、甲羅にも注目しましょう。伊勢海老は生きている間何度も脱皮を繰り返す生き物です。脱皮を行った直後は体力を消耗し、身が痩せてしまいます。甲羅が柔らかい伊勢海老は脱皮直後なので避けましょう。
死んでいるものよりは「冷凍物」を
生きてるものが最も美味しいく食べることができますが、必ずしも生きているものがあるわけではありません。死んでいる物か冷凍物か、どちらか選ぶなら冷凍物の方がオススメ出来ます。なぜなら、死んでいる物は死亡時期がいつなのかわかりません。冷凍物も同じくわかりませんが、冷凍保存されている分、まだ品質の良い状態が保たれています。
伊勢海老の簡単な捌き方
贈り物で頂いた際や、思い切って奮発して購入したはいいものの、伊勢海老は魚とはまた違う構造をしており、どう捌いていいのかわからない、などということも十分あり得ます。折角の高級食材、初心者でも綺麗に仕上がる伊勢海老の捌き方をマスターしましょう。
伊勢海老の捌き方、手順をチェック
伊勢海老の捌き方を一つずつ見ていきましょう。ポイントは切るというよりも、包丁の刃先を使って殻と身の繋がっているところを切り離すイメージで行うことです。きちんと切り離せれば、身を崩すことなく綺麗に取り出せます。
- まずは伊勢海老を真水に5分晒します。こうすることで、伊勢海老が大人しくなり捌きやすくなります。
- 頭を切り離します。頭を押さえながら、腰の部分に包丁の刃先を差し込み、頭側の薄皮を一周回して切り離します。
- 次に身を取り出していきます。尻尾側のお腹を上に向け、殻と身の隙間を刃先で切り離し、スプーンを使って身だけを取り出し、完成です。
匠の捌き方を動画でチェック
プロの捌き方を見ておきましょう。強い力ではなく、切るべきポイントを押さえて包丁を使うことが重要です。刺身で頂く場合なら、動画のように軽く氷水にさらしてやると、身がキュッと引き締まり、甘味も増すので、是非試してみて下さい。
伊勢海老のレシピは多様
伊勢海老が食材として活躍するのは、なにも高級料理だけではありません。甲殻類特有の濃厚な出汁が出る殻に、プリプリとした弾力ある食べ応えのある食感など、活かせる料理は沢山あります。和食だけに限らず、洋食や中華にまで、幅広く扱える食材です。
楽しめる料理はたくさん!
懐石料理で見られるお刺身や、お吸い物はもちろんですが、殻から出る旨味成分たっぷりの出汁を活かした海老汁や、洋食ならばパエリヤ、甲羅を器として活かしたグラタンなども美味しい伊勢海老料理です。伊勢海老はなかなかの万能食材で、様々な美味しいレシピがある魅力の食材です。
伊勢海老のレシピ3選:定番料理3選
オススメのレシピの中でも、伊勢海老料理と言えば、と名前が挙がる定番料理を最初に紹介していきます。お造りや味噌汁、エビチリなどのシンプルだけど抜群に美味しく、且つそこまで複雑な調理が必要じゃないのは作り手には嬉しいレシピです。
伊勢海老の身がプリプリ!「お造り」
生きたままに近い、鮮度のいい状態でしか味わえないのがお造りです。料亭では、伊勢海老の殻や頭を飾りに盛り付けてある姿をよく見かけます。強い甘みとプリプリとした強い弾力は、お造りだからこそのおいしさを堪能できます。
材料
材料で必要なのは、鮮度のいい、できれば生きた伊勢海老一尾です。やはり鮮度が良いものでないと、生食はオススメできません。お醤油や、ポン酢、薬味にもみじおろしやワサビ等を使っても味の変化が楽しめます。
料理レシピ
手際よく直ぐに捌ききるのがコツです。頭と腰の接続部分に包丁の刃先を差し込み、頭部とつながってる薄膜を切り離します。頭を引っ張って外し、お腹側も身に沿って薄膜を刃先で切り離していき、身を殻から引きはがします。取り出した身を一度氷水にくぐらせて引き締め、食べやすい大きさに切り分ければ完成です。
調理のポイント
捌きの過程を手際よくこなすことと、鮮度のいい伊勢海老を確保することが何より大切です。味の良さや食感などのお造りで重要なポイントがこの二つで決まってしまいます。工程の確認と、美味しい伊勢海老の選び方を意識してください。また、氷水にしっかりと潜らせることでより引き締まったプリプリの食感になります。
伊勢海老の出汁がよく出る!「味噌汁」
甲殻類の殻は濃厚な旨味成分がたっぷりと含まれています。美味しいお出汁をふんだんに活かした伊勢海老のお味噌汁は、まさに絶品です。殻を使用した豪快な見た目も、普段のお味噌汁を御馳走に大変身させてくれます。
材料
一尾分の伊勢海老の頭と殻、お味噌、水300~400㏄に、お好みで刻んだネギや三つ葉を散らしすのもお薦めです。お味噌はお好みで大丈夫です。塩気と甘味のバランスがいい合わせ味噌がオススメです。メインになるのが伊勢海老の殻と頭部ですが、もちろん身の部分を具材にしても美味しいです。
料理レシピ
まずは伊勢海老の頭の処理から始めます。伊勢海老の頭、胴体と引きはがした部分に指を入れ、足の部分を甲羅と分けます。甲殻部分で怪我をしないよう、軍手を付けて行うことを強くオススメします。分けるコツとして、足側を捻るように引っ張ると綺麗に剥がれてくれます。
頭部を3等分に切り分け、味噌汁の中に入れ、弱火で煮込みます。このタイミングで、伊勢海老の身や足の部分を使用する場合は入れて下さい。味見をしてしっかりと旨味が出だしたらお好みの具材を加えて完成です。
調理のポイント
頭部を3等分して加えるのがポイントです。細かくするほど味が染み出しやすくなり、短時間でもより濃厚に仕上がるからです。具材はお好みで全然構いませんが、足の付け根は是非加えてみて下さい。こちらからも旨味が出ることと、エビの足の付け根は良く動いている筋肉なので、引き締まっていて絶品です。
伊勢海老でもうまい!「エビチリ」
海老料理の代表格にも名前が挙がるエビチリは、伊勢海老で作っても絶品です。大振りで食べ応えのある身に、ピリ辛のタレがしっかりと辛み、噛むほどに旨味が染み出してきて最高です。ご飯と一緒に食べても良し、お酒のお伴にするにも最高の一品です。
材料
伊勢海老の身と長ネギ、ショウガとニンニクを1欠片ずつと、ごま油とタレです。タレは市販のチリソースで大丈夫です。手作りする場合にオススメなのは、コチュジャン+豆板醤:酒:醤油:味醂:砂糖=2:2:2:2:1の割合で作るタレです。辛みが強いので、苦手な方はコチュジャン+豆板醤の割合を1に減らし、お砂糖を少し増やして下さい。
料理レシピ
フライパンにごま油と刻んだショウガ、ニンニクを加えて炒めます。油に香りが映ったら伊勢海老の身を加え炒めていきます。身が白くなったところで、タレを投入し煮立つまで中火で混ぜます。とろみ付けの為に水溶き片栗粉を加え、刻んだネギを混ぜ合わせれば完成です。
調理のポイント
一口大、やや大きめに伊勢海老を切ってください。通常の海老では味わえない大振りの食感を楽しめます。味をなじませるためにも、全体的に身が白くなったところでタレを加えて煮詰めだしましょう。水溶き片栗粉は、加えすぎるとタレが固まりうまくなじみません。大匙2杯分を目安に調整して下さい。
伊勢海老のレシピ3選:洋風料理!3選
伊勢海老は和食だけの食材ではなく、洋食でも美味しく頂けます。海老の旨味がたっぷり染み出したブイヤベースや、洋風版のお造りカルパッチョ、ソースも具材も濃厚で美味しいパスタなど、特にオススメのメニューを詳しく見ていきます。