大惨事!クジラが爆発するとどうなるの?
クジラは、かなり大型の哺乳類に分類されます。そんなクジラが爆弾のように爆発するとしたら、一体どれほどの規模に、どのような影響を及ぼすのでしょうか?細かく解説していきます。
腫れあがる腹
クジラは瞬間的に爆発するのではありません。徐々に腹が膨れ上がっていき、クジラの身体の2倍以上、まるで風船のような状態になって、破裂するのです。
過去にあった事例だと、体長17メートルのマッコウクジラがまるで巨大な壁と思えるほどのサイズとなって、今にもはちきれんばかりに膨らみ、破裂したことがありました。
飛び出す内臓
クジラが爆発すると、腹部の肉片と共に、体内に収まっていた内臓も四散します。勢いよく破裂した腹部から赤黒い血液に巨大な内臓が飛び出してくる様子はかなりグロテスクです。
ドロドロに溶けつつある内臓と、赤黒い血のシャワーを大量に浴びると考えれば、人によっては気絶してしまうほどショッキングな光景であることは間違いないでしょう。
周囲に漂う悪臭
死骸となった大きなクジラが爆発し、飛び散った肉片や腐敗の進んだ内臓は、吐き気を催すほどの凄まじい悪臭を放ちます。クジラは死ぬと、真っ先に内臓から腐敗が始まります。
かなり腐敗の進んだ状態で、またその体格に見合ったかなりの内容量の臓物が 噴出する為、広範囲に濃度の濃い悪臭が漂います。
クジラ爆発事件簿①2004年台湾
ここからは、実際に怒ったクジラ爆発事件をいくつか見ていきましょう。2004年に発生した台湾でのクジラ爆発事件です。
この事件によって、クジラ爆発による被害や規模の脅威が、世界中に知らされる事となりました。見物人が多かったことも、大惨事の要因でした。
トラック輸送中にクジラ爆発!
台湾の雲林県の海岸に座礁していたクジラの死骸を、司法解剖の為にトラックに乗せて運んでいた最中に、クジラ爆発は発生しました。
大学の研究室から保護区に向けて輸送している最中で、爆発が起こった時、トラックは台南市の中心街を通過していました。
見物客に降り注ぐクジラの肉片
トレーラーに乗せられていたクジラは、非常に巨大で、物珍しさから600人にも及ぶ見物きゃくが押し寄せ、辺りでは軽食、飲み物の屋台までが立ち並び、お祭り騒ぎとなっていました。
そんな中、突如クジラ爆発は起こったのです。押し寄せた見物客の頭に、顔に、全身に、おびただしい血液と腐敗したクジラの肉片が降り注いだのです。
お祭りムードから一転、阿鼻叫喚の地獄絵図に
突然の血と臓物のシャワーに、辺りには悲鳴と、腐敗の進んだクジラの肉片による凄まじい悪臭によって体調を崩す人、嘔吐や気絶して倒れる人などが続出しました。
爆発したクジラの標本完成
トレーラーによるクジラの輸送を指示していた国立成功大学の王建平教授は、この時爆発したクジラの解剖をやり遂げたのです。
クジラ爆発事故から約一年後、王教授は爆発したクジラの骨格標本を完成させました。この標本と、保存されたクジラの内臓の一部は、今も台江鯨豚館という博物館に展示されています。
クジラ爆発事件簿②2013年フェロー諸島
2013年にスコットランドにあるフェロー諸島で起こったクジラ爆発事故です。海の動物の解体専門家では無い人が解体作業に当たったことで、この爆発は発生したのです。
試みたクジラ解体
水路に引っかかり死亡していた約14メートルほどの巨大なクジラを、街の海洋生物学者の男性が解体しようと試みました。
なぜ彼が抜擢されたかというと、街に住む人々から「このクジラの骨を街の博物館に飾りたい!」という強い要望を受けたからでした。
腹部に刃を入れた瞬間!クジラ爆発
解体役となった生物学者は、クジラの肛門から巨大なノコギリを差し込み、腹部へ向けて慎重に慎重に刃を進めていきました。
切れ込みの入り具合を一旦確認しようと手を止め、再び解体作業を進めようとした直後に、巨大な臓物とジェット水流のような凄まじい勢いの血が噴出しました。
間一髪!紙一重で逃げた生物学者
作業中の生物学者は、間一髪でクジラ爆発の被害から逃れらことが出来ました。爆発が生物学者が刃を入れていた進行方向の側から発生した事、状態を確認しようと一瞬立ち止まった直後に爆発したことで、難を免れたのでした。
もし生物学者が立ち止まらずに刃を進めていたり、進行方向側へと回り込んでいたら、間違いなく生物学者にクジラ爆発は直撃していたことでしょう。本当に紙一重の出来事でした。
クジラ爆発の実際の様子(グロテスクな為観覧注意)
こちらの動画が、フェロー諸島で実際に起こった、解体時のクジラ爆発を撮影した映像です。ジェットのような恐ろしい勢いで血と内臓が溢れ出しています。
クジラが爆発する理由
見た目のグロテスクさもさる事ながら、こう早いに及ぶ強烈な悪臭、直撃すれば勢いで吹き飛ばされかねないほど危険なクジラ爆発は、どんなクジラでも必ず起こるものではありません。
なぜこのようなクジラ爆発が発生するのかというと、生物の腐敗と関係があるんです。
座礁したクジラの腐敗とメタンガス
クジラも人間も、生きていると常に体内にガスが生成され、溜まっている状態をになります。腸内細菌や微生物が体内で活動することによって発生します。代表的なものを挙げると、メタンガスです。
クジラのように死んで腐敗が進行してるときも、体内では細菌や微生物がガス生産を続けています。死んでいるため体外への排出は行われません。
限界までガスがたまった腹の破裂
排出が行われないまま、ガスが生産され続ければ、いずれ限界はやってきます。風船のようにガスで大きく膨らんだクジラの腹部は、ちょっとした衝撃で簡単に破裂してしまいます。
衝撃は、先ほど紹介した解体作業や、輸送時の揺れなどが当てはまります。勿論、衝撃が無くても排出がないまま膨らみ続ければ、クジラは爆発します。
食物連鎖が行われなかった結果
座礁しなかった場合にクジラが沖で爆発するケースは非常に珍しく、滅多に起こりません。自然界だと死んだクジラは、サメなどの肉食系の生物によって食べられてしまうので、破裂寸前に膨らむまで死骸が残らないからです。
自然界の食物連鎖が行われず、海岸などに座礁、放置されることで、クジラ爆弾は完成します。
クジラを人工的に爆発させたケース
自然にクジラの爆発が起きることは割と頻繁にあります。しかし、クジラ爆弾とは別に、人工的に爆発を起こした事例も過去にはありました。
オレゴン州でのクジラ爆発
1970年の11月頃、オレゴン州のフローレンス近傍の海岸に、一匹の死んでいるクジラが座礁しました。体長14メートル、重さ8トンにもなるかなり大きなクジラでした。
この大きなクジラの死骸をどのように除去するか考えた末、クジラの死骸をダイナマイトで爆発させることになったのです。
クジラを爆破した理由
クジラを意図的に爆発させようとした理由は2つあります。1つは岩のように大きな死骸を重機などを用いてどかすには、労力や設備、人手の確保が困難であった為、爆破して細かくしてしまう方が容易に考えられたことです。
2つめの理由は、いかに巨大なクジラでも爆破すれば細かい肉片になり、肉片はわざわざ人が片付けなくても鳥や野生動物が食べて掃除してくれるだろうと考えられたからです。
クジラを爆破した結果
掃除の手間もなく簡単に片付けられると思って行われたクジラの爆破は、予想外の結果となりました。
クジラの死骸はほとんど解体されず、肉片ではなく、クジラの腹部の分厚い脂肪が多少弾け飛んだだけでした。弾け飛んだ巨大な脂肪の一部が、車を押し潰したり、周囲に脂臭い臭いが広かっただけで終わったのです。
なぜ予想外の結果になったのか
今回のクジラの爆発ダイナマイトの分量ですが、専門家に聞いた適正量ではなく、おおよその適当な量を用いてしまったため、うまく爆発しなかったことが考えられます。
しかし、万が一に肉片が飛散するほどの量でダイナマイトを使用し、クジラの体内のメタンガスに引火していれば、甚大な被害の伴う大爆発となりかねません。予想通りの結果にならなかったことは、不幸中の幸いとも言えます。
死んだクジラを海に曳航するケース
解体も危険、爆破はさらに危険となれば、クジラの死骸が座礁してしまった時、一体どうすればクジラ爆発が起こることなく解決できるのでしょうか?