猛毒テルシオペロの生態
日本ではあまり耳馴染みがなく、知らない人も多いかもしれません。しかし中南米ではアメリカハブの中でも特に危険な蛇として名高く、遭遇すれば成人男性ですら一目散に逃げ出してしまうほど、人々から恐れられている存在です。
テルシオペロの体長
クサリヘビ科に属し、全長100cmから200cm程あり最大で2.5mまで成長します。メスのほうがオスよりも大きく、成長後の体重は6kgにも及びます。ガラガラヘビなどたくさんの種類が存在する中央アメリカでも、最も大きいサイズの蛇とされています。
テルシオペロの生息地
熱帯蛇とも呼ばれ、主に湿気の多い熱帯雨林や森林地帯を好んで生息しています。樹の上や地上といったあらゆる場所で活動が可能で、人里に降りてくることもあります。その為、屋外はもちろん屋内での遭遇率も非常に高いです。
テルシオペロの身体的特徴
茶褐色の体色で、ダイヤのように見える大きな斑紋が特徴です。シャープな三角形の頭部には2.5cmにも達する毒牙があり、側頭部には鋭い目へ繋がるように黄色の筋模様があります。成長後よりも、幼い頃のほうが色が鮮やかです。また、オスだけ尾の部分が黄色いといった特徴があります。
テルシオペロの生態
非常に強力な猛毒を持つ存在として人々に恐れられていますが、こちらから刺激しなければ、あまり日中に襲われることはありません。それは、本蛇の持つ特徴や生態が関わっています。猛毒から身を守るためにも、まずは生態を知っておきましょう。
テルシオペロは夜行性
テルシオペロは夜行性のため、日中は物陰や茂みに身を潜めています。落ち葉の下に隠れていることもあり、体色が濃褐色ということもあって、存在に気付かない場合もあります。とはいえ、夜間でも誤って刺激してしまえば途端に攻撃的になりますので、十分注意が必要です。
テルシオペロの獲物
主に小型の哺乳類から鳥類、カエル等の爬虫類を捕食しています。しかし、熱帯雨林に存在するムカデといった節足動物を食べることもありますので、動物食で、かなりの雑食です。ほとんど餌に貧窮することはないでしょう。
ハンティングの方法
蛇には鼻の下にピット器官と呼ばれる赤外線感知器官が存在し、夜間でも獲物を見つけることができます。獲物を見つけるとすかさず毒牙を突き刺して、一瞬のうちに毒を打ち込みます。毒を打ち込んだらすぐさま元の体勢に戻り、新たな獲物を仕留めるべく牙を光らせます。
猛毒テルシオペロの毒性
いよいよ本題である毒性について触れていきます。世界には約3000種類もの蛇亜目が存在しますが、そのうち約25%が毒蛇だとされています。その中でもテルシオペロが恐ろしいとされている理由は、やはりその猛毒性です。
テルシオペロの毒性は出血毒
蛇毒には大きく別けて出血毒と神経毒が存在しますが、テルシオペロの毒は出血毒とされています。しかし出血毒と神経毒のどちらかのみを持っているわけではなく、すべての蛇は両毒とも併せ持っており、その割合によってどちらかに分類されています。
出血毒とは
血液凝固や溶血、筋肉毒など含めた総称として呼ばれています。主にクサリヘビ科の蛇が持っている毒です。プロアテーゼという蛋白質分解酵素作用によって血液の凝固を阻害し、血液壁などの細胞を壊すことで出血させます。神経毒に比べると致死率は低いですが、細胞を破壊するため激しい痛みがあり、筋肉の壊死を起こします。
逆に神経毒は、神経の伝達を遮断して筋肉の麻痺などを引き起こします。出血毒のように激しい痛みはありませんが、心肺停止といった死に直結することも多く、致死率が高く非常に危険です。主にコブラ科など、約7割の蛇がこの神経毒を持っています。
噛まれて20分で死に至る猛毒性
テルシオペロの毒は出血毒の中でも非常に強力で、一度の注入で人の致死量の何十倍の毒を打ち込むことが可能です。健康な成人男性ですら、噛まれてから20分で死に至るといった猛毒性があります。また、死に至らない場合でも、毒の効果で筋肉を懐死させるため四肢を切断する必要があったりと、中南米では最も恐れられている存在です。
閲覧注意!猛毒テルシオペロに襲われた少女
懐死した肉体の様子は、非常に衝撃的で思わず目を背けたくなる程です。かつて、SNSにて実際に毒に侵された少女の写真が投稿され、話題騒然となりました。実際の写真や映像を見ると、本蛇が恐れられている理由がよく分かります。
壊死!石化した少女の足
南米ベネズエラの病院にて撮影された様子です。毒に侵された脚は腐り、黒く変色するまで干からびています。少女は病院へ搬送されるまでの間、なんと民間療法にて治療を受けていたというのです。ここまで症状が悪化した原因の一つに、病院での治療が遅れてしまったことが挙げられます。
蛇毒と横紋筋融解症
実際の写真を目にした医師の見解では、懐死した脚を切断する必要があるが、それでも命は助からない可能性があると述べています。細胞が懐死したことで、横紋筋融解症を併発していたからです。たとえ噛まれた直後に死を免れたとしても、その後遺症は悲惨なものだと言えます。
横紋筋融解症とは
人の体の筋肉は大きく別けて平滑筋と横紋筋が存在し、横紋筋には更に骨格筋と心筋が存在します。心臓を除いた内臓に分布するのが平滑筋ですが、横紋筋は骨格や心臓の壁に分布し、体の動きや心臓の収縮運動を行っています。
この骨格筋細胞が懐死・融解することで、細胞内の成分が血液内に流出している状態を言います。全身の筋力が低下することはもちろん、流出したミオグロビンと呼ばれるたんぱく質が尿細管に詰まることで急性腎不全を引き起こす可能性であったりと、様々な症状を併発する危険性があります。
足切断!少女のその後
映像の少女がその後どうなったのかは、投稿されていません。恐らく懐死した脚を切断したであろうと思われますが、併発した横紋筋融解症の治療には、早期の大量輸血や血液浄化法といった適切な治療を受ける必要があります。少女のその後を確認する手段はありませんが、無事に治療を終えていることを願うばかりです。
テルシオペロはメデューサのモデル!?
神話やモチーフ等で有名なメデューサについて知っている人も多いかと思いますが、本蛇はメデューサのモデルになったのではないかと、まことしやかに囁かれています。果たして、両者にはどのような関係があるのでしょうか。
メデューサとは
ギリシャ神話に登場する怪物であり、無数の毒蛇によって形成された頭髪が特徴的で、目が合った人間を石に変えると伝えられています。元々は女神でしたが、怪物になったことでペルセウスによって首を切られ、退治されました。その首から流れる血が砂漠に落ちたことで、さそり等の猛毒を持った生き物が生まれたという逸話も残しています。
テルシオペロとメデューサは無関係
神話で語り継がれているとおり、メデューサは元々ギリシャの女神です。その歴史は古代まで遡ります。テルシオペロの生息地はまだ歴史の浅いアメリカであり、物理的な距離があって尚且つ生息環境の異なるギリシャには存在していないため、両者に関係性は無いと考えられます。
メデューサのモデルと言われる理由
モデルになったと言われる所以は、恐らくその毒の効果が影響しているのでしょう。元々メデューサは見た人間を石に変える恐ろしい怪物ですが、本蛇の毒で懐死した部分も、まるで石化したように見えます。また、メデューサの頭髪は無数の蛇によって作られていますので、それらも含め誤認される理由なのではないでしょうか。