カンパチとはどんな魚?
カンパチという魚を知っていますか?スズキ目アジ科ブリ属に属し、スーパーや魚屋で頻繁に見かけるわけではありませんが日本ではよく食用にされ、大変おいしい魚です。あまり知られていませんが、成長に伴って名前が変わる「出世魚」です。
カンパチの生息地
熱帯や温帯域の暖かい海に生息しています。日本では関東以南の太平洋や東シナ海、小笠原諸島などに多く生息しており、日本海にはそれほど多くありません。主に沿岸から外洋の水深20~70mの場所に生息しますが、釣りでは水深60~350mほどの場所を狙う事もあります。
カンパチの生態
比較的暖かい水温を好むため、暖かくなってくると北上し、寒い時期になると南下する季節回遊を行います。アジ、イワシ、サバ、キビナゴなどの魚やイカやエビなども食べる肉食魚です。産卵は3月から8月で、成魚になると1m程度、最大で2m弱、重さ80kgほどにまで成長します。これはアジ科の中で最大級です。
カンパチの特徴
カンパチはブリ、ヒラマサとともに「ブリ御三家」「青物御三家」とも言われ、味や見た目がよく似ています。形はブリなどと同じように紡錘形ですが、カンパチは頭の上から目、上あごに向かって黒っぽい帯があり、腹びれの先と尾びれの下側の先が白くなっています。また、ブリに比べ体色に赤みがあります。
カンパチが出世魚と言われる理由とは?
実は「カンパチ」は一般的に成長しきった大型のものを指す事を知っていますか?小さい時は別の名前がつけられ、大きくなると呼称が変わるため、カンパチはブリやスズキ、ボラなどと同じく「出世魚」です。
カンパチの名前の由来
カンパチは漢字で「間八」「勘八」と書きます。カンパチには頭頂部から目を通り上あごにかけて黒っぽい帯状の模様があります。この模様は成長に伴って薄くなってしまいますが、これを正面または頭頂部側から見ると、漢字の「八」の字のように見えます。これが名前の由来だと言われています。
出世魚とはどんな魚?
そもそも出世魚とは、成長に伴って呼称が変わる魚の事です。同じ魚でも若くて小さいものと成熟した大きいものでは見た目や味が変わる魚が、その違いを明確にするために成長過程によって違う名前を付けられました。
江戸時代以前は元服(成人)したり、成果を上げたりする事によって新しい名前が与えられる習慣がありました。また現代でも会社などで昇進すると肩書きが変わります。そのような事から名前が変わる魚は「出世魚」と言い、縁起が良い魚とされています。
【出世魚】カンパチの出世名とその順番を詳しく解説
カンパチは生育度合いにより呼称が変わりますが、それも実は地方で違いがあります。ここからは地方ごとにカンパチがどのように名付けられ、どのように変わっていくのか、それを詳しくみていきたいと思います。
カンパチの出世名:関東編
まずは関東地方でのカンパチの呼称を紹介していきたいと思います。「カンパチ」というのは元々東京での大型魚の呼称で、それが標準和名として使われるようになりました。漢字では「間八」、またはお寿司屋さんなどでは人名をもじって「勘八」と書かれます。
関東での出世名①ショッコ
体長35cm、1kg程度の個体を言います。漢字では「汐っ子」「初子」と書かれ、黒潮に乗って回遊してくる事からその名がついたと言われています。生後1年ほどの個体ですが、刺身にするとコリコリとした食感がありおいしく食べられます。
関東での出世名②シオゴ(ショゴ)
ショッコより少し成長した35~60cmほどのサイズのものを言います。このくらいのサイズになってくると、釣りでは狙いやすさと引きの強さが両方楽しむ事ができます。シオゴサイズの2~3kgほどのサイズのものが最もおいしいと言う人もおり、刺身にすると程よく脂がのって絶品です。
関東での出世名③アカハナ(アカバナ)
アカハラなどともいわれ、サイズ60~80cm、重さ6kg前後とかなり大型の個体になってきます。シオゴよりも脂がのってきますが、元々あまり魚臭さのない魚なので上質な味わいが楽しめます。
関東での出世名④カンパチ
80cm以上のサイズまで成長した個体です。1m程度まで成長するものが多いですが、過去には約1.9m・80kgのものが捕獲された事もあります。天然物は高値で取り扱われますが、養殖も盛んに行われています。
カンパチの出世名:関西編
次にカンパチの関西での呼称を見ていきたいと思います。関西地方では広くカンパチが獲れるため、県や地域でも様々な呼称があります。ここでは代表的なものと、地域で特徴的なものを合わせて紹介します。
関西での出世名①シオ
関東でのショッコやシオゴの時期にあたる、60cmくらいまでのサイズの若魚に対して使われます。和歌山や三重、徳島、高知など、東海から関西にかけて比較的広い範囲で使われている呼称です。
関西での出世名②カンパチ
この呼称は関西でも使われています。しかし、関西では60cm以上の個体を指し、関東でのカンパチよりも小型のものも含みます。ただし、最近では流通の発達などによって関東と同じ呼称に寄る傾向もあり、大型のものを指す事も増えてきているようです。
関西でのその他の呼称①アカバナ(アカハナ)
これは成熟した80cm以上の大型の個体の事を指します。吻(口先)が赤っぽいという意味で「赤鼻」から来ている呼称です。つまり関東と関西で「アカバナ」と「カンパチ」は順番が逆なのですね。
関西でのその他の呼称②ネリ(ネリゴ)
九州北部で特に使われる呼称で、60cmくらいまでのサイズの個体の事です。カンパチは若魚の頃は特に小規模な群れを作る習性があり、そこから群れで練り歩くように泳ぐ魚という意味で「ネリ」「ネリゴ」と呼ばれています。
カンパチの出世名:鹿児島編
鹿児島県はそのあたたかい気候によりカンパチが生息しやすい環境であり、養殖カンパチの生産量も日本一となっている県です。そのため呼称も独特で、古くから身近な魚であった事がうかがえます。
鹿児島での出世名①ネイゴ
カンパチの若魚の事で、語源は明らかではありませんが九州北部で使われている「ネリゴ」がなまったという説があります。サイズや重さによる定義は明確なものはなく、漁師さんや競り人によりますが、およそ80cm以下とか約2kg以下などというサイズのものがネイゴとされる事が多いようです。
鹿児島での出世名②アカバラ
カンパチの大型の個体を鹿児島ではアカバラと呼びます。これは、鹿児島近辺ではブリの事を「ハラジロ(腹白)」「シロバラ(白腹)」と呼んでいて、それに対して体表が赤みがかっているカンパチの事を「アカバラ(赤腹)」と呼ぶようになったそうです。また、天然ものをアカバラ、養殖ものをカンパチと呼び分ける風習もあります。
【出世魚】カンパチは日本では高級魚
カンパチは近年では養殖技術も進んできていますが、ブリなどと比べて漁獲量が少ないため、日本においては高値で取り扱われています。どのような味なのか気になりますよね。おいしい時期や料理法も合わせてご紹介します。
カンパチの美味しさを紹介
カンパチは身が淡いピンク色をしているためよく白身魚と間違えられますが赤身魚です。白身魚より血液や筋肉にヘモグロビンやミオグロビンが多く、大海原を回遊するのにエネルギー効率がよくなっています。血液や脳によいDHAやEPAが多いのも特徴です。
では味はというと、適度に脂がのっていますがさっぱりとした味わいです。ブリなどに比べ時間が経っても変色したり生臭みが増したりしにくく、魚嫌いの人でも食べやすいと言われています。食感はややコリコリとしている歯ごたえがあるのが特徴です。
カンパチの旬はいつ?
一般的に夏から秋にかけてが旬で、2~3kg程度のサイズのものが最もおいしいと言われています。しかしそれ以外の時期でも味が落ちにくく、年間を通じて比較的おいしく食べる事のできる魚です。