ハエトリソウとは?
観賞用でも人気になっているハエトリソウは、属性がモウセンゴケ科で別名ハエトリグサやハエジゴクとも言われます。2枚の葉っぱで小さな虫などを挟み込み捕まえて養分を吸収するので「食虫植物」とも言われています。
食虫植物
見た通り「虫を食べる植物」と書いて食虫植物とは、虫を食べるため「肉食植物」とも呼ばれ、生きていくうえで虫を食べます。しかし虫だけを食べて生き続けているわけではなく、他の植物と同じように光合成を行い生きている植物です。
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学名は「Dionaea muscipula」
「Dionaea muscipula」は英名で「Venus Flytrap」となり、これを訳すと「女神のハエ取り罠」になります。葉の先端部分が人のまつ毛のように見えることからそう付けられました。和名は「ハエトリソウ」の他にハエジゴクやハエトリグサとも表記されます。
食虫植物には種類が存在する
世の中には様々な食虫植物存在していて、昆虫などの生き物を捕まえる方法によって種類を分けることができます。全部で4種類に分けることができ「落とし穴式」「粘着式」「はさみ罠式」「袋罠式」があります。
2枚の葉についたセンサーで虫を挟むハエトリソウは「はさみ罠式」の種類に属されます。その他の種類についてご紹介します。
落として捕まえる~落とし穴式~
ツボのような形をした葉っぱを持ちその中に虫をおびき寄せる方法を取るタイプの食虫植物を「落とし穴式」と呼びます。”ウツボカズラ”や”サラセニア”などがこのタイプの植物になります。ツボの中には水や消化液が入っており落ちてしまった虫は養分を吸い取られてしまいます。
引っ付けて捕まえる~粘着式~
葉の先に雫のような液体をを出して虫がくっつくのを待つタイプの植物を「粘着式」と呼びます。まるで雫が付いているような形をしていますが、その雫は植物が出す粘着液になり、虫がその雫にくっつくことで捕まえます。”モウセンゴケ”や”ムシトリスミレ”などがこのタイプの植物になります。
閉じ込める~袋罠式~
袋の中に虫を吸い込み、養分を吸い取る植物を「袋罠式」と呼びます。袋罠式を用いた植物は、水の中で生息している”タヌキモ”と言われる水生植物で、袋の形をした器官を使い水中にいるミジンコやボウフラなどを吸い込みます。
ハエトリソウの故郷とは?
このハエトリソウの原産は、北アメリカのノースカロライナ州やサウスカロライナ州の湿地帯です。自生している場所は保護区に指定されており、ワシントン条約でも球根の輸出入が全面禁止と決まっています。
ただ栽培や繁殖などは簡単にできるため、手軽に育てることができます。
北アメリカのノースカロライナ州とサウスカロライナ州
このハエトリソウが最初に自生していた場所が北アメリカの東側にあるノースカロライナ州とサウスカロライナ州の湿地帯になります。この周辺は日本と同じように春夏秋冬と四季がり、ハエトリソウにとって繁殖しやすい環境にあったため自生していたのを発見されたそうです。
地元の人でさえ存在に気づいていない?!
ハエトリソウというと鬱蒼とした森の中で生息しているようなイメージですが、実際は湿地帯に地面を這うような形で自生しています。その為現地に住んでいる地元民は変わった植物が生息しているということに気づかずに生活している人も多いようです。
ハエトリソウの種類や品種を紹介!
ハエトリソウと言っても園芸用に品種改良されたりとその種類約100種類ほど存在しています。大きく分けると葉の向きが上に向く「エレクタ系」、葉が地面を這う「ロゼッタ系」と分けることができます。どんなハエトリソウがあるのかをご紹介します。
「エレクタ系」と「ロゼッタ系」
ハエトリソウには生長するタイプによって系統があります。地面を這うように伸びていくものは「ロゼッタ系」と呼ばれており、地上から上に向かって伸びていくタイプのものを「エレクタ系」と呼んでいます。どちらも育て方は同じなので、好みに合わせて選んでも良いでしょう。
ディオネア・マスシプラ(赤い龍)
1996年にアメリカで株分けや掛け合わせを行いできた品種になります。「マスシプラ」とは原種に最も近いものにつけられています。日本語名がついていて、全身赤色の龍に見える為「赤い龍」と言われています。
シャークティース
スラっと伸びた茎の先に緑の葉を付ける品種になり捕食部分のトゲが短く、葉の幅が広いハエトリソウです。この捕食部分の形がサメの歯に似ていることからその名前が付いています。
クロスティース
この特徴はなんといっても不規則に伸びているトゲです。その為獲物を捕まえたときにトゲが交差します。そのことから交差する歯と書いてクロスティースと付けられています。日に当てると捕食部分の内側が赤くなるので、赤身が薄い場合は日照不足が考えられます。
ソーティース
葉のトゲが他のものよりも数が多くて短い品種になります。見た目が木を切る際に使用するノコギリの刃に見える為、この名前がついています。他のものと見比べてみると短さや数の多さが違うのが分かります。
エンジェルウィング
天使の羽と訳す通り、刃の部分が天使の羽に見えることからつけられています。他の品種と見比べてみると葉っぱが裏返しに見え、横にしてみると人の唇にも見えます。この品種はとても人気があります。
グレード ホワイト シャーク
なんとサメの名前でもあります。別名「ホホジロザメ」とも呼ばれ、ホホジロザメの歯に似ていることからつけられたものになります。”サウスウェスト”と”ジャイアント”を交配させて作られた品種で白っぽいものもあれば色鮮やかな赤色をしたものと様々なパターンがあります。
ロングレッドフィンガーズ
名前の通り、”赤くて長い指”は捕食部分のトゲがローズピンクのような赤い色をしており、通常のハエトリソウより長いです。あまり大きく生長しない為、とても可愛らしサイズになります。
プチドラゴン
小さなドラゴンと付いていることから、大きく育つタイプではありません。ディオネア・マスシプラと似ていますが、大きくならないタイプなのでミニサイズ版と言えます。手頃のサイズなのでインテリアとしておいても可愛らしいですね。
ボヘミアンガーネット
綺麗な赤色に色づき、比較的小さめのサイズになります。ロイヤルレッドとソートゥースを掛け合わせて作られた品種で、チェコ共和国のボヘミアンで育成され、ガーネットのように美しいことからつけられています。
ホエール
捕食する部分がクジラに似ていることが特徴です。その似ているクジラというのが”ヒゲクジラ”になり、歯の形に似ているのかと思いきや、なんと尾の部分に似ているそうです。またあまり見かけない品種なので見つけた際はとてもラッキーですね。
ジョーズ
短く鋭いトゲに捕食部分を閉じるとサメに見えることからジョーズとつきました。同じジョーズにもサメが笑っているような幅の広いタイプのハエトリソウはジョーズスマイリーともいわれています。管理の仕方次第では葉の色が変わってきます。
クレイトンズ・ボルカニックレッド
VolcanicRed(ボルカニックレッド)は翻訳すると火山の赤という意味で、ハエトリソウの色が暗めの紫色になっています。よく見ると赤い龍などと似たような色味です。
カップトラップ
変形ハエトリソウともいわれるくらい葉の形が独特で、捕食する葉の先端がくっついています。こんな形をしていてもしっかりと虫を捕まえることができます。また育てやすい為、初心者の方にもおすすめできます。
フューズド・トゥース
他の品種とは違いトゲが溶けたように、トゲ同士がくっついた状態の品種になります。成長していくにつれて葉の部分の形が変わっていくため、生長を観察するのがとても楽しい品種です。どのようになるのか見るのも楽しめます。
マスシプラ・オールドタイプ
ロゼッタ系では有名な品種になります。またハエトリソウの中でも原種にちかいものになります。その為日本でも一番見かけることが多いものになります。鮮やかな緑の葉がたくさん生えることが特徴の品種になります。
レッドピラニア
きれいな赤色をした品種で、口を開けたピラニアが牙を向けているような形をしているためそうつけられた名前になります。他の品種と比べてみるとトゲの形が違っていることが分かります。
ハエトリソウが虫を食べられるのはなぜ?
ハエトリソウが虫を食べられるのには秘密があり、捕食する部分に虫を検知するためのセンサーの役割をする毛があるからなのです。この毛に虫が当たることで獲物を検知し葉を閉じる仕組みになっています。
虫を検知するセンサー
なぜハエトリソウが虫を捕まえることができるかというと、葉の内側に虫などを感知するセンサーの役割を担う毛があるからです。その毛は”感覚毛”と呼ばれ、虫などがその毛に当たることで虫を捕まえる仕組みになっています。この”感覚毛”は3~4本程度ついていることが多いです。
2回目の刺激で反応する
センサーともいえる感覚毛に2回刺激があると葉を閉じますが、同時に2本の毛に刺激があっても葉を閉じます。しかし、1回目と2回目の感覚が20秒以上空いた場合はしっかり葉を閉じることはありません。
なぜこのような行動をとるのかは2010年の研究結果で「ジャスモン酸グルコシド」という物質が関与しているということが分かってきています。
ジャスモン酸グルコシド
研究結果で出ていている「ジャスモン酸グルコシド」という物質はハエトリソウについている感覚毛に刺激が加えられると、刺激物質としてその物質が蓄積されます。蓄積された物質がある一定の濃度を超えると電流が発生し葉を閉じるようになります。
ジャスモン酸グルコシドは葉の閉鎖に関与しているということが明らかになっています。
ハエトリソウの捕食シーン
なぜハエトリソウが虫を食べることができるのかが分かったところで、実際の捕食シーンを見てみます。葉の内側にある細いトゲ”感覚毛”にダンゴムシが当たることで、刺激され葉が閉じます。そしてまつ毛のようなトゲがあるため、ダンゴムシも外に出ることができません。
捕まえてすぐはまだトゲの辺りが少し浮いた状態になっていますが、1日経つと完全に葉を閉じます。その中では消化液が葉から分泌されて虫などの獲物を溶かしていきます。10日ほど時間をかけて養分をとります。取り終えるとまた葉を開いて死骸などを捨ててまた獲物が来るのを待ちます。
ハエトリソウの特徴と弱点とは?
湿地帯で生きていた植物なので、乾燥にはとても弱いです。特に寒い冬場などは動物と同じように冬眠をします。そうすることで次の年の生育も良くなるそうです。弱点や特徴を詳しくご紹介します。
乾燥に弱い
原産が湿地帯ということもあり、乾燥にはとても弱いです。その為、水を切らしてしまうと枯れてしまう原因になってしまいます。枯らしてしまわない為にも水やりを忘れず、常に土を湿らせておく必要があります。その時は腰水管理をお勧めします。
冬には休眠する
10月下旬になってくると寒くなってくるため、生長が止まって動物のように冬眠状態(休眠)になります。休眠に入ると枯れたように見えますがしっかりと生きているので、水を切らさずにしておきましょう。
ハエトリソウを自宅で楽しむ方法!
観賞用として育てる人が多い為、自宅でもおしゃれに楽しむ方法があります。他の観葉植物と同じように様々な容器などに植え替えてみてはいかがでしょうか。容器を変えることで不通に飾るよりもおしゃれに見えます。
おしゃれな器を使用
そのままポットなどの容器で楽しむのももちろん良いですが、ハエトリソウの特徴に合わせておしゃれな容器を選んでみてはいかがでしょうか。特徴的な赤色が映えるようにシンプルな器を使用するのも良いですし、小さめのサイズであればマグカップなんかでもおしゃれに飾ることができます。