バビルサとは?
あまり耳慣れない言葉ですが、今回みなさんにご紹介するこの動物は、イノシシの仲間になります。学名はBabyrousa babyrussaと表され、寿命は大体20年ほど。そんな彼らの生態に迫っていきましょう。
イノシシ科のバビルサ科
インドネシアの限られた島に生息しており、森林地帯の水辺に暮らしています。見た目に反して泳ぎは得意で隣の島などに泳いで渡ってしまうほどです。イノシシの仲間だけあって、子供のころはウリボウのように縞模様があり、大人になると消えてしまいます。
体長・体重
体長は80㎝から大きいもので1mを超える個体もあります。体重も体調に応じて幅広く、60kgから大きいものは100kgを超えてきます。見た目は豚やイノシシそっくりで特徴は後で詳しくご説明する大きく反り曲がった牙です。
バビルサの名前の由来とは?
なかなか不思議な語感を持つ「バビルサ」という名前はどのようにしてできたのでしょうか?ここではその由来を簡単にご説明します。
日本語だと豚鹿を意味する
この名前は2つの言葉から作られました。インドネシア現地の言葉でバビ(babi)とルサ(rusa/roesa)が合わさってできました。それぞれ「豚」と「鹿」の意味を持ちます。見た目と特徴的な牙を持つことからこのような名前で呼ばれるようになったのでしょう。
バビルサはどこに生息してるの?
序盤に簡単に触れましたが、彼らはどこに生息しているのでしょうか?住んでいる場所から彼らの生態を少し探ってみましょう。イノシシに親しみのある私たち日本人にはとても想像しやすい暮らしをしているとも言えます。
インドネシアのスラウェシ島
いくつもの島から成るインドネシアのスラウェシ島という島に彼らは暮らしています。広がる熱帯雨林の中でも水辺で生活するのを好みます。
バビルサの最大の特徴は「牙」!
イノシシや豚にそっくりな彼らが最も他の動物と違う点は「牙」にあります。「自分の死を見つめる動物」とまで言われる理由はこの牙にあるんです。
頭部をめがけて発達
口の中にある4本の牙が自身の成長とともにどんどん上へ向かって成長を続けます。人間でいうところの犬歯に当たる4本の牙が伸びるのですが、通常は上の歯は下に向かって、そして下の歯は上に向かって伸びていきます。
しかし彼らの牙は違います。下の歯は私たちと同様上へ向かって伸びるのですが、なんと上の歯も上へ向かって伸びるのです!おまけに鼻の上の皮膚に迫ってもこの牙の成長は止まることなく、最終的には皮膚すら突き破って口の外へ出ても伸び続けます。
口の外に出た後も成長はとどまることを知らず、大きく曲がりながら頭部をめがけて発達していくという牙を持っているのです。
牙が立派なオスがモテる?
ライオンのタテガミやオットセイの牙などと同様、彼らの特徴的な牙もオスとしての強さをアピールするために存在していると推察されています。
そのため、このような牙はメスにはなく、上あごを突き破ってまで伸びる牙はオスにしかありません。事実、立派な牙を持つオスはメスと交尾までたどり着く可能性が高いこともわかっています。
立派な牙を持ちながら絶滅してしまったサーベルタイガーに関する記事はこちら
実は人間も牙を持っている
オスとしての力をアピールするために使われる牙ですが、実は人間の歯も性別によって大きさに差があることはご存知でしょうか?
人の犬歯はまさに牙が退化したもので他の歯と比べて性別による違いがはっきりしています。平均的な話になりますが男性の方が女性の犬歯に比べなんと6%も大きく鋭いことがわかっています。
大きく口を開けて笑うことは昔は威嚇の意味があったというのもこうして犬歯を見せるためだったとしたらなるほどとうなずける話でしょう。
パピルサの牙は何のためにあるの?
他のオスに見た目で力を誇示し、メスたちに自分の強さをアピールするためにあるこの大きな変わった牙ですが、その他にもいくつか目的があることがわかっています。やはり戦いに使用するのでしょうか?
枝にぶら下がって休むため
実は戦いに使うことはありません。見た目で強さがわかるということはそれだけで戦いの回数を減らしているということでもあるのです。
はっきりとしたことはいまだ明らかになっていませんが、使い道の一つとしてこの牙を使って枝にぶら下がり体を休めることもあるようです。
目を守るため
もう一つの理由は目を守るためともいわれています。彼らはオス同士で争うこともありますが、その際ぶつかり合って弱い方の牙を折ってしまうこともあるようです。そういったときに目を傷つけてしまうことを避けているのでしょう。
バビルサが「自分の死を見つめる動物」と言われている理由
ここまで迫ってくるとなぜ「自分の死を見つける動物」といわれるのか想像できる人も多くいらっしゃるでしょう。やはりその理由はこの特徴的な牙にあります。
牙が頭に突き刺さりそうだから
上あごを突き破り、大きくカーブしながらそれでも成長が止まることのない牙はやがて頭に突き刺さりそうな見た目になります。自分が命をつなげていく限り伸び続ける牙。その牙が自分の頭を突き破ってしまうかもしれない。そんな姿からこういう風に呼ばれるようになったのです。
バビルサは実際に自分の牙で死んでしまうのか?噂の真相は
今にも頭に突き刺さりそうな牙を持つ彼らですが、果たして本当に自身の牙によってその命が奪われることがあるのでしょうか?噂の真相に迫ってみましょう。。
噂話に過ぎない
「自分の死を見つめる」なんてまさに人間が好みそうな哲学的な話ですが、安心してください。結局は噂話に過ぎないでしょう。
実際に牙が刺さった個体が発見されたこともありますが、その死因が牙によるものなのかは明らかになっていません。寿命を全うし、老化によって息絶えたという説が濃厚です。
刺さる前に曲がることがほとんど
私たち人間も歯の生え変わるときに歯が開いたスペースに向かって生えていき、歯並びが少し変わったりそれによって歯科にかかったという経験を持つ方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな風にバビルサたちの牙も自分を傷つけることが無いよう方向に向かって伸びていくのが正常です。牙は湾曲を続けながらも頭蓋骨に当たらないように成長していきます。
バビルサの牙が頭蓋骨に刺さった証拠がある!?
湾曲を続けながら自身の頭蓋骨に当たらないように成長していくのが正常だとお話ししましたが、何にはなんの不幸か正常に牙が伸びず、頭蓋骨に刺さってしまったバビルサもいたようです。