謎に包まれたアオイガイ
白く美しい貝殻を運びながら、貝殻に守られながら子供を育てて生きる海の生き物、アオイガイ 。不思議なことに、アオイガイは、貝類ではなく、タコの仲間です。タコなのに貝を背負うという、とても不思議で、さらにとても興味深い海の生き物のひとつです。謎がたくさんあるこの生き物は、とても人気で、一度生きたまま出会って見たいという人が多くいます。
アオイガイの特徴
a. アオイガイとはどういう生き物?
アオイガイ は、貝殻が育てるタコの仲間の生き物です。アオイガイ の正式名称は『貝蛸・カイダコ』といいます。アオイガイ の貝殻ふたつを合わせると、ハート形になり、植物の、アオイの葉に貝殻の模様が似ているため、そのような名前が付けられたといわれています。その他にも、『タコブネ』と呼ばれることもあります。また、妊婦さんにアオイガイ の貝殻に温かいお湯を飲ませると、安産になるという言い伝えがあるため、または『子安貝』という名称もあります。
b. アオイガイのメス
アオイガイ のメスは、体長約10cmから30cmまで成長し、一般のタコと同じくらいの大きさになります。アオイガイ は、分泌液でとても薄いプラスチックのような貝殻を作り、その中で生活します。メスは、貝殻を自由に出入りすることができますが、一度作った貝を見捨てることなく、必ず戻ってきます。また、長時間貝殻なしでは生きることができないため、基本的には貝殻の中にいます。貝殻は卵を守るためにあり、メスは産卵した後、貝殻の中で子育てをします。
c. アオイガイのオス
アオイガイ は、メスしか貝殻を作らないため、オスは貝殻がなく、体の形は一般のタコと変わりません。しかし、メスと違い、オスは体長約1cmから5cmくらいしか成長せず、メスと比べ、半分以下の大きさです。平均のサイズは約1.5cmと、とても小さいです。
d. アオイガイの繁殖
アオイガイ の繁殖は少し変わっていて、オスの生殖器が腕にあり、生殖腕と呼びます。オスはメスの貝殻へ入り、生殖腕を切り離し、貝殻の中へ残します。その後、腕がメスの貝殻の中で生き、メスの体内へ精子を送り、繁殖をします。メスは、貝殻に守られながら、産卵と子育てをします。
アオイガイの生息地
アオイガイ は、温海域と熱帯域に生息し、基本的に群れで生活を送る生き物です。また、海の上を漂っているので、タイミングのよい時期に沖へ出ると、稀に海で遭遇する可能性があります。
a. 日本の生息地
日本では、九州北部や、北陸沿岸に生息し、群れで海の上を漂っているところを発見できる場合があります。しかし、東北地方では滅多に見られないといわれています。温かい海を漂って生活しているため、船やボートなどで釣りに行った際に、運がよければアオイガイ に出会える可能性もあります。
b. 海外の生息地
アオイガイ 暖かい場所を求め、全世界の温海域と熱帯域に生息しますが、特にオーストラリアの周りには、よりたくさんのアオイガイ が群れで生息しています。アオイガイ が群れで来ている時期には、ダイビングでも出会うことがあります。
アオイガイの分布
全世界で基本的には温海域や熱帯域に生息しています。もともと熱帯海域から黒潮に乗り、太平洋海岸へと渡って、その後外洋に戻って行きます。たまに海にどんどん乗ってしまい、大馬海流へ出くわしてしまうと、そのまま洋外へ戻れずに北上してしまい、冬に暖かい場所を求めて日本海岸へ引き上げられてしまう場合もあります。
その他にも、たまに大量発生する場合がありますが、地球温暖化など、海の温度の変化によって、普通以上に大量の群れで漂着してしまうことがあります。
アオイガイの旬
アオイガイ の旬は、春、夏、秋、冬と季節はあまり関係ありません。しかし、アオイガイ 海岸へ打ち上げられて、貝殻を見つけられる季節は冬で、アオイガイ が寒さに耐えられず、海岸へ一生懸命逃げてきた時に大量に海岸へ引き上げられます。なので、冬の時期に海岸へ行くと、綺麗な貝殻がたくさんみつかります。アオイガイ は、海岸に引き上げられた後、多くが野生動物に食べられてしまうため、実際にタコが中にいるまま見つけることは難しくなります。
アオイガイ が姿を表す時間帯
アオイガイ は、光によく集まってくる生き物なので、実際に生きたままのアオイガイ に会いたい人には、夜に沖に出ることをおすすめします。沖に出たら、海に向かって強い光を向けて、しばらくすると、海の中から白く輝いたアオイガイ が水面に浮かびあがってきます。運が良ければ、手に取ることもできますが、多くの場合は逃げてしまいます。
アオイガイの味
アオイガイ は食用の生き物ではありませんが食べることはできます。しかし、料理にしても味は薄く、美味しい料理はなかなか作れません。運良く釣れて、どうしても食べてみたいという方のためにいくつかの食べ方を紹介します。
a. エスカルゴ風
エスカルゴを料理するように、ガーリックバターやオリーブオイルで焼き、その後に、塩やコショウなどを少々付け加えて味をつけると、食べやすくなります。
b. 味噌和え
まず、しっかりとアオイガイ を茹で、その後に少々のお酢をかけ、辛味噌で和えると、美味しそうに料理できます。しかし、水分が多くなってしまうため、食感は柔らかく、味が少し薄くなってしまいます。
c. お刺身
アオイガイ は、生でお刺身のように食べることもできなくはありませんが、水分が多く、味が薄いので、醤油や生姜、わさびなどをつけて食べることをおすすめします。